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最終章 【創界の物語】
最終章34α 【恨み】
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「ごめん……ごめね……シロップ……」
白くて広い、そして何も無いこの部屋で私は1人、涙を流していた。
私がもっとしっかりしてれば救えたはずの命。いや、私がもっと強ければ死なせずに済んだ命。私を助けるためだけに死んでしまった小さな命……。
奇跡的にウラノスを召喚出来たお陰で、私は光楼宗のミカヤに勝つことが出来た。ミカヤは胸に大きな穴を空けており、それが確実な死因であることは誰の目からも一瞭だった。
初めて、私の体に私ではない何かを入れた。流石は精霊界1位の精霊。力の1割も出していないというのに相手を圧倒し、見事に勝利してくれた。ーーそれほどの力があるというのなら、もっと早くに使えば良かった。今、こうして涙を流せるほどの余力があるのだから、躊躇わずにもっと早くから使っておけばよかった。
「そうすれば、シロップを死なせずに済んだのに……」
後悔だけが募る。敵に勝てた高揚感なんて微塵も湧いてこない。ただただ涙を流す。それしか私には出来なかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリ「よし、開いたわ!」
キーを調べ続けて約1時間。ようやく正解の番号を引き当てた。
いやぁ、大変大変だったわ。誰よ8桁の番号にしようとか考えた奴。解除するまで余計に時間がかかっちゃったじゃない、まあ防犯としてはよく出来てるのだけれど。
ヴァル「おっしゃ、じゃあ殴り込みだな!」
「ええ、さっさとセリカと合流しましょ」
さっき、僅かな地響きがしてきたけど、セリカは大丈夫かしら?いくら最強の精霊ウラノスがいるとは言え、召喚自体はまだ出来ないってネイが言ってたし、光楼宗の誰かとバッタリなんてことになってないといいのだけれど。
ネイ「多分ですけど、もう遭遇しちゃってますね。セリカなら戦わずに逃げ回ってくれていると思うのですが……」
「それもこの地下迷宮がどれだけの広さを誇っているかにもよるわね」
ネイ「なんなら、さっきから大きな気配が2つ増えたような気がするんですけどね」
嘘……。全然気付かなかった。
フウロ「大きな気配が2つ?」
ユミ「光楼宗が新たに2人やって来てるという事ですか?ヨミさん」
ネイ「片方は光楼宗のライザでいいと思いますけど、もう片方が何なのか検討がつかないんですよね。なんというか、凄い憎悪に満ちたマナを当たり散らしてるってのは分かるんですけど。あ、女の人です」
憎悪を撒き散らす女の人ねぇ……。
「「 それってもしかして…… 」」
私とヴァルの声が重なる。
ユミ「あれ?2人ともご存知なんですか?」
ヴァル「いや、ご存知っていうか、俺が知ってる中だと、1回戦ったことあるんだよな。なあ、ヒカリ」
「ええ。確か、カミラとかいう奴だったわよね」
確かに、あれならば憎悪を撒き散らすって表現も合っている気がする。光楼宗に似たような奴が他にいなければの話だけれど、ジーダがここにいたことを考えて彼女がここにいてもおかしくはないわね。
「一応警戒はしといた方が良さそうだけれど、多分大丈夫でしょうね。光楼宗の中では1番手応えがない相手だったし」
ライオス「そうとなれば、もう片方のライザ及び、この地下迷宮に最初からいたもう1人を先に見つけるべきだな」
デン「ですね、ライオスさん。強い奴とは全力の状態で当たれた方がいいですから」
ーーそうして、私達は複雑な地下迷宮を走り回った。私とネイが方向音痴を起こすのはいつもの事だけど、ここまで迷路要素が強くなっているーー迷宮って言ったからそうなんだけどーーと、私達以外でも平気で迷いそうなのよね。出来ることなら2手3手に分かれて探したいところだけれど、相手が相手だしなるべく固まって動いた方がいいのは明白。よって、セリカを助けに行けるのはまだまだ先になりそうだわ。
やがて、1つの大きな扉が見えてきた。隣には忌々しい番号入力式のキーがあるが、どうやらこれは内側の方らしく、ボタン1つで開いてくれた。
「セリカ!」
