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IIIStorys 【勝利の女神】
第12章19 終章 【勝利の女神】
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ーー2年後。
ヴァル「おい!誰だ!俺のプリンまた食った奴!」
またやかましい声と共にヴァルが大慌てで地下から駆け上がってきた。
ヴェルド「知らね」
グリード「知らねぇなぁ」
ライオス「知らん」
ヴァル「嘘はついてねぇっぽいな。んじゃあれか。またフウロか!またフウロなのか!」
フウロ「私でもない」
ヴァル「珍しいな」
「珍しいって、そもそも他人のプリンを平気で食べるこの集団の方がおかしいと思うけどね」
この2年、特に変わったことなんてなかった。むしろ、変わらなさすぎて逆に安心する毎日。
今までみたいに突然変な戦いに巻き込まれたり、誰かがいなくなったりなんてことはない。完全に平和そのもの。あ、でも仕事が無くなったわけじゃない。むしろ仕事は王都での決戦以来、増え続ける一方。で、みんながいきなりそんな大量の仕事をこなせるわけがなく、依頼掲示板には大量の依頼書が貼り付けられてる。これ早くどうにかしなきゃね。
ヴァル「だー、クソ!怪しい奴全員嘘ついてねぇってなったら本当誰なんだよ!シアラ!お前か!?」
シアラ「シアラはここにはいませーん」
ヴァル「いるじゃねぇか!」
シアラ「とりあえずシアラはそこまで食い意地は張ってませーん。ヴェルド様への恋心だけでお腹いっぱいでーす」
ヴァル「ああそうだったな。ヴェルド、早く消化させてやれ」
ヴェルド「はぁ!?」
そういや、2年経っても未だにくっつかないんだよなぁ。このバカップル。
ヴァル「で、結局誰なんだ!俺のプリン食った奴!」
ネイ「あの、それだったら多分私が食べちゃいました」
ヴァル「え??」
バツが悪そうに小さく手を挙げ、ネイりんがそう言った。
ネイ「ちょっとお腹が空いてたもので、誰かのってのは分かってたんですけど……」
おや、これは珍しい。まさかネイりんが人の物を食べるだなんて。やっぱり出産が終わって一月も経ってないし、体がそういうのを求めちゃってるのかな?
……っと、そういやこの2年で一応の変化はあった。それは、前述したようにネイりんが出産したこと。本当、天使みたいに可愛らしい女の子を産むもんだから、やっぱ持ってるんだなぁって2人の顔を見ながらため息をついたことを私は今でも覚えてる(1ヶ月も経ってないけどね)。
ヴァル「あー、お前か。んじゃもういいわ。買い直してくる」
ネイ「あ、だったら私が……」
ヴァル「いいって。あんま無理すんな。それに、雨もなんか来そうな感じだし、俺ならひとっ飛びで行けるからさ」
ネイ「……分かりました」
そう言って、ヴァルは本当にひとっ飛びで商店街の方へと飛び出して行った。しれっと人間離れした技を見せるところは、相変わらず力の使い方が雑だなってちょっと思う。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「っと、本当に雨降って来やがった……」
帰り道、ポツポツと雨が降り出し、やがてそれは勢いを増して大雨へと切り替わる。
さっきまであんなに晴れてたってのに、いきなりこんな雨か。まあ、神様になったせいなのか何なのかは知らねぇけど天気が分かるから別にいいんだけどな。
「えっと、俺のプリンと、ネイのためにドーナツと買って、後はミラからのお使いか」
帰り道にでも買えばいいだろうと思ってたが、案外店仕舞いが早くて買えそうにない。仕方ねぇ。ミラもこれくらいそうなるって分かってるだろうし平謝りで許してもらうとするか。
「……にしても、なんか嫌な雨だな」
