90 / 153
第10章 1学期末テスト編
試験
しおりを挟む
ディナカレア魔法学院の試験は1週間(4日)かけて行われる。それぞれの日の午前中だけ試験が行われ、全学年が同じ日程で行われる。この間は全てのスクールギルドの活動も行われないため、午後からの時間は自由時間となり、大抵の生徒は追い込みとばかりに試験勉強を行っている。
試験は入試同様ペーパーテストと実技で行われる。
1年生のペーパーテストの内容は
魔法基礎学、詠唱理論、魔法薬学基礎、魔法具理論、現代魔法史、妖精学、魔獣生態学の7つだ。
それぞれが100点満点なので、ペーパーテストの合計は700点となる。
それに実技試験の300点を合計した、1000点がテストの満点であった。
実技試験は時間内で与えられた課題がクリアできるかで判断される。今回の制限時間は10分だった。クリアできれば当然300点だが、クリアできないからと言って0点というわけではない。課題に対してどういうアプローチをしたか、クリアできないとしてもどこまで達成できたかなど、色々な点が加味されて点数が付けられる。
実技試験はパーティーで行うので、パーティーメンバー全員に同じ点数が与えられることになる。
テストまでの数週間、ルーシッドは比較的忙しく過ごしていた。といっても自分のテスト勉強でではない。
ルーシッドは基本的に勉強する必要はない。今回のテスト範囲で多少知らない分野は魔法薬学くらいだが、それに関しても普段の授業を聞いたり、魔法調薬ギルドのギルド長、ピセアやヘンリエッタに聞けばすぐに理解できるものばかりだ。改めてテスト勉強する必要はなかった。
ルーシッドが忙しかったのは、他の皆のテスト勉強に付き合っていたからだ。クラス内ではすでにルーシッドが一番勉強ができるというのは周知の事実なため、日替わりで質問を受けていたのだ。
しかも、ルーシッドへの質問は同じクラスからだけではない。サラやフランチェスカなど、2年生からも質問されていた。
その甲斐もあってか、ルーシッド達のクラスは順調にテストをこなしていった。
そして、テストが終わった週明けのこと。
「いやぁ、今回もアンが教えてくれたとこがバッチリ出たね」
「うん、やっぱアンはすごいね」
ライムとシャルロッテがそう話す。
シアンとライム、それにシャルロッテの3人は幼馴染であり、昔からシアンが2人の勉強を見ていたのであった。
「そう?それは良かったわ。
でもやっぱり難しかったわ…基本問題はともかくやっぱり記述問題が全然できなかった」
「そう言ったって、ペーパーテストでは学年3位じゃん!やっぱアンはすごいよ!」
「それに実技試験も2つクリアできたしね!」
「2つしか、クリアできなかったわ…」
今回の実技試験は『材質の違う4つの箱を魔法で開ける』というもので、『同じ系統の魔法(合成魔法、混合魔法を含む)はもう1度使ってはいけない』というルールだった。
箱の材質は『木』『石』『鉄』『氷』の4つであり、どれも基本的な魔法で作られたものだ。
しかしこの課題は大いに学生を苦しめた。
この試験の難しいところは2点。1点は、物質を魔法で破壊するのではなく『箱を開ける』という課題である点だ。この部分に苦しめられた学生は多い。力加減が必要ない壊すという魔法に対して、箱を開けるという繊細さが求められる魔法ゆえに、魔力制御が難しい。
そしてもう1点は、同じ系統の魔法を2度使ってはいけないというルールだ。例えば、この4つの材質のうち、木と鉄と氷は、火の魔法を使えばいけそうだということは多くの学生が思いつくところだ。しかし、逆に火の魔法以外で開けるとなるとどうすればいいのか、というところで詰まってしまうのだ。その属性が使えるのであれば操作魔法をすれば良いと考えるが、しかし鉄の魔法は火と土の混合魔法のため、鉄の魔法を使ってしまうと、火の魔法や石の魔法は使えない。また、火の魔法と熱の魔法も同じ系統なので、単純にダウングレードすれば良いというものではない。
現に今回の実技試験のクリア数は平均2つだった。
シアンのパーティーも、この課題について説明されたとき、すぐにロイエのことを思いついた。しかし、2つ目のルールにぶち当たる。鉄の魔法ではなく、火の魔法と土の魔法を別々に使い、2つの箱を開けるところまではできたが、そこから先が考えても良いアイディアが浮かばなかったのだ。
