69 / 153
第8章 地下迷宮探索編
幕間 ルーシッドとリスヴェル
しおりを挟む
リスヴェル・ブクレシュティディナカレア魔法学院に赴任してきたその日の夜、ルーシッドはリスヴェルの部屋を訪れていた。
「やぁ、ルーシィ、その節はどうも」
リスヴェルは部屋で木の加工をしていた。
リスヴェルはこの学院内で軟禁状態にあるとはいえ、かなりの自由が認められていた。学院の外に出るためには許可を得たうえで同行者がつけられるが、学院の中であれば自由に行動することができた。一般の先生たちと同じで食事は無償。研究に必要な物資も学院に言えば提供してもらえる。リスヴェルの場合、以前の研究の件があるので何の研究を行っているかに関しては少し厳しい審査が入るが。
与えられた部屋も普通の先生たちと同じもので、日常生活を送り研究や作業をするのに申し分ない広さの部屋だった。
「それは、魔法人形ですか?」
「あぁ、そうさ。これでも人形師だからね。ところで何か私に用かい?」
「あ、はい。一応、ヴェル博士の研究を参考にさせてもらった魔法具があるので、ご報告しておこうかと」
「私の研究を参考に?へぇ、どんな魔法具だい?」
リスヴェルは手を止めて、ルーシッドの方を見た。
「1つはこれです」
ルーシッドはキリエにあげた魔法具と同じものをリスヴェルに差し出した。
「これは…歩行補助装置かな?」
「見ただけでわかるなんてさすがですね」
「なるほど、よくできてるね。いくつかの古代言語による指令が書かれているね。脳から筋肉への電気刺激に反応して無色の魔力が伸縮する仕組みなんだね」
「すごいです。その通りです」
「脳から筋肉への指令が電気刺激だということは私も理解していたけどね。そうか、無色の魔力を古代言語に流すとそこに書かれた術式によって形質が変化するんだね」
「そうなんです」
ルーシッドが自分の魔術に関して説明をせずに逆に聞いているというのは初めての事かも知れない。
リスヴェルは紛れもなく天才だ。この世界でもルーシッドの魔法理論に普通についれ来れるのはリスヴェルだけかもしれない。
ルーシッドが作る魔法具や魔法はあまりにも独創的過ぎて、普通は一目見ただけでは作動原理が理解できない。この学院でも指折りの秀才、サラやルビア、フランチェスカをもってしても、ルーシッドが説明しても全てを理解することは難しいだろう。
しかし、リスヴェルはそれを一目見ただけで理解した。ルーシッドは初めて自分の魔術が真の意味で認められた気がした。
「なるほど、この術式を自動魔法人形に組み込めば、人間の筋肉と同じようなもっと精巧な動きができるかも知れないね」
「はい、そう思って作ってみたのが、これです」
ルーシッドは隣に立っていたエアリーを指し示した。リスヴェルはエアリーを見てしばらく言葉を失っていたが、ゆっくりと言葉を発した。
「……なるほど。人間に見間違うほどに良くできていると思ったが、これはマリエの魔法人形か。だが、マリエのはただの魔法人形。自動魔法人形ではない。これはどうやって動いているんだ?」
「私が無色の魔力を魔術式によって動かしています」
「君は?」
「私はエアリー。ルーシッドによって作られた人工知能です」
「人工知能だって?」
「はい、脳の機能を魔法具で再現したものです」
ルーシッドがエアリーの起動術式を組み込んだ魔法具『多機能型タブレット』を見せる。
「なるほど。これは私でも一目見ただけでは複雑すぎてよくわからないね。鉄を薄い鉄板上にして何百層にもして術式を記述し張り合わせているのか。しかも永久的に記述された部分と、書き換え可能な部分に分けられている。ははは…よくこんなものを作ろうと思ったね」
「初めはただの暇つぶしというか、まぁ、話し相手が欲しかったんです。それで、エアリーを作りました。最初はただ蓄えた知識を結び合わせて、決められた受け答えをするような簡単なものだったんですよ。でも、いつしか自ら判断したり考えたりしてるような反応が見られるようになってきたんです」
