魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

ストライクボール2年決勝①

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「ルーシィ…あなたにはいつも驚かされてばかりだわ…」


2年生のストライクボールの決勝に出場するサラ・ウィンドギャザーは、選手控室からルーシッド達の試合を観戦していた。



昨日の夜、サラはルーシッドと魔法のタブレットルーレットのトーク機能を用いて会話していた。


「すごいわね。ルーシィのクラス」
「まぁ、私は出場してないけどね」
「でも、魔法具も戦略も全部ルーシィが考えてるんでしょ?間違いなくルーシィのお陰じゃない」
「あはは、まぁね。サリーは明日、レイ先輩とだっけ?」
「えぇ…ねぇ?ルーシィがストライクボールでレイと戦うなら、どう攻略する?」
「んー、まぁレイ先輩は強いからね。でもまぁ、多分サリーと同じ作戦じゃないかなぁ?」
「……私、まだ何も話してないんだけど?え、なに?予言者か何かなの?」
「いやいや。サリーだって無策って訳じゃないんでしょ?」
「それはまぁそうだけど…でも…その作戦でも勝てるかどうかは…」
「大丈夫、サリーなら勝てるよ。圧勝は無理だけどね。でも、僅差でなら勝つ方法はあるよ。というか、ルールに則ってレイ先輩と試合をする場合、同程度の能力を持った契約者コントラクターでもない限り、その方法しか道はないからね。
きっと、サリーが考えている作戦はそんな作戦じゃないかな。だから多分、私が考えてるのと同じ」
「……やっぱり予言者なんじゃないかしら…」


サラはかつてこう心に決めた。
自分は世界で二番目に強い魔法使いになる、つまりルーシッドの次に強い魔法使いになると。
それはつまりルーシッド以外の魔法使いには負けないということだ。
例え、それが純色の魔法使いだろうが、契約者コントラクターだろうがだ。


そう、だから今日の試合には絶対に勝たなければならない。
自分がこれからもルーシッドの横に並んで歩むためにも。



いよいよ2年生のストライクボールの試合が始まろうとしていた。


「きゃー、サラ様~!」
「レイ様ー!」


会場からは黄色い歓声が聞こえてくる。相変わらずレイチェルとサラの人気はすごい。
レイチェルはルーシッドに負けたことで、一部からは否定的な見方が出たこともあったが、そういった意見も全体的にはすぐに収まった。
それは、レイチェルがすごい才能を持った魔法使いであるということに変わりはないし、魔法を除いたレイチェル自身の魅力も変わらないからだろう。


「レイ…」
レイチェルのチームのメンバーが不安そうにレイチェルを見る。


1年の学年別クラス対抗魔法球技戦では、サラと戦うことはなかった。
クラスメートはレイチェルの強さを誰よりも知っている。
だが、相手はSSランクのサラだ。相手がどんな戦略を取ってくるのかもわからない。いかにレイチェルと言えど、圧勝というわけにはいかないのではないか…そう考えてのことだろう。


「大丈夫、君たちは君たちにできることをやってくれればいいよ」
不安そうに見つめるメンバーにレイチェルは優しく笑いかける。


「着実に1つ1つ、狙いやすいまとに魔法を当てるんだ、いいね?
難しいまとは私に任せてくれ」

レイチェルがそう言うと、メンバーは安心したようにうなずいた。


ストライクボールでは20個の的に魔法攻撃を当てて破壊し、より多くの点数を取った方が勝ちとなる。
最大得点は100点であるが、まとを破壊したことで得られる点数は同じではない。まとにはそれぞれ1点~10点の点数がふられている。一番遠くにあり一番小さなまとは10点、一番近くにある一番大きなまとは1点である。


このルールこそが、レイチェルをストライクボールで圧倒的に有利にしている点であった。


通常、ストライクボールで最もよく使われる魔法は、中距離攻撃魔法「マジックアロー」である。この魔法の最大の利点は、操作魔法オペレイトマジックであるという点である。魔法を発動した後は魔力が尽きるまで、追加詠唱アディショナルキャストのみで魔法を放つことができる。
しかし、マジックアローにも弱点はある。それは射程が比較的短く、一番遠いまとには届かないか、届いたとしても攻撃精度は極めて低いという点だ。それは、マジックアローが操作できるのは、矢をつがえて放つところまでで、弓から離れた矢を操作することができないためである。
射程距離と攻撃精度を犠牲にすることで、連続発動を可能にした魔法。それが「マジックアロー」である。
遠くのまとを狙う場合はマジックボールなどを使った方が良いが、マジックボールは操作魔法オペレイトマジックではないため、一回一回詠唱を行わなければならない。
しかし、レイチェルは契約召喚が可能なため、マジックボールの1つ、ファイアボールを無詠唱で使うことができる。そして、レイチェルがこのストライクボールを通して使っている魔法はこのファイアボールのみであった。
極めてシンプルかつ最も強い、それがレイチェルのストライクボールであった。


だが、このルールを逆に利用してレイチェルに挑もうとしているのが、サラ・ウィンドギャザーであった。



「みんな、聞いて」
試合を目前にして、サラはチームのメンバーに語りかける。


「この作戦は私一人では絶対にできないわ。みんなの力がどうしても必要。だから力を貸してちょうだい。大丈夫、練習通りにやれば絶対勝てるわ。あの純色のレイチェルを倒して、番狂わせジャイアントキリングを起こしてやりましょう!」


その言葉にメンバーは奮起し、声を上げる。


いよいよ「全色の魔法使い」対「純色の魔法使い」
「最強」対「最強」の戦いが始まろうとしていた。
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