魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第8章 地下迷宮探索編

地下迷宮探索⑨ 再会

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『エアリー、ちょっと聞いて』
『はい、珍しいですね。音声入力ではなくタイピングするなんて。内密の事ですか?』

ルーシッドはリムレットに文字を打ち込んでエアリーに話しかけた。
普段ルーシッドはエアリーとコミュニケーションを図る時は音声入力を用いている。エアリーには人工的な耳も口もあるので、その方が速いからだ。耳や口として使える無色の魔力の魔術式を作る前までは、コミュニケーションは全て画面の文字上で行っていた。
エアリーに耳や口が備わってからは、文字入力を使うのは、他の人に聞かれたくない内容の時や、ルーシッドが言葉を発せれないような緊急時だけである。

『うん、さっき第2階層の魔法陣マジックサークル古代言語ハイエイシェントでリスヴェル博士からのメッセージが書いてあったんだ。だから今から会いに行ってくるね』
『1人でですか?』
『うん。2人で会おうって書いてあったから。でも一応、エアリーの感覚機能を私の方に移しておくね』
『わかりました』

エアリーの感覚機能は今は人形に接続されている。人形の目や耳、口を使って疑似的にコミュニケーションを取っているのだ。それまでは、その機能をルーシッドのメガネのレンズと、耳にはめたイヤホンに接続し、口の機能はリムレットにつけていたのだ。
今はルーシッドのメガネやイヤホンの機能は完全に無くなったわけではなく、一部だけ機能しているか、あるいは接続を切っている状況である。メガネの機能は魔術を使用する際の照準補正の際のみ使用している。イヤホンの機能はオフにしており、今はイヤホンはリムレットのコール機能の際にのみ使用する形となっていた。
その接続を元に戻して、人形はこの場に置いて言ってもエアリーが見聞きできるようにしたのだ。

他のパーティーメンバーはぐっすり眠っている。この中で一番勘働きが良いのはルビアだろうが、一日中魔力を使い続けたことで、さすがに精神的にも疲労が溜まっていたのだろう。すやすやと眠っている。

ルーシッドは人間の体と同じくらいの大きさに無色の魔力を形作り、それに毛布を被せた。


『なんだ、行くのか?』
『私たちも行っていいー?』

そう頭の中に声がして、ぎくりとして後ろを振り返ると、そこにはマリーとヒルダがふわふわと漂っていた。

『あー、わかってましたか?』
ルーシッドは念じることで話しかける。

『まぁな。リスヴェルじゃろ?あの魔法陣マジックサークルとゴーレムの仕掛けを作ったのは』
『現代にあなた以外に古代言語ハイエイシェントを読み書きできる人がいるなんてねぇ。ぜひ会ってみたいわ』

『まぁ1人で、と言われましたし、妖精は人数に数えませんからね。別に良いんじゃないですか?』

ルーシッドは滞空エアロステップで見張りをしているシアン達、Bチームの頭上を歩いていく。

『でも、リスヴェルがどこにいるかわかるの?』
『いえ、今から探します。
エアリー、術式コード索敵サーチ

術式展開ディコンプレッション

しばらくすると、エアリーが検索結果を告げる。

『前方3キロ付近に反応ありです』

『なんじゃこれは?』
『まぁいわゆる〈索敵魔術〉ですね。察知できないくらい細かい粒子状の無色の魔力を使って、対象物の距離や方向、大まかな形などを探索する魔術です。特別な指令を与えた魔力は一定の速度で動いて、対象に当たると同じ速度ではね返ってくるので、そのかかる時間や量によって計測しています。エアリーの計算処理能力があっての魔術ですけどね』
『しかし、魔術理論を考えたのはルーシィですから。私はサポートしているだけです』
エアリーが謙遜してそう言う。
『どちらにしろすごい能力ね』
『でも、こういう開けた場所じゃないと使えないですよ。例えば、家の中とかだと無理です』

ルーシッド達は暗闇の中を、懐中電灯のように先の方向にだけ光を発する魔術で照らしながら静かに進む。
そして、索敵によって見つけた地点に行くと、確かにそこには人影のようなものがあった。