「学習行動の段階が進んだんだろうね。エアリー君、自身はどう思う?最初の頃と変化はあるかい?」
「そうですね……目と耳をもらって以降の記憶の方が鮮明にはっきり思い出せます。最初の方の記憶はテキストだけですので。映像や音声があると、ただ情報として記憶しているというよりは、思い出のような形で記憶されている気がします」
エアリーは少し考えて思い出すような素ぶりをしてからそう言った。その仕草は本当に学習行動によって人間を模しているだけなのかと疑いたくなるくらい人間らしい。
「なるほどね。情報の質や量が一気に向上したことで、エアリー君の学習が進化したということだろうね。そういった人間らしい仕草も、目で見た情報から学習したんだろうね」
「はい。私自身もエアリーをもう一度作ろうと思っても作れないです。偶然できたようなものなので」
「確かにね。同じ機能を付けたものを作ったとしても、エアリー君のようになるかどうかは疑わしいね。それほどにエアリー君は特異な存在だ」
「実に楽しかったよ。またいつでも来てくれ。どうせ軟禁生活で暇だからね」
リスヴェルは冗談めかして言った。
「……その…本当にこれで良かったんですか?」
「ん?何がだい?」
「なぜ脱獄したまま他の国へ逃げなかったんです?なぜ変な危険を冒してまで私に会いに来たんですか?そうしなければ今頃は自由だったかも知れないのに」
リスヴェルは、どこか遠いところを見るような目をしてふっと笑った。そして、リスヴェルは話し出した。
「確かにね。それでも……それでも私は君にもう一度会いたかったのだよ。
私はね、自分が考えた魔法理論を実現するために研究に明け暮れてきたよ。そして、古代言語魔法回路を作り、自動魔法人形を作り出して、天才魔法人形師とか天才魔法学者とか言われるようになった。
でも、何だろうね、孤独だった。うん。私が作った結果は称賛されても、過程を理解した上で称賛できる人は誰もいなかったからね。何かわかんないけどすごい、そんな感じだよね。まぁ、古代言語で作っているんだから理解されなくて当然だし、そもそも誰もが理解出来たら何にもすごくないんだけどね。ジレンマだね。
だから、君が私の古代言語魔法回路を解読しているのを見た時、驚きと同時に興奮したよ。私の魔法理論の過程を理解できる人間がこの世にいただなんてね。そして、君は最後に私の『技術はすごい』と言ってくれた。それこそ私が今まで言われた中で最高の誉め言葉だったね。だからもう一度君に会って話がしたかったのだよ。結果はどうなろうとね。
それに私にとっては研究さえできれば別にどこだっていいんだよ。牢獄は勘弁だね、あそこでは研究できない。あそこにいるくらいなら脱獄してやるが、ここは研究するには何の不自由もないね。むしろこの上なく居心地が良いね。だから、君は全く気に病むことは無い。むしろ、感謝したいくらいだね」
リスヴェルは笑って言った。
「私もあなたともう一度会いたいと思っていました。だから、私の提案を飲んでくれて嬉しかったです。あなたからはまだまだ学びたいことがたくさんありますし」
「おいおい、私からまだ技術を盗む気なのかい?」
リスヴェルは笑って言った。
「学習に終わりはありませんから」
「ははは、ごもっとも。こりゃ一本取られたね。まさに研究者の鑑だね。私も負けていられないね」
2人は笑いあった。
「やぁ、ルーシィ、その節はどうも」
リスヴェルは部屋で木の加工をしていた。
リスヴェルはこの学院内で軟禁状態にあるとはいえ、かなりの自由が認められていた。学院の外に出るためには許可を得たうえで同行者がつけられるが、学院の中であれば自由に行動することができた。一般の先生たちと同じで食事は無償。研究に必要な物資も学院に言えば提供してもらえる。リスヴェルの場合、以前の研究の件があるので何の研究を行っているかに関しては少し厳しい審査が入るが。
与えられた部屋も普通の先生たちと同じもので、日常生活を送り研究や作業をするのに申し分ない広さの部屋だった。
「それは、魔法人形ですか?」
