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Veritas1章 【運命の少女】
Veritas1章5 【更なる選択】
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見渡す限りには凸凹とした岩場の目立つ荒野。この場所で、一体どれだけの人間が悲しみに涙を流したのだろうね。
僕らが立つ場所から程近い場所にラースは立っている。質素な机と椅子にティーカップを並べ、優雅にお茶を楽しんでいる。余裕そうだねぇ。まあ、僕自身は戦えないから、事実余裕であることに変わりはないのだろうが。
「クロム、出番だ。彼と話をつけてきな」
クロム「俺が行くのか?」
「当たり前だ。僕が行ったら即邪魔をされる。まあ、それでもいいが」
クロム「……分かった」
意外に聞き分けは良く、クロムは鞘から剣を抜いてラースに近寄って行った。
クロム「この椅子に座ったら爆発するとかそういうのは無いよな?」
ある程度近づいたところで、チラと振り向いてきたラースに対し、クロムはそう問いかける。
ラース「安心したまえ。私はそんな卑怯なやり方では貴様らを殺しはしない」
最も信じられない言葉ではあるが、少なくとも今この場においては嘘は言ってないだろう。ここで騙し討ちするメリットはないしね。まあ、歴史通りならばここでは何も起こらない。
クロム「それで、交渉内容というのはどういうものなのか説明して欲しいのだが」
ラース「その前に見て欲しいものがある」
クロム「見て欲しいもの?」
ラース「そう、そこの崖を見たまえ」
ラースが後ろ側にある崖を指さし言う。
クロム「ッ......あれは......」
ラースが指さした方向、そこには『ヒカリ』がいた。後ろに誰なのかは視認出来ないが、背中を突き刺す感じで槍を構える人がいる。多分どころじゃなく、あれはビズだ。少しでも前に槍を突き出せばすぐにでも崖下に落とされてしまいそうだね。
もし落ちたら、高さ的に重症、もしくは死のどちらかだろう。歴史通りすぎて面白みに欠けるよ。
クロム「どういうつもりだ」
クロムが気迫のかかった声で問う。
ラース「フッフッフッ、フハハハハハッ」
それを聞いてラースが不気味な笑い声を上げる。
クロム「何がおかしい」
ラース「何がおかしいかって?では、逆に問おう。何故、今の私は最高に機嫌がいいと思う?」
クロム「そんなもん知ったことか!」
クロムが剣先をラースの鼻面に突きつける。
ラース「貴様らは知らないであろう。あそこにいる少女、『ヒカリ』はもう間もなくして貴様らの知る『ヒカリ』ではなくなる。最凶の『悪魔』になるのだよ。フッハハハハハハッ」
またしても、ラースが不気味な笑い声を上げる。それを聞いて、セリカ達が拳を軽く握りしめる。
クロム「悪魔だと?そんなものを作ってーー」
ラース「そんなものを作ってどうするのかって?決まっているだろう。この世界のありとあらゆるものを破壊しつくのさ。貴様らが弱いばかりに、貴様らがあの少女を助けられなかったばかりに。最高の気分だ」
ラースは今まで見てきたラースとは別人のようによく笑う。それに、過去僕はあまり気にしなかったが、なんか目的が変わってるような気がする。
何か、引っかかるものがある。何だ?
