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第10章-Ⅱ 【記憶の旅人】
第10章38 【明カリノ消エタ記憶】
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クロム(急げ急げ急げ!)
ダークペガサスをぶっ飛ばし、1秒でも早く駆けつけられるように加速させていく。
もう平原は目と鼻の先。だが、見えるのは敵軍の赤装束のみ。どうやら、戦況はあまりよろしくないらしいな。押しているのであれば、俺達が駆けつける頃合から、もう敵軍の奥にまで攻め込んでいてもおかしくはない。
多分、敵軍の大将となるヒカリが暴れているからだろうな。あいつと同じ名前をしているせいで、その名前を口にすることに嫌悪感を感じる。その理由は、敵だった頃のヒカリを思い出すからなのかもしれない。
フェリシア「クロム様!急降下!」
クロム「......!?」
何事かと思ったが、言われた通りに俺はペガサスを地上付近にまで下ろす。直後、炎の矢が上空を過ぎ去っていった。1本や2本ではない。数十本とが過ぎ去っていったのだ。
クロム「クソっ!囲まれてしまったか......」
アラン「まずいですね......敵軍は、ざっと見た感じでは5000。対して、こちらは使えるペガサス全てを使っての出動ですから、たったの10人......」
クロム「全員、戦闘態勢だ!何としてでも切り抜ける!」
リーシア「く、クロム様!流石にこの人数は私共ではどうにもなりませんわ!」
そう言いつつも、ペガサスから降りて魔法詠唱の体勢を整えるリーシア。無理だと分かっていても、やるしかないということは理解してるらしいな。
アラン、メイ、フェリシア、ロイ、ルーダ、メノア、サラ、ダギル、リーシア。すまんな、お前らにとっては何のメリットもない戦いに付き合わせてしまって......。
クロム「だが、お前らのことは命に替えても守りきってみせる!聖龍・覚醒!」
アラン「クロム様を死守するのは私の務め!セリヤァっ!」
リーシア「テラサンダー!テラフィア!テラブリザード!」
ダギル「あーあ!本当ならイーリアスで1日終わりの祝杯上げてるところだったのになぁ!テラストーム!」
ロイ「そう言うな。帰ったら、2日分の祝杯を上げればいいだろ?」
ルーダ「それもそうだな!」
皆で声を掛け合い、互いに背中を預ける。四方八方を敵に囲まれている今、仲間の存在は大切だ。誰1人として欠けさせるな。誰1人として隊列を崩させるな。そうしなければ、この戦いには勝てない。
......もう少し時間があるのであれば、セツノの陣営と共に駆けつけられたかもしれないな。高速で移動できる手段が、イーリアス、セツノ共にペガサスくらいしかない。今回、彼らはなるべく早く追いつくと言っていた。まあ、早くて3日か4日だろう。それくらいの日数が過ぎる頃には、もうこの戦いが終わっている気がする。
メノア「クロム、コイツらやばいよ!目に正気がない......!」
フェリシア「気にしてはなりません!我らがここを切り抜けるためには、こいつらを1人残らず殺さなければなりません!私は空から奇襲します!」
フェリシアが10匹のペガサスと共に空へと舞い上がった。
サラ「フェ、フェリシア様!そんな事をしたら、弓兵に一網打尽にされてしまいます!」
サラがフェリシアを呼び止めようとするが、何かを血走っているのか、フェリシアにはその声が届いていない。
クロム「っ......クソっ!」
弓を構えた弓兵達を抑えようと思ったが、そいつらの前にたくさんの敵がいる。どれだけ全力を尽くしても、奴らがフェリシアを撃ち抜くより前に抑えることが出来そうにない。
クロム「どけ!お前ら!聖龍・ジャッジメントルイン!」
間に合わないと分かっていながらも、俺は死力を尽くして敵を打ち倒していく。全部を倒せなくても、弓兵の数を出来る限り減らせれば、フェリシアくらいの腕なら少ない矢は回避してくれるはずだ。
フェリシア「......あれは?」
フェリシアの動きが急に止まった。俺達の動きも一斉に止まった。
空から小さな光が刺し込んできた。こんな嵐の中、たった一つの光だ。反応しないわけがない。それは、敵も同じようで、その光を見つめて何事かと騒いでいる。
(あんたら!1箇所に固まってなさい!じゃないと死ぬわよ!)