白くて広い、そして何も無いこの部屋の中心に、セリカがシロップを抱えて蹲っていた。近くには青色のドレスに身を包んだエルフが血を吐いて倒れている。まさかとは思うけど……
フウロ「光楼宗と戦った……ということか」
ライオス「それも、まさか勝利を収めているとはな」
相手が大したこと無かったって事なのでしょうけど、それにしてはこのエルフ。死んでいるというのに漂わせているマナの量が尋常じゃない。
これを言うのはどうかとも思うけど、とてもセリカが勝てるような相手だとは思えない。
ネイ「ーーシロップ!?」
色々と考えを巡らせていると、何かに気付いたネイが慌ててセリカが抱きしめていたシロップを取り上げる。その瞬間、私達は全員気付いた。
ネイ「嘘……」
シロップの小さな体の中心に、あのエルフに負けず劣らずの穴が空いている。まるで、互いに相打ちしたんじゃないかと思うくらい同じ位置に。
セリカ「ーーごめん……ネイりん……。シロップは、私を庇って……」
ネイ「っ……。セリカが、生きてて良かったです」
苦しそうにネイがそう言った。それを聞いてセリカが大きな声で泣き出した。
セリカ「ごめん……ごめんなさい……私の、私のせいで……」
ネイ「大丈夫です、セリカ。あなたが生きてくれていた。それだけで大丈夫です」
セリカ「でも、でも……!」
ネイ「シロップは私のために1000年も生きてくれたんです。だから、もう安らかに眠らせてあげてください。最後に、誰かの命を守れた彼を誇ってあげてください」
そう言って、ネイはセリカにシロップの体を渡した。あの子なら、自分の世界の中で眠らせてあげることも出来るというのに、ネイはセリカにシロップを引き渡した。
ネイ「ーー盗み聞きとはお行儀が悪いですね。言っておきますが、今の私は最高に機嫌が悪いですよ」
そう言い、ネイが先に続く扉の方に向けて巨大な無属性の球を放った。
激しい爆発音と共に扉が粉々に砕け落ち、更にその直後、瓦礫の中から巨大な雷が鳴り響いて更なる爆発を巻き起こした。
ライザ「だァー!クソっ!だからテメェが嫌いなんだよ!」
ライザが地面を殴り、無秩序に雷を流す。そして、先程の爆発で吹き飛んだ左腕を驚異的な速さで再生させる。
ネイ「あなたも光楼宗でしたよね」
ライザ「ああ、そうだ!俺ァ光楼宗だ!そしてテメェを殺す!」
ネイ「殺されるのがどちらになるのか、身をもって知ると良いですよ」
ネイとライザが睨み合い、火花を散らす。このままでは、みんなを巻き込む激しい戦闘になるだろう。セリカはもう戦えないと思うし、ネイが戦う場にヴァルと私以外の人間は混ぜられない。
ーーそれに、このエルフは死んでしまったせいで聞けなかったけど、この男には確認しておかなきゃいけないことがある。だから、ネイが本格的に戦い出す前に、私は1歩前に出て、彼に銃口を突きつける。
ライザ「あぁ?なんだお前」
凄い目付きだ。恨み以外の感情が一切篭ってない。
「1つ、聞きたいことがあるんだけどいいかしら?それさえ聞けたら後は好きにしていいから」
ライザ「ちっ、1つだけだ。それに答えたらテメェも殺す!」
「そう。じゃあ聞くわ。ーーあなた、アテナって名前を知ってる?」
ライザ「アテナ……?」
銃口を突きつけられたライザは、自分に対して殺意が向けられているにも関わらず、呑気に顎に手を当てて記憶を掘り返している。
今までの相手なら、ここですぐに「知らない」と口にしていた。なのに、この男は悩んでいる。ーー引き金にかかる指に力が入る。
ライザ「ーーあー、思い出した!テメェあの時のクソガキだったのかー!」
「っ……!?」
ライザ「あー、なるほどなー。テメェがあの女の妹だったってわけかァ。姉貴の死体を見てバカみてぇに泣いてたテメェのザマは実に滑稽滑稽。あのクソジジイ程じゃねぇが、笑いが込み上げてくんなァ!」
何がそんなに面白いのか、ライザが面白そうにゲラゲラと笑っている。
引き金を引く力が更に強くなる。もう少しだけ待て。あいつの話を全部聞いてからでも遅くはない。
ライザ「本っ当、あの時は何であの女を殺さなきゃいけねぇのか分かんなかったが、こういう事だったんだなァ!ハッハッハッ!」
「っ……!」
まだだ。まだ落ち着いて……