クロム「もういい。貴様に用はない」
クロムが剣を振り上げ、ラースの脳天に向かって振り落とす。
「私が殺られることによって彼女は悪魔になるようになっている。貴様の剣が世界の終わりを導くのだ」
とてつもなく恐ろしいことを言い放ち、クロムが咄嗟に振り落とした剣を止める。今の話に嘘偽りは全くもって無い。ラースが死ねばビズが装置を起動させるだけだからな。まあ、ラースが死ななくとも結果は一緒なんだろうが。
ラース「さあ、選べこの世界の民よ。どのような終わりにするかを...」
《キング》
ラースがグランメモリを取り出し、体に突き挿す。
そして、ラースの体が変化していく。ただ、昨日感じたものよりも更にオーラが増し、その姿も巨大化している。とてつもないプレッシャーがかかり、思わず脚が竦む。この僕が……か。
「そろそろ始めるか」
翼を広げて飛び上がる。ヒカリが立っているところに向かい、刀を振り上げる。するとーー
「やはり、邪魔をしに来たか」
黒い煙がまとわりつく。僕の行く手を阻むようにして大きな渦を巻いている。
「まあいいさ。今日は君達が目的だ。運命の流れを守る番人。まるでステラのようだが僕は怯まないよ」
刀を振り回し、煙を斬るようにして風を吹く。煙は一時的に姿を消すが、やがて色濃さを増してすぐに集まってくる。数が増えている証拠と捉えていいだろう。
「ならば、このまま斬り続けるだけさ。僕がこの壁を破るのが先か、それとも運命がこのまま先を進むのか。勝負と行こうか」
最早地上の様子は目に見えない。だけど、もし未来が変わってくれるのであれば僕の手助けはいらないはずだ。
期待してるよ。ヴァル。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「うおりゃァ!」
クロム「喰らえ!」
フウロ「風神剣!」
ヴァル、クロムが挟み撃ちのような形でラースに攻撃し、その攻撃によって守りが薄くなった正面をフウロが攻撃する。
ラース「貴様らの力はその程度か?」
だが、ラースは攻撃を諸共せず、反撃することもなくただそう言う。
クロム「どうなってんだこいつの体は。まるで歯が立たん」
クロムが剣を構え直しながら言う。
ラースは昨日戦ったものよりも更に大きさとプレッシャーを増している。滲み出る黒いオーラが私達の足を竦ませる。でも、こんな事で一々怯んでいる暇はない。鍵を握り締め、ここぞという時を狙うためにマナを送る。
ミラー「無駄ですわよ。今のラース様には何一つ攻撃は効きませんわ」
ヴェルド達と戦っているミラーがこちらを向いてそう言ってくる。
ヴェルド「随分と余裕だな!」
余裕ぶっているミラーに向けてヴェルドが攻撃するが、尽くそれはかわされる。
ラース「ビズ、そっちの準備は出来たか?」
ラースが崖の方に目をやり、響き渡る声でそう発する。
ラース「そうか。なら、我が合図したタイミングで動かせ」
ヴァル「そんなことさせるかよ!」
正しく全てを理解した訳では無いが、ヴァルが本能でヤバいことが起こると察し、ラースに連続攻撃を仕掛ける。
ラース「相変わらず、血の気の多いやつだ。そんなにヒカリを悪魔にしたいか......」
ラースが指一本、いや、剣先1つでヴァルを弾き返す。
ヴァル「ふざけんな!誰があいつを悪魔だが、なんだか知らねえやつにしたいと思うか!」
ヴァルは怒声を吐きながら尚もラースに攻撃し続ける。
ラース「はぁ、仕方あるまい。ビズ、ちょっと早いがやれ」
ラースが溜息をつきながら、『合図』をする。
ラース「貴様ら、よく見ていろ。ヒカリが世界を破壊する兵器になる瞬間を」
ヴァルは言われた通りに、という訳でもないが、ヒカリがいる場所を見る。そこには、先程までは視認出来なかった誰か、恐らくはビズが立っている。
ラース「さよならだ、人間のヒカリ」
ビズがここからではよく見えないが、何かよからぬ事をしようとしている。
アルテミス「フェイト・グラン・アロウズ」
「お願い、ホウライ!」
それを、岩陰に隠れていたアルテミスと私で、アルテミスの放った矢に私が召喚した精霊『ホウライ』の操縦魔法によってビズに綺麗に当てることで阻止した。
クロム「今だ。助けに行くぞ!」
クロムがヒカリのいる崖に向かって走り出し、ヴァルもそれについて行く。そして、私も後ろから付いて走り出す。
ラース「させるか」
走り出したクロムとヴァルをラースが腕を横に振るだけで薙飛ばそうとする。それを避けようとしたが、何故か体が思うように動かず、攻撃をもろに喰らう。