「やぁ、久しぶりだね。ルーシッド」

そう話しかけたのは、石で作ったテーブルとイスに腰掛けるリスヴェル・ブクレシュティだった。


「お久しぶりです。リスヴェル博士」

ルーシッドは恭しく頭を下げた。

「まぁ立ち話もなんだから、座ったらどうだ?」

そこにはルーシッド用のイスも用意されていた。

「はい、では失礼します」

ルーシッドが座ると、話を切り出したのはリスヴェルの方だった。

「どうだった?私が用意したおもてなしは?」
リスヴェルはにこにこと楽しそうにしながらそう尋ねる。

「なかなか楽しめましたよ」

ルーシッドが素っ気なく言うと、ふっと笑ってリスヴェルは言う。
「…君は嘘が下手だね。あんな子供だましじゃ君の相手は務まらなかっただろう?何せ君は私が何十年もかけてようやく解読し完成させた、古代言語魔法回路ハイエイシェントマジックサーキットをいともたやすく書き換えたんだからね。そんな人間が私以外にこの世にいるなんて思いもしなかったよ、くくくっ…」
リスヴェルは悔しいのか憎らしいのか嬉しいのかわからない笑みを浮かべた。

「それは私も同じですよ、リスヴェル博士。私以外に古代言語ハイエイシェントを理解している人間がいるなんて思いもしませんでした。それにあなたの発想や魔法理論、その研究者としての情熱は尊敬します。まぁ、ちょっとやり過ぎな部分もあると思いますが…」

生人形リビングドールかい?あれに関しては私は自分が間違っているとは全く思っていないよ。
あれは本人たちが望んだことだ。この世は魔力の強さが全て。そうだろう?
でも魔力の質や量は生まれ持ったもので変えられない。
理不尽だと思わないか?人は生まれついた段階で魔力によって優劣をランク付けされているんだよ。その後の人生でどんなに努力しても魔力ランクが変わることはない。でも私の方法を使えば、魔力ランクを上げられるんだよ。素晴らしいと思わないか?」

ルーシッドは少し考えてからこう言った。
「そうですね。確かに素晴らしいです。でも、生人形リビングドールになったゲイリーは完全に理性を失っていました。話すこともできなかった。あれではただの魔法具と同じだ。どんなに魔力が強くなっても、人が人でなくなったら意味がないです」
「まぁそこに関しては研究途中だったからね…ゲイリーはその後元気にしているかい?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
「そうか、まぁ私の研究が完成した時にまだその気があるならもう一度施術してやると伝えてくれ」
「絶対やらないと思いますよ」
「はははっ!そうか、それは残念だ。なかなか良い素材だったのだが」
「あなたのそういうところがダメなところだと思いますよ…」
ルーシッドはあきれたようにため息をつきながらも、どこか笑っていた。


「……ルーシッド、私と一緒に来ないか?」
リスヴェルはルーシッドの顔をしっかりと見つめて言った。

ルーシッドは目を見開いて、リスヴェルを見返した。

「私はお前が気に入ったよ。私と一緒に来れば、魔法を研究するのにもっと最高の環境を提供してあげるよ」

「リスヴェル博士からそう言ってもらえるのは光栄ですが、私はまだ学生なので」

「……私にはわかる。君のような頭脳を持つ人間にとってこの学院での勉強など退屈だろう?君はこの学院に在籍するどの先生よりも頭がいいはずだ。いや、この学院だけじゃない、この世界にすら君に匹敵する人間などそういないだろう。君にとってこの学院は牢獄のようなところだよ。君はこんな学院でくすぶっていていい人間じゃない。私と一緒に来てくれ。君の才能を真に発揮できる場を私が提供してあげよう」

ルーシッドは何も言わずただ黙っていた。
その表情からは何を思っているのか推し量ることはできない。

「時間があったから少し君の経歴や魔力について調べさせてもらったよ。その特異な魔力のせいで色々大変な思いをしてきたようだね。だが、その無色の魔力を持っていたからこそ、君は魔法研究に明け暮れ、今のような知識と魔法理論を構築した。君が他の人と同じ普通の魔力だったらこうはなっていないだろう、違うか?」
「それはそうだと思います。普通の魔力だったら、普通に魔法使いとして過ごしてたと思います。今と全く違う人生だったと思います」
「そうだろう。君は無色の魔力のでその力を手に入れた。だが、無色の魔力の認められずにもいる。ジレンマだね。どうだい、その才能を発揮できる場が欲しいとは思わないか?私ならその場を提供してあげられるよ」