特段、変わった雨模様ではない。だが、何となくこの灰色に覆われた雲と激しく振り続ける雨に、なぜだか妙な既視感がある。それも、あまり良くない方向に進んでるかのような、そんな不思議な感覚だ。
神様になったからって、俺に未来予知の力が芽生えたわけじゃない。手に入れたものとすれば、天気が分かるとか、ネイみたいに色んな属性の魔法が使えるようになったとか(ネイは日属性しか使えなくなったっぽいが)、まあ、そんな些細な変化くらいで、もっと特別な力なんてものは何も与えられなかった。いるとも思わなかったしな。
あれからもう2年も経ったんだよな。この世界は驚く程に平和で、俺のような人外の救世主が活躍するような場面なんてものは1度たりとも訪れようとはしていない。まあそんなものが来るってなったら、天気みたいにちょっとした変化で気づけるんだけどな。
「……無駄に時間潰す必要もねぇか」
ちょっと軽くブラブラしてしまったが、俺はさっさと帰ろうと意気込んで足に力を込める。そして、力を解き放とうとした瞬間に俺は視界の端に映るものに目を奪われた。
「ヒカリ……?」
商店の屋根下で、雨宿りするように空を眺める少女がそこにいた。
ヒカリ「……その声、ヴァル?」
俺が名前を呼んだのと同時に、ヒカリがこっちの方を見てきてそう問いかけてきた。
「久し振りだな。クロムんとこの仕事終わったのか?」
ヒカリ「……まあ、そんなところね。本当、大変だったわ。人を便利屋みたいにこき使うもんだからウンザリしちゃう」
「変わらずだな。で、なんで雨宿りなんかしてんだ?」
こいつほどの力があれば俺みたいに雨粒を弾き返すことくらい出来るだろうってのに。まさか、俺みたいに物思いにふけてたとかじゃねぇよな。
ヒカリ「ちょっと疲れちゃっててね。雨が降ってきたからそれ言い訳にして休んでたってとこ。ね、どうせ通りがかったのならおんぶしてってよ」
「おんぶって……」
なんからしくねぇこと言うな。
「まあいいか」
俺はヒカリに背を向け、乗るよう首で合図する。すると、少しぎこちない手つきでヒカリが乗っかり、その小さな体が俺の背に預けられる。
ヒカリ「そういや、2年振りなのよね、私達」
「そうだな。あん時の戦いの後、お前はクロムのとこに行ったっきりだったからな。にしても2年か。何やってたんだ?」
ヒカリ「……ちょっと色々とよ。いくらザガルの国王が死んだからって、情勢が安定するわけじゃない。周辺諸国と何度も協議して、後は帝国兵の残党狩りとか諸々。お陰様で私の心身は共にお疲れ気味なのよ」
「そっか。お疲れさん」
ヒカリ「本当、褒めて欲しいくらいだわ」
「偉い偉い。よく頑張った」
ヒカリ「何よ、その褒め方」
「最近のネイの口癖」
ヒカリ「あっそ」
「あ、そういや2年振りだから多分知らねぇよな?」
ヒカリ「何が?」
「俺達に子供が出来たって話」
ヒカリ「なーんも手紙寄越さないから知らなかったわ。んまあ、それとなくやるだろうなって思ってたけど」
「すっげー可愛い子なんだぜ。今日はギルドに連れて来てるから後で見せてやるよ」
ヒカリ「……楽しみにしてるわ」
……
……
……
ヒカリ「ねぇ、ヴァル」
「なんだ?」
ヒカリ「ねぇ、覚えてる?」
「何をだ?」
ヒカリ「……いや、何でもないわ」
「……?」
ヒカリ「……」
「……あれ?寝た?」
ヒカリ「……」
「まあ、お疲れ気味だったし仕方ねぇか。っうし、ゆっくり帰るか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
セリカ「本っ当、可愛い顔してるよねー」
「そら美男美女夫婦の間に産まれたら人生勝ち組の顔になりますよ」
セリカ「それ自分で言うんだ……」
ギルドの救護室にて授乳中、セリカからの茶々を軽く受け流す。こんなの見て何か楽しいんですかね?