「きゃっ......」
とてつもない痛みが全身を襲う。腹のあたりを見ると、血が服に滲んでいた。
ラース「ビズ......はもう使えんか。多少計画がズレたが、まあ仕方あるまい」
ラースがゆっくりとヒカリの方へ向かって歩き出す。
ヴァル「何を......するつもりだ......」
ヴァルが痛みを堪え立ち上がり、ラースに問う。
ラース「装置をビズが作動させられなくなった。だから我が行く。ミラーにやらせようかと思ったが、あの体ではもう無理だしな」
ミラーと戦っていたヴェルド達の方を見る。いつの間にかミラーはヴェルド達の手によって倒されていた。しかし、問題はそこではない。
ヴァル「うっ......」
ヴァルがラースに飛びかかろうとするが、腹の傷が思った以上に痛みを訴えてきているらしく、思うように体を動かせていない。それに、体を動かせないのには恐らくラースの魔法も絡んでいる。
それでもーー
ヴァル「やらせねえ、よ!」
ヴァルが気合いで立ち上がり、ラースに向かって攻撃をしようとする。私も、最悪精霊2体を召喚する覚悟で鍵を握り締める。
(もう、やめて)
ヴァルがラースに攻撃を当てる直前、脳に声が直接響いてくる。そして、それを感じているのはヴァルだけではないらしく、クロム達もヴァルと同じように立ち尽くしている。
ヒカリ(もう、いいの。私を助けようとしてそれ以上傷つかないで)
この声の主はヒカリだろう。ヒカリはこんな状況下で自らの命よりもヴァル達の命を優先している。
ヴァル「そんなこと、知ったことか!俺はお前を助ける!仲間を見捨てる訳にはいかねえんだよ!」
ヴァルはヒカリに向かって、よく聞こえるよう、大声で叫ぶ。
ヒカリ(いいの。結局、運命は変えられなかった)
…………
ヒカリ(そしてまた、私のせいであなた達に迷惑をかけようとしている)
……だったら、何なの……?
ヴァルはラースの攻撃を掻い潜り、ヒカリの元へと急ぐ。隣を私が並走するが、ヴァルはそんなことには気づいていないようだった。
ヒカリ(私のせいで、あなた達にもっと不幸なことを起こしてしまうのならーー)
ヒカリの顔が視認出来る距離に来ると、なぜかヒカリがこちらを向いて微笑んでいた。
何をーー
ヒカリ(私は、自らの手でこの命を絶つ)
その声が聞こえた時、ヴァルが何かを察して傷口を抑えるのをやめ、全速力で駆け出した。私も、ヒカリんが何をしようとしているのかを察してしまい、ヴァルとは違って力なくその場に座り込んでしまった。
なんで、なんでそんな事を考えるの……!
ヒカリ(さようなら)
ヒカリが1歩前に足を踏み出し、落下していく様子が見える。
ヴァル「やめろーーーーーーーーー!」
ヒカリが落ちて行く。もう間に合わない。それでも走り続けるヴァル。私はただヒカリんが落ちていく様を眺めることしか出来ない。なぜか、体が動いてくれない……。
ヒカリ(大丈夫。私がいなければあなた達は勝てれるから)
「ヒカリーーーーーーーん!」
ヒカリ(ねぇ、ヴァル。覚えてる?)
ヴァル「っ……!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そう、運命の流れは変わらない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
どれだけ抗ったとしても、世界は世界。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
私は私。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
大丈夫。どうせ、もう少し先の未来で私は蘇るのだから。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
なら、今は大人しく運命を受け入れよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「バカヤロォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
何かが凄い勢いで近付き、落下していく私の体を横からすくい上げた。
「……ぇ」
ヴァル「お前、次それやったら殺すぞ。俺の手で」
彼が私を抱き、ゆっくりと地上に降りた。
「……なん……で」
変わらない。そう思ってたはずなのに……。
「どう……して……」
誰も邪魔をしに来ない。ただ、彼に優しく抱き抱えられている。なぜ、なぜ……?
「……っ……っ」
自然と涙が零れ落ち、彼の顔を見ることが出来なくなっている。
「なんで……なんで、あんたが……っ!」
ヴァル「……俺にしか……話せないんだろうが。なら、せめて死にたいの一言くらい言えよ」
「っ……っ……なんでっ……なんで……!」
そこから先のことは覚えてない。でも、運命の流れが変わったことだけは知っていた。そして、本来なら終わるはずの戦いが長引いてしまったことも……。
僕らが立つ場所から程近い場所にラースは立っている。質素な机と椅子にティーカップを並べ、優雅にお茶を楽しんでいる。余裕そうだねぇ。まあ、僕自身は戦えないから、事実余裕であることに変わりはないのだろうが。
「クロム、出番だ。彼と話をつけてきな」
クロム「俺が行くのか?」
「当たり前だ。僕が行ったら即邪魔をされる。まあ、それでもいいが」
クロム「……分かった」
意外に聞き分けは良く、クロムは鞘から剣を抜いてラースに近寄って行った。
クロム「この椅子に座ったら爆発するとかそういうのは無いよな?」
ある程度近づいたところで、チラと振り向いてきたラースに対し、クロムはそう問いかける。
ラース「安心したまえ。私はそんな卑怯なやり方では貴様らを殺しはしない」
最も信じられない言葉ではあるが、少なくとも今この場においては嘘は言ってないだろう。ここで騙し討ちするメリットはないしね。まあ、歴史通りならばここでは何も起こらない。
クロム「それで、交渉内容というのはどういうものなのか説明して欲しいのだが」
ラース「その前に見て欲しいものがある」
クロム「見て欲しいもの?」
ラース「そう、そこの崖を見たまえ」
ラースが後ろ側にある崖を指さし言う。
クロム「ッ......あれは......」
ラースが指さした方向、そこには『ヒカリ』がいた。後ろに誰なのかは視認出来ないが、背中を突き刺す感じで槍を構える人がいる。多分どころじゃなく、あれはビズだ。少しでも前に槍を突き出せばすぐにでも崖下に落とされてしまいそうだね。
もし落ちたら、高さ的に重症、もしくは死のどちらかだろう。歴史通りすぎて面白みに欠けるよ。
クロム「どういうつもりだ」
クロムが気迫のかかった声で問う。
ラース「フッフッフッ、フハハハハハッ」
それを聞いてラースが不気味な笑い声を上げる。
クロム「何がおかしい」
ラース「何がおかしいかって?では、逆に問おう。何故、今の私は最高に機嫌がいいと思う?」
クロム「そんなもん知ったことか!」
クロムが剣先をラースの鼻面に突きつける。
ラース「貴様らは知らないであろう。あそこにいる少女、『ヒカリ』はもう間もなくして貴様らの知る『ヒカリ』ではなくなる。最凶の『悪魔』になるのだよ。フッハハハハハハッ」
またしても、ラースが不気味な笑い声を上げる。それを聞いて、セリカ達が拳を軽く握りしめる。
クロム「悪魔だと?そんなものを作ってーー」
ラース「そんなものを作ってどうするのかって?決まっているだろう。この世界のありとあらゆるものを破壊しつくのさ。貴様らが弱いばかりに、貴様らがあの少女を助けられなかったばかりに。最高の気分だ」
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何か、引っかかるものがある。何だ?
クロム「もういい。貴様に用はない」
クロムが剣を振り上げ、ラースの脳天に向かって振り落とす。
「私が殺られることによって彼女は悪魔になるようになっている。貴様の剣が世界の終わりを導くのだ」
とてつもなく恐ろしいことを言い放ち、クロムが咄嗟に振り落とした剣を止める。今の話に嘘偽りは全くもって無い。ラースが死ねばビズが装置を起動させるだけだからな。まあ、ラースが死ななくとも結果は一緒なんだろうが。
ラース「さあ、選べこの世界の民よ。どのような終わりにするかを...」
《キング》
ラースがグランメモリを取り出し、体に突き挿す。
そして、ラースの体が変化していく。ただ、昨日感じたものよりも更にオーラが増し、その姿も巨大化している。とてつもないプレッシャーがかかり、思わず脚が竦む。この僕が……か。
「そろそろ始めるか」
翼を広げて飛び上がる。ヒカリが立っているところに向かい、刀を振り上げる。するとーー
「やはり、邪魔をしに来たか」
黒い煙がまとわりつく。僕の行く手を阻むようにして大きな渦を巻いている。
「まあいいさ。今日は君達が目的だ。運命の流れを守る番人。まるでステラのようだが僕は怯まないよ」
刀を振り回し、煙を斬るようにして風を吹く。煙は一時的に姿を消すが、やがて色濃さを増してすぐに集まってくる。数が増えている証拠と捉えていいだろう。
「ならば、このまま斬り続けるだけさ。僕がこの壁を破るのが先か、それとも運命がこのまま先を進むのか。勝負と行こうか」
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期待してるよ。ヴァル。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「うおりゃァ!」
クロム「喰らえ!」
フウロ「風神剣!」
ヴァル、クロムが挟み撃ちのような形でラースに攻撃し、その攻撃によって守りが薄くなった正面をフウロが攻撃する。
ラース「貴様らの力はその程度か?」
だが、ラースは攻撃を諸共せず、反撃することもなくただそう言う。
クロム「どうなってんだこいつの体は。まるで歯が立たん」
クロムが剣を構え直しながら言う。
ラースは昨日戦ったものよりも更に大きさとプレッシャーを増している。滲み出る黒いオーラが私達の足を竦ませる。でも、こんな事で一々怯んでいる暇はない。鍵を握り締め、ここぞという時を狙うためにマナを送る。
ミラー「無駄ですわよ。今のラース様には何一つ攻撃は効きませんわ」
ヴェルド達と戦っているミラーがこちらを向いてそう言ってくる。
ヴェルド「随分と余裕だな!」
余裕ぶっているミラーに向けてヴェルドが攻撃するが、尽くそれはかわされる。
ラース「ビズ、そっちの準備は出来たか?」
ラースが崖の方に目をやり、響き渡る声でそう発する。
ラース「そうか。なら、我が合図したタイミングで動かせ」
ヴァル「そんなことさせるかよ!」
正しく全てを理解した訳では無いが、ヴァルが本能でヤバいことが起こると察し、ラースに連続攻撃を仕掛ける。
ラース「相変わらず、血の気の多いやつだ。そんなにヒカリを悪魔にしたいか......」
ラースが指一本、いや、剣先1つでヴァルを弾き返す。
ヴァル「ふざけんな!誰があいつを悪魔だが、なんだか知らねえやつにしたいと思うか!」
ヴァルは怒声を吐きながら尚もラースに攻撃し続ける。
ラース「はぁ、仕方あるまい。ビズ、ちょっと早いがやれ」
ラースが溜息をつきながら、『合図』をする。
ラース「貴様ら、よく見ていろ。ヒカリが世界を破壊する兵器になる瞬間を」
ヴァルは言われた通りに、という訳でもないが、ヒカリがいる場所を見る。そこには、先程までは視認出来なかった誰か、恐らくはビズが立っている。
ラース「さよならだ、人間のヒカリ」
ビズがここからではよく見えないが、何かよからぬ事をしようとしている。
アルテミス「フェイト・グラン・アロウズ」
「お願い、ホウライ!」
それを、岩陰に隠れていたアルテミスと私で、アルテミスの放った矢に私が召喚した精霊『ホウライ』の操縦魔法によってビズに綺麗に当てることで阻止した。
クロム「今だ。助けに行くぞ!」
クロムがヒカリのいる崖に向かって走り出し、ヴァルもそれについて行く。そして、私も後ろから付いて走り出す。
ラース「させるか」
走り出したクロムとヴァルをラースが腕を横に振るだけで薙飛ばそうとする。それを避けようとしたが、何故か体が思うように動かず、攻撃をもろに喰らう。
「きゃっ......」
とてつもない痛みが全身を襲う。腹のあたりを見ると、血が服に滲んでいた。
ラース「ビズ......はもう使えんか。多少計画がズレたが、まあ仕方あるまい」
ラースがゆっくりとヒカリの方へ向かって歩き出す。
ヴァル「何を......するつもりだ......」
ヴァルが痛みを堪え立ち上がり、ラースに問う。
ラース「装置をビズが作動させられなくなった。だから我が行く。ミラーにやらせようかと思ったが、あの体ではもう無理だしな」
ミラーと戦っていたヴェルド達の方を見る。いつの間にかミラーはヴェルド達の手によって倒されていた。しかし、問題はそこではない。
ヴァル「うっ......」
ヴァルがラースに飛びかかろうとするが、腹の傷が思った以上に痛みを訴えてきているらしく、思うように体を動かせていない。それに、体を動かせないのには恐らくラースの魔法も絡んでいる。
それでもーー
ヴァル「やらせねえ、よ!」
ヴァルが気合いで立ち上がり、ラースに向かって攻撃をしようとする。私も、最悪精霊2体を召喚する覚悟で鍵を握り締める。
(もう、やめて)
ヴァルがラースに攻撃を当てる直前、脳に声が直接響いてくる。そして、それを感じているのはヴァルだけではないらしく、クロム達もヴァルと同じように立ち尽くしている。
ヒカリ(もう、いいの。私を助けようとしてそれ以上傷つかないで)
この声の主はヒカリだろう。ヒカリはこんな状況下で自らの命よりもヴァル達の命を優先している。
ヴァル「そんなこと、知ったことか!俺はお前を助ける!仲間を見捨てる訳にはいかねえんだよ!」
ヴァルはヒカリに向かって、よく聞こえるよう、大声で叫ぶ。
ヒカリ(いいの。結局、運命は変えられなかった)
…………
ヒカリ(そしてまた、私のせいであなた達に迷惑をかけようとしている)
……だったら、何なの……?
ヴァルはラースの攻撃を掻い潜り、ヒカリの元へと急ぐ。隣を私が並走するが、ヴァルはそんなことには気づいていないようだった。
ヒカリ(私のせいで、あなた達にもっと不幸なことを起こしてしまうのならーー)
ヒカリの顔が視認出来る距離に来ると、なぜかヒカリがこちらを向いて微笑んでいた。
何をーー
ヒカリ(私は、自らの手でこの命を絶つ)
その声が聞こえた時、ヴァルが何かを察して傷口を抑えるのをやめ、全速力で駆け出した。私も、ヒカリんが何をしようとしているのかを察してしまい、ヴァルとは違って力なくその場に座り込んでしまった。
なんで、なんでそんな事を考えるの……!
ヒカリ(さようなら)
ヒカリが1歩前に足を踏み出し、落下していく様子が見える。
ヴァル「やめろーーーーーーーーー!」
ヒカリが落ちて行く。もう間に合わない。それでも走り続けるヴァル。私はただヒカリんが落ちていく様を眺めることしか出来ない。なぜか、体が動いてくれない……。
ヒカリ(大丈夫。私がいなければあなた達は勝てれるから)
「ヒカリーーーーーーーん!」
ヒカリ(ねぇ、ヴァル。覚えてる?)
ヴァル「っ……!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そう、運命の流れは変わらない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
どれだけ抗ったとしても、世界は世界。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
私は私。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
大丈夫。どうせ、もう少し先の未来で私は蘇るのだから。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
なら、今は大人しく運命を受け入れよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「バカヤロォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
何かが凄い勢いで近付き、落下していく私の体を横からすくい上げた。
「……ぇ」
ヴァル「お前、次それやったら殺すぞ。俺の手で」
彼が私を抱き、ゆっくりと地上に降りた。
「……なん……で」
変わらない。そう思ってたはずなのに……。
「どう……して……」
誰も邪魔をしに来ない。ただ、彼に優しく抱き抱えられている。なぜ、なぜ……?
「……っ……っ」
自然と涙が零れ落ち、彼の顔を見ることが出来なくなっている。
「なんで……なんで、あんたが……っ!」
ヴァル「……俺にしか……話せないんだろうが。なら、せめて死にたいの一言くらい言えよ」
「っ……っ……なんでっ……なんで……!」
そこから先のことは覚えてない。でも、運命の流れが変わったことだけは知っていた。そして、本来なら終わるはずの戦いが長引いてしまったことも……。
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