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第7章 魔法学院の授業風景編
幕間①
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ディナカレア地下大迷宮 ―
ディナカレア魔法学院の地下には何十層にも渡る大迷宮が広がっている。
これは自然に作られたものではなく、人工的なものだ。
魔法鉱石採掘のために掘られていたものを加工し、学校の演習場として使っているのだ。
ちなみに、大迷宮は今なお変化し続けている。
魔法鉱石はいまだに発掘されるので、『魔法具開発ギルド』による採掘作業によって、縦にも横にも広がり続けている。採掘作業には、土属性の魔法やそれを施した魔法具などが使用されており、掘り続けることによって地盤沈下で迷宮が崩れるといった心配はない。
また、大迷宮の管理人である、メチカ・アンダスの趣味によって定期的に地形は変わるので、大迷宮は入るたびに少しずつ変化するのだ。メチカはいたずらでトラップを仕掛けたりもするので、大迷宮探索は授業として使われるだけでなく、生徒たちの娯楽の1つとしても使われており、学校の許可を得れば自由に探索することができる。
また、迷宮探索を専門に行う『迷宮探索ギルド』というギルドも存在し、日々探索を行い、迷宮の地図を作成・公開している。現在確認されている最下層は地下23階であるが、地下23階に行って帰ってくるためには軽く1、2週間程度かかるため、迷宮探索ギルドでも長期休みを利用して行く程度であり、迷宮探索ギルドの間ではこれは俗に『大遠征』と呼ばれているイベントである。このイベントは一般生徒の公募も行っている。前回大遠征が行われたのは、昨年の夏休みなので、恐らくその後も迷宮は変化していると思われる。
迷宮探索演習は基本的には一泊二日で行われる。ちなみに迷宮内には、鐘の音を知らせる特殊な魔法具が設置されており、その鐘の音で今が何時かわかるようになっている。迷宮探索で必要になる物品は各自で準備する必要があり、そこもまた迷宮探索らしさを追求した形となっている。
この地下迷宮は授業の演習で使われるほか、チーム対抗戦やクラス対抗戦の会場の1つとしても使われている。
ルーシッド達のクラスの最初のチーム演習が行われた日の夕方。授業が終わった後の職員室でのこと。
ちなみに各学年のクラスは1クラス約20名で5クラスあり、ルーシッド達は1年5組である。
授業のうち、実技演習に関しては、闘技場は1つしかないため、例えば地下迷宮を使った演習や、森林を使った演習、屋外練習場や屋内練習場などの別の会場を使って行う演習などを、各クラスでローテーションを組んで行うことになる。
しかし、最初の演習だけは毎年恒例で、闘技場で行われる『柱の登頂』と決まっていた。今回はくじ引きの結果、ルーシッド達が最初に行うことになったのだった。
「いや、聞きましたよ。リサ先生。全チームがクリアしたんですって?すごいですね!」
同僚から声をかけられるリサ・ミステリカ。
「あ、はい。そうなんですよ」
自分でもびっくりというように笑いながら答えるリサ。
「クラス全体としてはルビアさんもいるし強いとは思いますけど、他の生徒は結構Cランクも多いですからね。全員クリアってのはすごいですね。さすがに天才魔法使いと言われたリサ先生だけありますね。良いアドバイスをあげたんじゃないですか?」
「いや、私はホント、何もしてないんですよ。生徒たちはみんな口をそろえて、ルーシッドさんにアドバイスをもらったって言ってました」
「あぁ~…ルーシッドさんね…あの子は何というか…不思議ですよね」
「そうですね。Cランクでもクリアできるように、魔力量の計算をして、最大魔力量内で収まるように魔法の分割の仕方を教えたりしてました。あとは、今まで誰も思いつかなかったような斬新な作戦を考えたり、まだ教わっていない『輪唱』の詠唱文を教えたり…自分自身が魔法が使えないのになぜあんなに魔法に詳しいんでしょう…ほんと、あの子は何者なんでしょうか…」
「それはすごいですね…まぁどうやらウィンドギャザー家が後ろ盾らしいですからね。そのせいもあるんじゃないですかね?」
「え、そうなんですか?」
「えぇ、噂では身寄りがないらしくて、ウィンドギャザー家にお世話になっているみたいですよ。ルーシッドさんの学費とかは全部ウィンドギャザー家名義で払われてますから、間違いないみたいですね」
「そうだったんですか、それは知りませんでした…」
「小さいころからあの天才サラさんを近くで見ていたわけですからね。ルーシッドさんのすごさも納得できるところもありますよね」
「そうですね…」
リサはどこか腑に落ちない顔をしていた。それはむしろ逆なのではないかと思ったのだ。
リサの考えは正しかった。
確かにサラが持つ『魔力の才能』は間違いなく本人のものである。しかし、その他の部分、例えば魔法に関する知識や詠唱技術などに関しては基本的に全てルーシッドが教えたものである。サラは魔法学院に入学する時点ですでにずば抜けた魔法に関する知識や技術を持っており、さすがウィンドギャザー家の娘だと言われたものであるが、実のところそれは全てルーシッドのお陰であった。
ウィンドギャザー家には元々世界有数の魔法の家庭教師がついていたのであるが、ルーシッドがサラに教えるようになってからというもの、サラの魔法力は格段に上がったので、もう教える必要がなくなってしまい辞めさせられてしまったのだった。少し可哀そうな話ではある。
