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第6章 【龍の涙】
第6章12 【都の音】
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「あ、いたいた」
あいつはそんなに遠くには行ってなかった。ちょっと外に出て歩いたくらいの距離。それくらいの場所なのに、もう息切れを起こしてるのか。
「ヴァル......」
「俺は気にしてねえよ。仲間がやられたのは悔しいけど、その分倍返しでやってやりゃぁ良い話だ。そうだろ?」
「......正直、私自身もよく分からないんですよ」
また人付き合いに関してか......
「なんでみんながああまでして怒るのか。私には分からないんです」
「......お前の場合、俺が誰かに殺されたらどう思うか?」
「すぐにぶっ殺しに行って世界を壊します」
やる事が壮大すぎるが、そこには目を瞑ろう。
「お前が考えたような事と同じ事をみんな思ってんだよ」
「なんで、家族でも恩人でもなんでもない人のために、そう思えるんですか」
うわ、めんどくせぇ......。そんなの俺が分かるわけないだろ。
「えーっとだな、まあ、みんなは1人のために、1人はみんなのためにってことだよ」
「上手いこと言ってるつもりでしょうけど、分からないんですね」
「変な勘働かせないでくれる!?」
「まあいいです。頭を冷やすべきなのは私なので」
「つっても、お前どこにも行けねえだろ。その格好じゃ」
なぜか部屋を出る際に"ネイ"の格好へと戻っていた。今は人がいないから良いとは言え、その龍人の姿は、見る人が見れば騒ぎになる。いや、ここは王都だ。大体の奴が騒ぎを起こす。
「こういう時のために直しておいたんですよ」
そう言って、ネイが取り出したのは、昔懐かしの顔を覆い隠せるパーカーだった。
「これ、認識阻害の術式が編み込まれていて、着てるだけで私の顔とか体はハッキリと認識出来なくなるんですよ」
そんな都合のいい物を、よく記憶喪失でフラついてる間に持ってたものだ。
「暑くねえのかよ」
「忘れましたか?私の体から冷気を出してるので大丈夫ですよ。それに、冷気はこのパーカーで覆われるから外に漏れることもない。完璧でしょ?」
まあ、そういう事にしておくか。
「ヴァル、このまま付き合ってくれますよね?」
「......まあ、今日はもう暇だし、付き合ってやれるけど」
「なら、付き合ってください。仮にも祭り。王都には色んなものがあるんですよ」
こいつ、頭を冷やすんじゃなかったっけ?普通に観光する気満々なんだが。
まあ、いいか。所詮は子供だ。楽しくさせときゃ嫌なことも忘れる。
「分かったよ。どこにだって付いてってやるよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイと王都を歩き回って、1つ分かったことがある。
「ヴァル、次はここに行きましょう!」
こいつ、興味のねえことにはすぐに飽きて力尽きるが、興味があることに対しては、普段見せない体力を見せてくる。
かれこれ2時間は歩き回ったが、こいつは疲れる気配を見せない。おい、虚弱体質設定どこやった。
「ヴァル、遅いと置いて行きますよ」
それでも構わないが、そうしたらお前は迷子になるだろうが。それともあれか?本棚使えば戻って来れるのか?絶対そんなことは無いだろうな。
それにしても、王都の祭りってのは派手なもんだ。こんなの、俺達が住んでるシグルアの街じゃ絶対に見れねえ。付き合ってやって正解だったかもしれん。
何事もなけりゃ、後5日もすりゃ帰るんだからなぁ。あ、セリカも誘えば良かった。この事話したら、「なんで私も誘ってくれなかったのよ」とか言うに決まってる。ついでに、ヴェルドにキレられるわ。
「ヴァ~ル、余所見してたら」
《ガンッ!》
「......物にぶつかるって言おうと思ってたんですけど」
「もうちょっと......早く言ってくれる......?」
「ヴァルの歩くスピードが早すぎるだけです」
そんなに早歩きしてたか?お前の横を歩いてるつもりだったんだけど。
「あーあ、なんか跡が出来てますよ。今治しますからじっとしててください」
「いや、いい。これくらいで治癒術に頼るわけにはいかねえよ」
「......そうですか?」
「僕と、付き合ってください!」
「大丈夫だ。これくらいの事はしょっちゅうやってる。気にすんな」
「あれ?聞こえてなかったかな?僕と、付き合ってください!」
「そうですか。まあそうですよね。ヴァルなんて、すぐに怪我して帰ってきそうな悪ガキですし」
「んだとてめぇ!」
「事実じゃないですか」
いや、確かにそうだけどよ。それで、何回もレラとかミラに心配されたが。
俺よりガキな奴にガキって言われたくねぇ......