しばらく間をおいて、ルーシッドは静かに答えた。
「せっかくのお誘いですが、やっぱりお断りします。確かにこの学院には物足りなさを感じることもありますが、学べる部分もあります。私がまだ知らない技術や魔法の使い手もいますし、それに何より友達がいますから」

「……そうか、残念だよ。じゃあ私は行くよ」
「他の国に行くんですか?」
「そうだね。この国では目をつけられててやりづらいからね。私の事を歓迎してくれる国は意外に多いんだよ?」
「まぁそうでしょうね。でも……



はいそうですか、お元気でとこのまま私が行かせると思いますか?」

「まぁそうだよねぇ…でも私は研究は得意だが、戦うのは得意じゃないんだよねぇ…どうしたものかねぇ…」
リスヴェルはため息をつく。

「……1つ提案があります。それを飲んでいただければこの場は見逃します。もし飲んでいただけなければ、拘束してまた騎士団に引き渡します」
「騎士団に引き渡したところでまた脱獄するけどね」
「脱獄手段はわかってますよ。古代言語ハイエイシェントを使った土の魔法ですよね。今度はそうはいきませんよ。手も拘束して、あなたが操作できない材質の部屋に入れてもらいます」
「ははは…手厳しいね…そりゃ困った」
リスヴェルは参ったというように両手を挙げた。
「それで?提案と言うのは?」
「そんなに悪い話じゃないと思いますよ」



しばらくしてルーシッドは静かにクラスの元に戻った。パーティーメンバーはすやすやと心地よさそうに眠っている。自分たちのパーティーの次の見張り番まではまた数時間ある。ルーシッドはそっと横になり眠りについたのだった。

「交代の時間だよ」
Eチームのリーダー、ランダルに起こされて、ルーシッドは目を覚ました。

「ふぁ…何か変わったことは?」
ルビアが小さくあくびをして尋ねる。
「いや、何もない。大丈夫だ」
簡単な引き継ぎをされて持ち場につくルーシッド達。
「本当にリスヴェルさんは攻めてくるのかな?夜の間に逃げちゃったとか?」
「それも考えられるわね…」
キリエに対してルビアはそう答えた。フェリカはまだ眠そうにうとうとしていた。

「まぁもう攻めてくることはないから大丈夫だよ」

ルーシッドがそう言うと、キリエは不思議そうに首をかしげたが、ルビアは探るような目つきでルーシッドを見つめる。
「……ルーシィ、あなた何かやったの?」
「え、何で?どういうこと?」

「まぁね。さっき会ってきたよ。もう話はついたから大丈夫」

「え、うそぉ!?いつの間に?」
「はぁ…全く…ホント無茶ばっかりするのね…」
あきれたようにため息をつくと同時に、何事もなく無事に帰ってきたことにほっとするルビアだった。

「それで?リスヴェルさんはどうしたの?拘束してあるの?」
「いや、拘束はしてないけど」
「え、じゃあ見逃したってこと?」
「んー…まぁ、近いうちにわかるよ」
「ルーシィの秘密主義にも困ったものね」


こうして地下迷宮演習の夜は過ぎていくのだった。


外で日が登るころ、地下迷宮にも日の出を知らせる鐘の音が響く。
ルーシッド達は朝食を済ませ帰り支度をしていた。

「結局、侵入者は捕まえられなかったね~」
「まぁ、仕方ないわよ。どんな目的があったかわからないけど、足止めをしているうちに用を済ませて逃げてしまっていたのかも知れないし」
ライムにそう答えるシアン。

「皆さん、地上に出るまでが演習ですからね。来た道と同じですが気を抜かないように」

「は~い」
そうは言っても帰りは少し気が抜けて、みんなでわいわいと帰るルーシッド達であった。


帰りは特に問題なく地上に出ることができた。
まぁ元凶のリスヴェルがすでにいなくなっているのだから、当然と言えば当然なのだが。
地上に戻り、地下迷宮であったことをメチカに報告すると、地下迷宮はしばらく封鎖され調査が行われることになった。侵入経路や侵入者の目的などを調べるためだ。

