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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦①
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地下迷宮探索を終え、リスヴェルが学校に赴任してきてから1週間ほど経った。今はディアナの月(4月に相当)の4週目である。学院は平穏を取り戻していた。
地下迷宮の調査は終了し、多少地形の変化は見られたが特に荒らされた様子もなく危険性もないので、再び解放されていた。元々リスヴェルがルーシッドを出迎えるために仕掛けを用意しただけなので当然なのだが。
ルーシッド達のクラスでは次に行われるクラスの演習について担任のリサ・ミステリカから話されていた。
「パーティー対抗戦ですか?」
「はい、パーティー対抗戦はクラス内で行われる実技演習の1つで、今まで行ったチーム演習や地下迷宮探索演習とは異なり、パーティー同士で勝負してもらうことになります。ゲームはその時によって様々ですが、今回のゲームは『キャプチャー・ザ・フラッグ(旗取り戦)』です。
ルールは簡単で、自陣に用意された旗を取り合って最後に旗を一番多く持っていたパーティーが優勝です。
ゲーム時間は午後の授業時間の3時間です。このゲームに関しては相手への直接攻撃は物理的なものも魔法的なものも禁止です。魔法は防御魔法や移動魔法など、攻撃以外に使用するものに限ります。何か質問はありますか?」
「先生、どこでやるんですかー?」
ライム・グリエッタが手を上げて尋ねる。
「あぁ、そうでしたね。今回の会場は学院の裏にある大森林です」
「他に質問はありますか?」
「優勝したら何か賞品ありますかー?」
再びライムが尋ねる。クラスの授業で賞品なんて出るわけないとみんなが笑っていると
「ありますよ」
とリサは答えた。その言葉にクラスの目の色が変わる。
「まぁそんなに大したものではありませんが、今晩の夕食時に優勝者限定デザートと交換できる『デザート引換券』がもらえます」
「限定デザート……」
ライムがごくりと唾を飲む。
「みんな!頑張ろう!限定デザートだって!」
「え、えぇ、そうね…」
すごい気迫に押されてそう答えるシアン・ノウブル。
「限定って言われると食べたくなるわね~」
うふふと笑うロイエ・ネイプルス。
「他に質問は?」
「先生、旗を取るために魔法を使用することはルール違反になりませんか?」
シアンがそう尋ねると、リサは良い質問だと思い少し微笑んだ。
「えぇ、それはルール違反ではありません」
「では、旗を取るための魔法の流れ弾が相手選手に当たってしまうことは?」
「故意でなければ問題ありません。審判は私とリスヴェル先生、そして、今回の演習からは白澤のシシル・アラギキ先生も審判に加わってくださいます」
「白澤とは何ですか?」
「白澤はクシダラ国出身の魔獣で、八つの目があり人間よりもはるかに広い視野を持ち、また非常に知恵に富んでいます。私たちの学院にはなくてはならないとても貴重な方ですよ」
魔獣の中にも、人間と一定の距離を取って生活している者たちと、人間社会に完全に溶け込んで生活している者たちなど色々な者がいる。例えば、ドラゴンやエルフ、ユニコーンなどは人間社会にあまり出てこない者が多い。これは人間が嫌いとかそういうわけではなく、環境的な要因が大きい。多くの魔獣は自然を好むため、人間の手があまり加えられていない場所に住んでいることが多いからだ。しかし一概にそうという訳ではなく、中には都会が好きという個体もいる。魔獣には人型と獣型がいるが、魔獣はアウラ(生体エネルギー)の量が人間よりも圧倒的に多く、それを扱う能力も人間より高いため、獣型の魔獣の中には形態変化して、人型になって人間界で生活している者も多い。これは別に姿を隠している訳でなく、獣型のままだと単純に生活が不便だからである。
そんな中でも白澤はとりわけ人間に友好的な魔獣であり、この学院ではその能力ゆえに、広い場所で行う対抗戦形式の演習の審判や、遠征に行く際の監視役など色々な役目を負ってくれている。実は、入学試験の時に審判を務めていたのも、このシシルである。
