グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第5章 【黒の心】

第5章18 【瞳は未来を映す】

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 2週間ちょっとの旅を終え、ギルドに帰ってきた。

 そんな私達を迎え入れたのは、ユミだった。

 そのうち、やって来るとは思っていたが、まさか帰ってきた日にぴったしで居るとは思わなかった。

「お帰りなさいませ......」

「あ、う、うん......」

「依頼した物が手に入ったと聞いたので、今日、ここにやって来ました」

 あれ?速達も何も出してないのに、なんで分かったのだろう?

「えぇ。手に入りましたよ。未来視のネックレスが」

「......」

「聞きたいことがたくさんあります。とりあえず、座りましょうか?」

 連絡したのって、もしかしてネイりんなんじゃ......。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「先に聞きます。なんで、未来視のネックレスだって分かったんですか」

 私が聞くより先にユミがそう言ってくる。

「私が世界最高峰の魔導師だから。そう言えば満足ですか?」

「......分かりました」

「それでは、3つほど聞きます。まず、このネックレスはどこで手に入れた物ですか」

「それは、お祖母様が持っていた物です。お祖母様が死んだ時に、形見として受け取りました」

 嘘はついていないようだ。

「......では、そのお祖母様は何者ですか?」

 私の予想が正しければ、ユミのお祖母様はきっと......。

「ユナ・バーリエル。住んでいた故郷では最強の魔導師でした」

 なるほど。

「その人、年相応の格好ではなかったんじゃないですか?」

「......はい。いつまで経っても若いままの姿で、死ぬ時でさえ美しい姿でした」

「おい、ネイ。それがどうしたんだよ」

「ユミのお祖母様は、間違いなければ魔女です。傲慢の魔女、ユナ・バーリエル。未来視できる魔導師として、800年前はかなり有名でしたよ。みな、彼女に占ってもらってたくらいでしたから」

「そ、そうなのか......」

「えぇ。ただ、そんな彼女でも私の未来は見えなかったようですけどね」

 彼女が私の未来を見ることが出来ていたのなら、恐らくはあのような悲劇を未然に防げていただろう。未来を見るということは、全ての事象を操るに等しい。

 このネックレスは、彼女の御守りみたいな物だった。死ぬ時に、自分の力の一部をこのネックレスに入れ込んだのだろう。

「最後に、ユミさん。あなたは何者ですか?」

「......」

「嘘は通用しませんよ。正直に答えてください」

「......解放軍の元メンバー。ユミ・バーリエルです」

「「「 解放軍!? 」」」

 このギルドの人達にとって、解放軍は聞いたことがあるはずの名前。ヴァルが最大の後悔を置いてあるヒカリが所属していた場所。

 そして、私の力を許可なく利用していた組織。

「昔、解放軍の侵略作戦としてこの世界にやって来ました。戦いの結果は、皆さん知っての通り、我々の負けです。私は、元の世界には帰らずにこの世界に残りました。この世界にいるという、私のお祖母様を探すために」

「ちょ、ちょっと待って!どうして、自分のおばあちゃんが別の世界にいることになってるの?」

「セリカさん。800年前のグラン大戦が始まるより前、この世界は他の世界と自由に行き来が出来たんです。ユナはこちらの世界に残り、その子孫の一部がアルテミスやヒカリのいた世界に渡ったのでしょう」

