グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

文字の大きさ
400 / 434
Veritas2章 【運命の欠落点】

Veritas2章4 【暴走する魂】

しおりを挟む
 少し難しすぎる話をしてしまいましたかね?2人ともあっけらかんとしています。まあ、私が言いたかったことは全て事実なわけですし、これでいいですよね。

 欠けた魂は二度と帰ってこない。この時間に再び舞い降りるために使った代償なのだから。もう二度とあんな未来にはさせない。そう、強く決意してこの時間にやってきたはずなのに、ラナとエンマの自分勝手な行動に早くも心が折れかかってしまっている。こんな進み方で大丈夫なのだろうか?運命はちゃんと変わってくれるのだろうか?そして何より心を折らせに来るのはーー

「誰も、あの物語の続きを知らないということ……」

 最悪の結末を選び、ラナもステラも諦めてしまったあの世界。その世界の続きを誰も知っていない。ヒカリちゃんはそもそもの結末を知らないし、ラナは見届けなかったせいでそれを知らない。私だけが知っている続きで、その未来に進ませないためにも私が頑張らなきゃならない。頼れる人はいても、頼ることはできないもどかしさ。少しでも魂に負荷をかけるようなことがあれば、すぐに折れてしまいそうだ。

 まあ、邪魔者がいなければ何も不安に思うことはないけども……。

「あ、そういえばなんですけど」

ヴァル「なんか気づいたのか?」

「いえ、なんだか殺風景だなぁって思いまして。皆さんどこに行ったんですか?」

ヴァル「ああ、クロムの依頼でリーシアだったか?の救助作戦に出てる。まあ、フウロもヴェルドも、なんならライオスも行ってるし大丈夫だろ。未来もそうなってんだろ?ネイ」

 ……あれ?なんかまずくね?それ。

「ヒカリちゃん、策立てました?」

ヒカリ(最低限しか考えてないわよ、時間もなかったんだし。それに相手がどんなのか分からない……いや、ちょっと待って。ラストだったわよね?歴史通りじゃ)

「ええ、そうなってます」

ヒカリ(雷の神器サリアを使って、何もかもを黒焦げにする奴。確か、あんたの作戦で上手いこと救出できたけど、あの作戦にヴァルとセリカはほぼ必須みたいなもんだったし……)

「……」

「( あれ?なんかやばくない? )」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 というわけで、転移魔法を使って急いで現場に駆け付けましたが……。

ヴァル「おいおい嘘だろ……?」

セリカ「フウロ達が押されてる!?」

 茂みの中から戦いの様子を観察していますが、状況は大変よろしくないようです。今のところ、同じ雷属性のライオスが奮闘してるくらいで、他はもれなくノックアウト。フウロがギリギリ膝立ちで意識を持っているけれど、あれはもう倒れる寸前だ。

 そらそうか。ギルドからこの現場まで思った以上に距離はない。あれだけ長話してたら、みんながやられるくらいには時間が進む。参ったな、まさか今日が救出戦の日だなんて思いもしなかった。これも全てお昼寝を邪魔しに来たラナのせいだ!(唐突な理不尽)

ヴァル「クソっ!俺が今すぐボコボコにしてやるっ!」

「それ完全に返り討ちにされる人が言うセリフなんで、落ち着いてください」

 飛び出しかけたヴァルの襟首あたりを掴んで引き戻す。そういや、この時代のヴァルはまだまだ単細胞だったな。そして私はかなりの臆病者。いやぁ、成長って怖いね。一応6兆歳なんだけども、この設定多分みんな忘れてるでしょ。

ヴァル「んじゃどうすんだよ!このまま黙ってみてろっていうのか!?」

「そもそも、この救出戦って、イーリアスとラグナロクの戦争を回避するためのものですよね?ヒカリちゃん」

ヒカリ(ええ、ちゃんとそうなってるわよ)

 なら安心です。

「私達がふっつうに出て行ったら疑われて、最悪戦争ですよ?もっと冷静になりましょう」

セリカ「未来でヴァルがどう変化してるのか知らないけど、今のヴァルにそれ言っても説得できないよ」

 それもそうですね。私が押さえてるから飛び出さないでいるものの、このまま襟首掴む手を離したら、リードがたまたま外れたワンちゃんみたいにすぐ飛び出して行っちゃいそう。でもそういう仲間のために必死なところも好き。

