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第10章 1学期末テスト編
試験後の職員室にて
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「ふぅ…」
赴任して初めての試験も終わり、少し肩の荷も降りたリサ・ミステリカは一つため息をついた。
ちなみにリサはクラス担任なので、授業は演習系を受け持っており、テストも実技試験の教官を務めていた。
ディナカレア魔法学院の一般的な記述テストは、基本的な知識を問う基本問題70点と、それらを応用して自分なりの答えを出す記述問題30点の計100点で構成されている。
この記述問題に関しては、入試の時と同様、基本的には正解を求めていないような作りになっている。学生の発想力や独創性を引き出すような問題であり、ただ与えられた知識を覚えて魔法を使うだけではなく、与えられた知識をいかに活用するか。今まで持っている知識といかにつなげて新しい発想を生み出すかなどを試すような問題となっている。
生徒の中には白紙で出してくるような生徒も多い。実質70点満点と考えている生徒たちさえいる。
「すごいですねリサ先生のクラス。トップ5独占じゃないですか」
リサの同僚のディアナ・ナクレールがそう話しかけてきた。
ディアナは1年4クラスの担任である。4クラスには、入試の摸擬戦でルビアと戦った魔力ランクAAで新生徒会メンバーのマリン・デレクタブルも在籍している。
「あ、はい。ありがとうございます。生徒たちが頑張ってくれました」
「にしてもあの無色のルーシッドさん?あの子の魔法知識だけはやっぱり本物だったのね。この学院のテストで全教科満点取った人なんて今まで見たことないわ」
「そうですよね。本当にすごい子です」
『知識だけ』
そこに少し引っかかりつつも、素直にルーシッドへの賛辞として受け取るリサ。
ここまで見てきた限りでは『魔法理論』や『詠唱法』、『魔法数学』『魔法工学』などの分野においては、どう考えても学生レベルの知識ではない。いや、知識があるとかないとかのレベルではなく、もはや発想が別次元だ。ルーシッドは次元が違う天才だとリサは感じていた。ルーシッドは底が知れない。一体どうすればあんな独創的な発想に至るのだろう…。
「でもまぁ、実技試験は今回はパーティー実技だったので、彼女にとっては運が良かったですよね。そうじゃなければ0点でしょうから」
「運…ですか。いや、あれはそんなレベルじゃいです。あの試験も、ルーシィさんでなければあんな発想で解決するなんて思いもしかなったと思います。私すら考え付きもしませんでした」
それぞれのクラスの実技試験は、公平を期するために、そのクラスの担任と別の先生1人の計2人の試験官がついて行われる。
実技試験当日、ルーシッド達に試験のルールを告げた時、少し考えてからルーシッドはこう質問してきた。
「ルールはそれだけですよね?」
「はい、そうですよ」
リサがそう答えると、ルーシッドは続けてこう尋ねた。
「ちなみに、魔法で作ったものを使って開けるってのは当然ありですよね?」
「えぇ、もちろんです」
「では、鉄の箱の一部を操作魔法で開けるのと同時に、その部分を造形魔法で斧の形にして、その斧で木の箱を切るというのは、1種類の魔法を使ったことになりますか?使ったのは『鉄の魔法』の1種類ですよね?」
リサも、もう1人の試験官も、ルーシッドのパーティーのメンバー達も思わず
「あっ!」
と言ってしまった瞬間だった。
リサ自身そんな発想考えもつかなかった。この試験にそんな解き方があったのか。
結果的にルーシッド達のパーティーは
鉄の箱を変形させて開けると同時にその鉄から作った斧で木の箱を切断して開け、そのまま石の箱と氷の箱も砕いて開けてしまったのだった。
普通なら、どの魔法でどの箱を開けようかという発想をする。4種類の魔法と4つの素材の組み合わせを考えるのだ。
確かにルールでは『箱自体を使用してはいけない』とは一言も述べていない。
ルーシッドが言ったように、箱を開ける際にどんな形にして開けようと自由、そして操作魔法の発動を切っていないからには、それを使って別の箱を開けようが、1つの魔法を使っているということに変わりはないのである。
リサは試験が終わったあと、ルーシッドにこう尋ねた。
「ルーシィさん、仮にですよ、もし仮に、それはルール違反ですと言われたらどうするつもりだったんですか?」
「え、別に?