突然、脳に女の声が響いてきた。その声は、俺と、自警団のみに聞こえているらしく、互いに目を合わせて1箇所に固まる。
この声に、疑問が湧かなかったのかと聞かれると、ちょっとだけ湧いたのが本音だ。でも、迷いなく動いたのには理由がある。
この声、あいつの声だ。
(OK!光の点滅が激しいから目に気を付けてね!)
一筋の光から、人の姿らしきものが見える。そいつは、自分の周囲に大量の銃火器を構えこちらを狙っている。
(全弾発射!)
この距離からでも分かる弾丸が、俺達の周りに大量に降り注いできた。嵐による大雨の粒も大概だが、これはそれ以上にヤバい。地面や、敵に当たる度に大きな爆発を起こして周囲を巻き込んでいる。ただでさえ多い弾丸だと言うのに、爆発まで起きるようじゃたまったもんじゃないな。
(オーラオラオラオラオラ!)
周囲の銃火器が、弾切れを起こす度に別の銃へと変わり、あいつ自身が握っている銃も、弾切れする度に空へと放り出し、代わりの銃を手に持って攻撃を続ける。やがて、数十秒経ち、あたりの敵ももう数人となったところで、あいつは全ての銃火器を1つにまとめ、大きなスナイパーライフルへと姿を変えさせる。
(行っけぇぇぇぇ!)
4つの属性に包み込まれた大きな弾丸が、俺達の頭上で爆発し、あたりに残った敵を1人残らず撃ち抜いていく。
クロム「......なんという所業だ」
敵は1人残らず撃ち抜かれ、皆赤い鮮血を流して死んでいる。これが、たったの数十秒で起きた出来事か。誰とは言わんが、相変わらず鬼畜な奴だ。
「あら、クロムさん。何よ、その目」
忘れもしない、あのツンデレガールの声の持ち主が、一筋の光に導かれて降りてきた。服装は、いつもの分厚いローブじゃない。なんだか、神々しく赤色を基調とした露出の多い服だ。普段、露出の少ない奴がこんな姿をしてると、ちょっと目のやり場に困るんだが......。
クロム「......生きてたんだな」
ヒカリ「生憎、昔から神様が私を死なせることを拒否しててね。図太く生きてるわよ。......久し振り、クロムさん」
クロム「ああ、久し振りだな、ヒカリ。それと、ありがとうな」
ヒカリ「ふんっ、別に、あんたらを助けたくて助けたわけじゃないわよ。ただ、あの子を取り戻すためにはあんたらの力も必要だと思ったから助けただけ。それだけよ」
クロム「はいはい」
素直じゃないな。
ヒカリ「......早く行くわよ」
クロム「ああ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ユミ「おぉらァっ!」
ヒカリ「っ......!」
追い詰めてはいる。追い詰めてはいるが、こいつの再生力のせいで一向に勝負がつかねぇ。なんなんだ?この回復量。邪龍、いや、それ以上だ。こんなんじゃ、いつまで経っても倒せねぇ。Destructionの破壊力は中々のもんだと思ったが、その威力を持ってしても倒せない相手とは......こりゃ、ヴァル達が苦戦するわけだ。
ユミ「いい加減、死んだらどうだ!」
ヒカリ「そうするわけにはいきませんねぇ。私には私の目的があるので」
ユミ「じゃあ聞いてやるよ!お前の目的はなんだ!ただネイを殺すことだけが目的じゃねぇだろ!」
ヒカリ「ええそうです。よく分かりましたね」
くっそ。攻撃を喰らいつつも余裕な表情しやがって......見ててイライラするから早く死ねや。
ユミ「ぢっ......!」
ようやく奴が反撃を見せてきた。お互いに威力が凄まじいせいで、数歩分のノックバックが発生し、俺達は距離をとる形になった。
ヒカリ「丁度いいタイミングです。ここらにいる方達全員に、私の計画について話して差しあげましょうか」
ユミ「ああ?」
ヒカリ「私の目的。それは、彼女を殺し、この世界の守護者を消したところで、この世界の何もかもを消し去ることです。それは、あなた方普通の人間を始め、海、大地、マナ、女神、更には、私に協力してくださっているザガルの兵達まで。何もかもを消し去る。そして、私自身も消え去る。それが私の計画。いえ、願い、と言ったところでしょうか」