「ぼ、僕と付き合ってください!」
「レイガ、いい加減諦めたら?向こうは話聞いてないし」
「そ、そんなわけには行かないだろ!やっと見つけたんだ!運命の人を!」
なんか、隣のカップルがうるさいな。そういうのは誰もいないところでやってろ。
「君!僕と付き合ってくれ!」
そう思ってたら、そのカップルの男の方がネイの体を揺さぶるようにしてそう言う。
「き、きぃやぁぁぁぁぁ!」
「何やってんだてめぇ!」
一瞬でネイの叫びが演技だと分かったが、これに乗じて1発ぶん殴る。
「な、何するんだいきなり!」
「それはこっちのセリフだ!てめぇ何もんだ。いきなりネイに触れやがって」
「うっ......怖かったです......」
いや、ガチ泣きされると演技かどうか、一瞬分からなくなるからそこまで頑張らなくていいよ!?
「だからやめとけって言ったじゃない」
「な、何言ってるんだ!やっと見つけたんだぞ!?」
「知らないわよ。ごめんなさいね。うちのレイガが変な気を起こしちゃって」
「よく分からねえが、お前ら普通に怖ぇからな。今後やるんじゃねえぞ」
「はいはーい。分かってます」
「待て!ここで引き下がるわけにはいかない!」
いや、引き下がれよ。周りを歩く人達から変な目で見られてるからさ。
いきなり会話に割り込んできたと思ったら、突然の告白。まず一言。誰だテメェ?
(シェミスターライトのレイガって人ですよ。ほら、王国一のイケメン魔導士だって、セリカさんが言ってたでしょ?)
ああ。あのムカつく顔した野郎か。思い出した思い出した。実物見ると、そこまでイケメンとは思えねえな。あれは、奇跡の一枚だな。
それに、知りもしねえネイにいきなり愛の告白とか、普通に引くわ。ほら見ろよ。主に女性陣からの冷ややかな視線が集まってるぞ。
「お願いだ!僕と付き合ってくれ!」
「なあ?こういうのって、どうやったら治るんだっけ?」
「鏡で殴る......くらいですかね?」
しまったな。今は鏡を持ってねえや。仕方ねえから地面とキスさせておくか。
《ドンッ》
鈍い音を立てて、レイガの顔が地面に激突する。
「あなた達もよくやるわね。気持ちは分かるけど」
「連れならしっかりとさせておけ。そいつ、ただの不審者だぞ」
「あはは......。ほら、レイガ行くよ」
「ま、待ってくれーーーー!せめて!今晩、ここの店で待ってるからーーーー!」
よく見ると、俺達がいたのは、王都屈指のレストランの目の前。やっべ、営業妨害とかになってないかな?大丈夫だよな?
「......」
「......」
「嵐が過ぎたな」
「嵐が過ぎましたね」
さっきはあんな態度をとっていたが、冷静に考えれば、普通に怖い状況である。
マジであいつなんだったんだ?いや、いきなり告白してくる時点で相当頭がイカれてやがる。俺がネイの立場だったら逃げ出すわ。
「ネイ、大丈夫か?」
「なんか、変な人に目を付けられた気分です。私、一応龍人なんですけどね......」
それは、認識阻害のパーカーでどうにかなってるんだろ。つか、問題はそこじゃない。
「あいつ、ストーカーにならねえといいな」
「ですね......」
「帰るか」
「帰りましょう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「姫!どういう事ですか!」
シドウが、またしても机をドンッと叩いてくる。
「ギルドの者共から不信の声が上がっております。姫は、本当にあのギルドを放置するも言うのですか!」
「......放置するつもりはありません。ですが、彼らは自滅します」
「なぜそう言いきれるんですか!」
「......今は、話すことはできません」
「......分かりました」
「この大会が終わったら、全てを話します」
「......グランの者共に、目を付けられないように」
それに関しては大丈夫だ。むしろ、こっちが目を付けている状態。あいつらに反旗を起こそうなどという気はさらさらない。全ては、あの魔女のお陰。
「ツクヨミ様。私はあなたのために......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴェルド「あぁクソ!思い出すだけで腹が立ってきやがる」
ヴァル「気にすんな。やられた分仕返ししてやりゃぁ良い話だ」
ヴェルド「そっちじゃねえよ。ネイの態度についてだ!」
グリード「あの嬢ちゃんが何かやったってんのかァ?」
ヴェルド「やったも何もあるかクソ!」
なぜ、私は3人が豪快に飯を食う姿を延々と見せられているのだろう。
エフィ「セリカさん、私達この席に同席する必要はあったんですかね?」
多分......ない。話があると言われて呼び出されてみれば、ただの愚痴会。エレノアの事は残念だったけど、何もその愚痴を私達に聞かせなくたっていいじゃないか。
セリカ「3人とも、もうちょっと落ち着いて食べたら?」
ヴェルド「うるせぇ!食い方一つ一つにケチつけんな!」
逆ギレ!?