セリカ「そういや、名前決まったの?」
「名前?何の?」
セリカ「いや、今目の前にいる天使みたいな子だけど」
「あ、そういえば……」
全くもって考えてなかった。いや、考えて候補を出してはいるんだけど、イマイチこれって来るものが無い。
そういや、お母さんも私の名前を決めるのに1年かかったとかいう人だったっけ?血は争えないってやつ?
「あー、なるべく早くに決めないと……」
セリカ「そんな焦ることないんじゃない?」
「いや、私のお母さんが私の名前を決めるのに1年かかるような人だったので」
セリカ「流石にそんなに悩まないでしょ……」
「そうだと思うんですけどねぇ……」
一応思いついた候補としては、サクラ、カイ、リン、サテラ、エレン、エナって感じなんだけど、中々決められない。というか、どれもまだこれって感じのじゃないからこの中から決めることはないと思う。
セリカ「まあ、名前って大事だもんねー。お母さんがお父さんが1番最初にあげるプレゼントで、その子の一生を決めるようなもんだから」
「セリカさんはセリカって名前に誇りとかあるんですか?」
セリカ「んー、どうだろう?名付けしたのがお母さんってのは分かってるんだけど、お母さん大分早くに死んじゃったし、由来とかそんなこと聞くような時間無かったからなぁ」
私と同じか。
産まれてすぐに親を亡くすだなんて、そんな悲しいことはこの子には絶対にさせたくないな。
セリカ「ダメ元で聞いてみるんだけどさー、ネイりんの力で過去に戻れたりとかしない?」
「出来ますけど特異点でもないセリカさんが過去に渡るのはやめた方がいいですね」
セリカ「特異点?何それ?」
「えっとですねー」
「ネイ!君の力を貸してくれ!」
「「 どげりゃぁぁぁぁぁ!?!? 」」
突然、本当に突然のことで、何の前触れもなくいきなり目の前の時空が歪み、そこからラナが現れた。
「え、ちょ、ちょっと何ですか!?何ですか!?」
ラナ「色々と聞きたいことが多そうだが、生憎こちらにも君にも時間は残されてない」
「はい?はい!?」
セリカ「えっと、これってラナだよね??」
「そ、そうですけど……」
ひとまずこの体裁もどうかと思って私はセリカに赤ちゃんを預けてから服を着直す。それを少しだけ黙って見ていたラナが重たそうに口を開いた。
ラナ「ネイ。君の力を貸してくれ」
「えっと、別にいいんですけど何があったんですか?」
ラナ「話してる時間が無い。悪いが、少し乱暴にさせてもらうよ」
そう言うと、ラナが素早い動作で私の胸元に空のメモリを投げつけてきた。
「っ……!」
まずい。これは非常にまずい。
「な……んで……」
記憶が全部持っていかれる。大事にしていた記憶が、全てメモリの中に持ってかれてる……。
ラナ「話してる時間は無い。ただ、一言だけ君に伝える」
記憶が全てメモリの中に移動し、私は段々と朦朧してくる意識の中でラナの言葉を聞いた。
ラナ「間もなくこの世界は消える。君達はまだ、この世界のループを突破出来ていなかった」
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
はい。ここからはあとがきとなりまーす。
まず、ここまでなっがーい物語を追いかけてくださいましてありがとうございます。一応処女作なのにこんだけ書くってバカかな?と思いながらやってきたグラストですが、この回をもちまして本当に完結となります。え?最後の書き方がまだ続きありそうって?いやいや、ちゃんと完結です。そう、『グランストリア』は完結となります。どういうことかと言うと、別で連載している『グランストリアVeritas』という作品があるのですが(私の作者ページから飛んでいって読んでください)、そちらでグラストでは回収しきれなかった伏線を回収するべくまた最初から書き直しています(といっても、第2章でヒカリちゃんが裏切るところ辺りからですが)。
このIIIStorysで書きましたように、私の作品では私が定めた『目標』に向かってキャラ達が動くという設定があり、今回の目標はネイとヴァルの再会でした。しかし、私が最初に定めた『設定』には、この世界がループしているというものがあります。ステラを倒せば終わりのように見えたループものなんですが、実はそれで突破できるような設定にはしていません。果たして何が原因でこの世界は無限に繰り返し続けているのか。どうすれば突破できるのか。それらを描く真エンドがVeritas編となります。というわけで、もう何話か投稿しているので、次回からはそちらの方でよろしくお願いします!では、ここからは『勝利の女神・ニケ』の設定資料です!