ライザ「テメェの姉貴に銃口突きつけた時に言われたんだよ!『ラクだけは!ラクだけは!』ってな!バカな女だったぜ。自分がどこの組織に属してんのかも知らず、テメェが家に置いてる義妹が何なのかも知らずに死んじまいやがった!まあ、その時の俺もあのクソガキが何だったのかは知らなかったがな!本当っ、バカな女だったぜ!」
その言葉を聞いた瞬間、私は躊躇っていた引き金を迷いなく引いた。
ライザ「……あ?」
ライザの喉仏から血が吹き出す。しかし、それは一瞬の出来事に過ぎず、すぐさま回復した。
「もういいわ、ライザ。あなた、喋る必要もネイと戦う必要もないから」
そのまま、私はライザを蜂の巣にするかのように球を撃ち続けた。創世の女神の力を使い、ライザの周囲に大量の機関銃を並べ、逃げ場を無くす。
ライザ「クソアマが、調子に乗ってんじゃーー」
弾丸の撃ち込みでライザの両腕を落とす。だが、ライザは驚異的な再生力で失った腕をすぐに取り戻す。
「どうしたの?ライザ。驚異的な再生力を持ってる割には歯切れが悪いわね」
ライザ「クソがちょーー」
ライザを取り囲んだ機関銃がライザを蜂の巣にする。ライザが言葉を発する度に私は容赦なく引き金を引く。
ライザ「ガハッ……クソっ……!」
「ヴァル達は先に行ってて。こいつは私が殺しとくから」
ライザが血を吐いて倒れた隙を見て、私はヴァル達に扉の先へ行くよう促す。
ヴァル「ヒカリ。任せていいんだな」
「大丈夫よ。あんな雑魚相手に私は死なないから」
ヴァル以外のみんなは不安そうに私のことを見てきたが、やがて、ヴァルが扉の先を目指して走り出すと、みんなもそれにつられて先に向かった。
ライザ「行かせるかよ!」
ライザが雷を飛ばし、ヴァル達の進路を妨害する。
「敵を前に余所見とはいい度胸してるじゃない」
すぐさまライザの腕に無数の弾丸を撃ち込み、ライザが腕を押さえて蹲ることによって雷が消える。それを見て、ヴァル達はさっと扉の先に進んで行った。
ライザ「っテメェ……!」
「どうしたの?再生しないの?」
ライザ「っ!クソっ!」
ライザが無様な格好で逃げ出した。
どこに逃げたって無駄だ。私の目から逃げられる人なんていない。いたとしたら、それは私の方が先に死んだ時だけ。でも私は死なない。なぜならーー
「私は、世界に愛されているからーー」
白くて広い、そして何も無いこの部屋で私は1人、涙を流していた。
私がもっとしっかりしてれば救えたはずの命。いや、私がもっと強ければ死なせずに済んだ命。私を助けるためだけに死んでしまった小さな命……。
奇跡的にウラノスを召喚出来たお陰で、私は光楼宗のミカヤに勝つことが出来た。ミカヤは胸に大きな穴を空けており、それが確実な死因であることは誰の目からも一瞭だった。
初めて、私の体に私ではない何かを入れた。流石は精霊界1位の精霊。力の1割も出していないというのに相手を圧倒し、見事に勝利してくれた。ーーそれほどの力があるというのなら、もっと早くに使えば良かった。今、こうして涙を流せるほどの余力があるのだから、躊躇わずにもっと早くから使っておけばよかった。
「そうすれば、シロップを死なせずに済んだのに……」
後悔だけが募る。敵に勝てた高揚感なんて微塵も湧いてこない。ただただ涙を流す。それしか私には出来なかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヒカリ「よし、開いたわ!」
キーを調べ続けて約1時間。ようやく正解の番号を引き当てた。
いやぁ、大変大変だったわ。誰よ8桁の番号にしようとか考えた奴。解除するまで余計に時間がかかっちゃったじゃない、まあ防犯としてはよく出来てるのだけれど。
ヴァル「おっしゃ、じゃあ殴り込みだな!」
「ええ、さっさとセリカと合流しましょ」
さっき、僅かな地響きがしてきたけど、セリカは大丈夫かしら?いくら最強の精霊ウラノスがいるとは言え、召喚自体はまだ出来ないってネイが言ってたし、光楼宗の誰かとバッタリなんてことになってないといいのだけれど。
ネイ「多分ですけど、もう遭遇しちゃってますね。セリカなら戦わずに逃げ回ってくれていると思うのですが……」
「それもこの地下迷宮がどれだけの広さを誇っているかにもよるわね」
ネイ「なんなら、さっきから大きな気配が2つ増えたような気がするんですけどね」