シアラ「あんなのヴェルド様じゃありません......」
シアラがこの態度って、えぇ!?
このギルドに関しては結構理解してきたが、仲間のことについては感情的になりすぎている。そりゃぁ、そうなる気持ちは分かるけどさ、もうちょっと落ち着いて考えた方がいいと思う。
フウロ「ヴェルドがヤケ食いとは珍しいな」
ヴェルド「うるせぇ」
フウロ「エレノアの事か。それとも、ネイの事か?」
ヴェルド「どっちもだ!エレノアがボロ雑巾のようにされてんのに、あいつは表情1つ変えねぇ。オマケにヴァルと一緒に王都観光だと?ふざけんじゃねぇ」
そんなことしてたんだ......。なら、私も誘ってくれれば良かったのに。
ヴァル「あいつも、大分頭は冷やせれてるよ。言い過ぎたってさ」
ヴェルド「言い過ぎなんてもんじゃねえよ。ありゃぁ、ギルドの信頼に関わる発言だぞ?」
一体、何を言ってたんだ。露骨に気になる話し方はやめて。
フウロ「あいつだって、悪気があって言ったわけじゃない。言い方が分からなかっただけだ。それくらいの事は、この半年間でよく分かったことだろう?」
ヴェルド「ちっ、分かってんだよ!あいつが子供だってことは!子供相手にマウント取るなって言うんだろ!知ってるよそんくらい......」
ネイが聞いてたら、速攻で「子供じゃありません!」って話が脱線しそうだな。
それにしても、半年間か......。もうそんなに経ってるんだな。大きな問題から小さな問題。色々と積み上げては来たけど、ネイりんに関しては分からないことだらけ。まるで、問題児を預かっている気分。
ヴァルの苦労がなんとなく分かる。いくら自分にベッタリとは言えど、言葉が悪くて精神年齢も見た目より低い。どう手をつければいいのか分からない状況。私だったら匙を投げてる。
ネイ「ふぁ~ぁ」
とかそんなことを思ってたら、当事者がやって来た。
ネイ「明日の試合。午前はヴェルド。午後はヴァルとアルテミスです。おやすみなさい」
ヴェルド「おい、待てゴルァ」
ネイ「眠いんで、明日にしてくれませんか?」
ヴェルド「ふざけんなよてめぇ。医務室での事を忘れたとは言わせねえぞ?」
ネイ「さあ?何のことでしょうか」
ヴェルド「......」
うわぁ、これは1本取られたな。ネイりん、言葉足らずだけど、状況に合わせた言葉の選び方が上手すぎる。一周回って天才だ。
ネイ「それでは。先に宿に戻っておきますね」
そう言って、ネイりんは来た道を戻っていった。
ヴェルド「話にならねぇ......」
ヴァル「諦めろ、ヴェルド。俺に対してだって、たまにあんな感じなんだ」
フウロ「......なあ?あれは、本当に神様とかいう奴なんだよな?」
ヴァル「......らしい」
グリード「人間様が最後に縋り付く場所があんなのねェ......」
ヴァル「一応、あいつの上にもう一体いるんだけどな。そっちがガチの神様」
もう、なんだか次元がぶっ飛びすぎてよく分からない話だ。ヴァルのくせに、なんで理解出来てるんだ。一体、いつそんな頭脳を手に入れた?