勝利の女神・ニケ
性別:女 所属ギルド:グランメモリーズ
好きな食べ物:ドーナツ 嫌いな食べ物:辛いもの
誕生日:4月6日 身長:159cm(第3章登場時点では156cmでした)
趣味:読書
見た目特徴:猩々緋色の髪をした長髪(足首にかかるほどの長さ)バストサイズはH。年齢は18歳(第3章登場時点では14歳)。
世界に存在する三権限の内の一つ『Sevencolors』の権限を進化させ、『Dea victoriae』として行使する姿。 今まで多種多様な魔法が仕えていたが、この姿の時は日属性の魔法しか扱うことが出来ない。その代わり、今まで以上の出力で魔法を放つことが可能となり、エンマ以上の強さを持たない敵は彼女に触れただけで焼け死ぬ(エンマ以上でも何かしらの対策をしないと死ぬ)。扱う武器は『神槍・ヴィクトリカルエンド』。常に太陽の炎をまとっており、その炎に照らされたものは、持ち主が味方と判断すれば女神の祝福を受けられ、持ち主が敵と判断した者には地獄の業火の如く、命を焼き尽くすほどの炎を放つ。
精神世界:勝利の花咲く希望の向日葵
ニケの心に広がる世界。足の踏み場がないほどに向日葵畑が広がり、サンサンと太陽が輝いている。神槍と同様、ニケの判断によって踏み入った者達に与えられる効果が変わる。
ヴァル「おい!誰だ!俺のプリンまた食った奴!」
またやかましい声と共にヴァルが大慌てで地下から駆け上がってきた。
ヴェルド「知らね」
グリード「知らねぇなぁ」
ライオス「知らん」
ヴァル「嘘はついてねぇっぽいな。んじゃあれか。またフウロか!またフウロなのか!」
フウロ「私でもない」
ヴァル「珍しいな」
「珍しいって、そもそも他人のプリンを平気で食べるこの集団の方がおかしいと思うけどね」
この2年、特に変わったことなんてなかった。むしろ、変わらなさすぎて逆に安心する毎日。
今までみたいに突然変な戦いに巻き込まれたり、誰かがいなくなったりなんてことはない。完全に平和そのもの。あ、でも仕事が無くなったわけじゃない。むしろ仕事は王都での決戦以来、増え続ける一方。で、みんながいきなりそんな大量の仕事をこなせるわけがなく、依頼掲示板には大量の依頼書が貼り付けられてる。これ早くどうにかしなきゃね。
ヴァル「だー、クソ!怪しい奴全員嘘ついてねぇってなったら本当誰なんだよ!シアラ!お前か!?」
シアラ「シアラはここにはいませーん」
ヴァル「いるじゃねぇか!」
シアラ「とりあえずシアラはそこまで食い意地は張ってませーん。ヴェルド様への恋心だけでお腹いっぱいでーす」
ヴァル「ああそうだったな。ヴェルド、早く消化させてやれ」
ヴェルド「はぁ!?」
そういや、2年経っても未だにくっつかないんだよなぁ。このバカップル。
ヴァル「で、結局誰なんだ!俺のプリン食った奴!」
ネイ「あの、それだったら多分私が食べちゃいました」
ヴァル「え??」
バツが悪そうに小さく手を挙げ、ネイりんがそう言った。
ネイ「ちょっとお腹が空いてたもので、誰かのってのは分かってたんですけど……」
おや、これは珍しい。まさかネイりんが人の物を食べるだなんて。やっぱり出産が終わって一月も経ってないし、体がそういうのを求めちゃってるのかな?
