グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】

第0章4 【旅人】

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ゼラ「やっほー!外の世かーい!」

 約3時間の船旅を終え、照り返しのキツい夕陽の当たる港町『シージュアル』へと俺達は無事にたどり着いた。

 行きが1時間もかからなかったんだから帰りもそんくらいだろうと鷹を踏んでいたが、実際は潮の流れが丁度逆向きになっていたせいでかなり時間がかかっちまった。お陰様で、もう日の暮れる時間帯だ。まあ、こんな時間でもあのババアは本部にいるだろうな。

ゼラ「わーい!」

 子供のようにはしゃぐゼラであるが、俺達の心中はかなり暗くなっている。なんでかって言うと、あーだこーだ言ってもあのババアに成果なしで帰ることは怖い。マジで殺される。しかも、こんなガキを代わりに連れ帰ったなんて言おうものなら......この先は想像もしたくねぇな。

シャウト「ラウス、ボケっとしてないでさっさと行くぞ」

「おう......」

 こいつはいいよなぁ。なんか知らねぇけど、あのババアに気に入られてるからなぁ。

 はぁ......。俺は内心ビクビクとしながらも、シャウト達の後ろを歩き、本部へと向かった。さっきまでの夕陽はすっかりと沈み、辺りはすっかりと暗くなっちまった。少し急いだ方が良さそうだな。

ゼラ「ところで皆さん、どこに向かってるんですか?」

シャウト「俺達の本部だ」

ゼラ「ただの海賊じゃないんですか?」

モルガン「ああそうだ。まあ、海賊って言うよりかは、トレジャーハンターって言った方がしっくり来るけどな」

ゼラ「ふーん?」

 まだ明るさが多少残ってるとは言え、暗い夜道で男3人と幼女1人。完全に怪しい奴らに見えるな、俺達。

 まあ、暗くなれば人っ子一人いない道だし、怪しまれることはないだろうっとと、もう本部の目の前だ。

シャウト「ここだ。まだ明るいな」

ゼラ「中に誰かがいるってことですよね?」

「多分、マスターだな。相変わらず働きもんだぜ」

 俺は嫌味たっぷりにそう言い、最近建て替えたらしいけど相変わらずガタつく扉を押し開ける。そして、俺はモルガンとシャウトに、ゼラと一緒に待っていてくれと伝え、1人本部へと足を踏み込む。

「辛気臭ぇガキを連れて来たな。お主ら」

「うっせーな。その顔だと、俺らがやって来たこと全部分かってんだな」

「鼻がいいんでな」

 鼻関係ねぇだろ......。

 開幕早々、俺とバチバチーー俺から一方的にだがーーしてるのは、この海賊団本部マスター『シエル』。すっかりと白髪に染っちまったババアだが、これでも昔は7つの大海を股に掛ける大海賊だったらしい。そんな伝説どこに行っても聞かねぇし、この世界に7つも大海ねぇし。

「で、知ってるなら知ってるで、今度は何をご所望だ?」

シエル「話が早うて助かるわい」

 そこでババアはニヤリと笑い、不気味にもこちらを見上げてきた。

シエル「あの島にあった宝石。名を『グランストーン』と言うらしい」

「はーそうか」

 なんで知ってんだよってツッコミを入れても、どうせ無視して話を進められるから俺は軽く聞き流そうとする。

シエル「言いたいことは分かるじゃろう?」

「どうせそのグランストーンとやらを探し出して来いってんだろ?分かってんよ。んで、そのグランストーンとやらはどこにあるんだ?」

シエル「さあな」

「さあなって、おいおい......」

 何でも知ってるくせに、そこだけは知らねぇのかよ......肝心な時に役に立たねぇ情報網だな。

シエル「少なくとも、誰かがあの島から盗んでいったことだけは確かじゃ。それも、お主らが手に入れるよりちょっと前にな」

「詳しいな。何も聞かねぇけど。んで、盗まれたってことが分かってんのに、なんでその盗んだ相手が分かんねぇんだよ」

シエル「さあな。何でじゃろうな」

 マジでこのババア1回ぶっ飛ばしてやりてぇな。俺の右手が動くより先にその口閉じとけよ、このクソババアが。

シエル「まあ、とにかく。お主らに新しい任務を与える。この世界の誰かが盗んだ秘宝『グランストーン』を見つけ出し、ここに持ってこい。期限は定めんが、なるべく早うにな」

「はぁ!?なんでんなめんどくせぇ事をしなくちゃならねぇんだよ!」

シエル「お主が持ってきた案件じゃろうがい。なぁに、そこの小娘の力を借りれば一瞬で終わるじゃろう」

「小娘?」

シエル「ほれ、そこにおる」

 そこ、と言ってババアが指したのは執務机の隅の方。そこには、外の方でモルガンとシャウトに見張りをさせていたはずのゼラがいる。小さくて全然気づかんかった......いや、そうじゃなくて。

「なんでお前がいるんだよ」

ゼラ「いえ。あの2人に『時間がかかってるから、ちょっと様子を見てこい』と頼まれまして」

「本当のところは」

ゼラ「いやぁ。あの2人ボケーッとしてたから、今ならこっそり忍び込んでもバレないんじゃないかなぁっと思いまして、ちょっくらトレジャーハンターの本部とやらを見学させていただきました!」

 ベラベラと嘘偽りなく回る舌だな。人生誘導してやらねぇと、こいつもババアみたいな感じになりそうだ。

シエル「こやつが、お主らが連れ帰ってきたという小娘じゃな」

「ああそうだよ。宝の代わりに持ってきたガキだ。で、それはそれとして、役に立つってのはどういう事だ?」

シエル「簡単な話じゃ。いくら儂とて、宝の見た目までは分かるまい。じゃが、その小娘なら宝の見た目を知っておる。目的の物がどんなものか分からないうちは、何を見つけても目標達成とは行かんからな」

「なら誰が盗んだのかくらい調べろよ」

シエル「それはお主らが世界を旅する途中で集めれば良いじゃろう」

「......」

 クソめんどくせぇ......

