グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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Veritas1章 【運命の少女】

Veritas1章7 【世界のトビラ】

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《ドッカーン!!!》

 豪快な爆発音と共に出来上がった。出来上がってしまった……!

ヴァル「な、何事じゃぁ!」

 数秒ほど遅れ、恐らくギルドの中にいたであろう人という人が、一斉にこの救護室に押し寄せて来た。

「やっと出来た……最高の傑作品……!」

ヴァル「は?」
ヴェルド「は?」
セリカ「はい?」
フウロ「?」

 皆が一様にしてポカンと口を開けている。今、この瞬間に最高のものを作り上げたというのに……!何でこれが分からないかなぁ。分からないよなぁ。

「ヴァル!遂に出来た!」

ヴァル「だから何が?てか、さっきの爆発音なんだ?マジでなんだ?」

「凄いでしょ!最高でしょ!天っ才でしょ!」

 8本のメモリから作り上げた最高のメモリ。それを掲げるようにしてヴァルに詰め寄るが、彼は何が凄いのかと言いたいくらいに口を開けている。

「対ラース用の最終兵器。いえ、最高の発明品。名付けてワールドメモリーズ!これがあれば誰にだって勝てます!勝てるんですよ!」

ヴァル「いやもう分かったから。とりあえず、今の時間帯考えとけ」

フウロ「そうだ。やるなら昼間にやれ」

セリカ「いや、時間帯は関係ないと思うよ!?」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 10分後ーー

 ある程度の人払いを済ませ、最低限の人数の中でメモリの起動チェックを行った。行ったのだがーー

「……」

アルテミス「起動しないねぇ……」

ヴェルド「ゴードとかキルディスの野郎達みたいに音が出たら成功なんだろ?」

 なぜか起動してくれない。1度は回路を見直したが、どこにも不具合は見つからない。メモリを融合させたことによる接触不良なのかとも思ったが、それも無さそう。本当に細かな不具合ですら見つからないのだから。でも、確かにこのメモリは起動してくれない。

「なんで……なんで……!」

 何度カチカチとしてもメモリはうんともすんとも言ってくれやしない。

フウロ「対ラース用の最終兵器。まあ、相手がそこまで絶望を感じさせるほどの強さではないが、少しは頼りにしてたんだがな……」

ヴァル「まあ、最悪俺がどうにかすっから良いだろ」

セリカ「なんだろう。なんでちょっと安心できるのかな……」

 ……みんな、特にこれといって失望しているわけじゃない。でも、どこか残念に思ってる感じがする。

 やっぱり……今の私には無理だったのかな。私じゃ、無理だったのかな……

アルテミス「……ねぇ、ラク。久し振りに師匠のところに行かない?」

「……え?」

 急に何を言い出すんだ?

ヴァル「師匠?」

アルテミス「そう、私達の師匠。怒らせたら超怖い人。怒らせなくても怖いけど。多分、フウロ……はまあまあ互角として、ヴァルとヴェルド辺りだっら余裕で捻られると思う」

「「 マジかよ…… 」」

 ……少し、背筋が凍る。

 なんでテミがこんな提案をしてきたのか。理由はなんとなくだけど分かる。でも、師匠のところに行くってのは……うん。いや、別に怖いってわけじゃないんだけど、ただ……その……。いや、普通に怖い。あの人マジで人を人と思ってないから。

アルテミス「ラースだって結構ボロボロにされてたし、本当にちょっとの間だけだったらラクが離れてても大丈夫だと思うよ」

フウロ「……まあ、確かにそうかもしれんな。ラースが来たら来たで、最悪バカ2人を犠牲にすればどうにかなる。あ、骨は拾っておいてやるから安心しとけ」

「「 何も安心出来ねぇよ! 」」

アルテミス「じゃあ行こ」

「……え、今から?」

アルテミス「善は急げって師匠言ってたじゃん」

「それ言ってたの多分、先生の方……」

アルテミス「いいから行くよ!じゃ、1日くらいで帰ってくるから」

 テミに強引に手を引かれてしまい、私は渋々ながらも転移の扉を開いた。ーー現状、転移を使えるのは私だけなんだから、ここで扉を開かなければ行くことは出来ないって言うのに。

 ーー多分、未来の出来事が少しだけ私の手を引っ張ったんだと思う。師匠と話をすることでメモリを起動できた事実が、私に少しだけ可能性を感じさせた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「そうか、彼女らは異世界に帰ったか……」

ヴァル「いや、帰ったわけじゃねぇと思うけどな。そのまま逃げられたら帰ったって表現になるが」

 ワールドメモリーズの製作、そこからお師匠のミルと会う。ヴェリアが現れても良さそうなくらいには歴史が早めに来ているが、多分、未来の出来事を早めにする分には特に問題を感じないのかもね。僕が実際そうであるように。

「ヴァル、ちょっといいかい?」

ヴァル「なんだ?」

 手招きでヴァルを近くにまで引き寄せ、彼が僕の傍に立ったタイミングで時間を止めた。そしてすぐさま立ち上がり、ヴァルが時間の停止に気づく前に、彼を書庫に招き入れた。

 早い分には構わない。そうだよね。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「……ありゃ?なんじゃここ」

 ラナに近付いた瞬間、目の前に突然広がった真っ白な光景。どこを見渡しても見えてくるのは何も無い地平線だけ。

 は?あいつも転移の力を持ってたっていうのか?いや、だとしたらここなんだ?こんな場所俺達の世界にねぇだろ。

「……ラナの奴。あいつ何もんなんだ?」

 とりあえず歩きながら考えてみる。どこまで歩いても景色は一切変わってこないが、まあそのうち何かしらに突き当たるだろうという感覚で歩く。走ってもいいんだが、走ってたら考え事が出来ないんでな。

 えっと……確かラナは10年くらい前からいるってのがじっちゃんの話だったな。俺はその5年後くらいにこのギルド入ったわけだし……。そういや、ラナとあんま接点無かったな。特に気になる奴でも無かったから何も話を聞いたことがねぇ……。あれ?もしかしてラナに関する情報ここで終わり?

「嘘だろ?仲間のことなんて全部掌握してるもんだと思ってたのに……は?いや、確か1度だけラナと戦ってボコボコにされた記憶はある。むっちゃ煽ってきて腹の立つ奴だったくらいの感想しかねぇー!」

 ……ラナ。マジで何もんなんだろうな。

「おわっと……っ!」

「ぎゃぁっ!」

 突然、人間の足みたいな感触がして、前転するように俺は倒れた。咄嗟に受け身を取ったからすぐに立ち上がれたし、痛みも大したことは無かったが……人の足……だったよな?

 いや、不慮の事故だったわけだし、謝っときゃいいよな?

「す、すまねぇ。全然気付かなかった。こんな地平線だっ……て……のに……?」

 謝ってる途中で気付いた。ここは何も無い地平線のはず。例え寝転がられてても普通気付くだろ。なのに、何も気付かず挙句の果てには踏んでしまった。

 まさかとは思うが、幽霊とか言わねぇよな。

 目の前で足を押さえて蹲っている女の子の傍に慌てて駆け寄る。そしてもう一度謝るとーー

「だ、大丈夫です。ちょっと予想外の攻撃でしたが……」

 女の子は自分で回復魔法をかけ、俺の手を借りてゆっくりと立ち上がった。白銀スーパーロングが目立つ龍人。その特徴さえ除けば普通の女の子……そう見えたのに、なぜか俺の目からは涙が零れ落ちていた。

「……は」

「どうかしましたか?」

 この際龍人とかはどうでもいい。俺はなぜ泣いている?なんで意味も分からないのに悲しい気持ちになる?俺はこの子に出会ったことがあるのか?

「……そうですか」

 涙を流す俺に、女の子は自らの胸に埋めるようにしてそっと抱き締めてくれた。柔らかくて、暖かいこの感触に、俺はなぜか安堵感を覚える。

 以前にも、こうして慰めてもらったことがあったような……そんな、気がするんだ。

「今は泣いていてもいい。でも、涙を私の胸に染み込ませて、その涙が枯れたら、また立ち上がってください。立ち上がって、私に『大丈夫』の一言をかけてください。私は、どんな事があっても、大好きなヴァルについていきます」

「……っ!?」

 変に頭痛がする。何か、大切なものを失って、今、それを取り戻したかのような気分になる。

 痛い……痛てぇ……。この子は何者なんだ……?なんで、こんなに悲しくなる。

「クソっ……」

「その痛みは、きっと悲しさと嬉しさを同時に教えてくれるサインです。ヴァルが今、その2つの感情を強く感じているんです。ヴァルはまだ何も知らないでしょう。でも、その感情があなたを刺激する時、必ずあなたは涙を流します。でも、なんで涙を流しているのか、その理由はきっと分かるはずです。だから、その時は涙を流さなくてもいいよう、正しい決断をしてください」

 そう言うと、女の子は自分の胸から俺の頭を離し、目と目が合うようにして向き直った。

 宝石のように輝く紫色の左目と、色を失った白色の右目。その2つの目に、俺はなぜか覚えがあった。

「お前……いや、なんで……」

「ふふ。ちょっと時間をオーバーしちゃいましたね」

 女の子が霧に溶け込むようにして姿を消し、やがて、気付いた時にはさっきまでの地平線が見えるようになっていた。

「では、また少し先の時間で」

「…………ああ」

 名前も分からぬ女の子。だけど、大切な人だったってことは知っている。なぜか知っている。なぜなのかは、そのうち分かるんだろう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「……」

「ヴァル君?」

ヴァル「っ……あら、なんか今、一瞬だけすっごい頭痛したんだが、お前なんかした?」

「いいや、何も」

 まあ、したにはしたけど、直接の原因は僕じゃないからね。

 今のところヴェリアは現れていない。接触する分には問題が無いのか、はたまた"彼女"だったからこそなのか。いずれにせよ、煙共の干渉を受けない方法は探さないとねぇ。

ヴァル「んで、ラナ。なんか用か?」

「ああ、やっぱり何でもない。引き止めて悪かったね」

ヴァル「は?」

 ヴァルのアホみたいな面を横目に、僕はギルドの戸を開けて外に出た。初夏の暑さが肌をやんわりと焦がす。本来なら、もう決着がついていた戦い。まだ決着がついていないこの時間。

 書庫を開き、季節も何も関係のない空間へと渡る。入ってすぐのところですやすやと眠る少女に対し、蹴飛ばすように……いや、つつくように足で転がす。

「……まさか、君がこの時間に来ているとは思わなかったよ。どうやってこの世界に来た?」

「………………どうしても言わなきゃダメですか?」

 白銀の少女は目を擦りながら怠そうに起き上がる。僕なんかより余っ程怠惰の魔女をしているねぇ。まあ、僕が勤勉すぎるだけなのかもしれないけど。

「君は最悪の可能性を選び、そして死んだ。愛する者の前で。僕は君の魂が崩壊したのを読み取った。読み取り、更なる可能性を求めてこの時間に飛んだ。では問題だ。僕はかなりギリギリのタイミングで時を超えた。君が飛んだとすれば、僕よりかなり後。もう世界のトビラが完全に閉じた後だ。なのに、なぜ君はここにいる?なぜ君はーー」

「ふふ」

 少女は僕の口を塞ぐように人差し指を立ててきた。

「……」

「なぜ、私がここにいるのか。なぜ、あの世界……いえ、あの時間から飛ぶことが出来たのか。そしてーー」

「「 なぜ、"生きている"のか 」」
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