……っと、そういやこの2年で一応の変化はあった。それは、前述したようにネイりんが出産したこと。本当、天使みたいに可愛らしい女の子を産むもんだから、やっぱ持ってるんだなぁって2人の顔を見ながらため息をついたことを私は今でも覚えてる(1ヶ月も経ってないけどね)。
ヴァル「あー、お前か。んじゃもういいわ。買い直してくる」
ネイ「あ、だったら私が……」
ヴァル「いいって。あんま無理すんな。それに、雨もなんか来そうな感じだし、俺ならひとっ飛びで行けるからさ」
ネイ「……分かりました」
そう言って、ヴァルは本当にひとっ飛びで商店街の方へと飛び出して行った。しれっと人間離れした技を見せるところは、相変わらず力の使い方が雑だなってちょっと思う。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「っと、本当に雨降って来やがった……」
帰り道、ポツポツと雨が降り出し、やがてそれは勢いを増して大雨へと切り替わる。
さっきまであんなに晴れてたってのに、いきなりこんな雨か。まあ、神様になったせいなのか何なのかは知らねぇけど天気が分かるから別にいいんだけどな。
「えっと、俺のプリンと、ネイのためにドーナツと買って、後はミラからのお使いか」
帰り道にでも買えばいいだろうと思ってたが、案外店仕舞いが早くて買えそうにない。仕方ねぇ。ミラもこれくらいそうなるって分かってるだろうし平謝りで許してもらうとするか。
「……にしても、なんか嫌な雨だな」
特段、変わった雨模様ではない。だが、何となくこの灰色に覆われた雲と激しく振り続ける雨に、なぜだか妙な既視感がある。それも、あまり良くない方向に進んでるかのような、そんな不思議な感覚だ。
神様になったからって、俺に未来予知の力が芽生えたわけじゃない。手に入れたものとすれば、天気が分かるとか、ネイみたいに色んな属性の魔法が使えるようになったとか(ネイは日属性しか使えなくなったっぽいが)、まあ、そんな些細な変化くらいで、もっと特別な力なんてものは何も与えられなかった。いるとも思わなかったしな。
あれからもう2年も経ったんだよな。この世界は驚く程に平和で、俺のような人外の救世主が活躍するような場面なんてものは1度たりとも訪れようとはしていない。まあそんなものが来るってなったら、天気みたいにちょっとした変化で気づけるんだけどな。
「……無駄に時間潰す必要もねぇか」
ちょっと軽くブラブラしてしまったが、俺はさっさと帰ろうと意気込んで足に力を込める。そして、力を解き放とうとした瞬間に俺は視界の端に映るものに目を奪われた。
「ヒカリ……?」
商店の屋根下で、雨宿りするように空を眺める少女がそこにいた。
ヒカリ「……その声、ヴァル?」
俺が名前を呼んだのと同時に、ヒカリがこっちの方を見てきてそう問いかけてきた。
「久し振りだな。クロムんとこの仕事終わったのか?」
ヒカリ「……まあ、そんなところね。本当、大変だったわ。人を便利屋みたいにこき使うもんだからウンザリしちゃう」
「変わらずだな。で、なんで雨宿りなんかしてんだ?」
こいつほどの力があれば俺みたいに雨粒を弾き返すことくらい出来るだろうってのに。まさか、俺みたいに物思いにふけてたとかじゃねぇよな。
ヒカリ「ちょっと疲れちゃっててね。雨が降ってきたからそれ言い訳にして休んでたってとこ。ね、どうせ通りがかったのならおんぶしてってよ」
「おんぶって……」
なんからしくねぇこと言うな。
「まあいいか」
俺はヒカリに背を向け、乗るよう首で合図する。すると、少しぎこちない手つきでヒカリが乗っかり、その小さな体が俺の背に預けられる。
ヒカリ「そういや、2年振りなのよね、私達」
「そうだな。あん時の戦いの後、お前はクロムのとこに行ったっきりだったからな。にしても2年か。何やってたんだ?」
