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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦③ 試合開始直前
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「では皆さん、それぞれ昼休みに作戦は考えましたね。これよりキャプチャー・ザ・フラッグを始めます」
昼休みが終わり、ルーシッド達はまず大森林の入り口に集合していた。
「まず、今回主審を務めてくださる、シシル先生を紹介します」
そう言うと、リサの隣にいた女性の先生がぺこりとお辞儀をした。
シシルは並んで立っているリサやリスヴェルと比べるとかなり小柄な女性で、そして特徴的なのはその髪型だった。もう少しで地面まで付いてしまうのではないかというくらい長い髪だった。そして、何か所もカラフルな髪飾りがしてあった。
「どうも。ただいまご紹介に預かった、シシル・アラギキです。
今回の試合のルールは聞いていると思いますが、私の方からもう一度確認します。
ルールは簡単です。それぞれのパーティーの旗を奪い合い、最後に一番多く旗を持っていたパーティーが優勝です。
魔法に関してですが、魔法や魔法具の使用は認められていますが、攻撃に使用することは認められていません。仮に、審判が故意に攻撃したと判断した場合は失格として、それ以降のゲームに参加できなくなります。
相手の妨害や旗を対象に使用すること、また魔装など自身に対して魔法をかけることは構いませんが、旗を破壊してしまった場合はペナルティーとして、3分間の行動停止が課されます」
シシルは何も見ることなくテキパキとルールを説明する。これがディナカレア魔法学院で行われる魔法競技ほぼ全てにおいて主審を務めるシシル・アラギキであった。
全員が真剣な面持ちでシシルの説明に耳を傾ける。
ペナルティーの軽さによってはペナルティー覚悟で相手の攻撃を行うことも考えられるが、一発退場となるとこの少人数パーティーメンバーではかなり厳しいだろう。しかも主審は魔獣『白澤』のシシルである。バレないようにルール違反をすることはできない。
「それではこれから順番に陣地まで移動してもらいます。魔法の発動などは全て試合開始の合図があってからです。試合開始の合図があるまでは、その場にとどまっていてください。ではAチームのメンバーはついてきてください」
ルーシッドたちがシシルの後ろについて大森林の中に入っていく。
大森林はかなりの広さがあり地図なども存在していない。所々に標識や小屋、その他の石などでできたオブジェなどがあるのでそれを目印にすることができるが、基本的にどこも同じような景色なので非常に迷いやすい。
そのためパーティー同士でどのように連携を取るか、自陣の位置をどのようにして把握するかなどが鍵となる。例えば空砲や光など全員に分かるような形で教えるわけにはいかない。ゆえに、例えば自陣が攻められて応援が欲しい場合などにどう知らせるかなどがネックになってくる。
その点、ルーシッド達のパーティーは何の問題もなかった。
「みんな、渡した魔道具は付けたね?」
キリエとルビア、そしてフェリカは、ルーシッドが付けているのと同じイヤホン型の魔道具を付けていた。
「今回渡したそれは、みんなが持ってる『スマホ型魔道具』に繋げてあるから、リムレットを操作しなくてもトーク機能が使えるよ」
イヤホン型の魔道具はマイクも内蔵されているので、常時離れていても全員で会話をすることができた。
「相変わらず、とんでもない場違いな人工物ね」
「これとキリィの俯瞰の魔眼のコンボは反則だね~」
「じゃあ試合開始の合図と同時に全員で別々の方向に解散。キリィは魔眼を発動。できるだけ素早く全員の位置を把握して一番近い人に知らせる。オッケー?」
ルーシッドの作戦に全員がうなずく。
「このパーティーの個々のメンバーの実力を考えれば、1人ずつでも大丈夫。特にキリィの仕事量が多いけど、今回の試合は良い俯瞰管制の練習になると思うよ。今後のうちのパーティーの基本形態だね」
「うん、大丈夫!それこそこの目をもらった時に私が願ったことだから!頑張る!」
『俯瞰管制』、それはキリエの俯瞰の魔眼の能力を利用した戦闘スタイルにルーシッドが名付けた名だった。
キリエが戦況全てを把握し適時全員に知らせることで、全員が自分を含めた戦況全体を常に把握しているようにする。これによって、他のパーティーが行動する前に瞬時に行動に移ることで、常に先手を打って戦況を圧倒的に有利に進められる。
しかし、俯瞰の魔眼では、全体を俯瞰しながら全員と会話をすることはできない。思念体なので特定の人と会話をすること自体はできるが、その場合は相手に思念体の存在を認識させる必要があるため、その人の視界に入る必要がある。この場合はいわば、上空から地上に降りる必要があるため、俯瞰を一時的にできなくなる。これでは俯瞰管制の意味がない。
そこで、使われるのがルーシッドが発明した魔道具である。これによって、俯瞰状態でも常時全員と連絡を取れる状況が完成した。
俯瞰管制は、キリエの能力とルーシッドの技術を融合させた体制であった。
当然、これは受け手側の技量も求められる。個人の能力が高いからこその形態である。
ルーシッド達は指定されたスタート地点に到着した。そこにはAと書かれた旗が立ててあった。
当然の事ながら今まで歩いてきた道の途中には他の旗は見当たらなかった。