「そ、そうなの?」

 グラン大戦は、思い出したくもない出来事だが、それより以前に自由に行き来出来たのは事実だ。そして、行き来が出来なくなったのは、暴走した私が張った結界のせい。

「それで、目的のお祖母様を見つけることが出来たあなたは、どうしたの?」

「普通に生活してました。お祖母様とひとつ屋根の下で。お祖母様は、とても人が良くて、知らないはずの私を暖かく迎え入れてくれました」

「......」

「あの、これでもう良いでしょうか?そろそろネックレスを渡して頂きたいのですが」

「......そうですね」

 ユミが持ってきた金貨袋と引き換えに、ネックレスを渡す。

「もう1つ。あなた、ツクヨミという名をご存知ですか?」

 それを聞いた途端、ユミが氷でできたクナイを放ってきた。

「知ってるんですね」

 片手で捕らえ、粉々に砕く。

「ユミさん。あなたが何者なのかを聞くのは、また今度の機会にしましょう」

「......次が、ありますかね」

「次はやって来ますよ。あなたが、ユナの孫である限り......」

 そう言うと、ユミは大人しく帰って行った。

「......なあ、あいつは何なんだ?知ってることがあるなら、全部話せ」

「彼女の名はユミ・バーリエル。先程も話したように、傲慢の魔女、ユナの孫。孫というよりも、来孫と言った方が良いでしょう」

「魔女が今更どうとか聞かねえが、あいつもフウロみたいな感じでいいのか?」

「ええ。と言っても、彼女はフウロと違って、魔女の力の一部を引き継いでいます。それが、あの未来視の力ですね。使える範囲は決まっているっぽいですけど」

 魔法の威力だって、気づかれないように作ったにしてはかなりの威力だった。私でなければ腕一本取られていたであろう。

「なんでもいいが、知ってることをみんなにも話せ」

「話したら、あなた達は彼女を放っておけなくなるのでダメです」

「はあ?どういう事だそれ」

「言えません。彼女の事は、私に任せていてください。同じ、魔女として、私は彼女を止めなければなりません」

「......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ネイりんって本当に隠し事が多いよねぇ」

「本当だァ。ちったァ信用してくれてもいいのによォ」

 ネイがギルドを出てから数時間。完全にネイに対する愚痴会が始まってしまった。

「ヴェルドが信用されてないのは良しとして、ヴァルにすら話さないってねぇ」

「おい、それはどういう事だ」

「お前の第一印象が最悪だったということだ。全く、出会って数時間の女の子を殴るとは何者だ」

「うるせぇな。仕方ねえだろ龍人に対しては恨み辛みがあんだからよ」

「心のちっせえ男だな。あんな雑魚相手に怒ってんじゃねえよ」

「お前には別の意味で腹が立ってくるんだが」

 ミイの口の悪さを気にしても仕方ないと思う。これはこれとして切り替えないと。

「ところで、あのネックレスって何だったの?未来視がどうこう言ってたけど」

「ネイ曰く、未来視の力を封じ込めた物らしい。あれを取りに行った時は死ぬかと思ったぜ」

「なんで?」

「なんか知らねえけど、変な女に2人して命を狙われたからな」

「「 ......ちょっと待て。それって、盗品蔵での話か? 」」

「......ああ、そうだが。それがどうかしたか?」

「くっそ、あそこに物が無かったのはそういう事だったのか」

「とんだ無駄足を運んだな......」

 もしかして、フウロとミイが戦ってた女って......。

「俺らが戦ってた女って、お前とネイがあーだこーだしてた相手なのかよ......」

 敵を倒せず、物も先に手に入れられてた。無力感は否めない。

「夜中に出歩いてるから、そんな無駄足を運ぶんだぞ」

「無駄足にした原因お前らだけどな」

「ネイに言え。俺はいつの間にか連れて行かれただけだ」

 なんか、この旅行はずっとネイの手の平の上で踊らされていた気がする。そう気づくと、一気にネイが怖くなってきた。

 あのネックレスのことを知っているし、相手の素性だって全部知ってるし、申し訳程度の弱点属性乗り物酔いだし、冷静に考えたら、ネイって絶対に敵には回したくない存在だった。

 邪龍教との戦いだってそう。ヴァルが頑張ってネイを連れ出せなければどうなっていたことか。

 本当に、龍人でさえなければ英雄として称えられていただろう。ちなみに、龍人が差別視される原因を作ったのは、ヴァル曰くネイだそうだ。意味が分からない。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 やっと手に入った。