ユミ「狂気の巻き込み自殺じゃねぇかよ......」
ヒカリ「そうかもしれませんね。ですが、私は悩んだ。悩み、苦しみ、そして選んだ。私を殺せる人物は現れない。唯一の可能性を持った者達も、私を殺すには至らなかった。だから、私はこの世界ごと消え去る。そして、二度と私という存在が生まれぬよう、この世界を愛してやまない神も殺す。そう、この世界を愛してやまない神、ネイさんのことですね」
ユミ「そんな事のためにあいつを殺すって言うのか!」
ヒカリ「ええ、そうですよ。私が完全に死ぬために、彼女を殺す。まあ、道連れみたいなものです」
ユミ「ぢっ!」
サイコパスなんてもんじゃねぇ。何をどうしたらこんなのが生まれるのかが分からねぇよ。これだから世界ってのは広いんだが、これは流石に広すぎるな。
殺さなきゃならねぇ。奴を止めるには、それしかない。いや、それ以外の選択があるのだとしても、俺はそれを取らねぇ。死を与える以外に、こいつを苦しめる方法がない。
ヒカリ「おや?ザガルの兵達がざわめき出していますねぇ」
ユミ「当たりめぇだろ。何の目的で釣られたのか知らねぇが、お前の目的が叶った暁には自分達は死ぬんだぞ?そんなの認められっかよ!」
「そうだそうだ!俺達は世界征服のためにこの身を捧げてんだ!」
「てめぇのために死ぬなんて冗談じゃねぇぞ!」
「どうやら、先に殺さなきゃならねぇのは俺達の大将らしいな!全員かかれぇぇぇ!」
赤装束の中から、ぽつりぽつりとそんな声が聞こえた。世界征服とは、またとんでもねぇ目的を掲げていたものだが、それでも一時的に味方になってくれそうなのであればいい。後で捻り潰すけどな。
ヒカリ「......ふふ」
ユミ「何がおかしい?」
ヒカリ「よくもまあ、上手いこと釣られていたものです。それでは、私も特殊な権限を使わせていただきましょうか?」
ユミ「はぁ!?あれは、俺達専用のやつでーー」
ヒカリ「1つ、憤怒の枠に違和感を感じるものはありませんでしたか?」
違和感?そんなもの......いや、若干周りより明るく白い部分があった。てっきり、汚れが綺麗に着いていない部分かと思っていた。まさか、偽装工作だったって言うのかよ?つか、そうだとしたらなんでヒカリが気付かねぇんだ。
ヒカリ「憤怒の権限。激情に駆られた者達を、私の意のままに操ることが出来る。さあ、抵抗する敵を皆殺しにし、彼女を私の前に連れ出しなさい。そして、あなたは......」
ユミ「ぐっ......はっ......!」
赤装束の動きに目を奪われていて、完全に油断していた。
咄嗟の反応で、何とか心臓より下の位置にまで刀をずらしたが、流石は心臓の近くってだけあって出血量が半端じゃねぇ......
マジかよ......女神権限だっていうのに、驚きの再生力とか備わってねぇのかよ......
ユミ「く......そっ......」
ヒカリ「大人しくそこで見ていなさい。これから、"地獄"が始まる瞬間を」
何とかして消えそうな意識を無理矢理耐えさせる。だけど、もう動けそうにねぇ。破壊の力を使っていただけあって、元から体への負担が相当量だったらしい。そのせいで、血を止めはしていても、体の器官が俺の体を回復させようとしない。これが、マジモンの疲れってやつなのか......わっかんねぇ......。
セリカ「ユミ......!」
ユミ「近づくな!」
近づいたら殺される。こいつは、"殺し"という行為に快楽を得ている。今はまだ大人しい方かもしれないが、ネイを殺した暁には思うがままに血を浴び続けるだろう。そんなもん、見たくねぇよ。
ヒカリ「まだ生きますか。まあいい。しばらくお仲間のところで、無駄な治癒を受けていなさい」
ユミ「グハッ......!」
奴に腹を蹴り飛ばされ、俺は鮮血を撒き散らしながらもセリカ達がいるところへと転がった。
セリカ「サモンズスピリット!アルラウネ!」
アルラウネ「アルラウネ、参上!」
緑色の精霊が俺の傷を治癒してくれる。
あぁ......少しだけ楽になっ......た......