ちなみにこの世界の共通語は魔法界共通語と呼ばれるもので、我々の世界の英語に近い文字や文型を持つ言語である。しかし、シシルの出身国であるクシダラ国には古来から『クシダラ語』と呼ばれる独自言語が存在している。これは日本語によく似ている。
その言葉によると、シシル・アラギキは『新聞 知識』となる。
魔法界共通語と古代言語は『書記言語』であり、妖精や魔獣、魔法使い達が共通で話している『口頭言語』に文字を当てたものである。この口頭言語は単純に『言葉』と呼ばれている。この世界には基本的に1つの口頭言語しかないため、他と区別する必要がないからである。しかし、クシダラ語と区別するため『妖魔語』という言い方が用いられることもある。
一方でクシダラ語やルーン文字は独自の言語であり、使用される単語やその意味、文字の発音や文法体系も異なるものである。クシダラ国内では、普通に妖魔語も話されているが、言語表記や単語、またとりわけ人名にはクシダラ語が使われる。クシダラ国外で生活している魔法使い達は自分の名前の表記を魔法界共通語で書き換えているのである。
「他に質問はありますか?」
「先生、自陣の旗は自陣に置いておく必要があるのですか?」
ルーシッドがそう尋ねると、これまた良い質問だとリサは思った。
「いえ、そういうわけではありません」
リサは多くは語らず、ただそう答えた。
この質問とその答えに意味を見出した生徒がどれだけいたかはわからない。
「他に質問がなければ説明は以上です。昼休みのうちにパーティーで戦略を考えておくと良いでしょう」
そう、このゲームのルールは『自陣に用意された旗』を取り合うことだ。自陣の旗を自陣に置いておかなければならないという訳ではない。
『キャプチャー・ザ・フラッグ(旗取り戦)』はクラス対抗戦などでも行われるゲームであるが、そのように味方がある程度の人数存在している場合は、攻守にメンバーを分けて試合を行うのが定石だろう。
しかし、今回のようにメンバーが4~5人となると、分けてしまうとどちらかが手薄になってしまう可能性もある。そうなった場合はパーティーメンバーの魔法バランスを考えて、守備重視にするか攻撃重視にするかを考える必要がある。
しかし、『自陣の旗を自陣に置いておく必要がない』ということであれば、戦略の幅が広がると考えられる。
このルールをどのように用いるかは、そのパーティーの戦略に委ねれれている。
地下迷宮の調査は終了し、多少地形の変化は見られたが特に荒らされた様子もなく危険性もないので、再び解放されていた。元々リスヴェルがルーシッドを出迎えるために仕掛けを用意しただけなので当然なのだが。
ルーシッド達のクラスでは次に行われるクラスの演習について担任のリサ・ミステリカから話されていた。
「パーティー対抗戦ですか?」
「はい、パーティー対抗戦はクラス内で行われる実技演習の1つで、今まで行ったチーム演習や地下迷宮探索演習とは異なり、パーティー同士で勝負してもらうことになります。ゲームはその時によって様々ですが、今回のゲームは『キャプチャー・ザ・フラッグ(旗取り戦)』です。
ルールは簡単で、自陣に用意された旗を取り合って最後に旗を一番多く持っていたパーティーが優勝です。
ゲーム時間は午後の授業時間の3時間です。このゲームに関しては相手への直接攻撃は物理的なものも魔法的なものも禁止です。魔法は防御魔法や移動魔法など、攻撃以外に使用するものに限ります。何か質問はありますか?」
「先生、どこでやるんですかー?」
ライム・グリエッタが手を上げて尋ねる。
「あぁ、そうでしたね。今回の会場は学院の裏にある大森林です」
「他に質問はありますか?」
「優勝したら何か賞品ありますかー?」
再びライムが尋ねる。クラスの授業で賞品なんて出るわけないとみんなが笑っていると
「ありますよ」
とリサは答えた。その言葉にクラスの目の色が変わる。
「まぁそんなに大したものではありませんが、今晩の夕食時に優勝者限定デザートと交換できる『デザート引換券』がもらえます」
「限定デザート……」
ライムがごくりと唾を飲む。
「みんな!頑張ろう!限定デザートだって!」
「え、えぇ、そうね…」
すごい気迫に押されてそう答えるシアン・ノウブル。
「限定って言われると食べたくなるわね~」
うふふと笑うロイエ・ネイプルス。
「他に質問は?」
「先生、旗を取るために魔法を使用することはルール違反になりませんか?」
シアンがそう尋ねると、リサは良い質問だと思い少し微笑んだ。
「えぇ、それはルール違反ではありません」
「では、旗を取るための魔法の流れ弾が相手選手に当たってしまうことは?」
「故意でなければ問題ありません。審判は私とリスヴェル先生、そして、今回の演習からは白澤のシシル・アラギキ先生も審判に加わってくださいます」
「白澤とは何ですか?」
「白澤はクシダラ国出身の魔獣で、八つの目があり人間よりもはるかに広い視野を持ち、また非常に知恵に富んでいます。私たちの学院にはなくてはならないとても貴重な方ですよ」
魔獣の中にも、人間と一定の距離を取って生活している者たちと、人間社会に完全に溶け込んで生活している者たちなど色々な者がいる。例えば、ドラゴンやエルフ、ユニコーンなどは人間社会にあまり出てこない者が多い。これは人間が嫌いとかそういうわけではなく、環境的な要因が大きい。多くの魔獣は自然を好むため、人間の手があまり加えられていない場所に住んでいることが多いからだ。しかし一概にそうという訳ではなく、中には都会が好きという個体もいる。魔獣には人型と獣型がいるが、魔獣はアウラ(生体エネルギー)の量が人間よりも圧倒的に多く、それを扱う能力も人間より高いため、獣型の魔獣の中には形態変化して、人型になって人間界で生活している者も多い。これは別に姿を隠している訳でなく、獣型のままだと単純に生活が不便だからである。
そんな中でも白澤はとりわけ人間に友好的な魔獣であり、この学院ではその能力ゆえに、広い場所で行う対抗戦形式の演習の審判や、遠征に行く際の監視役など色々な役目を負ってくれている。実は、入学試験の時に審判を務めていたのも、このシシルである。
ちなみにこの世界の共通語は魔法界共通語と呼ばれるもので、我々の世界の英語に近い文字や文型を持つ言語である。しかし、シシルの出身国であるクシダラ国には古来から『クシダラ語』と呼ばれる独自言語が存在している。これは日本語によく似ている。
その言葉によると、シシル・アラギキは『新聞 知識』となる。
魔法界共通語と古代言語は『書記言語』であり、妖精や魔獣、魔法使い達が共通で話している『口頭言語』に文字を当てたものである。この口頭言語は単純に『言葉』と呼ばれている。この世界には基本的に1つの口頭言語しかないため、他と区別する必要がないからである。しかし、クシダラ語と区別するため『妖魔語』という言い方が用いられることもある。
一方でクシダラ語やルーン文字は独自の言語であり、使用される単語やその意味、文字の発音や文法体系も異なるものである。クシダラ国内では、普通に妖魔語も話されているが、言語表記や単語、またとりわけ人名にはクシダラ語が使われる。クシダラ国外で生活している魔法使い達は自分の名前の表記を魔法界共通語で書き換えているのである。
「他に質問はありますか?」
「先生、自陣の旗は自陣に置いておく必要があるのですか?」
ルーシッドがそう尋ねると、これまた良い質問だとリサは思った。
「いえ、そういうわけではありません」
リサは多くは語らず、ただそう答えた。
この質問とその答えに意味を見出した生徒がどれだけいたかはわからない。
「他に質問がなければ説明は以上です。昼休みのうちにパーティーで戦略を考えておくと良いでしょう」
そう、このゲームのルールは『自陣に用意された旗』を取り合うことだ。自陣の旗を自陣に置いておかなければならないという訳ではない。
『キャプチャー・ザ・フラッグ(旗取り戦)』はクラス対抗戦などでも行われるゲームであるが、そのように味方がある程度の人数存在している場合は、攻守にメンバーを分けて試合を行うのが定石だろう。
しかし、今回のようにメンバーが4~5人となると、分けてしまうとどちらかが手薄になってしまう可能性もある。そうなった場合はパーティーメンバーの魔法バランスを考えて、守備重視にするか攻撃重視にするかを考える必要がある。
しかし、『自陣の旗を自陣に置いておく必要がない』ということであれば、戦略の幅が広がると考えられる。
このルールをどのように用いるかは、そのパーティーの戦略に委ねれれている。
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