魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

ストライクボール2年決勝②

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「ねぇねぇ、ヴァンちゃんはどっちが勝つと思うー?」
ヴァンと同じ生徒会副会長のミクリナ・フェンサーは、子供のようにはしゃぎながらそう尋ねた。
「そうだなぁ。まぁ普通に考えればレイさんの率いる3クラスじゃないか?さすがのサラさんも契約者コントラクター相手では分が悪すぎる。他の競技ならまだしもストライクボールはスピード勝負だからね」
「ちぇーっ、つまんないの。ねぇねぇ、会長はどう思う?」
「そうねぇ。正攻法で真っ向勝負すれば負けることはサラさんも分かってるでしょう。何かしらの作戦は考えているとは思うけど…どうかしらねぇ」


「お互い良い試合をしよう」
「えぇ、そうね」

レイチェルとサラは向かい合い、そう声を掛け合った。

今のレイチェルは自分の力におごってなどいない。
そんなものはあのルーシッドとの対決で砕かれた。
そこから生まれたのは純粋な強さだ。

どんな相手にも油断することなく全力で挑む、ただそれだけ。

レイチェルはルーシッドとの対戦を経て間違いなく強くなった。


試合開始と同時にレイチェルは手のひらを上に向けて魔力を込める。
すると、そこに拳より一回り大きな火の玉が形成される。
そして、それを軽く投げるようなポーズをすると、火の玉はゆっくりと飛んでいき、一番遠くて小さい10点のまとに命中した。

「さすがに契約召喚は圧倒的な早さで点を取りますね。ストライクボールにおいては反則級ですね」
「魔法自体も早いけど、魔法のコントロールもさすがのものね」

他の魔法使いたちは試合開始と同時に詠唱を開始していた。


"oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)

FirE + smiTHy GOD, HEPHAISTOS.
(火と鍛冶の神、ヘファイストスよ)

pLEAse L-END Me UR BOW + ALLOW."
(我に汝が鍛えた弓矢を貸し与えたまえ)


ルーシッドが発見した詠唱短縮法をマスターしているサラは、無詠唱には当然ながら劣るが、通常の魔法使いに比べれば圧倒的な速さで詠唱を終了し魔法を発動した。

サラが発動したのは、マジックアローの中でも『鉄の矢アイアンアロー』だった。しかし、早々に魔法を発動できたにも関わらず、その後のサラの動きは奇妙なものだった。

「おかしいですね…サラさんは詠唱を終了して魔法を発動したのに、矢を撃たずに構えたままですね。何かあったのでしょうか?」

試合を観戦していたヴァンは首をかしげる。
サラだけではない。サラのクラスのメンバーも詠唱が終わり、それぞれがマジックアローを構えたまま黙っていた。

コート上では、すでにレイチェルが3つのまとを倒し、4つ目に狙いを定めており、レイチェルのクラスのメンバーのうち2人が一番近くて大きい1点のまとと2点のまとに魔法を命中させたところだった。

点数は30対0で、レイチェルのクラスの独走状態となっていた。

「サラさんの事だから何か考えがあるのでしょう。パーティーメンバーがサラさん以外全員『雷の矢サンダーアロー』で魔法を統一しているのも気になるわ」

その時だった。


「みんなお待たせ!撃って!」


サラがそう言うと、クラスのメンバーは一斉に『雷の矢サンダーアロー』を放った。

しかし、全員まととは関係ない方向へとその矢を射る。
全員が同じ方向へと、に向けてその矢を放ったのだ。

その瞬間だった。

サラの弓から10本の眩いばかりの電光がまとめがけて真っすぐ走り、一瞬にして10個のまとを破壊した。
そして試合終了の合図が鳴り響いた。サラのクラスの大逆転勝利である。

試合の点数は51対42

全てのまとが破壊される前に満点の半分の50点以上を確保したため、サラのクラスの勝利となったのだった。

会場は大歓声に包まれた。


「な…何が起きたんでしょうか?」
「わからないわ…サラさんが何らかの方法で、4本のサンダーアローを10。いえ、それだけじゃなく、まとに正確に当ててみせた。本当に底が知れない子だわ」


「いや、参ったね。ストライクボールの常識を覆すような戦法だったね。点数が高い方を正確に狙うでも、点数が低い方を着実に狙うでもなく、中間を根こそぎ取るとはね」
試合終了後、レイチェルはサラにそう話しかけた。

ストライクボールは一番当てにくい遠くのまとから順に10点~1点が割り振られているが、最も数が多いのは真ん中付近にある6点~4点のまとだ。サラが今回狙いを定めたのはこの中間のまとだ。この中間のまとを全て破壊すると51点となり、わずかに50点を上回るのだ。

「真っ向勝負を挑めば勝ち目はなかったから、この作戦しかないと思ったわ。この作戦でダメなら負けを覚悟してた。一か八かの作戦よ」
「ははは。来年は対策を練るとしよう」
「嫌なこと言うわね…」
サラはため息をつきながらも笑っていた。

「ところで、あの魔法は一体何だったんだい?
技の出は少し遅かったが、一撃で十方向に攻撃できる魔法なんて見たことがないね」
「あぁ、あれ?
あれは…」


「マジックアローの利点、終了条件未提示詠唱ブランクスクリプトを利用した亜種魔法だろうね。矢を撃つために使うんじゃなく、矢の先から細い糸状の鉄線をまとまで伸ばすために使ったんじゃないかな?」

同じことを共に観戦していたクラスメートから尋ねられたルーシッドはそう答えた。

「なんでそんな面倒くさいことを?」
「電気の性質を利用したんだと思うよ。電気を通しやすい物質に電気を流すと、そこを伝うように流れていくんだよ。このお陰で、雷の矢サンダーアローを放った人たちは狙いを定める必要がないから、同時に10個のまとを破壊するなんていう芸当ができたんだと思うよ。さすがサリーって感じだね。
雷と鉄どっちも使える魔法使いなら、一人でも誘導矢ホーミングアローとかに使えそうだな。今度、詠唱文を考えてみようかな」

サラがすごいのは間違いないが、一度見ただけでその魔法を推察し、それだけでなくさらにそこから新たな着想を得るルーシッドも大概だろう、と思うクラスメート達だった。
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