 あーあ、なーんでこんなトレジャーハンター生活しなきゃならねぇのかなぁ。

ゼラ「旅......いい響きですね!」

 そんな俺の思いとは裏腹に、ゼラだけは目を輝かせてババアの方を見ていた。

シエル「ほっほっほっ。若いお主にはキラキラとして見えるか。旅というものが」

ゼラ「はい!とってもいい響きです!」

シエル「人生は常に旅人。お主も、若いのであればたくさんの世界を見て、"自分"というものを見つけ出すんじゃよ。その為の手段なら、そこに丁度いいものがあるからのう」

「ちっ」

ゼラ「はい!利用させていただきます!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 んで、翌朝。

シャウト「船の準備は出来ている。さっさと乗れ」

 シャウトが、俺達4人での旅にしてはそこそこにデカい船の上から呼びかける。

 よくも、こんな日の出きってない朝から働けるものだ。尊敬通り越して呆れるぜ。

 まあ、俺は何を言うでもなく、船に乗り込みシャウトの隣に立つ。

「朝からお勤めご苦労さん。お前はあのババアに何の文句もねぇのかよ」

シャウト「盗賊なんぞに身を落とした時点でこうなる事は分かりきっている」

 ああそうかい。そうだよ、俺らは盗賊だよ。ったく。

「モルガンとゼラはどうした?」

シャウト「モルガンは知らんが、ゼラは船の中で寝てる。まるで子供みたいにな」

「子供そのものだろ」

シャウト「見た目だけはな」

「ああ?」

 何言ってんだこいつ。見た目だけじゃなく、誰が見ても中身含めて立派に子供だろうが。

シャウト「お前はバカだから分からんかもしれんが、ゼラはとんでもない奴だ。本人は自覚していない力がある」

「何でそんなんが分かんだよ」

シャウト「さあな。勘というやつかもしれん」

「勘かよ......」

シャウト「気をつけた方がいい。俺達はマスターに言われてあの島に行ったが、もしかしたら、それは偶然ではなく彼女が起こした必然の出来事だったのかもしれない」

「勘なのによくそこまで言い切れるな。まあいいや。んで、必然ってどういうことだよ」

シャウト「分からん」

 こいつ、本当に何が言いたいの?俺にはさっぱり理解出来ねぇんだが。

 ......でも、こいつがなんか言い出した時は、大抵当たるんだよな。そのせいで、何が言いたいのか理解できなくても、無駄に警戒しなきゃならなくなる。精神にすごく悪い。

シャウト「まあ、俺自身もよく分からんが、ゼラに対しては少し警戒しといた方がいいかもしれん。敵ではないんだがな」

「あっそう。分かったよ......にしても、モルガンの奴遅ぇな」

シャウト「そうだな。......いや、噂をすればなんとやらだ」

 通りの角からモルガンが全力ダッシュでこちらに向かってきているのが見えた。俺は手を振ってモルガンを歓迎しようとするが、肝心のモルガンは、まるで何かから逃げるようにして表情を強ばらせている。

モルガン「お前ら!今すぐ船を発進させろ!」

「......?」
シャウト「......?」

 俺とシャウトは顔を見合わせて、互いに疑問符を浮かべる。

 何が何だか分からないままモルガンを船に乗せ、シャウトは操縦室へと向かい、言われた通りに船を発進させる。

「どうしたんだ?モルガン。そんなに慌てて」

モルガン「た、大変なことになった......いや、大変な奴らが現れた......」

 大変な奴ら?なんじゃそら。

モルガン「あ、あれだ......!」

「......?」

 眉間に皺を寄せ、ついさっきモルガンが曲がってきた通りの角を見る。すると、そこから大量の筋肉質な男達がダダダダダッと駆け出してきた。

モルガン「まさか、ツケが3倍に膨れ上がってるとは思わなかったな......」

「テメェ何してんだ!?ツケは作るな!人に金貸すな!酒には溺れんな!これ、人生の掟!あのババアがよく言ってた事じゃねぇか!」

モルガン「い、いやぁ。まさか、ちょっとやってただけなのに、ああも激情されるとは思わなかったんでな」

 それ、絶対ちょっとじゃねぇだろ。もう、夜逃げするしかねぇってくらいに借金作ってんだろ。もう、ツケなんて甘い表現しねぇぞ?借金って言ってやるからな?

 男達がこちらに飛びつく前に、船は発進し、豪快な音と共に大海原へと漕ぎ出した。一瞬、モルガンを突き落としてやろうかとも考えたが、なんか余計に面倒なことになる気がしたので、全てをマスターに託す覚悟で俺は船の内部へと引きこもった。

「旅ってのは、やっぱ不足事しか起きねぇよなぁ」

 シャウトは冷静に舵を切り、モルガンは何かに怯えるようにして頭を抱え、起きてきたばかりのゼラは眠そうに眼を擦る。

 長い長い旅になりそうだな、こりゃ。

「なあ、シャウト。最初の目的地はどこだ?」

シャウト「海を挟んだ向こう側の国。......そうだな。盗まれたってことだから、盗賊の多い『ステイネス』に行こうかと思う」

「マジかよ。あそこ、クソ治安悪ぃって有名じゃねぇか。いきなり本番行くんじゃなくて、近くで情報収集してからにしねぇか?」

シャウト「まあ、それでもいいだろうな。どこに行くにせよ、長旅になることは確実だ。遠くから見て、今は無理そうだと判断したら別のところに行こう」

「あいよ」
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