無数にある方法の1つを言っただけですから。別の方法で開けるだけですけど。この試験ってそういう試験じゃないんですか?」
赴任して初めての試験も終わり、少し肩の荷も降りたリサ・ミステリカは一つため息をついた。
ちなみにリサはクラス担任なので、授業は演習系を受け持っており、テストも実技試験の教官を務めていた。
ディナカレア魔法学院の一般的な記述テストは、基本的な知識を問う基本問題70点と、それらを応用して自分なりの答えを出す記述問題30点の計100点で構成されている。
この記述問題に関しては、入試の時と同様、基本的には正解を求めていないような作りになっている。学生の発想力や独創性を引き出すような問題であり、ただ与えられた知識を覚えて魔法を使うだけではなく、与えられた知識をいかに活用するか。今まで持っている知識といかにつなげて新しい発想を生み出すかなどを試すような問題となっている。
生徒の中には白紙で出してくるような生徒も多い。実質70点満点と考えている生徒たちさえいる。
「すごいですねリサ先生のクラス。トップ5独占じゃないですか」
リサの同僚のディアナ・ナクレールがそう話しかけてきた。
ディアナは1年4クラスの担任である。4クラスには、入試の摸擬戦でルビアと戦った魔力ランクAAで新生徒会メンバーのマリン・デレクタブルも在籍している。
「あ、はい。ありがとうございます。生徒たちが頑張ってくれました」
「にしてもあの無色のルーシッドさん?あの子の魔法知識だけはやっぱり本物だったのね。この学院のテストで全教科満点取った人なんて今まで見たことないわ」
「そうですよね。本当にすごい子です」
『知識だけ』
そこに少し引っかかりつつも、素直にルーシッドへの賛辞として受け取るリサ。
ここまで見てきた限りでは『魔法理論』や『詠唱法』、『魔法数学』『魔法工学』などの分野においては、どう考えても学生レベルの知識ではない。いや、知識があるとかないとかのレベルではなく、もはや発想が別次元だ。ルーシッドは次元が違う天才だとリサは感じていた。ルーシッドは底が知れない。一体どうすればあんな独創的な発想に至るのだろう…。
「でもまぁ、実技試験は今回はパーティー実技だったので、彼女にとっては運が良かったですよね。そうじゃなければ0点でしょうから」
「運…ですか。いや、あれはそんなレベルじゃいです。あの試験も、ルーシィさんでなければあんな発想で解決するなんて思いもしかなったと思います。私すら考え付きもしませんでした」
それぞれのクラスの実技試験は、公平を期するために、そのクラスの担任と別の先生1人の計2人の試験官がついて行われる。
実技試験当日、ルーシッド達に試験のルールを告げた時、少し考えてからルーシッドはこう質問してきた。
「ルールはそれだけですよね?」
「はい、そうですよ」
リサがそう答えると、ルーシッドは続けてこう尋ねた。
「ちなみに、魔法で作ったものを使って開けるってのは当然ありですよね?」
「えぇ、もちろんです」
「では、鉄の箱の一部を操作魔法で開けるのと同時に、その部分を造形魔法で斧の形にして、その斧で木の箱を切るというのは、1種類の魔法を使ったことになりますか?使ったのは『鉄の魔法』の1種類ですよね?」
リサも、もう1人の試験官も、ルーシッドのパーティーのメンバー達も思わず
「あっ!」
と言ってしまった瞬間だった。
リサ自身そんな発想考えもつかなかった。この試験にそんな解き方があったのか。
結果的にルーシッド達のパーティーは
鉄の箱を変形させて開けると同時にその鉄から作った斧で木の箱を切断して開け、そのまま石の箱と氷の箱も砕いて開けてしまったのだった。
普通なら、どの魔法でどの箱を開けようかという発想をする。4種類の魔法と4つの素材の組み合わせを考えるのだ。
確かにルールでは『箱自体を使用してはいけない』とは一言も述べていない。
ルーシッドが言ったように、箱を開ける際にどんな形にして開けようと自由、そして操作魔法の発動を切っていないからには、それを使って別の箱を開けようが、1つの魔法を使っているということに変わりはないのである。
リサは試験が終わったあと、ルーシッドにこう尋ねた。
「ルーシィさん、仮にですよ、もし仮に、それはルール違反ですと言われたらどうするつもりだったんですか?」
「え、別に?
無数にある方法の1つを言っただけですから。別の方法で開けるだけですけど。この試験ってそういう試験じゃないんですか?」
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