グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第6章 【龍の涙】

第6章36 章末【龍の涙】

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クロム「全く、大会を見に来たと思えば、酷い有様だな。そうは思わんか?アラン」

アラン「......1つ言いたいのですが、遠目から見ても、街が酷くなっているところに『大会が始まってるんだろ』と言って、向かわせたのはどこの誰でしょうか?」

 む?そうだったか?

 7日間かけてゆっくり来ていたせいで、すっかり忘れたな。

アラン「こんな事になるのなら、自警団の皆様も連れて来た方が良かったかもしれませんね」

クロム「働き詰めのあいつらに、こんな絶望を見せたくはないな。こうやって、俺達が瓦礫を撤去してるだけで十分だ」

アラン「いつまでも、善人な御方です」

クロム「お世辞はやめろ。俺は、俺が思ったままのことをしてるだけだ」

 俺は、純粋な気持ちで人助けをしてるに過ぎない。俺の自警団は、それを目的とした集団だ。

 さて、人の気配がする場所は、大体探り終えたな。後は、この時計塔だった場所か......

 ここに、1人の生命反応がある。生きてるうちに、早く助け出してやらないとな。

クロム「アラン、そっちの方を持ってくれ」

アラン「了解」

 最後は、1つの大きな欠片がが覆いかぶさってるな。崩した方が楽なのだが、生命反応はこのすぐ下だ。下にいる者に怪我をさせないよう、慎重に瓦礫を動かしていく。

クロム「よいしょっと......」

 お、頭の部分が見えてきた。

「うっ......」

クロム「待ってろ。今、全部退けてやるから」

 意識はあるようだ。一先ず、安心といったところか。

クロム「よいしょっと......おい、お前、大丈夫......か......?」

「う"ぅ......」

 見間違い......じゃないよな?

アラン「クロム様、これは......?」

クロム「......おーい、大丈夫かー......?」

「......」

 ちょっと、羽と尻尾が大きくなりすぎただけだよな?大丈夫だよな?なんか、体のあちこちに鱗っぽい物が着いてるけど、大丈夫だよな?

クロム「ネイー。ネイだったら、返事しろー」

「うっ......」

 よし、ネイだな。

クロム「アラン、とりあえず、救護テントに連れて行くぞ。出血と......この、鱗っぽいやつ......」

アラン「それ以上は言わなくても分かります。連れて行きましょう」

 あまり、女の子に対して言っていいのかどうか思うから、あえて心の内で呟いておく。

 グロテスクで気持ち悪い。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

セリカ「随分と酷いことになっちゃったね......」

ヴァル「今のところ、死人が確認されてないだけマシだと思え」

セリカ「うん......」

 そうだよね。これだけ街が壊滅状態になってるのに、まだ死者が出たっていう話を聞かないだけ良い方だよね。グランメモリーズのメンバーの中で、一部重症になってるメンバーもいるけど、死んではいない。

ヴァル「ちっ、ここのテントにもいねえか」

ヴェルド「何を探してるんだ?ヴァル」

 救護テントの中にはヴェルドがいた。

ヴァル「いや、ネイが見つからねえんだ」

ヴェルド「そうか。見て分かると思うが、ここにはいねえぞ」

ヴァル「やっぱりか......」

ヴェルド「期待に応えられなくて悪かったな。一応言っておくが、あいつを見たって話は聞いてない。有益な情報を俺は持ってねえぞ」

ヴァル「何も知らないって情報ありがとさん」

ヴェルド「分かったら早く出ていけ。他にも順番待ちの奴が大勢いるんだ」

ヴァル「手間取らせて悪かったな」

ヴェルド「なんか聞いたら、すぐ知らせに行くから」

 それを聞いて、私達は救護テントから出ていった。

 段々と日が明けてきて、見え辛かった街の惨状も、ハッキリと見えるようになってくる。

 見れば見るほど、酷い有様だ。こんな状況で、よく生き残れたと思う。私みたいな弱い魔導士は、すぐにでも死んじゃいそうなのに。

 運が良かったのかな。

ヴァル「セリカ、これで何個目だっけ?」

セリカ「6個目。王女様の話じゃ、後7個くらいは残ってるはずだけど......」

ヴァル「7個か......しらみ潰しを続けるのもいいが、そろそろ当てもなしに回るのは嫌になってきたな」

セリカ「だから王女様と一緒に行動しようって言ったのに」

ヴァル「んな事してられるか!待ってるのは性に合わねえんだよ!」

 そんな事だろうとは思ってたけど......

ヴァル「仕方ねえ。このまましらみ潰しを続けるか......」

セリカ「やっぱ、そうなるんだね」

ヴァル「仕方ねえよなぁ。あーあ、どっかから風の便りでネイの場所を伝えてくれねえかなぁ」

 そんな都合よく行くわけないでしょ......