「あぁ、そうさ。これでも人形師だからね。ところで何か私に用かい?」
「あ、はい。一応、ヴェル博士の研究を参考にさせてもらった魔法具があるので、ご報告しておこうかと」
「私の研究を参考に?へぇ、どんな魔法具だい?」
リスヴェルは手を止めて、ルーシッドの方を見た。
「1つはこれです」
ルーシッドはキリエにあげた魔法具と同じものをリスヴェルに差し出した。
「これは…歩行補助装置かな?」
「見ただけでわかるなんてさすがですね」
「なるほど、よくできてるね。いくつかの古代言語による指令が書かれているね。脳から筋肉への電気刺激に反応して無色の魔力が伸縮する仕組みなんだね」
「すごいです。その通りです」
「脳から筋肉への指令が電気刺激だということは私も理解していたけどね。そうか、無色の魔力を古代言語に流すとそこに書かれた術式によって形質が変化するんだね」
「そうなんです」
ルーシッドが自分の魔術に関して説明をせずに逆に聞いているというのは初めての事かも知れない。
リスヴェルは紛れもなく天才だ。この世界でもルーシッドの魔法理論に普通についれ来れるのはリスヴェルだけかもしれない。
ルーシッドが作る魔法具や魔法はあまりにも独創的過ぎて、普通は一目見ただけでは作動原理が理解できない。この学院でも指折りの秀才、サラやルビア、フランチェスカをもってしても、ルーシッドが説明しても全てを理解することは難しいだろう。
しかし、リスヴェルはそれを一目見ただけで理解した。ルーシッドは初めて自分の魔術が真の意味で認められた気がした。
「なるほど、この術式を自動魔法人形に組み込めば、人間の筋肉と同じようなもっと精巧な動きができるかも知れないね」
「はい、そう思って作ってみたのが、これです」
ルーシッドは隣に立っていたエアリーを指し示した。リスヴェルはエアリーを見てしばらく言葉を失っていたが、ゆっくりと言葉を発した。
「……なるほど。人間に見間違うほどに良くできていると思ったが、これはマリエの魔法人形か。だが、マリエのはただの魔法人形。自動魔法人形ではない。これはどうやって動いているんだ?」
「私が無色の魔力を魔術式によって動かしています」
「君は?」
「私はエアリー。ルーシッドによって作られた人工知能です」
「人工知能だって?」
「はい、脳の機能を魔法具で再現したものです」
ルーシッドがエアリーの起動術式を組み込んだ魔法具『多機能型タブレット』を見せる。
「なるほど。これは私でも一目見ただけでは複雑すぎてよくわからないね。鉄を薄い鉄板上にして何百層にもして術式を記述し張り合わせているのか。しかも永久的に記述された部分と、書き換え可能な部分に分けられている。ははは…よくこんなものを作ろうと思ったね」
「初めはただの暇つぶしというか、まぁ、話し相手が欲しかったんです。それで、エアリーを作りました。最初はただ蓄えた知識を結び合わせて、決められた受け答えをするような簡単なものだったんですよ。でも、いつしか自ら判断したり考えたりしてるような反応が見られるようになってきたんです」
「学習行動の段階が進んだんだろうね。エアリー君、自身はどう思う?最初の頃と変化はあるかい?」
「そうですね……目と耳をもらって以降の記憶の方が鮮明にはっきり思い出せます。最初の方の記憶はテキストだけですので。映像や音声があると、ただ情報として記憶しているというよりは、思い出のような形で記憶されている気がします」
エアリーは少し考えて思い出すような素ぶりをしてからそう言った。その仕草は本当に学習行動によって人間を模しているだけなのかと疑いたくなるくらい人間らしい。
「なるほどね。情報の質や量が一気に向上したことで、エアリー君の学習が進化したということだろうね。そういった人間らしい仕草も、目で見た情報から学習したんだろうね」
「はい。私自身もエアリーをもう一度作ろうと思っても作れないです。偶然できたようなものなので」
「確かにね。同じ機能を付けたものを作ったとしても、エアリー君のようになるかどうかは疑わしいね。それほどにエアリー君は特異な存在だ」