ヒカリ「……ちょっと色々とよ。いくらザガルの国王が死んだからって、情勢が安定するわけじゃない。周辺諸国と何度も協議して、後は帝国兵の残党狩りとか諸々。お陰様で私の心身は共にお疲れ気味なのよ」
「そっか。お疲れさん」
ヒカリ「本当、褒めて欲しいくらいだわ」
「偉い偉い。よく頑張った」
ヒカリ「何よ、その褒め方」
「最近のネイの口癖」
ヒカリ「あっそ」
「あ、そういや2年振りだから多分知らねぇよな?」
ヒカリ「何が?」
「俺達に子供が出来たって話」
ヒカリ「なーんも手紙寄越さないから知らなかったわ。んまあ、それとなくやるだろうなって思ってたけど」
「すっげー可愛い子なんだぜ。今日はギルドに連れて来てるから後で見せてやるよ」
ヒカリ「……楽しみにしてるわ」
……
……
……
ヒカリ「ねぇ、ヴァル」
「なんだ?」
ヒカリ「ねぇ、覚えてる?」
「何をだ?」
ヒカリ「……いや、何でもないわ」
「……?」
ヒカリ「……」
「……あれ?寝た?」
ヒカリ「……」
「まあ、お疲れ気味だったし仕方ねぇか。っうし、ゆっくり帰るか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
セリカ「本っ当、可愛い顔してるよねー」
「そら美男美女夫婦の間に産まれたら人生勝ち組の顔になりますよ」
セリカ「それ自分で言うんだ……」
ギルドの救護室にて授乳中、セリカからの茶々を軽く受け流す。こんなの見て何か楽しいんですかね?
セリカ「そういや、名前決まったの?」
「名前?何の?」
セリカ「いや、今目の前にいる天使みたいな子だけど」
「あ、そういえば……」
全くもって考えてなかった。いや、考えて候補を出してはいるんだけど、イマイチこれって来るものが無い。
そういや、お母さんも私の名前を決めるのに1年かかったとかいう人だったっけ?血は争えないってやつ?
「あー、なるべく早くに決めないと……」
セリカ「そんな焦ることないんじゃない?」
「いや、私のお母さんが私の名前を決めるのに1年かかるような人だったので」
セリカ「流石にそんなに悩まないでしょ……」
「そうだと思うんですけどねぇ……」
一応思いついた候補としては、サクラ、カイ、リン、サテラ、エレン、エナって感じなんだけど、中々決められない。というか、どれもまだこれって感じのじゃないからこの中から決めることはないと思う。
セリカ「まあ、名前って大事だもんねー。お母さんがお父さんが1番最初にあげるプレゼントで、その子の一生を決めるようなもんだから」
「セリカさんはセリカって名前に誇りとかあるんですか?」
セリカ「んー、どうだろう?名付けしたのがお母さんってのは分かってるんだけど、お母さん大分早くに死んじゃったし、由来とかそんなこと聞くような時間無かったからなぁ」
私と同じか。
産まれてすぐに親を亡くすだなんて、そんな悲しいことはこの子には絶対にさせたくないな。
セリカ「ダメ元で聞いてみるんだけどさー、ネイりんの力で過去に戻れたりとかしない?」
「出来ますけど特異点でもないセリカさんが過去に渡るのはやめた方がいいですね」
セリカ「特異点?何それ?」
「えっとですねー」
「ネイ!君の力を貸してくれ!」
「「 どげりゃぁぁぁぁぁ!?!? 」」
突然、本当に突然のことで、何の前触れもなくいきなり目の前の時空が歪み、そこからラナが現れた。
「え、ちょ、ちょっと何ですか!?何ですか!?」
ラナ「色々と聞きたいことが多そうだが、生憎こちらにも君にも時間は残されてない」
「はい?はい!?」
セリカ「えっと、これってラナだよね??」
「そ、そうですけど……」
ひとまずこの体裁もどうかと思って私はセリカに赤ちゃんを預けてから服を着直す。それを少しだけ黙って見ていたラナが重たそうに口を開いた。