 これで、これで、奴らに......。

「どこに行こうと言うんですか?」

 ......。

「なんで、ここが分かったの」

「私を侮らない方が良いですよ。なんせ、私は怠惰の魔女、ツクヨミだから」

「......」

 なんで、邪龍がこの世界にいるのだ。いや、なんで自由に歩き回っているのだ。

「そのネックレス。本当にあいつらに渡すつもりなんですか?」

「......知ってるの?」

「調べれば1発です。あなたが、鬼族でユナの来孫であることは事実ですが、そのネックレスの本来の力は扱えないようですね」

「......」

「別に、私は止めませんよ。それで、あなたが幸せになるって言うのなら。ですが、行くというのなら私もついて行きます」

「......なんで。あなたには関係ないはずなのに」

「ユナの来孫として、気になるからです」

 よく分からない人だ。お祖母様の話では、ツクヨミはかなりの怠け者で、何を考えてるのかよく分からない恐ろしい人だと聞いたのに。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......ここです」

 ユミに連れて来られた場所は、よく分からない地下施設。

「何する場所ですか......?」

「ここまでついて来たのに、それを聞くんですか......」

 なぜかユミを呆れさせてしまった。

「薄暗い不気味な施設ですね......。聖魔の神殿みたい......」

 あれはあれで良い思い出だった。あの頃の私は、本当の意味で何も知らないし、戻れるならあの頃に戻りたい。

「あまり止まらないでください」

「あ、すみません。ちょっと色々と気になるので」

「そういうのは後いいでしょう。私は急いでるんです」

「急いでも人生いい事はありませんよ」

「そりゃあ、800年も生きてる人からしたらそうでしょうね」

「14年ですよ」

「......」

 あれ?なんかおかしなこと言ったかな?一応、記憶量的には6兆年生きてるけど、この体は14年の物だし。何もおかしくないよね?

「本当に魔女って人は不思議な人だらけです」

「出会ったことがあるのは、私とユナだけでしょう?」

「お祖母様から他の魔女の話も聞いたことがあります。全部、この世の生物とは思えない人達だってね」

 人ならざる者っていう自覚ならあるが、改めて人に言われると中々にショックだ。

「......この先に、約束していた人がいます」

「引き返すなら今、とでも言いたいんですか?なら残念。RPGだとここでは引き返せないんですよ」

「......ユミ。ただ今戻りました」

 目の前の大部屋にそこそこ大きい男が現れる。不細工な顔立ちしてるな、と第一印象でそう思った。

「誰だ、その女は?」

「このネックレスを取り戻すのに、協力してくれた人です」

「......ふん。まあ良い。物は手に入ったんだろうな?」

「ここに」

 ユミが大男にネックレスを渡す。

「確かに、これは本物だな」

「では......」

「お前ら、そこの2人を捕らえておけ」

「え?」

 周りにあの男と同じくらいの大きさの男がたくさん現れる。どこに隠れてたんだろうか?どこにも隠れられる場所はなかったし、さっきから見えていた壁にも潜伏してる様子はなかったし。

「ど、どういう事ですか!」

「まさか、本気で生き返らせれるとでも思ったのか?」

 誰か、大切な人を蘇らせようとしてたのか。気持ちは分かるが、1度死んでしまった人は絶対に蘇らない。

「おい、抵抗はするなよ」

「......仕方ない」

 ここは大人しく捕まっておこう。捕まったとしても、いつでも脱出はできる。

 ユミと話す機会を得なければならない。

 何が目的だったのか、こいつらは何者なのか。調べればすぐに分かるが、ユミの口から聞きたい気持ちもある。

「おのれぇ!」

「貴様の技など効かん。大人しく縛られておけ」

「くっ......ヨミさん!」

「残念じゃが、こんな大男相手じゃと、妾も力負けしてしまうのじゃよ」

 もちろん嘘である。力負けはするが、魔法でどうとでも出来る。

「やけに素直な女だな」

「抵抗しても無駄じゃろ?」

「ふんっ、生意気なガキが」
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