「実に楽しかったよ。またいつでも来てくれ。どうせ軟禁生活で暇だからね」
リスヴェルは冗談めかして言った。
「……その…本当にこれで良かったんですか?」
「ん?何がだい?」
「なぜ脱獄したまま他の国へ逃げなかったんです?なぜ変な危険を冒してまで私に会いに来たんですか?そうしなければ今頃は自由だったかも知れないのに」
リスヴェルは、どこか遠いところを見るような目をしてふっと笑った。そして、リスヴェルは話し出した。
「確かにね。それでも……それでも私は君にもう一度会いたかったのだよ。
私はね、自分が考えた魔法理論を実現するために研究に明け暮れてきたよ。そして、古代言語魔法回路を作り、自動魔法人形を作り出して、天才魔法人形師とか天才魔法学者とか言われるようになった。
でも、何だろうね、孤独だった。うん。私が作った結果は称賛されても、過程を理解した上で称賛できる人は誰もいなかったからね。何かわかんないけどすごい、そんな感じだよね。まぁ、古代言語で作っているんだから理解されなくて当然だし、そもそも誰もが理解出来たら何にもすごくないんだけどね。ジレンマだね。
だから、君が私の古代言語魔法回路を解読しているのを見た時、驚きと同時に興奮したよ。私の魔法理論の過程を理解できる人間がこの世にいただなんてね。そして、君は最後に私の『技術はすごい』と言ってくれた。それこそ私が今まで言われた中で最高の誉め言葉だったね。だからもう一度君に会って話がしたかったのだよ。結果はどうなろうとね。
それに私にとっては研究さえできれば別にどこだっていいんだよ。牢獄は勘弁だね、あそこでは研究できない。あそこにいるくらいなら脱獄してやるが、ここは研究するには何の不自由もないね。むしろこの上なく居心地が良いね。だから、君は全く気に病むことは無い。むしろ、感謝したいくらいだね」
リスヴェルは笑って言った。
「私もあなたともう一度会いたいと思っていました。だから、私の提案を飲んでくれて嬉しかったです。あなたからはまだまだ学びたいことがたくさんありますし」
「おいおい、私からまだ技術を盗む気なのかい?」
リスヴェルは笑って言った。
「学習に終わりはありませんから」
「ははは、ごもっとも。こりゃ一本取られたね。まさに研究者の鑑だね。私も負けていられないね」
2人は笑いあった。
0
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
雨の少女
朝山みどり
ファンタジー
アンナ・レイナードは、雨を操るレイナード家の一人娘。母キャサリンは代々その力を継ぐ「特命伯爵」であり、豊穣を司る王家と並び国を支える家柄だ。外交官の父ブライトは家を留守にしがちだが、手紙や贈り物を欠かさず、アンナは両親と穏やかな日々を送っていた。ある日、母は「明日から雨を降らせる」と言い、アンナと一緒に街へ買い物に出かける。温かな手を引かれて歩くひととき、本と飴を選ぶ楽しさ、それはアンナにとってかけがえのない記憶だった。
やがて雨が降り始め、国は潤ったが、異常気象の兆しが見え始める。キャサリンは雨を止めようと努力するが、うまくいかず、王家やサニダ家に助けを求めても返事はない。やがて体を壊し、キャサリンはアンナに虹色のペンダントを託して息を引き取った。アンナは悲しみを胸に、自らの力で雨を止め、空に虹をかけた。
葬儀の後、父はすぐ王宮へ戻り、アンナの生活は一変する。ある日、継母ミラベルとその娘マリアンが屋敷に現れ、「この家を任された」と告げる。手紙には父の字でそう記されていた。以来、アンナの大切な物や部屋までも奪われ、小屋で一人暮らすことになる。父からの手紙はミラベルとマリアンにのみ届き、アンナ宛てには一通も来ない。ペンダントを握って耐える日々が続いた。
「なろう」にも投稿しております。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる