グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第6章 【龍の涙】

第6章9 【王国と魔女】

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「騎士長への連絡は済ませたか!」

「この先にある例の場所で、姫様と一緒に待たれているそうだ」

「そうか。それにしても、楽な仕事だったな!まさか、あんなに都合良く現れてくれるとは」

「油断はするなよ。ないとは思うがーー」

「こうやってグランメモリーズのメンバーがやって来てるかもしれねえよ!オラァッ!」

「グハッ......」

「ぶ、部隊長!」

「テメェら。大人しく俺の大事な嬢様返せやゴルァ」

「ひっ、グランメモリーズだぁ!」

 ヴァルの速攻攻撃によって、敵の動きが乱れる。

「アイスグラウンド!」

 そこに、容赦ないヴェルドの追撃。

「フェイト・アロウズ」
「メガ・ライト・フローズン」

 更に、アルテミスとエレノアの追撃もあって敵は壊滅。仕事の速さはどこにも負けない自信があるギルドとは、ここの事だ。

「おい、お前らが連れ去った女はどこにやった」

 ヴァルが、あそこまで覇気迫った顔をするのは初めて見た。

 遅くなったが、事のあらましはこうである。

 たまたま会場の周辺を散歩していた私が、偶然にも倒れていたヴァルを発見。事情を聞くと、ネイが騎士団に連れ去られたと言う。

 すぐにでも助けに向かうため、1番近いBチームの観戦席に向かい、ヴェルド、アルテミス、エレノアの3人を連れ出して、ヴァルの嗅覚を頼りにここまで来たというわけだ。この時ほどヴァルが犬だと思ってみたことは無い。

「早く答えねえと消し炭にするぞ、あァ?」

「お、奥に逃げた......騎士が......」

「嘘だったら明日はないと思えよ」

「ほ、本当です!連れ去った1人が、向こうに逃げたのを見てます!」

 ヴァルのやり方云々には目を瞑って、ネイりんがいるのは奥の部屋のようだ。うーん、この広い会場に、こんな薄汚いところがあるとは......

「何事だお前ら!」

 私達が行くよりも先に、奥の部屋から人影が現れた。

「テメェが騎士長か......。連れ去ったネイを返せ!」

「待て!落ち着け!」

「落ち着いてられるか!地獄龍の蹴撃!」

「アイスブレス!」

「か、かくなる上は......」

「おせえんだよ!そんなんで俺達を止められると思ったか!」

「ふぐっ」

 ヴァルが攻撃しつつ、その足を騎士長の首に絡めていく。

「さあ言え。ネイをどこに連れ去った!」

「う......うぐ......」

「ヴァル、それじゃ話せられないよ」

「ああ?んじゃ、ちょっとだけ緩めてやるか」

「はぁっ......お前ら、何者だ!」

「見て分からねえか。グランメモリーズだ」

「さっさとお前らが連れ去ったネイを返すんだな。そしたら、俺達はそれ以上をしねえよ」

「お願いです。ネイを返して!」

「お、お前ら......これが大会の運営に知れたらどうなるかふぐっ」

「知らねえよ。お前らこそ、国家の権力振りかざして楽しいのかよ」

「もう良いのですシドウ。ヴァル、その男を解放してください」

「あぁ?ネイを返してもらってもねえのに、大人しく離せだゴルァ?」

「彼女ならここにいます」

「......!ネイ!」

 突如現れた女の人が抱えていたネイを、ヴァルが受け止める。

「汚ねえぞ!対龍人用の麻酔弾なんかを使いやがって!」

「もうそこまで知っているのですか」

 あの顔。見たことがある......

「ゼイラ王女......」

「王女だと!?」

「まさか、国家絡みの陰謀だというんですか!?」

 ヴェルドとアルテミスが驚いた顔をしているが、王女に国家を操るほどの権力はなかったはず。精々、騎士団を操作するだけだ。この状況なら、騎士団だけで十分か。

「王女だがなんだか知らねえが、なんでこんなことしたんだ!」

「......彼女が、魔女だからです」

「......!」

「大変お騒がせしました。失礼致します」

「ひ、姫!」

 最後に、騎士長の人が礼をして去っていった。

「あいつら、何がしたかったんだ」

「そんな事よりも、ネイさんをグランメモリーズの控え室に運びましょう!確か、あそこは医務室にもなっていたはずです」

「エレノアの言う通り。今は気にしてる場合じゃないよ」

「分かってるって。ただ、対龍人用の麻酔弾をどうにかする方法ってあるのか?」

「......一応、麻酔なんでしょう?だったら、時間経過でどうにかなるんじゃない」

「よく分からねえが、ネイだったら大丈夫だろ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......よし。これで、一先ずは大丈夫だろう」

ヴァル「ネイ......」

「この子が何者なのかを、今さら聞くつもりは無いが、あの爺さんくらいには何があったのかは話しなさいよ」

 そう言うのは、グランメモリーズの顧問医、テラーチ。普段は、山荘でひっそりと暮らしている彼女だが、今回の大会に合わせて来てもらっていた。

テラーチ「対龍人用の麻酔弾なんて聞いたことないよ。抜くのに時間がかかるのもいと仕方なし」

ヴァル「クソッ......騎士団め......」

テラーチ「本当に、国家絡みでこの子を狙おうとしてんじゃないだろうね?これ以上の面倒事はごめんだよ。ほら、外で爺さんが待ってる。話してきな」

「いや、その必要はない」

セリカ「......マスター」

ヴァハト「済まんが、立ち聞きさせてもらっていた。騎士団の連中も、まさかここまで手出しするとは思わんかったわい」

アルテミス「何か知ってるんですか?」

ヴァハト「......今の国家がどうかは知らん。じゃが、今の姫様と魔女には深い関わりがある」

「「「 関わり? 」」」

ヴァハト「昔、魔女と呼ばれる者の中に、何代か前の王女と関わりのあった者がいた。詳しいことは何1つ分からんが、狙った理由はそこにあるかもしれん」

 また魔女絡み......