そのルーシッドが今やクラスのいわばブレーンとなっているのである。
ルーシッドの真の才能にもっと多くの人が気づくのはもう少し先になりそうである。
ディナカレア魔法学院の地下には何十層にも渡る大迷宮が広がっている。
これは自然に作られたものではなく、人工的なものだ。
魔法鉱石採掘のために掘られていたものを加工し、学校の演習場として使っているのだ。
ちなみに、大迷宮は今なお変化し続けている。
魔法鉱石はいまだに発掘されるので、『魔法具開発ギルド』による採掘作業によって、縦にも横にも広がり続けている。採掘作業には、土属性の魔法やそれを施した魔法具などが使用されており、掘り続けることによって地盤沈下で迷宮が崩れるといった心配はない。
また、大迷宮の管理人である、メチカ・アンダスの趣味によって定期的に地形は変わるので、大迷宮は入るたびに少しずつ変化するのだ。メチカはいたずらでトラップを仕掛けたりもするので、大迷宮探索は授業として使われるだけでなく、生徒たちの娯楽の1つとしても使われており、学校の許可を得れば自由に探索することができる。
また、迷宮探索を専門に行う『迷宮探索ギルド』というギルドも存在し、日々探索を行い、迷宮の地図を作成・公開している。現在確認されている最下層は地下23階であるが、地下23階に行って帰ってくるためには軽く1、2週間程度かかるため、迷宮探索ギルドでも長期休みを利用して行く程度であり、迷宮探索ギルドの間ではこれは俗に『大遠征』と呼ばれているイベントである。このイベントは一般生徒の公募も行っている。前回大遠征が行われたのは、昨年の夏休みなので、恐らくその後も迷宮は変化していると思われる。
迷宮探索演習は基本的には一泊二日で行われる。ちなみに迷宮内には、鐘の音を知らせる特殊な魔法具が設置されており、その鐘の音で今が何時かわかるようになっている。迷宮探索で必要になる物品は各自で準備する必要があり、そこもまた迷宮探索らしさを追求した形となっている。
この地下迷宮は授業の演習で使われるほか、チーム対抗戦やクラス対抗戦の会場の1つとしても使われている。
ルーシッド達のクラスの最初のチーム演習が行われた日の夕方。授業が終わった後の職員室でのこと。
ちなみに各学年のクラスは1クラス約20名で5クラスあり、ルーシッド達は1年5組である。
授業のうち、実技演習に関しては、闘技場は1つしかないため、例えば地下迷宮を使った演習や、森林を使った演習、屋外練習場や屋内練習場などの別の会場を使って行う演習などを、各クラスでローテーションを組んで行うことになる。
しかし、最初の演習だけは毎年恒例で、闘技場で行われる『柱の登頂』と決まっていた。今回はくじ引きの結果、ルーシッド達が最初に行うことになったのだった。
「いや、聞きましたよ。リサ先生。全チームがクリアしたんですって?すごいですね!」
同僚から声をかけられるリサ・ミステリカ。
「あ、はい。そうなんですよ」
自分でもびっくりというように笑いながら答えるリサ。
「クラス全体としてはルビアさんもいるし強いとは思いますけど、他の生徒は結構Cランクも多いですからね。全員クリアってのはすごいですね。さすがに天才魔法使いと言われたリサ先生だけありますね。良いアドバイスをあげたんじゃないですか?」
「いや、私はホント、何もしてないんですよ。生徒たちはみんな口をそろえて、ルーシッドさんにアドバイスをもらったって言ってました」
「あぁ~…ルーシッドさんね…あの子は何というか…不思議ですよね」
「そうですね。Cランクでもクリアできるように、魔力量の計算をして、最大魔力量内で収まるように魔法の分割の仕方を教えたりしてました。あとは、今まで誰も思いつかなかったような斬新な作戦を考えたり、まだ教わっていない『輪唱』の詠唱文を教えたり…自分自身が魔法が使えないのになぜあんなに魔法に詳しいんでしょう…ほんと、あの子は何者なんでしょうか…」
「それはすごいですね…まぁどうやらウィンドギャザー家が後ろ盾らしいですからね。そのせいもあるんじゃないですかね?」
「え、そうなんですか?」
「えぇ、噂では身寄りがないらしくて、ウィンドギャザー家にお世話になっているみたいですよ。ルーシッドさんの学費とかは全部ウィンドギャザー家名義で払われてますから、間違いないみたいですね」
「そうだったんですか、それは知りませんでした…」
「小さいころからあの天才サラさんを近くで見ていたわけですからね。ルーシッドさんのすごさも納得できるところもありますよね」
「そうですね…」
リサはどこか腑に落ちない顔をしていた。それはむしろ逆なのではないかと思ったのだ。
リサの考えは正しかった。
確かにサラが持つ『魔力の才能』は間違いなく本人のものである。しかし、その他の部分、例えば魔法に関する知識や詠唱技術などに関しては基本的に全てルーシッドが教えたものである。サラは魔法学院に入学する時点ですでにずば抜けた魔法に関する知識や技術を持っており、さすがウィンドギャザー家の娘だと言われたものであるが、実のところそれは全てルーシッドのお陰であった。
ウィンドギャザー家には元々世界有数の魔法の家庭教師がついていたのであるが、ルーシッドがサラに教えるようになってからというもの、サラの魔法力は格段に上がったので、もう教える必要がなくなってしまい辞めさせられてしまったのだった。少し可哀そうな話ではある。
そのルーシッドが今やクラスのいわばブレーンとなっているのである。
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