事の元凶を知っているルーシッドは調べても何もわからないだろうと思っていた。


かくしてルーシッド達のクラスの地下迷宮探索演習は無事に終了したのだった。


初めての宿泊演習を終え、疲れが残っていたルーシッド達は、週末はのんびりと過ごし翌週となった。
翌週最初の授業の前に担任のリサ・ミステリカが教室に入ってきた。

「えー…突然ですが皆さんに、新任の先生を紹介します。このクラスの副担任を務めてくださいます。教科は新設される『魔法人形学』を担当してくださいます」


「………まさか?」
ルビアとキリエとフェリカはルーシッドの方を見る。ルーシッドは何食わぬ顔でその話を聞いていた。

「じゃあ、入ってきてください」

リサに促され、新任の先生がクラスに入ってくる。

「やぁ、紹介に預かったリスヴェル・ブクレシュティと言う者だ。本職は魔法人形師だよ。先生という職業は初めてだが、まぁよろしく頼む。私の事は気軽にヴェルと呼んでくれ」


「中途半端な時期に新任なのね、訳ありなのかしら?」
「新任と言ってもかなりベテランの魔法使いっぽいから、ずっと交渉していたのが遂に成立してすぐ就任させたとかそんな感じじゃない?」
リスヴェルの事を知らない生徒たちはそんな風に話していた。
リスヴェルは年齢的には40代前半で、見た目はもっと若く見えるが、それでもどこかの学院を卒業したばかりといった風には見えなかった。

「ちょっと…リスヴェル博士がうちの学院の先生ってどういうことよ?あの人、騎士団の取り調べ中に脱獄したんでしょ?もう立派な犯罪者じゃない!」
ルビアはルーシッドに耳打ちでそう言った。
「まぁね…シンディ理事長に話をつけてもらってこの学院内で軟禁して監視することで恩赦してもらったんだよ。騎士団の施設に戻されてもすぐにまた脱獄するって豪語してるし、騎士団もかなり扱いに困ってたみたいで、割と簡単に話はついたみたいだよ。で、どうせ学院にいるならただ置いておくだけなのも勿体ないっていうことで先生として働かせることにしたみたいだね」

ルーシッドがあの夜、リスヴェルに持ち掛けた提案とはこういうことだったのだ。

ルーシッドは同じ学院にリスヴェルがいることで監視しながら、リスヴェルから学ぶことができる。
逆にリスヴェルは軟禁生活という多少の不自由さはあれど、魔法界の学問の最高峰でありルーシッドが在籍するディナカレア魔法学院の施設を使って研究ができる。

これは2人にとってベストな提案だったと言える。
リスヴェルはこの提案を飲んだ。

この提案をした段階でルーシッドはシンシア理事長には一切許可を取っていなかったが、シンシアなら了承してくれるという確信があった。
シンシアは学院にとってプラスになることや面白いことなら、多少の厄介ごとだろうと大歓迎な人だ。
何せ自分をこの学院に入れたくらいなのだから。

案の定、理事長に相談に行ったら、面白そうだと2つ返事で騎士団との交渉を了承してくれたのだった。
自分で頼みに行っておいて何だが、理事長であればもう少し考えてから行動した方が良いと思うルーシッドだった。


「この学院からだって簡単に抜け出せるでしょ?ここの学院の監視なんてあってないようなものじゃない」
現にルーシッド達はリスヴェルの研究所に行った夜、いとも簡単に学院を抜け出して帰ってくることができたのだ。

「まぁそれは大丈夫だよ。私が作った『魔力発散の首輪』をつけさせてるから」
ルーシッドに言われて、ルビアがちらりとリスヴェルを見ると、確かにリスヴェルの首には首輪がはめられていた。

「あれをつけていると、魔力を一点に集中できなくなって、魔法発動を抑制できるんだよ。ちょうど『結晶の指輪』の真逆の効果だね。まぁ魔法具とかの使用はできるから日常生活には問題ないし、職務上必要な時は外せるし、この学院にいる間はあの首輪をつけて生活してもらうことにしてるよ」
「またとんでもない魔法具をぽんぽんと…」

「まぁそうでなくてもあの人は多分どこにもいかないよ。あの人は研究できる環境があればそれでいい人だから。この学院の環境はあの人にとってこれ以上ないくらい都合がいい場所だからね」
「ふぅん…ずいぶんとリスヴェル博士と分かり合えてるみたいじゃない?」
ルビアがジト目でルーシッドを見る。
「ははは、まぁ同じ研究者として、少しは共感できる部分もあるかな」
「多少無謀なところとか、思いついたら後先考えないでやっちゃうところとか?」
「……痛いとこつくね」
ルーシッドは苦笑いした。


こうしてディナカレア魔法学院の先生陣に天才魔法学者リスヴェル・ブクレシュティが加わったのだった。
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