ヴァル「俺ももう寝るわ。じゃあな、ヴェルド」
フウロ「私も、今日はここまでにしておこうと思う」
エフィ「あ、じゃあ私も」
セリカ「じゃあ、私も......」
ヴェルド「......シアラ」
シアラ「はい。なんでしょうか?」
ヴェルド「お前、神様にでもなれる?」
あ、こいつヴァルと同じ状況になってみようとか考えてたな。
全員がそう思った。
あいつはそんなに遠くには行ってなかった。ちょっと外に出て歩いたくらいの距離。それくらいの場所なのに、もう息切れを起こしてるのか。
「ヴァル......」
「俺は気にしてねえよ。仲間がやられたのは悔しいけど、その分倍返しでやってやりゃぁ良い話だ。そうだろ?」
「......正直、私自身もよく分からないんですよ」
また人付き合いに関してか......
「なんでみんながああまでして怒るのか。私には分からないんです」
「......お前の場合、俺が誰かに殺されたらどう思うか?」
「すぐにぶっ殺しに行って世界を壊します」
やる事が壮大すぎるが、そこには目を瞑ろう。
「お前が考えたような事と同じ事をみんな思ってんだよ」
「なんで、家族でも恩人でもなんでもない人のために、そう思えるんですか」
うわ、めんどくせぇ......。そんなの俺が分かるわけないだろ。
「えーっとだな、まあ、みんなは1人のために、1人はみんなのためにってことだよ」
「上手いこと言ってるつもりでしょうけど、分からないんですね」
「変な勘働かせないでくれる!?」
「まあいいです。頭を冷やすべきなのは私なので」
「つっても、お前どこにも行けねえだろ。その格好じゃ」
なぜか部屋を出る際に"ネイ"の格好へと戻っていた。今は人がいないから良いとは言え、その龍人の姿は、見る人が見れば騒ぎになる。いや、ここは王都だ。大体の奴が騒ぎを起こす。
「こういう時のために直しておいたんですよ」
そう言って、ネイが取り出したのは、昔懐かしの顔を覆い隠せるパーカーだった。
「これ、認識阻害の術式が編み込まれていて、着てるだけで私の顔とか体はハッキリと認識出来なくなるんですよ」
そんな都合のいい物を、よく記憶喪失でフラついてる間に持ってたものだ。
「暑くねえのかよ」
「忘れましたか?私の体から冷気を出してるので大丈夫ですよ。それに、冷気はこのパーカーで覆われるから外に漏れることもない。完璧でしょ?」
まあ、そういう事にしておくか。
「ヴァル、このまま付き合ってくれますよね?」
「......まあ、今日はもう暇だし、付き合ってやれるけど」
「なら、付き合ってください。仮にも祭り。王都には色んなものがあるんですよ」
こいつ、頭を冷やすんじゃなかったっけ?普通に観光する気満々なんだが。
まあ、いいか。所詮は子供だ。楽しくさせときゃ嫌なことも忘れる。
「分かったよ。どこにだって付いてってやるよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイと王都を歩き回って、1つ分かったことがある。
「ヴァル、次はここに行きましょう!」
こいつ、興味のねえことにはすぐに飽きて力尽きるが、興味があることに対しては、普段見せない体力を見せてくる。
かれこれ2時間は歩き回ったが、こいつは疲れる気配を見せない。おい、虚弱体質設定どこやった。
「ヴァル、遅いと置いて行きますよ」
それでも構わないが、そうしたらお前は迷子になるだろうが。それともあれか?本棚使えば戻って来れるのか?絶対そんなことは無いだろうな。
それにしても、王都の祭りってのは派手なもんだ。こんなの、俺達が住んでるシグルアの街じゃ絶対に見れねえ。付き合ってやって正解だったかもしれん。
何事もなけりゃ、後5日もすりゃ帰るんだからなぁ。あ、セリカも誘えば良かった。この事話したら、「なんで私も誘ってくれなかったのよ」とか言うに決まってる。ついでに、ヴェルドにキレられるわ。
「ヴァ~ル、余所見してたら」
《ガンッ!》
「......物にぶつかるって言おうと思ってたんですけど」
「もうちょっと......早く言ってくれる......?」
「ヴァルの歩くスピードが早すぎるだけです」
そんなに早歩きしてたか?お前の横を歩いてるつもりだったんだけど。
「あーあ、なんか跡が出来てますよ。今治しますからじっとしててください」
「いや、いい。これくらいで治癒術に頼るわけにはいかねえよ」
「......そうですか?」
「僕と、付き合ってください!」
「大丈夫だ。これくらいの事はしょっちゅうやってる。気にすんな」
「あれ?聞こえてなかったかな?僕と、付き合ってください!」
「そうですか。まあそうですよね。ヴァルなんて、すぐに怪我して帰ってきそうな悪ガキですし」
「んだとてめぇ!」
「事実じゃないですか」
いや、確かにそうだけどよ。それで、何回もレラとかミラに心配されたが。
俺よりガキな奴にガキって言われたくねぇ......