まずいな。本格的に意識を飛ばしちまいそうだ。こんなところで倒れるわけにはならねぇ。傷を治して、もう1回立って、あいつの顔面を斬り刻んでやるまでは、倒れても倒れきれねぇ......。クソっ、もう少し持ってくれよ......俺の体。
ダークペガサスをぶっ飛ばし、1秒でも早く駆けつけられるように加速させていく。
もう平原は目と鼻の先。だが、見えるのは敵軍の赤装束のみ。どうやら、戦況はあまりよろしくないらしいな。押しているのであれば、俺達が駆けつける頃合から、もう敵軍の奥にまで攻め込んでいてもおかしくはない。
多分、敵軍の大将となるヒカリが暴れているからだろうな。あいつと同じ名前をしているせいで、その名前を口にすることに嫌悪感を感じる。その理由は、敵だった頃のヒカリを思い出すからなのかもしれない。
フェリシア「クロム様!急降下!」
クロム「......!?」
何事かと思ったが、言われた通りに俺はペガサスを地上付近にまで下ろす。直後、炎の矢が上空を過ぎ去っていった。1本や2本ではない。数十本とが過ぎ去っていったのだ。
クロム「クソっ!囲まれてしまったか......」
アラン「まずいですね......敵軍は、ざっと見た感じでは5000。対して、こちらは使えるペガサス全てを使っての出動ですから、たったの10人......」
クロム「全員、戦闘態勢だ!何としてでも切り抜ける!」
リーシア「く、クロム様!流石にこの人数は私共ではどうにもなりませんわ!」
そう言いつつも、ペガサスから降りて魔法詠唱の体勢を整えるリーシア。無理だと分かっていても、やるしかないということは理解してるらしいな。
アラン、メイ、フェリシア、ロイ、ルーダ、メノア、サラ、ダギル、リーシア。すまんな、お前らにとっては何のメリットもない戦いに付き合わせてしまって......。
クロム「だが、お前らのことは命に替えても守りきってみせる!聖龍・覚醒!」
アラン「クロム様を死守するのは私の務め!セリヤァっ!」
リーシア「テラサンダー!テラフィア!テラブリザード!」
ダギル「あーあ!本当ならイーリアスで1日終わりの祝杯上げてるところだったのになぁ!テラストーム!」
ロイ「そう言うな。帰ったら、2日分の祝杯を上げればいいだろ?」
ルーダ「それもそうだな!」
皆で声を掛け合い、互いに背中を預ける。四方八方を敵に囲まれている今、仲間の存在は大切だ。誰1人として欠けさせるな。誰1人として隊列を崩させるな。そうしなければ、この戦いには勝てない。
......もう少し時間があるのであれば、セツノの陣営と共に駆けつけられたかもしれないな。高速で移動できる手段が、イーリアス、セツノ共にペガサスくらいしかない。今回、彼らはなるべく早く追いつくと言っていた。まあ、早くて3日か4日だろう。それくらいの日数が過ぎる頃には、もうこの戦いが終わっている気がする。
メノア「クロム、コイツらやばいよ!目に正気がない......!」
フェリシア「気にしてはなりません!我らがここを切り抜けるためには、こいつらを1人残らず殺さなければなりません!私は空から奇襲します!」
フェリシアが10匹のペガサスと共に空へと舞い上がった。
サラ「フェ、フェリシア様!そんな事をしたら、弓兵に一網打尽にされてしまいます!」
サラがフェリシアを呼び止めようとするが、何かを血走っているのか、フェリシアにはその声が届いていない。
クロム「っ......クソっ!」
弓を構えた弓兵達を抑えようと思ったが、そいつらの前にたくさんの敵がいる。どれだけ全力を尽くしても、奴らがフェリシアを撃ち抜くより前に抑えることが出来そうにない。
クロム「どけ!お前ら!聖龍・ジャッジメントルイン!」
間に合わないと分かっていながらも、俺は死力を尽くして敵を打ち倒していく。全部を倒せなくても、弓兵の数を出来る限り減らせれば、フェリシアくらいの腕なら少ない矢は回避してくれるはずだ。
フェリシア「......あれは?」
フェリシアの動きが急に止まった。俺達の動きも一斉に止まった。
空から小さな光が刺し込んできた。こんな嵐の中、たった一つの光だ。反応しないわけがない。それは、敵も同じようで、その光を見つめて何事かと騒いでいる。
(あんたら!1箇所に固まってなさい!じゃないと死ぬわよ!)