ラナ「ネイ。君の力を貸してくれ」
「えっと、別にいいんですけど何があったんですか?」
ラナ「話してる時間が無い。悪いが、少し乱暴にさせてもらうよ」
そう言うと、ラナが素早い動作で私の胸元に空のメモリを投げつけてきた。
「っ……!」
まずい。これは非常にまずい。
「な……んで……」
記憶が全部持っていかれる。大事にしていた記憶が、全てメモリの中に持ってかれてる……。
ラナ「話してる時間は無い。ただ、一言だけ君に伝える」
記憶が全てメモリの中に移動し、私は段々と朦朧してくる意識の中でラナの言葉を聞いた。
ラナ「間もなくこの世界は消える。君達はまだ、この世界のループを突破出来ていなかった」
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
はい。ここからはあとがきとなりまーす。
まず、ここまでなっがーい物語を追いかけてくださいましてありがとうございます。一応処女作なのにこんだけ書くってバカかな?と思いながらやってきたグラストですが、この回をもちまして本当に完結となります。え?最後の書き方がまだ続きありそうって?いやいや、ちゃんと完結です。そう、『グランストリア』は完結となります。どういうことかと言うと、別で連載している『グランストリアVeritas』という作品があるのですが(私の作者ページから飛んでいって読んでください)、そちらでグラストでは回収しきれなかった伏線を回収するべくまた最初から書き直しています(といっても、第2章でヒカリちゃんが裏切るところ辺りからですが)。
このIIIStorysで書きましたように、私の作品では私が定めた『目標』に向かってキャラ達が動くという設定があり、今回の目標はネイとヴァルの再会でした。しかし、私が最初に定めた『設定』には、この世界がループしているというものがあります。ステラを倒せば終わりのように見えたループものなんですが、実はそれで突破できるような設定にはしていません。果たして何が原因でこの世界は無限に繰り返し続けているのか。どうすれば突破できるのか。それらを描く真エンドがVeritas編となります。というわけで、もう何話か投稿しているので、次回からはそちらの方でよろしくお願いします!では、ここからは『勝利の女神・ニケ』の設定資料です!
勝利の女神・ニケ
性別:女 所属ギルド:グランメモリーズ
好きな食べ物:ドーナツ 嫌いな食べ物:辛いもの
誕生日:4月6日 身長:159cm(第3章登場時点では156cmでした)
趣味:読書
見た目特徴:猩々緋色の髪をした長髪(足首にかかるほどの長さ)バストサイズはH。年齢は18歳(第3章登場時点では14歳)。
世界に存在する三権限の内の一つ『Sevencolors』の権限を進化させ、『Dea victoriae』として行使する姿。 今まで多種多様な魔法が仕えていたが、この姿の時は日属性の魔法しか扱うことが出来ない。その代わり、今まで以上の出力で魔法を放つことが可能となり、エンマ以上の強さを持たない敵は彼女に触れただけで焼け死ぬ(エンマ以上でも何かしらの対策をしないと死ぬ)。扱う武器は『神槍・ヴィクトリカルエンド』。常に太陽の炎をまとっており、その炎に照らされたものは、持ち主が味方と判断すれば女神の祝福を受けられ、持ち主が敵と判断した者には地獄の業火の如く、命を焼き尽くすほどの炎を放つ。
精神世界:勝利の花咲く希望の向日葵
ニケの心に広がる世界。足の踏み場がないほどに向日葵畑が広がり、サンサンと太陽が輝いている。神槍と同様、ニケの判断によって踏み入った者達に与えられる効果が変わる。
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