テラーチ「......この子の世話は私に任せな。1回戦がもう終わってるはずだ。フウロのところに行ってこい」

ヴァル「......分かった」

ヴァハト「そんな暗い顔をするな!フウロに余計に心配されるぞ!いいか、この事は他のメンバーには内密にしておけ。情報を広げるわけにはいかん」

 確かに、他のメンバーに話せば、そこから広がって他のギルドにまで話が行く可能性がある。

 ネイりんの事は心配だが、ここで暗い顔をしていても、余計仲間に心配をかけるだけだ。それに、ネイりんはこんな事でやられることはない。そう信じている。

ヴァル「......」

ヴァハト「ヴァル、気持ちは分かるが、今は我慢する時じゃ」

ヴァル「ああ。分かったよ」

テラーチ「ネイの事は任せときな。匿っておいてやるよ」

ヴァル「ありがとう......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「第1回戦から大きな盛り上がりを見せるグランアランドラルフぅ!第1回戦の結果はこのようになったぞー!」

 1位:ダークソウル15点
 2位:コールドミラー12点
 2位:グランメモリーズB12点
 4位:マジックアルケミスト8点
 5位:シェミスターライト6点
 6位:ハイドロオーシャンズ4点
 7位:グランメモリーズA2点
 8位:トゥインクルアスタロト1点

「優勝候補のコールドミラーと、5年ぶりの参戦グランメモリーズが同率2位!そして、まさかまさかの初参戦のダークソウルが1位を取ったー!波乱の幕開け!実に面白い始まりになりましたー!」

「いやはや、ダークソウルが1位ですか......意外じゃな」

「無名のギルドが最強のギルド相手に1本取る。この先にも期待が高まりそうですね」

「ええ!ええ!さて、ここで、明日の予定の発表です!ケビンさん。よろしくお願いします」

「はい。明日は、ギルド同士による1対1の真剣勝負となります。各ギルドは、明日までに参加選手を選出し、大会運営チームにまで報告をよろしくお願いします。以上」

「はい。ありがとうございました!以上をもちまして、本日の日程は終了となります。会場に、ゴミなどを残さないよう、ご協力をお願いします!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「やったな!フウロ!2位だぞ2位!」

フウロ「ああ。1位じゃなかったことは悔しいが、ここから追い抜いていけばいいさ」

ヴェルド「すーぐに、次の試合かよ。ちょっとは勝利の余韻にでも浸ってろ」

エレノア「そうですよ。2位でも十分凄いですよ!」

フウロ「......そうだな。今は手放しで喜んでもいいかもしれない。だが、1つ聞きたいことがある」

「「「 聞きたいこと? 」」」

フウロ「ネイはどこに行った。それに、お前ら、やけに明るすぎるぞ?」

 ......明るすぎたのが裏目に出たか。いや、じっちゃんに口止めされている。話すわけには......

フウロ「......ヴァル。何があったか話せ。口外はせん」

ヴァル「なんで俺なんだよ」

フウロ「あいつの事は、大体お前に聞けば分かる」

 いや、勝手に決め付けられても困る。だが、確かにネイの事なら俺がよく分かってる。どう話してやろう。

 俺は助け舟を求めてヴェルドをちらりと見るが、あいつは無視するだけだった。クソが......

フウロ「そうか。マスターから口止めされてるんだな」

ヴァル「......頼む。今は聞かないでくれ」

フウロ「分かった。今は聞かないでおいてやる。ただし、いつかは話してもらうぞ。少なくとも、大会が終わる前までにはな」

 ......まあ、大会が終わる頃なら問題はないか。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「姫!どうして奴らを逃がしたんですか!」

 ドンッとシドウが机を強く叩く。

「逃したわけではありません。事が大きくなるのを恐れただけです」

「......そうですか」

「ツクヨミ様だけに話をすることが出来れば良かったのですが、あの状況ではグランの者にも話をしなければなりません。そうなれば、私達の計画が露見します」

「......仕方なしと」

「ええ。この事は、市民にバレてはいけない。そして、お爺様にも」

「分かりました。引き続き、奴らの監視をしておきます」

「ええ。よろしくお願いします」

 ツクヨミを捕らえた時点で、グランの者に見られていた。これは、大きな失態だ。せめて、1時間後とかにバレるのなら問題はなかった。

 さて、そうなれば、どうやって彼女に話をするべきか。いや、対龍人用の麻酔弾でまだ麻痺している頃か。辛い思いをさせることになってしまった。だが、それでも私はやり遂げなければならない。

「ツクヨミ様......」

 計画に彼女が加われば成功率はグンと上がる。

 いや、今は計画のことを考えるのはやめておこう。誰か、聞いてる人がいるかもしれないし。

「全ては、龍を殺すため......」

 ......

 ......

 ......
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