突然、脳に女の声が響いてきた。その声は、俺と、自警団のみに聞こえているらしく、互いに目を合わせて1箇所に固まる。
この声に、疑問が湧かなかったのかと聞かれると、ちょっとだけ湧いたのが本音だ。でも、迷いなく動いたのには理由がある。
この声、あいつの声だ。
(OK!光の点滅が激しいから目に気を付けてね!)
一筋の光から、人の姿らしきものが見える。そいつは、自分の周囲に大量の銃火器を構えこちらを狙っている。
(全弾発射!)
この距離からでも分かる弾丸が、俺達の周りに大量に降り注いできた。嵐による大雨の粒も大概だが、これはそれ以上にヤバい。地面や、敵に当たる度に大きな爆発を起こして周囲を巻き込んでいる。ただでさえ多い弾丸だと言うのに、爆発まで起きるようじゃたまったもんじゃないな。
(オーラオラオラオラオラ!)
周囲の銃火器が、弾切れを起こす度に別の銃へと変わり、あいつ自身が握っている銃も、弾切れする度に空へと放り出し、代わりの銃を手に持って攻撃を続ける。やがて、数十秒経ち、あたりの敵ももう数人となったところで、あいつは全ての銃火器を1つにまとめ、大きなスナイパーライフルへと姿を変えさせる。
(行っけぇぇぇぇ!)
4つの属性に包み込まれた大きな弾丸が、俺達の頭上で爆発し、あたりに残った敵を1人残らず撃ち抜いていく。
クロム「......なんという所業だ」
敵は1人残らず撃ち抜かれ、皆赤い鮮血を流して死んでいる。これが、たったの数十秒で起きた出来事か。誰とは言わんが、相変わらず鬼畜な奴だ。
「あら、クロムさん。何よ、その目」
忘れもしない、あのツンデレガールの声の持ち主が、一筋の光に導かれて降りてきた。服装は、いつもの分厚いローブじゃない。なんだか、神々しく赤色を基調とした露出の多い服だ。普段、露出の少ない奴がこんな姿をしてると、ちょっと目のやり場に困るんだが......。
クロム「......生きてたんだな」
ヒカリ「生憎、昔から神様が私を死なせることを拒否しててね。図太く生きてるわよ。......久し振り、クロムさん」
クロム「ああ、久し振りだな、ヒカリ。それと、ありがとうな」
ヒカリ「ふんっ、別に、あんたらを助けたくて助けたわけじゃないわよ。ただ、あの子を取り戻すためにはあんたらの力も必要だと思ったから助けただけ。それだけよ」
クロム「はいはい」
素直じゃないな。
ヒカリ「......早く行くわよ」
クロム「ああ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ユミ「おぉらァっ!」
ヒカリ「っ......!」
追い詰めてはいる。追い詰めてはいるが、こいつの再生力のせいで一向に勝負がつかねぇ。なんなんだ?この回復量。邪龍、いや、それ以上だ。こんなんじゃ、いつまで経っても倒せねぇ。Destructionの破壊力は中々のもんだと思ったが、その威力を持ってしても倒せない相手とは......こりゃ、ヴァル達が苦戦するわけだ。
ユミ「いい加減、死んだらどうだ!」
ヒカリ「そうするわけにはいきませんねぇ。私には私の目的があるので」
ユミ「じゃあ聞いてやるよ!お前の目的はなんだ!ただネイを殺すことだけが目的じゃねぇだろ!」
ヒカリ「ええそうです。よく分かりましたね」
くっそ。攻撃を喰らいつつも余裕な表情しやがって......見ててイライラするから早く死ねや。
ユミ「ぢっ......!」
ようやく奴が反撃を見せてきた。お互いに威力が凄まじいせいで、数歩分のノックバックが発生し、俺達は距離をとる形になった。
ヒカリ「丁度いいタイミングです。ここらにいる方達全員に、私の計画について話して差しあげましょうか」
ユミ「ああ?」
ヒカリ「私の目的。それは、彼女を殺し、この世界の守護者を消したところで、この世界の何もかもを消し去ることです。それは、あなた方普通の人間を始め、海、大地、マナ、女神、更には、私に協力してくださっているザガルの兵達まで。何もかもを消し去る。そして、私自身も消え去る。それが私の計画。いえ、願い、と言ったところでしょうか」
ユミ「狂気の巻き込み自殺じゃねぇかよ......」
