魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第4章 ギルド体験週間編―3日目

ギルド体験週間3日目② 謝罪と和解

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「昨日は色々あって買い物に行けなかったから、今日こそはコフェアを買いに行かないと…」
ルーシッドは朝の身支度を整えながらそう言った。
「そうだったわね。それにキリエの引っ越しもしないとだし、今日のギルド訪問は早めに切り上げましょ?」
ルビアがいつものようにツインテールを整えながら言う。
「後は…ベルさんの調薬ギルドファルマシストと、サラさんの生徒会ギルドカウンサルかなー?」
フェリカは鏡に向かい化粧をしながら言った。
「個人的には魔法具開発ギルドディベロッパーズを覗いてみたいな」
「ルーシィほど魔法具の構造に精通している人が、魔法具開発ギルドディベロッパーズから学べることなんてあるのかな?」
ルーシッドに対して、キリエが笑いながら尋ねた。

午前中の授業は『魔法史』と『詠唱法基礎』。どちらもルーシッドにとっては聞かなくてもわかるくらい基礎的な授業ではあったが、一般的な生徒たちにとっては初めて情報も多い。
特に詠唱法基礎は、詠唱文の構造やそれぞれの句節の意味などを学んでいく授業である。突き詰めていくと、短縮詠唱アブリヴィエイション断章詠法フラグメントキャストなどのより高度な詠唱法の理論構築やオリジナルの魔法作成などにとっても必要な必須知識になるのだが、そこまで考えてこの授業を受けている生徒はほぼいないことだろう。



昼休み。ルーシッドたちはいつものメンバーで食事を取っていたが、やはり昨日の話題となった。

「もう、心配したんだからね?」
サラはルーシッドを抱きしめ、頭をなでながらそう言った。
「ごめんごめん。言う暇がなくて」
「まぁでもホント、無事に帰ってこれてホント良かったわ」
「ですね。緊急だったとはいえ、よく考えたら無謀な作戦でしたね。ろくな計画も立てずに行くことになりましたがよく無事に帰ってこれたものです。色々な魔法を使えるメンバーがいたので、臨機応変に対処することができました」
フランチェスカが昨日のことを振り返ってそう述べた。
「しかし…『生人形リビングドール』とは…何とも恐ろしい話だ…」
ライカは身震いするようにしてそう言った。
「えぇ…でもこの件はこれで解決した訳ではないと思います」
ルーシッドは真面目な顔で答え、話を続ける。

「あの時、オリガ先輩は『ランクが低い魔法使いでは成功している』と言っていました。つまり、この世の中には『生人形リビングドール』化によって強化された魔法使いがまだいるということです。ゲイリー先輩の状態が『成功』なのかどうかはわかりませんが…リスヴェルが捕まったことによってその人たちがどうなってしまうのかわかりません…」
「そうね…でもまぁ、その辺は国に任せるしかないわね。とにかくルーシィ達はこれ以上の被害が出るのを未然に防いだのよ。本当なら勲章ものだわ」
サラはルーシッドを慰めるようにして言った。
「まぁそうだね。でも、自動魔法人形オートマタとか、人間に魔法回路マジックサーキットを組み込む発想とか、あの人、魔工技師としては天才的だと思うな~。使い方さえ間違えなければすごく良い魔法具になると思うんだけど。私も少し思いついたことがあるから、次の休みにでも試してみようかな~」
「……ちょっとルーシィ、大丈夫なんでしょうね?」
ルーシッドがまた何やら思いついたような笑みを浮かべているので、不安になりサラが尋ねる。
ルーシッドは昔から思いついたことは何でも実験してみるのだ。その斬新な発想で今までいくつもの魔法具や新魔法を生み出してはいるが、当然失敗だって一度や二度では済まない。そんな危なっかしいところがあるからサラはルーシッドの事が放っておけず、少し過保護になり過ぎているところがあるのだ。
「大丈夫大丈夫。危ないことはしないから」

まったく…人の気も知らないで…と、ため息をつきつつ、今度はどんな発明をするのだろうとわくわくする自分もいる。そして、そんな面白いことを見つけた時のキラキラしたルーシッドの顔がまた可愛いくて好きだと思ってしまうサラなのだった。


「あの…ライカっ…!」
呼びかける声がしてそちらを向くと、そこにはゲイリーとオリガの姿があった。

「……私に何か用か?」
ライカが少し身構えて答える。
「その…この前は本当にごめんなさい」
ゲイリーの言葉に合わせて、2人は深々と頭を下げる。
「私たち心から反省しているの。すぐに許してくれとは言わないけど…あなたに許してもらえるように頑張るから、だからその……ふぎゃっ?!」
急に頭上からチョップをくらって思わず変な声を出してしまうゲイリー。
「これで許してやる。だからそんな辛気臭い顔するな。いつもの自信満々なお前はどうした?しっかりしろ、これから同じギルドで働くんだろ。そんな弱気じゃ困るぞ。その、なんだ…お前の魔法力には期待している」
「ライカ……あっ、ありがとう」
「それはいいんだが…隣のやつは誰だ?」
「あっ、えっと…オリガ・シュタインです。あの、えっと、この前は本当にすいませんでした!」
オリガは再び深々と頭を下げた。
「……え、誰?」
ライカは困惑し、みんなを見回す。
「失礼かと思って置いて来ちゃったけど、やっぱり連れてくれば良かったなぁ……あの、えっと、この前ゲイリーと一緒にいた・シュタイン、あれは私です。正確には私の魔法人形なんです。私は人形魔法師の・シュタインです」


「………えぇえぇぇぇ!?」
あ、昨日の自分たちと同じリアクションだ。ルーシッドたちはそう思って笑ってしまうのだった。
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