「私が出ます。大丈夫です。さっきも言ったように神様なんで」

 エンマが置いていった剣を持ち、丁度ライオスがトドメを刺される寸前のところでラストの前に躍り出る。

ラスト「あぁ……?」

 サリアから流れる雷が全身を駆け回るが、痛くも痒くもない。このまま押し切ってやろう。

「おりゃぁ!」

 剣を振り回し、ラストの剣を軽く弾く。奴が言葉を吐く前にどんどんと鮮やかに傷をつけ、跪かせる。みんながあれだけ苦戦していた相手だが、所詮は過去の強さ。未来の強さを持つ私相手では一瞬たりとして戦うことが出来ない。

 ーーでも、この男はしぶとい。それは昔からずっと変わらないようだ。

 言葉は交わさない代わりに、ラストは面白い相手を見つけたとばかりに口の端を上げ、本気の目をして斬りかかってくる。

 貫くように突き出してくる剣を肩の上で軽く受け流し、そのまま剣を回してラストの腹を斬る。もちろん、ラストは今後の重要な戦力なので傷は浅めにしておく。わざとらしい隙を見せてはラストに攻撃を誘発させ、その度に圧倒的な力量でラストの攻撃を受け流す。その繰り返しに特に意味はないが、自然と楽しさを覚える。

 欠けた魂に切り刻まれる剣の記憶。そう、昔からずっと、私は剣で戦い、剣に生きてきた。まさか、そんな感覚をここで覚えさせられるとは……。でも、いつまでも戦っているわけにはいかない。今回の目的は歴史通りに進ませること。ラストには今日の記憶を忘れてもらうことにしよう。

ラスト「おめェ、どこのどいつか知らねぇが強さぇな。そいつらを助けに来たんだろうが、にしては手加減が過ぎるぜ」

「そう思うのは自分の力量が足りてないからじゃないですか?」

ラスト「へっ、言うじゃねぇか。ーーだが、これならおめェも終いだ」

 ラストが剣を天高くに掲げる。私も、次の1発で終わらせようと剣を構えたが、その瞬間に激しい頭痛が襲う。

「っ……!!」

ラスト「あばよ。雷剣・サリア!」

 雷が全身を包み込み、それと同時に頭痛もより一層酷くなる。そして、電撃が一通り終わったタイミングで何かがぷつりと切れた。

「…………」

 銀色の髪が黒色に染まり、全身を包み込むように黒いオーラが放たれる。その瞬間に全てを破壊したくなるほどの衝動に襲われ、飢えが脳を支配する。

「……」

ラスト「なっ……!」

 剣を振る。咄嗟に空に逃げた奴に対し、その少し先を読んでラストの背に回る。そして剣を振る。鮮やかな鮮血が流れ、小さな水溜まりを作る。

 黒い煙が奴を包み込み、逃げようとするがその煙すらも斬る。斬って、斬りまくって、誰の邪魔も入らないようにして、目的のものを斬る。殺す。背に剣を突き刺す。その剣を軸にして負の感情を流す。

ラスト「がっァァァァァァ!!!」

「…………」

 剣を引き抜き、そのまま黒い花に包まれた足で蹴る。ヒールのかかとが傷口を更に抉り、流れる血の量を増やして蹴り飛ばす。

ラスト「ぐっ……クソっ、やってられるか!」

 雷が空を流れ、奴が逃げ去ろうとするが、その雷にニルヴァーナをぶつけた。が、勢いを少し失っただけで逃がしてしまった。

 飢えが収まらない。まだ壊し足りない。

「…………」

 目に映った金髪の男に剣を振り下ろす。小さな呻き声と同時に鮮血か溢れ出す。

 こんなのじゃダメだ。もっと綺麗に、もっと鮮やかに斬らないと……。

 膝立ちをする赤と黒の入り交じった毛の女に焦点を向け、ゆっくりと歩み寄る。

「……」

 胸ぐらを掴み、目と目が合う高さにしてから剣を振る。綺麗な鮮血が飛び散り、頬に当たる。少しだけ暖かい。やっぱり、生きてる血は良い。でも、まだ美しさに欠ける。もっと綺麗に、もっと鮮やかに、その鮮血を全身に浴びて、この欠けた魂を取り戻して、私を1つの人間にして……

「…………」

 周りに倒れてる死体を適当に掴み上げ、軽く投げ上げてから横一文字に斬る。血は出ない。どうやら外れのようだ。

 次は黒髪の男と、青髪の女が目に入る。彼らはどんな血を見せてくれるのだろうか。私の破壊衝動を抑えてくれるのだろうか?その期待を込めて近づく。その瞬間ーー

ヴァル「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 何かが飛びかかり、そのまま地面に押し倒される。引き剥がそうと必死にもがくが、両腕を強く押さえられて全く動かない。そうこうしてるうちに、強い頭突きを喰らわされ、私の意識は闇に落ちた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 目覚めた時、目に映るのは決まって白い天井。殺風景すぎるこの部屋で、私は目覚めたことが多々ある。

