グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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Maledictio4章 【物語の罰】

Maledictio4章7 【予想外の戦力】

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 ーーグランメモリーズギルドハウスにて。

「結局どいつもこいつもこれといった成果無しか」

ヴェルド「同じく成果無しの奴に言われたかねぇけどな」

 俺たちが帰ってきたタイミングで、丁度みんなも戻ってきたみたいだしと報告会を始めたはいいのだが、全員が全員成果無しとは思いもしなかった。

 まあ確かに、俺たちが訪れた先全部がヴェリアの襲撃にあった後ってんだから、他もそうだろうなと薄々感じてはいたが……。

「ギルドは大体全滅……クロムとラストのとこも大将がどうにかって感じか」

 まあクロムが生きているのなら心強い仲間になりそうだとは思ったが、あいつ崩れる時はとことん崩れる奴だしな……。立ち直るには結構な時間がかかりそうだ。

ヴァハト「むぅ……。ガキ共の方は知らんが、ギルドマスターともなれば、老いぼれとらん限り遅れをとるような奴じゃないってのにな……」

ライオス「それだけ敵が強大だということだろう。まさかコールドミラーの奴らがほぼ全滅とは思いもしなかったが」

ミラ「さすがの私でもちょっとこれは心配になっちゃうわね。ヴァル、何か勝算は無いのかしら?」

「まあ……」

 あるにはあるんだが、ネイにはまだしばらく自分の正体は隠しといてって言われてるし、共有は出来ないな。

セリカ「一応みんなは歓迎しないかもだけど、一つだけ全員生存してたところならあったよ」

「ん?どこだ?」

セリカ「ダークソウル」

「「「 …… 」」」

 これはまた予想外なもんが出て来たな……。

 ダークソウルと言えば、大会の時から俺たちのギルドと因縁のある連中だ。確かまだこの世界じゃ起きてないが、セリカを巡ってギルド間の戦争になりかけてたこともあったし、仲間にするにはちょいと微妙な連中だな。

セリカ「本当は行きたくなかったんだけど、お父さんのところに行って話をつけてきたの。そしたら雇ってるギルドを紹介するって」

ヴェルド「それであの野郎共ってか?」

セリカ「うん。いないよりかはマシかなって。一応私が連絡すればすぐにでも来てくれるようになってるけど」

 みんなが俺の方を見てくる。それぞれ嫌な記憶があって本当なら断りたいはずだろうが、セリカの言ったようにいないよりかはマシだって分かってるんだろう。

 だからこそ、最後の判断は俺に任せる。未来を知ってる俺なら、あいつらがどんな奴だったのかをもっと知ってるはずだって(まあ生憎嫌な奴らだったなってことに変わりはねぇんだが)。

サテラ「よく分かりませんけど、いないよりかはマシなんじゃないですか?」

 ーーと、ここでネイ、いやサテラが助け舟を出してくる。

サテラ「だって、世界を脅威に晒してる相手ですよ?なら過去の因縁とか何とか気にしてる場合じゃないと思いますよ!」

ライオス「確かにそれもそうだな」

ヴェルド「まあ、協力は出来ねぇが互いの背中守るくらいなら出来そうだしな」

 サテラの助け舟によって、微妙な感情だったはずが少しだけポジティブになっている。

 俺がサテラの方に目を向ければ、周りにはバレない程度に片目でウィンクしてきていた。……本当、頼りになるやつだな。

「よしセリカ。ダークソウルの連中も頭数に入れる。突入ってなったら呼んでくれ」

セリカ「うん、分かった」

 さて、そうなると精霊界攻略の面子は俺たち(フウロとグリードは欠けてるが)、ダークソウル……くらいなもんか。他は声かけたはいいけど来たらいいなくらいだし、頭数に入れとくのはやめとこう。

 ……やっぱ分かってたことだが、戦力が足りないのは変わんねぇな。

「そういやヒカリ。あいつはどうした?」

ミラ「ヒカリちゃんならお師匠さんとお父さんを説得してくるって、ヴァルたちが出た後に出てっちゃったわよ」

「師匠と親父……」

 なるほど。異世界組か……。俺は詳しく知らんが、向こうの世界にもそれなりの戦力がいたんだっけな。特にヒカリの親父は馬鹿みたいに強いとか何とか。

 ならそれも戦力に加えるとして、後は何だ?まだこれだけじゃ足りん気がするけど、これ以上どうやって増やすんだ?