嘘……。全然気付かなかった。
フウロ「大きな気配が2つ?」
ユミ「光楼宗が新たに2人やって来てるという事ですか?ヨミさん」
ネイ「片方は光楼宗のライザでいいと思いますけど、もう片方が何なのか検討がつかないんですよね。なんというか、凄い憎悪に満ちたマナを当たり散らしてるってのは分かるんですけど。あ、女の人です」
憎悪を撒き散らす女の人ねぇ……。
「「 それってもしかして…… 」」
私とヴァルの声が重なる。
ユミ「あれ?2人ともご存知なんですか?」
ヴァル「いや、ご存知っていうか、俺が知ってる中だと、1回戦ったことあるんだよな。なあ、ヒカリ」
「ええ。確か、カミラとかいう奴だったわよね」
確かに、あれならば憎悪を撒き散らすって表現も合っている気がする。光楼宗に似たような奴が他にいなければの話だけれど、ジーダがここにいたことを考えて彼女がここにいてもおかしくはないわね。
「一応警戒はしといた方が良さそうだけれど、多分大丈夫でしょうね。光楼宗の中では1番手応えがない相手だったし」
ライオス「そうとなれば、もう片方のライザ及び、この地下迷宮に最初からいたもう1人を先に見つけるべきだな」
デン「ですね、ライオスさん。強い奴とは全力の状態で当たれた方がいいですから」
ーーそうして、私達は複雑な地下迷宮を走り回った。私とネイが方向音痴を起こすのはいつもの事だけど、ここまで迷路要素が強くなっているーー迷宮って言ったからそうなんだけどーーと、私達以外でも平気で迷いそうなのよね。出来ることなら2手3手に分かれて探したいところだけれど、相手が相手だしなるべく固まって動いた方がいいのは明白。よって、セリカを助けに行けるのはまだまだ先になりそうだわ。
やがて、1つの大きな扉が見えてきた。隣には忌々しい番号入力式のキーがあるが、どうやらこれは内側の方らしく、ボタン1つで開いてくれた。
「セリカ!」
白くて広い、そして何も無いこの部屋の中心に、セリカがシロップを抱えて蹲っていた。近くには青色のドレスに身を包んだエルフが血を吐いて倒れている。まさかとは思うけど……
フウロ「光楼宗と戦った……ということか」
ライオス「それも、まさか勝利を収めているとはな」
相手が大したこと無かったって事なのでしょうけど、それにしてはこのエルフ。死んでいるというのに漂わせているマナの量が尋常じゃない。
これを言うのはどうかとも思うけど、とてもセリカが勝てるような相手だとは思えない。
ネイ「ーーシロップ!?」
色々と考えを巡らせていると、何かに気付いたネイが慌ててセリカが抱きしめていたシロップを取り上げる。その瞬間、私達は全員気付いた。
ネイ「嘘……」
シロップの小さな体の中心に、あのエルフに負けず劣らずの穴が空いている。まるで、互いに相打ちしたんじゃないかと思うくらい同じ位置に。
セリカ「ーーごめん……ネイりん……。シロップは、私を庇って……」
ネイ「っ……。セリカが、生きてて良かったです」
苦しそうにネイがそう言った。それを聞いてセリカが大きな声で泣き出した。
セリカ「ごめん……ごめんなさい……私の、私のせいで……」
ネイ「大丈夫です、セリカ。あなたが生きてくれていた。それだけで大丈夫です」
セリカ「でも、でも……!」
ネイ「シロップは私のために1000年も生きてくれたんです。だから、もう安らかに眠らせてあげてください。最後に、誰かの命を守れた彼を誇ってあげてください」
そう言って、ネイはセリカにシロップの体を渡した。あの子なら、自分の世界の中で眠らせてあげることも出来るというのに、ネイはセリカにシロップを引き渡した。
ネイ「ーー盗み聞きとはお行儀が悪いですね。言っておきますが、今の私は最高に機嫌が悪いですよ」
そう言い、ネイが先に続く扉の方に向けて巨大な無属性の球を放った。
激しい爆発音と共に扉が粉々に砕け落ち、更にその直後、瓦礫の中から巨大な雷が鳴り響いて更なる爆発を巻き起こした。
ライザ「だァー!クソっ!だからテメェが嫌いなんだよ!」
ライザが地面を殴り、無秩序に雷を流す。そして、先程の爆発で吹き飛んだ左腕を驚異的な速さで再生させる。
ネイ「あなたも光楼宗でしたよね」
ライザ「ああ、そうだ!俺ァ光楼宗だ!そしてテメェを殺す!」
ネイ「殺されるのがどちらになるのか、身をもって知ると良いですよ」