 起きた瞬間、まず最初に浴びたのは『殺意』という名の剣先。

「……フウロ」

フウロ「お前に斬られたところが痛くて痛くて仕方ないが、大人しく休むわけにもいかん。……ヴァルからある程度の話は聞いているが、私はお前を信用出来ない」

「……」

 斬られたってことは、多分そういう事なのでしょう。

フウロ「未来人だかなんだか知らんが、私は仲間を傷つけたお前を許すことが出来ない……とは言え、実害があったのは私とライオスだけで、あの場にいたその他大勢は何も知らん。幸いだな」

「……私の事情を知っているということは、私の中にヒカリちゃんがいることも知ってますか?」

フウロ「ああそれも聞いた。とても信じられんが、ヴァルもセリカも、なんならミラもそう言うから信じた。そして、お前がここですやすやと寝てられるのは私とライオスが同時に黙っているからだ。一応お前はラストを倒し、その後駆けつけたヴァル達のおかげでリーシア嬢も救出出来た。形だけなら、お前は英雄に近い立場なのかもしれん」

 英雄……ですか。

 それは私以外の人に言うべき言葉です。私は英雄にはなれない。英雄には相応しくない。

フウロ「ただ、また別の問題がある」

「……私の見た目……ですかね」

フウロ「龍人。知ってるとは思うが、うちのギルドにいる奴は例外に漏れず、龍人を嫌う奴がいる。いくらお前がヒカリだと言われても、その姿を理由にあーだこーだと喚くバカどもがいる。そこでだ、ヒカリに自由に変われるというのであれば、出来ればヒカリの姿でいてほしい」

 難しい話ではないが、まだヒカリちゃんが目覚めていない。それほどあの破壊衝動は意識を壊しに来たのだろう。

 前の世界から引き継いでしまった私の最大の欠点。まさか、こんな形で出てしまうことになろうとは……。

「すみませんが、少し1人にしてください。まだ胸のざわめきが収まらないんです。生きてる人を見つけたら、また襲ってしまうかもしれません」

フウロ「……分かった」

 フウロはそれ以上何も聞かまいと、何の惜しみもなく部屋を出ていった。

「……ヒカリちゃん」

(…………)

 反応無し。私以上にダメージを負っている。まあ、初めてのことだから当然なのだが、本当、まさかこうなってしまうとは。

 予定ではラストを倒した後、みんなに治癒術かけてそのまましれっと輪に入るつもりだったんだけどなぁ。前の世界では失敗した最初の出会い。そこを上手くやろうと思ったんだけど、結局歴史通りに嫌われる形での出会いになってしまった。さて、ここからどう信頼を積み上げていこうか?

《コンコン》

 ーーと、考えを巡らせていると、誰かがノックをする音が響いてくる。

「どうぞ」

 どうせヴァルかセリカだろうと思って、扉の前にいる人物を特に探りもせず、私は生半可な返事をしてしまった。

 まさか、そこにいた人物が新たな火種とも知らずに……。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「歪んでいる」

 久し振りに書庫からグランストリアの本を眺めていたが、その文章がところどころおかしくなっている。

 前回の周を記録したものだから、変わることなんて有り得ない。有り得ないはずなのに、歪んでいる。

「ヒカリの生き残り、欠けた魂のネイが降臨。そして僕は10年前からギルドに所属する身。いや、まさか別々の時間を生きる同一人物が3人いるとはいえ、過去が歪むなんてことが有り得るのか?」

 ……有り得なくはない可能性だ。今までは時間軸の違う2人がいただけの物語だった。それに、僕自身もあまり時間には深く関わらなかった。精々小細工を仕掛ける程度だった。

 歴史を歪ませているのは僕も同じか。ヒカリの存在をただ否定するわけにはいかないね。

 いや、でも、だとしたらなぜヴェリアは今更になって現れた?本当に僕達3人がいるからなのか?

 何か、何かが違う気がする。この歪んだ歴史には、何か別の要因が重なっている気がする……。

「もっと、詳しく調べなくては……」

 そう思って書庫を出ようとした時、僕の目の前にはいるはずのない人物が立っていた。

「君は……いや、まさかそんな……」

「……」

 歴史が歪んでいる。その理由は、僕達3人だけが原因じゃないようだね……。

 冷や汗を垂らしながら、僕はさてこの状況をどうしようかとだけ考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい

緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。 ――自分は民を理解しているつもりだった。 だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。 その痛烈な自覚から、物語は動き始める。 革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。 彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。 そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。

処理中です...