アラン「ヴァル様、ここにおられましたか」

ヴァル「?お前、確かクロムの......」

アラン「ええ。ネイ様をお探しだと聞いております」

ヴァル「まさか、見つかったのか!?」

アラン「ええ。見つかりました」

ヴァル「どこだ!どこにいる!?」

アラン「お、落ち着いてください。案内致しますから」

 やっぱり、ネイりんの事になると血相が変わるよね、ヴァルって。そんなことはどうでも良くて、ネイりんの場所が都合よく分かった。これで、無駄に歩くことはなくなる。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「ネイー!いるなら返事しろー!ネイー!」

ネイ「いますからそんな大きな声出さないでください」

ヴァル「......良かった」

クロム「おい、いくら個室状態にしてると言えど、少しばかりうるさいぞ」

 ほら、言わんこっちゃない。早速クロムに怒られた。

クロム「急いで知らせに行ったのだが、随分と時間がかかったな。何してたんだ?」

ヴァル「あぁ......ネイを探してウロウロしてた」

アラン「そのウロウロがなければ、日が明ける前に知らせに行くことが出来たかもしれませんね」

ネイ「ヴァルは方向音痴です」

ヴァル「お前に言われたくねえよ!?」

 結局うるさいじゃん。

ヴァル「......で、一応聞いとくが、その鱗っぽいのはなんだ?」

 ネイりんの体の半分を覆うようにして出ている、謎の鱗。鱗だよね?かなり、グロテスクだけど......

ネイ「......恐らく、原子化の影響で、龍になった部分が残っているんです」

ヴァル「龍になった影響か......なら、クロムの力で治せるんじゃないのか?」

クロム「1度試したが、無駄だった。邪の力を抑えることは出来ても、これは少し違う代物のようだ」

ヴァル「クロムでダメなら、自然治癒を待つくらいか?」

ネイ「そうなりますね......」

 まあ、見た目だけなら、普段通りの隠した服装でいれば問題ないか。回復するまで、少し我慢しないといけないけれど......

ヴァル「他に、体のどっか、悪いところとかねえのか?」

ネイ「............足が......動かないんです」

「「 足? 」」

 一件、ごく普通に見える足だが、動かないとはどういう事だ?

ネイ「どう力を入れても、腰から下が動かないんです」

ヴァル「足を動かせない?」

ネイ「はい。こうして、クロムさん達に支えてもらわないと、座ることも出来ないんです」

 なるほど。通りで、ネイりんが起き上がるのを、クロム達がサポートしてたわけだ。ただ単に、体のどこかが悪いのかな?と思っていたが、そういう理由があったとは......

ヴァル「治せないのか?」

ネイ「どう見ても、神経が硬化してるから無理ですね。これを溶く方法があれば別の話ですけど」

クロム「という、話をしていたんだ」

ヴァル「あ、ここでお前らと合流すんのな」

クロム「そうだ。で、ここからが話の続きなんだが、俺の妹が硬質化した患者の治療を何度も成し遂げた事がある。あいつに頼めば、ネイの足だけなら治せるかもしれない」

ヴァル「ついでに、龍化した部分も治せたら一石二鳥って算段か」

クロム「ああ。それで、お前には言っておかなければならないのだが......」

ヴァル「治療に時間がかかるから、預せろとでも言うんだろ?」

クロム「よく分かったな」

ヴァル「んな事だろうとは思ってるよ」

アラン「という事で、ネイ様は、しばらくこちらでお預かりするという事でよろしいですね」

ヴァル「ああ。ネイもそれでいいだろ」

ネイ「......はい。ヴァル達と、しばらくの別れは寂しくなりますけど、元気になって帰ってきますよ」

 不安だらけの状態なのに、ネイりんの顔は、なぜか笑を零していた。

 ......そうだよね。元気な私達が、元気じゃないはずのネイりん以上に元気でいないといけないよね。

クロム「話はこれで終わりだな。他に、何か聞きたい事とかあるか?」

ヴァル「あ、そうだ。1つ聞いとくんだけどさ、お前ら7日間かけてこっちに来たんだろ?」

クロム「ああそうだ」

ヴァル「俺の予想なんだけど、それって、開会式の日に、いつも通りの感覚で出たせいで7日間ズレたとかなんじゃねえの?」

クロム「......」

アラン「......」

 そういう事なのね......

「クロム殿、ここにおられましたか」

 髭を生やし、鎧に身を包んだ男が現れる。

クロム「お前は確か......シドウ......だったか」

シドウ「ええ。そうでございます」

 王女様の傍付きの騎士。この人には、なんか良い思い出がないな......。

シドウ「行方不明者の救出作業は終わりました。そこで、姫様と国王様からのお話がある模様です。クロム殿、並びに、ツクヨミ様にもご同席を願い頂きたく、参上した次第であります」

「「「 話? 」」」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ゼイラ「皆様、今回は、私の判断ミスにより、多大なるご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

 王女が、民衆と同じ高さになって、直々に謝罪する。この行為が、どれほどのものかを私達は感じていた。

アトラス「王女に助言したとされる『ヒカリ』という者。その者の正体は不明。彼の者がもたらした災害は、見れば分かるように、酷い有様へとなっております」

ゼイラ「私共は、この街の復興、及び、負傷者の治療、復帰に全力を注ぐ次第です。そして、この度は私のせいで、魔導士、住民の皆様に多大なるご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳ございませんでした!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ゼイラ「本っ当に申し訳ありませんでした!」

 車椅子に座るネイに向けて、ゼイラが深々とした謝罪。その勢いのままに地面に頭がぶつかりそうだ。

ネイ「......これで、アポカリプスが来るとどうなるか分かりましたよね?私が、この惨状です。ツクヨミを愛してやまないあなたなら、これがどのような事か、お分かりですよね?」

ゼイラ「すみません!すみません!」

 ここまで王女に謝罪させる人を、私は見た事がない。

ネイ「アポカリプスを追いやるためとは言えど、体の半分が龍の姿。オマケに、足は動かなくなって......どうしてくれるんですか。私の再生力が一切効かない事例ですよ」

ゼイラ「すみません!すみません!」

 うわぁ、徹底的に詰めていくつもりだな。

アトラス「ツクヨミ様、今回の我が孫娘の失態。そして、それを鵜呑みにしてしまった我が失態。どうか、お許しくださいませ」

ネイ「......まあ、もういいです。起きてしまったことは変えようがありませんから」

 若干、諦めてるね。ネイらしいっちゃネイらしいけど......

クロム「ネイの治療は、俺達が引き受ける。グランアークの王族は、ちゃんとこの街を復興させることに全力を注ぐことだ」

ゼイラ「はい。クロム様にも、ご迷惑をおかけしました」

クロム「......こんなことを言うのもなんだが、表彰式とかはしないのか?グランメモリーズが優勝したんだろ?」

ゼイラ「......1度、しようかとは考えたのですが、今はそんな状況ではないと判断し、正式に表彰式が行われるのは、早ければ来月です。ただ、このままグランメモリーズの皆様にさよならというのもお忍びないかとは思います」

アトラス「......1146年、第24期グランアランドラルフ。優勝はグランメモリーズ。その健闘を、ここに称える」

 賞状とか、トロフィーとか、そんな形あるものは何も無い。だけれど、『優勝』という2文字が、私達の心に書き留められている。

 龍との激闘、アポカリプスによる世界の終焉。

 様々なことを乗り越えて、私達は、また1歩成長した。幸せな気分で喜べないのが残念だけれど、私達は最強のギルドになれたんだよね。

ネイ「......後で、他のグランメモリーズのメンバー全員に、個別で言ってきてください。それが、私があなた達に課せる罰です」

ゼイラ「......分かりました」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 それから、私はヴァルやネイ達と別れ、1人街の惨状を見て回っていた。

 特に、これと言って何かがあるわけではない。ただ、なんとなく見て回っていたのだ。

 そうして、前も見ずに歩いていたのが悪かったのだろう。スーツを着たオッサンと衝突してしまった。

セリカ「す、すみません......」

「いや、こちらこそすまない。こんな、私がいても仕方ないような街で人探しをしていてね」

セリカ「人探し......ですか......」

「ああ。大会中に、見つけることが出来れば良かったんだがね。こんな有様じゃ、そんな事をしてる場合じゃないか。ははっ」

セリカ「見つかるといいですね」

「ああそうだな」

セリカ「ちなみに、探してる人ってなんて名前なんですか?良かったら、魔導士間の連絡網で探してみますよ」

「そうかい。じゃあ、遠慮なく探してもらおうか。セリカ・ライトフィリアという名前なんだけどね」

セリカ「......え?」

 ......今、この人なんて言った?

 セリカ......ライトフィリア......?

「昔、家出したきり見つからなくてね。魔導士ギルドに所属しているという情報を掴んだから、探しに来てみたんだが......。如何いかんせん、14歳の時に家出をされたもんだから、成長したのか私の知ってる顔が見つからなくてね。昔のだから、あまり当てにはならんかもしれんが、是非とも頼むよ」

セリカ「は、はい......」

 男が差し出した写真。そこに写っているのは、紛れもない。幼い頃の私。ちょっと、世間とか何かに反抗しているかのような、思春期特有の表情。

「じゃあね。手間を取らせて悪かったね」

セリカ「は、はい......」

 あの人は、探している人物が目の前にいたというのに、気づいていない様子だった。

 確かに、家出してから5年ほどは経った。

 だが、それで見違えるほど変わるだろうか?それに、私は女の子。年齢的に成長期で大きく容姿が変わることはない。

 あの人、私の父親『ヴァーリア』は、私の事を忘れてしまったのだろうか。

 ......かと言って、家出した私が、自ら正体をバラすというような事はしたくない。

 私は、ここであった事を、そっと胸の内にしまい込んだ。
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