こんな時、ルーシッドならどうするのだろう。
シアンはそう考えずにはいられなかった。
そして、パーティーのリーダーとして役に立てなかった自分に情けなさを感じずにはいられなかった。
さて、ディナカレア魔法学院ではテストの順位と合計点数が張り出されるのが慣例だ。
テストが終わり、翌週の最初には今回のテスト結果が張り出されていた。
蓋を開けてみれば、ルーシッドのクラスである1年5クラスがペーパーテストのベスト5独占するという、とんでもない結果になった。
下から順に見ていくと
5位 ヘンリエッタ・オートロープ(490/700)
4位 ソウジ・イズミ(510/700)
3位 シアン・ノウブル(520/700)
2位 ルビア・スカーレット(540/700)
そして
1位 ルーシッド・リムピッド(700/700)
である。
さらにこれに実技試験の300点満点を足すと
5位 ヘンリエッタ・オートロープ(715/1000)
4位 ソウジ・イズミ(735/1000)
3位 キリエ・ウィーリング(750/1000)
2位 ルビア・スカーレット(840/1000)
そして
1位 ルーシッド・リムピッド(1000/1000)
という結果になった。
ペーパーテストでもベスト10入りをしていたキリエが実技試験を足すと、2位に浮上するという結果になった。
「ヘティーさんたちのところは課題を3つクリアできたってことか……」
シアンは結果を見てつぶやいた。
「そしてルーシィのところは4つ全部……ルーシィはペーパーも満点……ルーシィはやっぱりすごいな…圧倒的だよ……」
結果を見て、シアンは少し笑ったあと、唇を噛み締めた。
試験は入試同様ペーパーテストと実技で行われる。
1年生のペーパーテストの内容は
魔法基礎学、詠唱理論、魔法薬学基礎、魔法具理論、現代魔法史、妖精学、魔獣生態学の7つだ。
それぞれが100点満点なので、ペーパーテストの合計は700点となる。
それに実技試験の300点を合計した、1000点がテストの満点であった。
実技試験は時間内で与えられた課題がクリアできるかで判断される。今回の制限時間は10分だった。クリアできれば当然300点だが、クリアできないからと言って0点というわけではない。課題に対してどういうアプローチをしたか、クリアできないとしてもどこまで達成できたかなど、色々な点が加味されて点数が付けられる。
実技試験はパーティーで行うので、パーティーメンバー全員に同じ点数が与えられることになる。
テストまでの数週間、ルーシッドは比較的忙しく過ごしていた。といっても自分のテスト勉強でではない。
ルーシッドは基本的に勉強する必要はない。今回のテスト範囲で多少知らない分野は魔法薬学くらいだが、それに関しても普段の授業を聞いたり、魔法調薬ギルドのギルド長、ピセアやヘンリエッタに聞けばすぐに理解できるものばかりだ。改めてテスト勉強する必要はなかった。
ルーシッドが忙しかったのは、他の皆のテスト勉強に付き合っていたからだ。クラス内ではすでにルーシッドが一番勉強ができるというのは周知の事実なため、日替わりで質問を受けていたのだ。
しかも、ルーシッドへの質問は同じクラスからだけではない。サラやフランチェスカなど、2年生からも質問されていた。
その甲斐もあってか、ルーシッド達のクラスは順調にテストをこなしていった。
そして、テストが終わった週明けのこと。
「いやぁ、今回もアンが教えてくれたとこがバッチリ出たね」
「うん、やっぱアンはすごいね」
ライムとシャルロッテがそう話す。
シアンとライム、それにシャルロッテの3人は幼馴染であり、昔からシアンが2人の勉強を見ていたのであった。
「そう?それは良かったわ。
でもやっぱり難しかったわ…基本問題はともかくやっぱり記述問題が全然できなかった」
「そう言ったって、ペーパーテストでは学年3位じゃん!やっぱアンはすごいよ!」
「それに実技試験も2つクリアできたしね!」
「2つしか、クリアできなかったわ…」
今回の実技試験は『材質の違う4つの箱を魔法で開ける』というもので、『同じ系統の魔法(合成魔法、混合魔法を含む)はもう1度使ってはいけない』というルールだった。