ルートを上手く調整して、それぞれのパーティーの位置をわからなくしているのだろう。
シシルの能力と、この大森林の地形の特徴を生かした方法だと言える。
ルーシッド達はそこで静かに試合開始の合図を待つのだった。
昼休みが終わり、ルーシッド達はまず大森林の入り口に集合していた。
「まず、今回主審を務めてくださる、シシル先生を紹介します」
そう言うと、リサの隣にいた女性の先生がぺこりとお辞儀をした。
シシルは並んで立っているリサやリスヴェルと比べるとかなり小柄な女性で、そして特徴的なのはその髪型だった。もう少しで地面まで付いてしまうのではないかというくらい長い髪だった。そして、何か所もカラフルな髪飾りがしてあった。
「どうも。ただいまご紹介に預かった、シシル・アラギキです。
今回の試合のルールは聞いていると思いますが、私の方からもう一度確認します。
ルールは簡単です。それぞれのパーティーの旗を奪い合い、最後に一番多く旗を持っていたパーティーが優勝です。
魔法に関してですが、魔法や魔法具の使用は認められていますが、攻撃に使用することは認められていません。仮に、審判が故意に攻撃したと判断した場合は失格として、それ以降のゲームに参加できなくなります。
相手の妨害や旗を対象に使用すること、また魔装など自身に対して魔法をかけることは構いませんが、旗を破壊してしまった場合はペナルティーとして、3分間の行動停止が課されます」
シシルは何も見ることなくテキパキとルールを説明する。これがディナカレア魔法学院で行われる魔法競技ほぼ全てにおいて主審を務めるシシル・アラギキであった。
全員が真剣な面持ちでシシルの説明に耳を傾ける。
ペナルティーの軽さによってはペナルティー覚悟で相手の攻撃を行うことも考えられるが、一発退場となるとこの少人数パーティーメンバーではかなり厳しいだろう。しかも主審は魔獣『白澤』のシシルである。バレないようにルール違反をすることはできない。
「それではこれから順番に陣地まで移動してもらいます。魔法の発動などは全て試合開始の合図があってからです。試合開始の合図があるまでは、その場にとどまっていてください。ではAチームのメンバーはついてきてください」
ルーシッドたちがシシルの後ろについて大森林の中に入っていく。
大森林はかなりの広さがあり地図なども存在していない。所々に標識や小屋、その他の石などでできたオブジェなどがあるのでそれを目印にすることができるが、基本的にどこも同じような景色なので非常に迷いやすい。
そのためパーティー同士でどのように連携を取るか、自陣の位置をどのようにして把握するかなどが鍵となる。例えば空砲や光など全員に分かるような形で教えるわけにはいかない。ゆえに、例えば自陣が攻められて応援が欲しい場合などにどう知らせるかなどがネックになってくる。
その点、ルーシッド達のパーティーは何の問題もなかった。
「みんな、渡した魔道具は付けたね?」
キリエとルビア、そしてフェリカは、ルーシッドが付けているのと同じイヤホン型の魔道具を付けていた。
「今回渡したそれは、みんなが持ってる『スマホ型魔道具』に繋げてあるから、リムレットを操作しなくてもトーク機能が使えるよ」
イヤホン型の魔道具はマイクも内蔵されているので、常時離れていても全員で会話をすることができた。
「相変わらず、とんでもない場違いな人工物ね」
「これとキリィの俯瞰の魔眼のコンボは反則だね~」
「じゃあ試合開始の合図と同時に全員で別々の方向に解散。キリィは魔眼を発動。できるだけ素早く全員の位置を把握して一番近い人に知らせる。オッケー?」
ルーシッドの作戦に全員がうなずく。
「このパーティーの個々のメンバーの実力を考えれば、1人ずつでも大丈夫。特にキリィの仕事量が多いけど、今回の試合は良い俯瞰管制の練習になると思うよ。今後のうちのパーティーの基本形態だね」
「うん、大丈夫!それこそこの目をもらった時に私が願ったことだから!頑張る!」
『俯瞰管制』、それはキリエの俯瞰の魔眼の能力を利用した戦闘スタイルにルーシッドが名付けた名だった。
キリエが戦況全てを把握し適時全員に知らせることで、全員が自分を含めた戦況全体を常に把握しているようにする。これによって、他のパーティーが行動する前に瞬時に行動に移ることで、常に先手を打って戦況を圧倒的に有利に進められる。
しかし、俯瞰の魔眼では、全体を俯瞰しながら全員と会話をすることはできない。思念体なので特定の人と会話をすること自体はできるが、その場合は相手に思念体の存在を認識させる必要があるため、その人の視界に入る必要がある。この場合はいわば、上空から地上に降りる必要があるため、俯瞰を一時的にできなくなる。これでは俯瞰管制の意味がない。
そこで、使われるのがルーシッドが発明した魔道具である。これによって、俯瞰状態でも常時全員と連絡を取れる状況が完成した。
俯瞰管制は、キリエの能力とルーシッドの技術を融合させた体制であった。
当然、これは受け手側の技量も求められる。個人の能力が高いからこその形態である。
ルーシッド達は指定されたスタート地点に到着した。そこにはAと書かれた旗が立ててあった。
当然の事ながら今まで歩いてきた道の途中には他の旗は見当たらなかった。
ルートを上手く調整して、それぞれのパーティーの位置をわからなくしているのだろう。
シシルの能力と、この大森林の地形の特徴を生かした方法だと言える。
ルーシッド達はそこで静かに試合開始の合図を待つのだった。
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