ネイとライザが睨み合い、火花を散らす。このままでは、みんなを巻き込む激しい戦闘になるだろう。セリカはもう戦えないと思うし、ネイが戦う場にヴァルと私以外の人間は混ぜられない。
ーーそれに、このエルフは死んでしまったせいで聞けなかったけど、この男には確認しておかなきゃいけないことがある。だから、ネイが本格的に戦い出す前に、私は1歩前に出て、彼に銃口を突きつける。
ライザ「あぁ?なんだお前」
凄い目付きだ。恨み以外の感情が一切篭ってない。
「1つ、聞きたいことがあるんだけどいいかしら?それさえ聞けたら後は好きにしていいから」
ライザ「ちっ、1つだけだ。それに答えたらテメェも殺す!」
「そう。じゃあ聞くわ。ーーあなた、アテナって名前を知ってる?」
ライザ「アテナ……?」
銃口を突きつけられたライザは、自分に対して殺意が向けられているにも関わらず、呑気に顎に手を当てて記憶を掘り返している。
今までの相手なら、ここですぐに「知らない」と口にしていた。なのに、この男は悩んでいる。ーー引き金にかかる指に力が入る。
ライザ「ーーあー、思い出した!テメェあの時のクソガキだったのかー!」
「っ……!?」
ライザ「あー、なるほどなー。テメェがあの女の妹だったってわけかァ。姉貴の死体を見てバカみてぇに泣いてたテメェのザマは実に滑稽滑稽。あのクソジジイ程じゃねぇが、笑いが込み上げてくんなァ!」
何がそんなに面白いのか、ライザが面白そうにゲラゲラと笑っている。
引き金を引く力が更に強くなる。もう少しだけ待て。あいつの話を全部聞いてからでも遅くはない。
ライザ「本っ当、あの時は何であの女を殺さなきゃいけねぇのか分かんなかったが、こういう事だったんだなァ!ハッハッハッ!」
「っ……!」
まだだ。まだ落ち着いて……
ライザ「テメェの姉貴に銃口突きつけた時に言われたんだよ!『ラクだけは!ラクだけは!』ってな!バカな女だったぜ。自分がどこの組織に属してんのかも知らず、テメェが家に置いてる義妹が何なのかも知らずに死んじまいやがった!まあ、その時の俺もあのクソガキが何だったのかは知らなかったがな!本当っ、バカな女だったぜ!」
その言葉を聞いた瞬間、私は躊躇っていた引き金を迷いなく引いた。
ライザ「……あ?」
ライザの喉仏から血が吹き出す。しかし、それは一瞬の出来事に過ぎず、すぐさま回復した。
「もういいわ、ライザ。あなた、喋る必要もネイと戦う必要もないから」
そのまま、私はライザを蜂の巣にするかのように球を撃ち続けた。創世の女神の力を使い、ライザの周囲に大量の機関銃を並べ、逃げ場を無くす。
ライザ「クソアマが、調子に乗ってんじゃーー」
弾丸の撃ち込みでライザの両腕を落とす。だが、ライザは驚異的な再生力で失った腕をすぐに取り戻す。
「どうしたの?ライザ。驚異的な再生力を持ってる割には歯切れが悪いわね」
ライザ「クソがちょーー」
ライザを取り囲んだ機関銃がライザを蜂の巣にする。ライザが言葉を発する度に私は容赦なく引き金を引く。
ライザ「ガハッ……クソっ……!」
「ヴァル達は先に行ってて。こいつは私が殺しとくから」
ライザが血を吐いて倒れた隙を見て、私はヴァル達に扉の先へ行くよう促す。
ヴァル「ヒカリ。任せていいんだな」
「大丈夫よ。あんな雑魚相手に私は死なないから」
ヴァル以外のみんなは不安そうに私のことを見てきたが、やがて、ヴァルが扉の先を目指して走り出すと、みんなもそれにつられて先に向かった。
ライザ「行かせるかよ!」
ライザが雷を飛ばし、ヴァル達の進路を妨害する。
「敵を前に余所見とはいい度胸してるじゃない」
すぐさまライザの腕に無数の弾丸を撃ち込み、ライザが腕を押さえて蹲ることによって雷が消える。それを見て、ヴァル達はさっと扉の先に進んで行った。
ライザ「っテメェ……!」
「どうしたの?再生しないの?」
ライザ「っ!クソっ!」
ライザが無様な格好で逃げ出した。
どこに逃げたって無駄だ。私の目から逃げられる人なんていない。いたとしたら、それは私の方が先に死んだ時だけ。でも私は死なない。なぜならーー
「私は、世界に愛されているからーー」
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