箱の材質は『木』『石』『鉄』『氷』の4つであり、どれも基本的な魔法で作られたものだ。
しかしこの課題は大いに学生を苦しめた。
この試験の難しいところは2点。1点は、物質を魔法で破壊するのではなく『箱を開ける』という課題である点だ。この部分に苦しめられた学生は多い。力加減が必要ない壊すという魔法に対して、箱を開けるという繊細さが求められる魔法ゆえに、魔力制御が難しい。
そしてもう1点は、同じ系統の魔法を2度使ってはいけないというルールだ。例えば、この4つの材質のうち、木と鉄と氷は、火の魔法を使えばいけそうだということは多くの学生が思いつくところだ。しかし、逆に火の魔法以外で開けるとなるとどうすればいいのか、というところで詰まってしまうのだ。その属性が使えるのであれば操作魔法をすれば良いと考えるが、しかし鉄の魔法は火と土の混合魔法のため、鉄の魔法を使ってしまうと、火の魔法や石の魔法は使えない。また、火の魔法と熱の魔法も同じ系統なので、単純にダウングレードすれば良いというものではない。
現に今回の実技試験のクリア数は平均2つだった。
シアンのパーティーも、この課題について説明されたとき、すぐにロイエのことを思いついた。しかし、2つ目のルールにぶち当たる。鉄の魔法ではなく、火の魔法と土の魔法を別々に使い、2つの箱を開けるところまではできたが、そこから先が考えても良いアイディアが浮かばなかったのだ。
こんな時、ルーシッドならどうするのだろう。
シアンはそう考えずにはいられなかった。
そして、パーティーのリーダーとして役に立てなかった自分に情けなさを感じずにはいられなかった。
さて、ディナカレア魔法学院ではテストの順位と合計点数が張り出されるのが慣例だ。
テストが終わり、翌週の最初には今回のテスト結果が張り出されていた。
蓋を開けてみれば、ルーシッドのクラスである1年5クラスがペーパーテストのベスト5独占するという、とんでもない結果になった。
下から順に見ていくと
5位 ヘンリエッタ・オートロープ(490/700)
4位 ソウジ・イズミ(510/700)
3位 シアン・ノウブル(520/700)
2位 ルビア・スカーレット(540/700)
そして
1位 ルーシッド・リムピッド(700/700)
である。
さらにこれに実技試験の300点満点を足すと
5位 ヘンリエッタ・オートロープ(715/1000)
4位 ソウジ・イズミ(735/1000)
3位 キリエ・ウィーリング(750/1000)
2位 ルビア・スカーレット(840/1000)
そして
1位 ルーシッド・リムピッド(1000/1000)
という結果になった。
ペーパーテストでもベスト10入りをしていたキリエが実技試験を足すと、2位に浮上するという結果になった。
「ヘティーさんたちのところは課題を3つクリアできたってことか……」
シアンは結果を見てつぶやいた。
「そしてルーシィのところは4つ全部……ルーシィはペーパーも満点……ルーシィはやっぱりすごいな…圧倒的だよ……」
結果を見て、シアンは少し笑ったあと、唇を噛み締めた。
0
あなたにおすすめの小説
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
【完結】名無しの物語
ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』
父が借金の方に娘を売る。
地味で無表情な姉は、21歳
美人で華やかな異母妹は、16歳。
45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。
侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。
甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。
男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。
登場人物に、名前はない。
それでも、彼らは、物語を奏でる。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる