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外伝 【白と黒の英雄】
外伝14 【白の家族】
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「なんなんだ、この化け物共は!」
「分からない。だが、黒月の兵器ではなさそうだ」
「チッ......、あいつらなら、これくらい用意できるとは思うがな!」
橋の麓で幾重もの血が重なる。
敵味方関係なく血を撒き散らし、あたりを真っ赤に染めあげていく。
「サツキ、離れるなよ。奴らがどこから来るか分からんからな」
「分かっている。セイヤッ!」
サツキの槍が化け物共の体を串刺しにした。
「カンナ!状況は!」
「は、はい......、ええええええっと、死者2000人超え。負傷者もかなり多く、とても治療が追いつきません」
カンナの慌てぶりはいつもの事だが、いつもに増して慌てている。
「状況は非常にまずい傾向にあります。このままでは、軍隊が壊滅してしまうでしょう」
1人冷静なクウガがそう言う。
言われなくても分かってはいる。分かっていても、この状況を打破することが出来ない。
「暗殺隊の方にも、同じような騒ぎが起こっています。ただ、向こうは犠牲者が少ないようです」
「当たり前だ。向こうは暗殺隊とかいう化け物組織なんだ。悔しいが、実力は遥かに上なんだ」
こんなことなら、白陽にもそれなりの専用組織を作っておけばよかった。
いくら数が多くても、個々の実力は暗殺隊に比べ物にならないほど劣る。
「カンナ危ない!」
慌てふためくカンナに、血飛沫を浴びて真っ赤に染まった化け物が襲いかかってきた。
「いやっ......」
「セヤァッ!」
空間を切り裂き、そこから派生した雷の刃が化け物の体を真っ二つにする。
真っ赤な血飛沫が、カンナの顔にかかる。
「下がってろカンナ」
「兄さん、下がれと言われて、どこに下がればいいんだ?」
サツキに言われて気がついた。
「クソっ、奴ら......」
奴らは、軍隊を丸ごと囲んでいた。
「逃げ場なし。見事なまでに奴らの作戦勝ちですな」
悔しいが、本当にその通りだ。
襲いかかってきた当初の、姿が見えない、という特性は血飛沫によってある程度見えるようになった。ただ、それでも一切血の付いていない奴らはたくさんいる。そのせいで、1人、また1人と、数を減らされてきている。
「撤退しようにも出来んとは......」
万事休す。この状況を把握するまでに時間をかけすぎた。
いや、だとしたら、なぜ黒月はあまり死者が出ていないのだ。いくら勘のいい軍隊と言えど、姿が見えないのだから初撃でかなり数を減らされるはず。
考えすぎか。暗殺隊なら敵の存在を感じ取るのは容易だ。悔しいほどに。
「兄さん。あまり、考え事はしないでくれ。敵の狙いが分からない以上、兄さんを失うわけにはいかないんだ」
「すまん。少し、考えすぎてしまっていた」
戦いに集中しなくては。
四方八方から飛びかかってくる化け物。手当り次第に雷の刃を当てる。
それでも、手が回らないところが出てくる。
「まずい、ジリ貧だ......」
「兄さん!」
気を抜いた俺に、サツキがいつもに増して慌てた声で槍を突き刺してくる。
「なっ......」
気づいた時には遅かった。
俺に襲いかかってきた化け物が、俺の顔面にまで迫る。サツキの槍も、俺の刀も間に合いそうにない。
「えいっ!」
間に合わないと思っていた化け物の体が、突如真っ二つに割れ、その血を俺の顔に浴びせる。
「デルシア......!?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
月が、赤く染まった大きな橋を照らしている。
橋の中央辺りは、あまり色が変わっていないが、両端の部分は暗い赤色で染まり尽くしている。
目の前に見える光景は、白陽の兵が1人、また1人と数を減らしている様。
(お願い......兄さん......)
全速力で駆け抜ける。
敵は万を余裕で超えている。白陽の軍隊は見事なまでに囲まれている。逃げ場はないし、外から近づくこともできない。
ならば......