「ぼ、僕と付き合ってください!」
「レイガ、いい加減諦めたら?向こうは話聞いてないし」
「そ、そんなわけには行かないだろ!やっと見つけたんだ!運命の人を!」
なんか、隣のカップルがうるさいな。そういうのは誰もいないところでやってろ。
「君!僕と付き合ってくれ!」
そう思ってたら、そのカップルの男の方がネイの体を揺さぶるようにしてそう言う。
「き、きぃやぁぁぁぁぁ!」
「何やってんだてめぇ!」
一瞬でネイの叫びが演技だと分かったが、これに乗じて1発ぶん殴る。
「な、何するんだいきなり!」
「それはこっちのセリフだ!てめぇ何もんだ。いきなりネイに触れやがって」
「うっ......怖かったです......」
いや、ガチ泣きされると演技かどうか、一瞬分からなくなるからそこまで頑張らなくていいよ!?
「だからやめとけって言ったじゃない」
「な、何言ってるんだ!やっと見つけたんだぞ!?」
「知らないわよ。ごめんなさいね。うちのレイガが変な気を起こしちゃって」
「よく分からねえが、お前ら普通に怖ぇからな。今後やるんじゃねえぞ」
「はいはーい。分かってます」
「待て!ここで引き下がるわけにはいかない!」
いや、引き下がれよ。周りを歩く人達から変な目で見られてるからさ。
いきなり会話に割り込んできたと思ったら、突然の告白。まず一言。誰だテメェ?
(シェミスターライトのレイガって人ですよ。ほら、王国一のイケメン魔導士だって、セリカさんが言ってたでしょ?)
ああ。あのムカつく顔した野郎か。思い出した思い出した。実物見ると、そこまでイケメンとは思えねえな。あれは、奇跡の一枚だな。
それに、知りもしねえネイにいきなり愛の告白とか、普通に引くわ。ほら見ろよ。主に女性陣からの冷ややかな視線が集まってるぞ。
「お願いだ!僕と付き合ってくれ!」
「なあ?こういうのって、どうやったら治るんだっけ?」
「鏡で殴る......くらいですかね?」
しまったな。今は鏡を持ってねえや。仕方ねえから地面とキスさせておくか。
《ドンッ》
鈍い音を立てて、レイガの顔が地面に激突する。
「あなた達もよくやるわね。気持ちは分かるけど」
「連れならしっかりとさせておけ。そいつ、ただの不審者だぞ」
「あはは......。ほら、レイガ行くよ」
「ま、待ってくれーーーー!せめて!今晩、ここの店で待ってるからーーーー!」
よく見ると、俺達がいたのは、王都屈指のレストランの目の前。やっべ、営業妨害とかになってないかな?大丈夫だよな?
「......」
「......」
「嵐が過ぎたな」
「嵐が過ぎましたね」
さっきはあんな態度をとっていたが、冷静に考えれば、普通に怖い状況である。
マジであいつなんだったんだ?いや、いきなり告白してくる時点で相当頭がイカれてやがる。俺がネイの立場だったら逃げ出すわ。
「ネイ、大丈夫か?」
「なんか、変な人に目を付けられた気分です。私、一応龍人なんですけどね......」
それは、認識阻害のパーカーでどうにかなってるんだろ。つか、問題はそこじゃない。
「あいつ、ストーカーにならねえといいな」
「ですね......」
「帰るか」
「帰りましょう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「姫!どういう事ですか!」
シドウが、またしても机をドンッと叩いてくる。
「ギルドの者共から不信の声が上がっております。姫は、本当にあのギルドを放置するも言うのですか!」
「......放置するつもりはありません。ですが、彼らは自滅します」
「なぜそう言いきれるんですか!」
「......今は、話すことはできません」
「......分かりました」
「この大会が終わったら、全てを話します」
「......グランの者共に、目を付けられないように」
それに関しては大丈夫だ。むしろ、こっちが目を付けている状態。あいつらに反旗を起こそうなどという気はさらさらない。全ては、あの魔女のお陰。
「ツクヨミ様。私はあなたのために......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴェルド「あぁクソ!思い出すだけで腹が立ってきやがる」
ヴァル「気にすんな。やられた分仕返ししてやりゃぁ良い話だ」
ヴェルド「そっちじゃねえよ。ネイの態度についてだ!」
グリード「あの嬢ちゃんが何かやったってんのかァ?」
ヴェルド「やったも何もあるかクソ!」
なぜ、私は3人が豪快に飯を食う姿を延々と見せられているのだろう。
エフィ「セリカさん、私達この席に同席する必要はあったんですかね?」
多分......ない。話があると言われて呼び出されてみれば、ただの愚痴会。エレノアの事は残念だったけど、何もその愚痴を私達に聞かせなくたっていいじゃないか。
セリカ「3人とも、もうちょっと落ち着いて食べたら?」
ヴェルド「うるせぇ!食い方一つ一つにケチつけんな!」
逆ギレ!?