ヴェルド「あ、そうだ。レイジ。あの魔女も戻ってきてなくねーか?」

「レイジ……」

レイジ「読んだかい?」

 噂をすれば何とやらってくらいに、ちょうど話をし始めた瞬間にレイジが帰ってきた。

「遅かったな。どこ行ってたんだ?」

レイジ「ちょっと昔の伝手を探しにね」

「昔の伝手だなんて、邪龍絡みの間違いでしょう」

「……!」

 この声、どこかで聞き覚えがある。それも、割と良くない方で……。

「皆さんどうも初めまして。ミカヤ・フリアラルと申します。恐らく、ヴァルさんにはこの名を騙った方が実力は分かるかと思います」

「……」

 ミカヤ……。忘れるわけがない……。こいつは確か……

「光楼宗自由の席に座る者。訳あって助太刀に参上しましたよ」

 丁寧な口調で微笑みを向けてくるミカヤ。その笑みに対し、俺はどう反応すればいいんだと狼狽え、また助けを求めるようにサテラの方を見る。すると、サテラは初めこそ憎悪の眼差しを向けかけていたものの、すぐに諦めたように首を振り、「まあいいか」と小声で呟いていた。

ヴェルド「どうした?ヴァル。やけに難しそうな顔しっか」

「ああ、まあちょっとな……」

ミカヤ「仕方ありませんよ。恐らく、未来の方では私たちとあなた達は敵対関係になっているのですから。きっと、大切な人を殺し殺されあったことでしょう」

ヴァハト「……一応聞いておくんじゃが、ヴァル。お前はいいのか?」

「……」

 光楼宗との戦いを思い出すと、正直な話こいつらを仲間にするだなんて、ダークソウルを受け入れる以上に難しい。

 確かにまだ、この世界じゃ俺たちと奴らとの間で戦いは起きていない。しかし既に、ユミのことで接点がある今、背中を預けて襲われないなんてことは有り得ない。

レイジ「色々とあるのは分かるよ。でもさ、今私たちに必要なのは圧倒的な戦力だ。それに、ヨミも言ってたじゃないか。敵を敵だと割り切るなって」

「……」
サテラ「……」

レイジ「光楼宗はろくでもない奴らばっかだよ。私だって邪龍のことで結構利用されちまったし。でも、だからこそ分かるんだ。こいつらの力を借りられたら、正に鬼に金棒ってね」

 レイジの言い分に対し、俺もサテラも反論することは出来なかった。だって、ダークソウルすら受け入れると言って、その前には敵を敵だと思うななんてことを言っといて、いざ都合の悪い奴らが来たらお前らは敵だって、そんな都合のいいことは言えない。

「ミカヤ、1つ聞きたい」

 でも、だからって「じゃあ仕方ない」って理由で受け入れるわけにもいかない。

「お前らは敵か?」

 だから俺は聞く。お前らは敵かと。そんな質問されて、素直に敵だという奴は早々いないと分かっていながらも、俺はその問いをかけた。

 その問いに対し、ミカヤはそっと一息ついてから答えを返す。

ミカヤ「敵でしょう。私たちとあなた達は決して相容れることのない関係です。今この場の関係は、利害の一致による一時的な共闘。本当なら他の方も呼んでいいのですが、あの人たちは血気盛んなので必ず作戦に支障をきたすと思って呼んでません。ここにいるのは、光楼宗としてではなく、個人としてのミカヤです」

「……」

 信用したわけではないが、その言葉に嘘は無いと思う。

 利害の一致。そう、これはお互いに利害が一致しただけで組んでいる一時的なものだ。この戦いが終わればまた敵同士になる。そのことを分かった上で手を組む。

「分かった。ミカヤ、お前の力も借りる。これが終わったらまた敵同士だけどな」

ミカヤ「ふふ。もう勝つ前提でいるとは、嬉しい限りです」

 ーー思わぬ助っ人を手に入れた俺たち。これでもまだ戦力としては心許ないが、だからといってグダグダ他を当たる時間もない。これからすべきことは精霊界攻略に向けた作戦会議。本当なら軍師であるヒカリも交えて話をしたいところだが、あいつはまだ当分帰ってこないと思う。だから、ある程度の動きの確認、突入後の想定事項を共有する。その最低限の確認だけに留めておいた。