「えいっ!」
空高くに飛び、兄さん達がいる場所へと真っ直ぐに落ちる。その際、兄さんに迫っていた化け物を1匹斬り倒した。
「デルシア......!?」
「大丈夫ですか!兄さん!」
「......だ、大丈夫だ!」
兄さんはすぐに理解したようだ。
『今はデルシアの言うことを聞いた方がいい』。少なくとも、それに近い何かは感じてくれたはずだ。
「兄さん、説明は後でします。今は」
「この状況を打破する。だろ?デルシア」
「......はい!」
互いに背を合わせての戦いが始まった。
姿が見えず、どうにかして存在を察知するしかない敵。暗殺隊と違って、こちらの兵はその存在に気づきにくいようだ。
「兄さん!一方向だけを攻撃し続けてください。ここは撤退した方がいいです!」
「分かった。だが、側面の敵はどうするんだ。逃げてる間にも奴らはやってくる」
それは、私がどうにかする。敵の存在は簡単に感じ取れるようになっている。みんなを逃がしている間、他の奴らの相手は十分できる。
「姉さん。なんでも1人でやろうとしないでくれ。私は姉さんを信じている。だから、姉さんも私を信じてくれ」
隣に立つサツキが頼もしい表情でそう言ってくる。
「死ぬかもしれませんよ」
「元より承知の上だ!行くぞ!」
サツキの突き出した槍が、橋とは反対の方向にいる敵を一掃する。
「まだまだ!」
なんとなくでしかないが、逃げ道の確保はできた。あとは、なんとかして追手を逃れるだけ。
「全員撤退!殿は俺達が務める!」
「し、しかしシンゲン様。そ、それではシンゲン様の身ががががが......」
「心配するなカンナ。俺には、頼れる妹が2人いるからな」
それでも心配そうな顔をしていたカンナだが、クウガに背を押されて撤退する兵達の後を追った。
「女に頼るとか、男として恥ずかしくないのか兄さん」
「信頼している、と受け取ってくれ」
「......了解だ」
サツキがやれやれと見せつつも、ほんの少しの笑みを浮かべていた。
「貴様らの相手はこの俺達だ!誰一人としてこの先へは進ません!」
兄さんの雷の刃が、化け物達を取り囲むように雷の牢を作っていく。
「デルシア、奴らは何体いる?」
「向こう側に2万、こちら側には、恐らく1万くらい......」
「1万か......」
「厳しいか?」
「......俺を誰だと思っている。余裕だ」
そう言うと、兄さんは刃を天高くに上げる。すると、雷の牢の中に最早雨とも言えるほどの雷が降り注ぎ、敵を丸焼きにしていく。
今ので、軽く2000程は死んだだろうか?
「この際だからハッキリさせておく。デルシア、お前は俺達の味方か?」
「味方です。でも、戦争を続けると言うのなら、敵になるかもしれません」
「そうか。考えておく」
シンゲン兄さんとは、関わった時間が少なかった故に話が通じないと思っていたが、どうやらそれはただの思い過ごしだったらしい。
話せば分かることもある。アルフレア兄さんはそうじゃなかったが......。いや、あれは兄さんの頭が硬すぎたからかな?
敵は、あの雷の攻撃を見たあとも怯まずにやってくる。その様は、まるで暗殺隊を彷彿とさせるが腕はあちらの方が遥かに上。本能のままに殺すのと、命令によって的確に殺すのとではかなり違う。だからこそ、奴らの動きは単調であり、難しい。
「オラオラオラァ!」
橋の方から大声を上げて化け物を斬り殺していく音が聞こえる。
「デルシア!助けに来たぞ!」
あれは......ネイ!?いや、ジーク!?なのか?
1人の少女の姿が分かっているのに、なぜここまで誰なのかを悩む必要があるのだろうか。
「あの、背中の火傷は......」
「あぁん?これか?こんくれぇ大丈夫だ。ちょっとヒリヒリするけど、なんの問題もねえ」
ジークに問題がなくても、ネイの方に問題がある気がするのだが。
「デルシア、一応聞いとくが、この子は味方ってことでいいのか?」
当たり前の話だが、突然のネイの登場にシンゲンが驚きを隠さずに問いかけてくる。
「大丈夫です。味方っちゃ味方ですから」
「なんだその微妙な言い方は。おれはみ・か・た・だ!」
うるさい......。そんな耳元で言わなくても......、ネイだったらすぐに味方と言えただろうが、ジークは少し微妙な気がする。
「これ以上は聞かん方がいいんだな。なら、さっさとここをどうにかするぞ!」
全員の目が、化け物達がいる方へと集中する。敵は、未だに兄さんの出した雷の牢によってこちらに攻めてこれない。
「全員逃してはダメなんだよな?姉さん」
「そうです。奴らの生き残りが、いつどこで暴れるか分かったもんじゃないので」
「そう言うことだ。つーわけで、えーっと、滅び......いや違う、煌めき......これも違、ああ、流星剣!」
技名くらい考えとこうよ......。そんな締まらない感じで強そうな一撃を出さないでほしい。
「うーん......、イマイチピンとくるのが思いつかねえなぁ......」
技名に悩むジークは置いといて、私は私でこの問題を解決しなくては。
《ピュー!》
突然、サツキが口笛を吹く。
「空から攻撃した方が早い」
大きな天馬がやって来た。
「技名に悩んでいるようなら、いい感じのものを見せてやろう。ホーリースピア!」
天高くに飛んだサツキの槍が、無限に分身し、化け物達の頭上へと降りかかる。
「おぉ、かっけぇ!」
そんな男の子みたいに目をキラキラしないで。ジークはもうちょっとおっさんみたいな雰囲気を......いや、その体でやるのはやめてほしい。そう考えると、別に今のままでもいいやと思った。
「俺も負けてられんな。雷雨・閃光の刃」
兄さんがさっき見せた技をもう一度放つ。
サツキと兄さんのでかなりの数を減らすことができた。もうそんなに数もいない。あとは、己の感覚を頼りに残党を狩るだけ。
「逃がしません!」
横を突っ切ろうとした化け物を斬り殺す。赤い鮮血が辺りに散る。
「儚き?いや違ぇ、じゃあ、死滅?なんか違う。あぁ、流星剣!」
もう流星剣だけでいいんじゃないか?変な肩書きは付けなくていいだろ。
そう思ったのだが、きっと、ジークは『流星剣』だけでは気に入らないから何かを付け足そうとしているのだろう。技名ってそんなに大事なの?
「ふぅ......」
これで全部だ。他に気配は感じない。
全部片付いた時には、両腕が真っ赤に染っていた。あまり、血は好きではないが、全身が染まっているわけではないのでまだ良しとしよう。
「......デルシア。ありがとうな。お前のお陰で生き延びれた」
「いえ、私は兄さんと話をしたくて......」
「分かっている。その件に関しては、向こうとなんとかして進めよう」
兄さん達を助け出せれて、おまけに説得もできた。一石二鳥だ。
「お前はこの先どうするんだ。向こうに仲間達がいるんだったよな?」
「はい。だから、早く無事を確認しにーー」
「デルシア避けろ!」
ジークが物凄い勢いで迫ってくる。
避けろ。敵がまだいるということなのか?でも、気配はどこにも感じない。どこに避けーー
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「デルシア避けろ!」
少女がデルシアに向かって物凄い勢いで迫る。
避けるも何も、どこにも敵の存在は感じない。しかし、あの少女の顔はイタズラでもなんでもない。本物だ。
「あぅっ......」
少女の嫌な予感は当たった。
デルシアの背から大量の血が吹き出る。
「......デルシア!」
「姉さん!」
本当に一瞬の間にデルシアがやられた。息はしてあるが、このままでは危ないのは一目瞭然だ。
「おい!敵は!」
「チッ、どっかに逃げやがった......」
これも嘘ではない。敵は、本当に一瞬の間にデルシアへ迫り、そして致命傷になるような一撃を与えて去って行った。
「おい、お前。回復魔法は使えるか」
「悪ぃが、俺は武力専門だ。もしかしたら、こいつが使えるかもしれねえが今は無理だ」
よく分からないことを言ったが、とりあえず今は無理らしい。
馬車は全部引き上げてしまったし、一体どうすれば......。
「ああああああ、あの、私が手当します」
茂みからカンナとクウガが現れた。
「お前達、なぜ逃げてない!」
「すみません。シンゲン様。責任は私がとります」
「いや、今はどうでもいい。むしろ、居てくれて助かる」
カンナが両の手から治癒術をかける。
ひとまずはこれで大丈夫だろうが、今すぐにでもしっかりとした手当をしなければならない。
「白陽に連れ帰らねば......」
デルシアの仲間にどうやって伝えるべきか......。
「おいお前。デルシアをこっちで預かることを、向こうに伝えてきてくれないか?」
「無理......だ......」
少女までもがその場に倒れ伏した。
「どうやら、この体、そろそろ、充電、切れ、だ......」
そのまま目を閉じて寝てしまった。
「......仕方ない。不安にさせてしまうが、今はこうするしかない」
「置き手紙でも置いとくか?」
「一応そうしといてくれ。無駄だろうが」
聞きたいことが山ほどあったと言うのに、厄介なことが舞い込んできた。早くに目を覚ましてくれると良いのだが......。
「分からない。だが、黒月の兵器ではなさそうだ」
「チッ......、あいつらなら、これくらい用意できるとは思うがな!」
橋の麓で幾重もの血が重なる。
敵味方関係なく血を撒き散らし、あたりを真っ赤に染めあげていく。
「サツキ、離れるなよ。奴らがどこから来るか分からんからな」
「分かっている。セイヤッ!」
サツキの槍が化け物共の体を串刺しにした。
「カンナ!状況は!」
「は、はい......、ええええええっと、死者2000人超え。負傷者もかなり多く、とても治療が追いつきません」
カンナの慌てぶりはいつもの事だが、いつもに増して慌てている。
「状況は非常にまずい傾向にあります。このままでは、軍隊が壊滅してしまうでしょう」
1人冷静なクウガがそう言う。
言われなくても分かってはいる。分かっていても、この状況を打破することが出来ない。
「暗殺隊の方にも、同じような騒ぎが起こっています。ただ、向こうは犠牲者が少ないようです」
「当たり前だ。向こうは暗殺隊とかいう化け物組織なんだ。悔しいが、実力は遥かに上なんだ」
こんなことなら、白陽にもそれなりの専用組織を作っておけばよかった。
いくら数が多くても、個々の実力は暗殺隊に比べ物にならないほど劣る。
「カンナ危ない!」
慌てふためくカンナに、血飛沫を浴びて真っ赤に染まった化け物が襲いかかってきた。
「いやっ......」
「セヤァッ!」
空間を切り裂き、そこから派生した雷の刃が化け物の体を真っ二つにする。
真っ赤な血飛沫が、カンナの顔にかかる。
「下がってろカンナ」
「兄さん、下がれと言われて、どこに下がればいいんだ?」
サツキに言われて気がついた。
「クソっ、奴ら......」
奴らは、軍隊を丸ごと囲んでいた。
「逃げ場なし。見事なまでに奴らの作戦勝ちですな」
悔しいが、本当にその通りだ。
襲いかかってきた当初の、姿が見えない、という特性は血飛沫によってある程度見えるようになった。ただ、それでも一切血の付いていない奴らはたくさんいる。そのせいで、1人、また1人と、数を減らされてきている。
「撤退しようにも出来んとは......」
万事休す。この状況を把握するまでに時間をかけすぎた。
いや、だとしたら、なぜ黒月はあまり死者が出ていないのだ。いくら勘のいい軍隊と言えど、姿が見えないのだから初撃でかなり数を減らされるはず。
考えすぎか。暗殺隊なら敵の存在を感じ取るのは容易だ。悔しいほどに。
「兄さん。あまり、考え事はしないでくれ。敵の狙いが分からない以上、兄さんを失うわけにはいかないんだ」
「すまん。少し、考えすぎてしまっていた」
戦いに集中しなくては。
四方八方から飛びかかってくる化け物。手当り次第に雷の刃を当てる。
それでも、手が回らないところが出てくる。
「まずい、ジリ貧だ......」
「兄さん!」
気を抜いた俺に、サツキがいつもに増して慌てた声で槍を突き刺してくる。
「なっ......」
気づいた時には遅かった。
俺に襲いかかってきた化け物が、俺の顔面にまで迫る。サツキの槍も、俺の刀も間に合いそうにない。
「えいっ!」
間に合わないと思っていた化け物の体が、突如真っ二つに割れ、その血を俺の顔に浴びせる。
「デルシア......!?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
月が、赤く染まった大きな橋を照らしている。
橋の中央辺りは、あまり色が変わっていないが、両端の部分は暗い赤色で染まり尽くしている。
目の前に見える光景は、白陽の兵が1人、また1人と数を減らしている様。
(お願い......兄さん......)
全速力で駆け抜ける。
敵は万を余裕で超えている。白陽の軍隊は見事なまでに囲まれている。逃げ場はないし、外から近づくこともできない。
ならば......
「えいっ!」
空高くに飛び、兄さん達がいる場所へと真っ直ぐに落ちる。その際、兄さんに迫っていた化け物を1匹斬り倒した。
「デルシア......!?」
「大丈夫ですか!兄さん!」
「......だ、大丈夫だ!」
兄さんはすぐに理解したようだ。
『今はデルシアの言うことを聞いた方がいい』。少なくとも、それに近い何かは感じてくれたはずだ。
「兄さん、説明は後でします。今は」
「この状況を打破する。だろ?デルシア」
「......はい!」
互いに背を合わせての戦いが始まった。
姿が見えず、どうにかして存在を察知するしかない敵。暗殺隊と違って、こちらの兵はその存在に気づきにくいようだ。
「兄さん!一方向だけを攻撃し続けてください。ここは撤退した方がいいです!」
「分かった。だが、側面の敵はどうするんだ。逃げてる間にも奴らはやってくる」
それは、私がどうにかする。敵の存在は簡単に感じ取れるようになっている。みんなを逃がしている間、他の奴らの相手は十分できる。
「姉さん。なんでも1人でやろうとしないでくれ。私は姉さんを信じている。だから、姉さんも私を信じてくれ」
隣に立つサツキが頼もしい表情でそう言ってくる。
「死ぬかもしれませんよ」
「元より承知の上だ!行くぞ!」
サツキの突き出した槍が、橋とは反対の方向にいる敵を一掃する。
「まだまだ!」
なんとなくでしかないが、逃げ道の確保はできた。あとは、なんとかして追手を逃れるだけ。
「全員撤退!殿は俺達が務める!」
「し、しかしシンゲン様。そ、それではシンゲン様の身ががががが......」
「心配するなカンナ。俺には、頼れる妹が2人いるからな」
それでも心配そうな顔をしていたカンナだが、クウガに背を押されて撤退する兵達の後を追った。
「女に頼るとか、男として恥ずかしくないのか兄さん」
「信頼している、と受け取ってくれ」
「......了解だ」
サツキがやれやれと見せつつも、ほんの少しの笑みを浮かべていた。
「貴様らの相手はこの俺達だ!誰一人としてこの先へは進ません!」
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「デルシア、奴らは何体いる?」
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「1万か......」
「厳しいか?」
「......俺を誰だと思っている。余裕だ」
そう言うと、兄さんは刃を天高くに上げる。すると、雷の牢の中に最早雨とも言えるほどの雷が降り注ぎ、敵を丸焼きにしていく。
今ので、軽く2000程は死んだだろうか?
「この際だからハッキリさせておく。デルシア、お前は俺達の味方か?」
「味方です。でも、戦争を続けると言うのなら、敵になるかもしれません」
「そうか。考えておく」
シンゲン兄さんとは、関わった時間が少なかった故に話が通じないと思っていたが、どうやらそれはただの思い過ごしだったらしい。
話せば分かることもある。アルフレア兄さんはそうじゃなかったが......。いや、あれは兄さんの頭が硬すぎたからかな?
敵は、あの雷の攻撃を見たあとも怯まずにやってくる。その様は、まるで暗殺隊を彷彿とさせるが腕はあちらの方が遥かに上。本能のままに殺すのと、命令によって的確に殺すのとではかなり違う。だからこそ、奴らの動きは単調であり、難しい。
「オラオラオラァ!」
橋の方から大声を上げて化け物を斬り殺していく音が聞こえる。
「デルシア!助けに来たぞ!」
あれは......ネイ!?いや、ジーク!?なのか?
1人の少女の姿が分かっているのに、なぜここまで誰なのかを悩む必要があるのだろうか。
「あの、背中の火傷は......」
「あぁん?これか?こんくれぇ大丈夫だ。ちょっとヒリヒリするけど、なんの問題もねえ」
ジークに問題がなくても、ネイの方に問題がある気がするのだが。
「デルシア、一応聞いとくが、この子は味方ってことでいいのか?」
当たり前の話だが、突然のネイの登場にシンゲンが驚きを隠さずに問いかけてくる。
「大丈夫です。味方っちゃ味方ですから」
「なんだその微妙な言い方は。おれはみ・か・た・だ!」
うるさい......。そんな耳元で言わなくても......、ネイだったらすぐに味方と言えただろうが、ジークは少し微妙な気がする。
「これ以上は聞かん方がいいんだな。なら、さっさとここをどうにかするぞ!」
全員の目が、化け物達がいる方へと集中する。敵は、未だに兄さんの出した雷の牢によってこちらに攻めてこれない。
「全員逃してはダメなんだよな?姉さん」
「そうです。奴らの生き残りが、いつどこで暴れるか分かったもんじゃないので」
「そう言うことだ。つーわけで、えーっと、滅び......いや違う、煌めき......これも違、ああ、流星剣!」
技名くらい考えとこうよ......。そんな締まらない感じで強そうな一撃を出さないでほしい。
「うーん......、イマイチピンとくるのが思いつかねえなぁ......」
技名に悩むジークは置いといて、私は私でこの問題を解決しなくては。
《ピュー!》
突然、サツキが口笛を吹く。
「空から攻撃した方が早い」
大きな天馬がやって来た。
「技名に悩んでいるようなら、いい感じのものを見せてやろう。ホーリースピア!」
天高くに飛んだサツキの槍が、無限に分身し、化け物達の頭上へと降りかかる。
「おぉ、かっけぇ!」
そんな男の子みたいに目をキラキラしないで。ジークはもうちょっとおっさんみたいな雰囲気を......いや、その体でやるのはやめてほしい。そう考えると、別に今のままでもいいやと思った。
「俺も負けてられんな。雷雨・閃光の刃」
兄さんがさっき見せた技をもう一度放つ。
サツキと兄さんのでかなりの数を減らすことができた。もうそんなに数もいない。あとは、己の感覚を頼りに残党を狩るだけ。
「逃がしません!」
横を突っ切ろうとした化け物を斬り殺す。赤い鮮血が辺りに散る。
「儚き?いや違ぇ、じゃあ、死滅?なんか違う。あぁ、流星剣!」
もう流星剣だけでいいんじゃないか?変な肩書きは付けなくていいだろ。
そう思ったのだが、きっと、ジークは『流星剣』だけでは気に入らないから何かを付け足そうとしているのだろう。技名ってそんなに大事なの?
「ふぅ......」
これで全部だ。他に気配は感じない。
全部片付いた時には、両腕が真っ赤に染っていた。あまり、血は好きではないが、全身が染まっているわけではないのでまだ良しとしよう。
「......デルシア。ありがとうな。お前のお陰で生き延びれた」
「いえ、私は兄さんと話をしたくて......」
「分かっている。その件に関しては、向こうとなんとかして進めよう」
兄さん達を助け出せれて、おまけに説得もできた。一石二鳥だ。
「お前はこの先どうするんだ。向こうに仲間達がいるんだったよな?」
「はい。だから、早く無事を確認しにーー」
「デルシア避けろ!」
ジークが物凄い勢いで迫ってくる。
避けろ。敵がまだいるということなのか?でも、気配はどこにも感じない。どこに避けーー
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「デルシア避けろ!」
少女がデルシアに向かって物凄い勢いで迫る。
避けるも何も、どこにも敵の存在は感じない。しかし、あの少女の顔はイタズラでもなんでもない。本物だ。
「あぅっ......」
少女の嫌な予感は当たった。
デルシアの背から大量の血が吹き出る。
「......デルシア!」
「姉さん!」
本当に一瞬の間にデルシアがやられた。息はしてあるが、このままでは危ないのは一目瞭然だ。
「おい!敵は!」
「チッ、どっかに逃げやがった......」
これも嘘ではない。敵は、本当に一瞬の間にデルシアへ迫り、そして致命傷になるような一撃を与えて去って行った。
「おい、お前。回復魔法は使えるか」
「悪ぃが、俺は武力専門だ。もしかしたら、こいつが使えるかもしれねえが今は無理だ」
よく分からないことを言ったが、とりあえず今は無理らしい。
馬車は全部引き上げてしまったし、一体どうすれば......。
「ああああああ、あの、私が手当します」
茂みからカンナとクウガが現れた。
「お前達、なぜ逃げてない!」
「すみません。シンゲン様。責任は私がとります」
「いや、今はどうでもいい。むしろ、居てくれて助かる」
カンナが両の手から治癒術をかける。
ひとまずはこれで大丈夫だろうが、今すぐにでもしっかりとした手当をしなければならない。
「白陽に連れ帰らねば......」
デルシアの仲間にどうやって伝えるべきか......。
「おいお前。デルシアをこっちで預かることを、向こうに伝えてきてくれないか?」
「無理......だ......」
少女までもがその場に倒れ伏した。
「どうやら、この体、そろそろ、充電、切れ、だ......」
そのまま目を閉じて寝てしまった。
「......仕方ない。不安にさせてしまうが、今はこうするしかない」
「置き手紙でも置いとくか?」
「一応そうしといてくれ。無駄だろうが」
聞きたいことが山ほどあったと言うのに、厄介なことが舞い込んできた。早くに目を覚ましてくれると良いのだが......。
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加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
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王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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