シアラ「あんなのヴェルド様じゃありません......」
シアラがこの態度って、えぇ!?
このギルドに関しては結構理解してきたが、仲間のことについては感情的になりすぎている。そりゃぁ、そうなる気持ちは分かるけどさ、もうちょっと落ち着いて考えた方がいいと思う。
フウロ「ヴェルドがヤケ食いとは珍しいな」
ヴェルド「うるせぇ」
フウロ「エレノアの事か。それとも、ネイの事か?」
ヴェルド「どっちもだ!エレノアがボロ雑巾のようにされてんのに、あいつは表情1つ変えねぇ。オマケにヴァルと一緒に王都観光だと?ふざけんじゃねぇ」
そんなことしてたんだ......。なら、私も誘ってくれれば良かったのに。
ヴァル「あいつも、大分頭は冷やせれてるよ。言い過ぎたってさ」
ヴェルド「言い過ぎなんてもんじゃねえよ。ありゃぁ、ギルドの信頼に関わる発言だぞ?」
一体、何を言ってたんだ。露骨に気になる話し方はやめて。
フウロ「あいつだって、悪気があって言ったわけじゃない。言い方が分からなかっただけだ。それくらいの事は、この半年間でよく分かったことだろう?」
ヴェルド「ちっ、分かってんだよ!あいつが子供だってことは!子供相手にマウント取るなって言うんだろ!知ってるよそんくらい......」
ネイが聞いてたら、速攻で「子供じゃありません!」って話が脱線しそうだな。
それにしても、半年間か......。もうそんなに経ってるんだな。大きな問題から小さな問題。色々と積み上げては来たけど、ネイりんに関しては分からないことだらけ。まるで、問題児を預かっている気分。
ヴァルの苦労がなんとなく分かる。いくら自分にベッタリとは言えど、言葉が悪くて精神年齢も見た目より低い。どう手をつければいいのか分からない状況。私だったら匙を投げてる。
ネイ「ふぁ~ぁ」
とかそんなことを思ってたら、当事者がやって来た。
ネイ「明日の試合。午前はヴェルド。午後はヴァルとアルテミスです。おやすみなさい」
ヴェルド「おい、待てゴルァ」
ネイ「眠いんで、明日にしてくれませんか?」
ヴェルド「ふざけんなよてめぇ。医務室での事を忘れたとは言わせねえぞ?」
ネイ「さあ?何のことでしょうか」
ヴェルド「......」
うわぁ、これは1本取られたな。ネイりん、言葉足らずだけど、状況に合わせた言葉の選び方が上手すぎる。一周回って天才だ。
ネイ「それでは。先に宿に戻っておきますね」
そう言って、ネイりんは来た道を戻っていった。
ヴェルド「話にならねぇ......」
ヴァル「諦めろ、ヴェルド。俺に対してだって、たまにあんな感じなんだ」
フウロ「......なあ?あれは、本当に神様とかいう奴なんだよな?」
ヴァル「......らしい」
グリード「人間様が最後に縋り付く場所があんなのねェ......」
ヴァル「一応、あいつの上にもう一体いるんだけどな。そっちがガチの神様」
もう、なんだか次元がぶっ飛びすぎてよく分からない話だ。ヴァルのくせに、なんで理解出来てるんだ。一体、いつそんな頭脳を手に入れた?
ヴァル「俺ももう寝るわ。じゃあな、ヴェルド」
フウロ「私も、今日はここまでにしておこうと思う」
エフィ「あ、じゃあ私も」
セリカ「じゃあ、私も......」
ヴェルド「......シアラ」
シアラ「はい。なんでしょうか?」
ヴェルド「お前、神様にでもなれる?」
あ、こいつヴァルと同じ状況になってみようとか考えてたな。
全員がそう思った。
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