ヒカリ「そうかもしれませんね。ですが、私は悩んだ。悩み、苦しみ、そして選んだ。私を殺せる人物は現れない。唯一の可能性を持った者達も、私を殺すには至らなかった。だから、私はこの世界ごと消え去る。そして、二度と私という存在が生まれぬよう、この世界を愛してやまない神も殺す。そう、この世界を愛してやまない神、ネイさんのことですね」
ユミ「そんな事のためにあいつを殺すって言うのか!」
ヒカリ「ええ、そうですよ。私が完全に死ぬために、彼女を殺す。まあ、道連れみたいなものです」
ユミ「ぢっ!」
サイコパスなんてもんじゃねぇ。何をどうしたらこんなのが生まれるのかが分からねぇよ。これだから世界ってのは広いんだが、これは流石に広すぎるな。
殺さなきゃならねぇ。奴を止めるには、それしかない。いや、それ以外の選択があるのだとしても、俺はそれを取らねぇ。死を与える以外に、こいつを苦しめる方法がない。
ヒカリ「おや?ザガルの兵達がざわめき出していますねぇ」
ユミ「当たりめぇだろ。何の目的で釣られたのか知らねぇが、お前の目的が叶った暁には自分達は死ぬんだぞ?そんなの認められっかよ!」
「そうだそうだ!俺達は世界征服のためにこの身を捧げてんだ!」
「てめぇのために死ぬなんて冗談じゃねぇぞ!」
「どうやら、先に殺さなきゃならねぇのは俺達の大将らしいな!全員かかれぇぇぇ!」
赤装束の中から、ぽつりぽつりとそんな声が聞こえた。世界征服とは、またとんでもねぇ目的を掲げていたものだが、それでも一時的に味方になってくれそうなのであればいい。後で捻り潰すけどな。
ヒカリ「......ふふ」
ユミ「何がおかしい?」
ヒカリ「よくもまあ、上手いこと釣られていたものです。それでは、私も特殊な権限を使わせていただきましょうか?」
ユミ「はぁ!?あれは、俺達専用のやつでーー」
ヒカリ「1つ、憤怒の枠に違和感を感じるものはありませんでしたか?」
違和感?そんなもの......いや、若干周りより明るく白い部分があった。てっきり、汚れが綺麗に着いていない部分かと思っていた。まさか、偽装工作だったって言うのかよ?つか、そうだとしたらなんでヒカリが気付かねぇんだ。
ヒカリ「憤怒の権限。激情に駆られた者達を、私の意のままに操ることが出来る。さあ、抵抗する敵を皆殺しにし、彼女を私の前に連れ出しなさい。そして、あなたは......」
ユミ「ぐっ......はっ......!」
赤装束の動きに目を奪われていて、完全に油断していた。
咄嗟の反応で、何とか心臓より下の位置にまで刀をずらしたが、流石は心臓の近くってだけあって出血量が半端じゃねぇ......
マジかよ......女神権限だっていうのに、驚きの再生力とか備わってねぇのかよ......
ユミ「く......そっ......」
ヒカリ「大人しくそこで見ていなさい。これから、"地獄"が始まる瞬間を」
何とかして消えそうな意識を無理矢理耐えさせる。だけど、もう動けそうにねぇ。破壊の力を使っていただけあって、元から体への負担が相当量だったらしい。そのせいで、血を止めはしていても、体の器官が俺の体を回復させようとしない。これが、マジモンの疲れってやつなのか......わっかんねぇ......。
セリカ「ユミ......!」
ユミ「近づくな!」
近づいたら殺される。こいつは、"殺し"という行為に快楽を得ている。今はまだ大人しい方かもしれないが、ネイを殺した暁には思うがままに血を浴び続けるだろう。そんなもん、見たくねぇよ。
ヒカリ「まだ生きますか。まあいい。しばらくお仲間のところで、無駄な治癒を受けていなさい」
ユミ「グハッ......!」
奴に腹を蹴り飛ばされ、俺は鮮血を撒き散らしながらもセリカ達がいるところへと転がった。
セリカ「サモンズスピリット!アルラウネ!」
アルラウネ「アルラウネ、参上!」
緑色の精霊が俺の傷を治癒してくれる。
あぁ......少しだけ楽になっ......た......
まずいな。本格的に意識を飛ばしちまいそうだ。こんなところで倒れるわけにはならねぇ。傷を治して、もう1回立って、あいつの顔面を斬り刻んでやるまでは、倒れても倒れきれねぇ......。クソっ、もう少し持ってくれよ......俺の体。
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