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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦⑬ 戦況⑧ 策士・シアン
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その少し前のこと、ルビアに旗を取られてしまったロイエとシャルロッテは、他のパーティーの居場所を探すために動いていたシアン達に連絡を取り合流していた。
連絡手段はやはり『音の魔法』を使った魔法具だ。ちなみに水属性を得意とするシアンは魔法具が無くても、音の魔法を使用することができる。音の魔法はエコーという妖精を使った、音を増幅したり、音色を変えたりする魔法であり、低位魔法に位置する。
青の魔力を持つ人であれば、誰でも使うことができる非常に簡単な魔法である。魔法具としても幅広く使用されている。
『光の魔法』を使った連絡方法も一般的ではあるが、光の魔法は見ていないと情報が伝えられないため、相手が離れたところにいて、見たかどうか確かめられないこのような状況には不向きである。
相手の状況は把握できているが、周りがうるさかったり、声を出せないような状況で、相手と連絡を取りたい場合などに用いられる方法だ。
「そう、誰かが旗を取ってくれたのね」
シアンはそう言った。
「えぇ、あの手際の良さ。十中八九ルビィだと思うわ」
ロイエがそれに答える。
「2人ともよくやってくれたわね。まずは作戦は成功よ」
そう言って、シアンは軽く胸に手をやった。
服の中には本物の旗が隠してあった。
「バレないかひやひやしたよ~…」
シャルロッテがほっと胸をなでおろす。
「柵の方をちらちら気にする仕草、なかなかの演技力だったわよ~」
ロイエがにこにこして言うと、シャルロッテは恥ずかしそうに答える。
「あれは演技じゃないよぉ、本当に気になっちゃって見てただけ」
「逆にそれが良かったかも知れないわね。勘働きが良いルビィを上手くだますことができたかも」
シアンが笑う。
そう、シアン達は二重の仕掛けをしていたのだ。
たくさんある柵こそフェイク。正解は『どれも偽物』だったのだ。
本物と思わせた柵に入っていた旗はシアンが作った偽物の旗だった。
水の魔法を得意とするシアンは『草木の魔法』もヘンリエッタほどではないが使うことができた。
自分の魔力で育てた木を使って、木の柄の部分と旗の布部分を精巧に模倣した偽物を作ったのだ。
どんな旗なのかだいたい予想はできたので、材料だけ準備しておき、自分たちの陣地に行って旗の形状を確認してから、『造形魔法』で材料の造形をし、偽物を作ったのだった。
ルールでは『旗を破壊する行為』は禁止。また、先生は『旗を持ち歩くこと』は禁止していなかった。
であれば、偽物の旗を作ることはルールに違反しないはず。そう、考えたのだ。
「さて、これで一番の難敵の目からは逃れることができたわ。勝負はこれからよ。ここからは総力戦、何としても旗を一本獲得するわよ!」
シアン達の猛攻が始まる。
試合時間は残り一時間。試合はいよいよ佳境に入ろうとしていた。
連絡手段はやはり『音の魔法』を使った魔法具だ。ちなみに水属性を得意とするシアンは魔法具が無くても、音の魔法を使用することができる。音の魔法はエコーという妖精を使った、音を増幅したり、音色を変えたりする魔法であり、低位魔法に位置する。
青の魔力を持つ人であれば、誰でも使うことができる非常に簡単な魔法である。魔法具としても幅広く使用されている。
『光の魔法』を使った連絡方法も一般的ではあるが、光の魔法は見ていないと情報が伝えられないため、相手が離れたところにいて、見たかどうか確かめられないこのような状況には不向きである。
相手の状況は把握できているが、周りがうるさかったり、声を出せないような状況で、相手と連絡を取りたい場合などに用いられる方法だ。
「そう、誰かが旗を取ってくれたのね」
シアンはそう言った。
「えぇ、あの手際の良さ。十中八九ルビィだと思うわ」
ロイエがそれに答える。
「2人ともよくやってくれたわね。まずは作戦は成功よ」
そう言って、シアンは軽く胸に手をやった。
服の中には本物の旗が隠してあった。
「バレないかひやひやしたよ~…」
シャルロッテがほっと胸をなでおろす。
「柵の方をちらちら気にする仕草、なかなかの演技力だったわよ~」
ロイエがにこにこして言うと、シャルロッテは恥ずかしそうに答える。
「あれは演技じゃないよぉ、本当に気になっちゃって見てただけ」
「逆にそれが良かったかも知れないわね。勘働きが良いルビィを上手くだますことができたかも」
シアンが笑う。
そう、シアン達は二重の仕掛けをしていたのだ。
たくさんある柵こそフェイク。正解は『どれも偽物』だったのだ。
本物と思わせた柵に入っていた旗はシアンが作った偽物の旗だった。
水の魔法を得意とするシアンは『草木の魔法』もヘンリエッタほどではないが使うことができた。
自分の魔力で育てた木を使って、木の柄の部分と旗の布部分を精巧に模倣した偽物を作ったのだ。
どんな旗なのかだいたい予想はできたので、材料だけ準備しておき、自分たちの陣地に行って旗の形状を確認してから、『造形魔法』で材料の造形をし、偽物を作ったのだった。
ルールでは『旗を破壊する行為』は禁止。また、先生は『旗を持ち歩くこと』は禁止していなかった。
であれば、偽物の旗を作ることはルールに違反しないはず。そう、考えたのだ。
「さて、これで一番の難敵の目からは逃れることができたわ。勝負はこれからよ。ここからは総力戦、何としても旗を一本獲得するわよ!」
シアン達の猛攻が始まる。
試合時間は残り一時間。試合はいよいよ佳境に入ろうとしていた。
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