「精霊界突入は明日。そこで全てにケリをつける!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

サテラ「はぁ。まさか光楼宗まで絡んでくるとは思いもしませんでしたね~」

「だな」

 ギルドからの帰り道、今日はもう正体バラした後だからとサテラと同じ道を歩いていた。

 一息ついて改めて考えてみると、怒涛の数日間を過ごした気がする。偽の現実を過ごした時と違って、大変だったなとは思わないが、逆に疲れの方は大きい。

「なぁ。もしもの話だけどよ、光楼宗と戦わなくていい方法ってねぇのかな?」

サテラ「そうですね~。何万回も繰り返しましたけど、最後の戦いは必ずあいつらと戦うことになってましたし、もうそこは変えようがない運命だと思います」

「そっか……」

 過去、いや、未来のことを思えば、あいつらを許してやろうという気はさらさら起きない。でも、あいつらだって同じ人間で、それぞれ何か理由があってあんな狂人になってしまったと思う。生まれた時からの悪人なんて普通いるはずないだろ。

 それに、ミカヤは自身を唯一の常識人とは言ったものの、光楼宗をまとめあげる奴が常識人なわけなく、でもだからと言って話が出来ないわけではなかったので(それどころか普通に会話出来た)、話せば分かり合える奴は何人かいるだろう。

「でも、何万回も繰り返して、話し合いで済んだとかってのは無いんだよな」

サテラ「そうですね。1人たりとして話し合いが成立した事例は無いです。あのミカヤですら最後は血で血を洗う殺し合いをするしかありませんでしたからね。何度シロップとセリカさんが殺されたことか」

「……大丈夫だよ。ちゃんと全員五体満足で突破出来る未来を見つけっから」

サテラ「別にそこは疑ってませんよ」

 そしてそこには、ちゃんとお前もいる未来を目指して……。

「ところで、さっき話に出て来たけどシロップって今どうしてるんだ?」

 そういえばと、かつての愛らしいモフモフの小竜を思い出し、この世界じゃまだ出会ってないよな?と過去の記憶を遡る。……うん、出会ってないっぽいな。

サテラ「シロップたち龍王は皆、前世の記憶を引き継いだ状態でこの世界にいます。なので、ヒカリちゃんの保護者として付けてるんですけど、シロップだけは例外で、いざって時の私の守護龍としてその辺を飛び回ってますよ」

「その辺?」

 この辺にいるのか?と思ってぶんぶんと手を振ってみるが、特に見えない何かに当たったって感触はない。

サテラ「ほら、ここに」

 ここにと言われた瞬間に、頭の上にちょこんと軽い重さが加わる。そこを触れば、もうずっと触っていたいほどにもふもふとした感触が伝わってくる。

「よっ!ヴァルお久!」

「おー」

 頭の上からゆらゆらと小さな翼を羽ばたかせながら俺の手の上に落ち、変わらぬ元気な声でこの小竜は俺の名を呼んでくる。

 龍王とは言ったが、こんな小さな見た目してっとまるで威厳を感じねぇな。まあそれがいいところなんだけど。

サテラ「とまあ、こんな感じで、普段は透明になって誰にも触れられないようにしながら私の周りを飛び回ってるわけです。いざって時だけこうして姿を現すって感じです」

「お前も頑張ってんだな」

シロップ「2人ほどじゃないけどね~」

 そのままシロップは懐かしさでも感じてるのか、俺の頭の上に座り直した。

サテラ「と、こんな感じで、意外と未来を知る人は多くて、こうして私の計画の枠に入ってたりするものです。本当ならミイもいてくれたら心強かったんですけど、生憎私と統合されてしまった後ですし、無い物ねだりですね~」

「まあ、そこは代わりってわけじゃねぇけどユミがいるし、何とかなんだろ」

サテラ「ふふ、そうですね」

 そうだよ。俺たちには頼れる仲間がたくさんいて、みんながそれぞれ頑張ってるんだ。

 何が戦力が足りないだよ。こんなに頼りになるやつがいっぱいいて、他に何を望むんだよ。

 足りないって思うなら、俺が、ネイが、みんなが、互いに支え合えばいい。それが俺たちの戦い方なんだから。そうだろ。あの世界のネイ。まだ、ほんとうにまだ終わってねぇんだから。

「ところでお前、今どっちの方なんだ?」

サテラ「ん?どちら、とは?」

「アルトと戦った方か、女神になった方かって違い」

 話を聞く限りだと、子供の名前とか言ってるし女神の方かな?と思ったけど、察しの良さと大事なことは何も言わないところ、あと子供産んだならそれなりにあるはずの落ち着きも全然無いところは俺と過した方っぽいし、どっちなんだろう?

サテラ「……さあ、どっちでしょう?」

 ただ、サテラは悪戯っぽく笑みを浮かべ、「教えてあげませーん」と言って俺の先を進んで行った。

 まさか、これも察しろとは言わねぇよな。
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