116 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編
ストライクボール3年決勝
しおりを挟む
「おつかれ」
試合が終わって観客席に戻ったレイチェル・フランメルをゲイリー・シュトロームが迎える。レイチェルにはクレア・グランドも付き添っていた。
ゲイリーの隣にはいつものようにオリガ・シュタインが座っていた。厳密にはオリガの魔法人形オルガが座っており、その陰に隠れるようにしてオリガが座っていた。オリガは小さく手を振ってレイチェルを迎えた。
「いい試合だったわ」
「また負けてしまったけどね。最近は負けてばっかりな気がするよ」
ゲイリーにねぎらわれたレイチェルは肩をすくめてそう言った。
「私はあなたに負けていいとこなしの球技戦だったけどね」
ゲイリーはそう言って、ため息交じりに笑う。
ゲイリーはストライクボールに出場し、第一試合でレイチェルのクラスと戦った。同じ純色の契約者同士の対戦となったが、レイチェルの方が勝利したのだった。
「ゲイリーはもう少し狙撃の練習をした方がいいよ。風の魔法は速度的には火にも負けないんだから、私に勝つことは十分にあり得ると思うけどね?」
「そう簡単に言わないでよ。火と違って、風は見えないから狙うのが難しいのよ…」
「でも、サラはできてたけど?」
「うぐぅ…」
クレアにそう言われて、何も言えなくなるゲイリーだった。
その頃、同じく試合を終えたサラ・ウィンドギャザーも生徒会メンバーが座っている一角に来ていた。
「サラさん、お疲れ様。素晴らしい試合でしたね」
会長のフリージアは次の試合に出場するために、すでに席を外していたので、副会長のヴァン・ブレンダークが出迎えた。
「ヴァン副会長、ありがとうございます」
「試合で使用した魔法についても気になりますが、まずは次の試合ですね」
「シヴァ先輩でしたね」
試合のコートは次の試合の準備が整い、3年生の選手たちが整列していた。
出場する選手のうちの1人、生徒会会計のシヴァ・フィースクルはいつものように細い目で相手を伺うように見ながら笑っていた。
シヴァはディナカレア王国出身の魔法使いである。フィースクル家からは魔法使いとして優れた人物が登場したことはない。現に、フィースクル家からこのディナカレア魔法学院に入学した人物はシヴァが初めてである。シヴァ自身も魔力ランクはBであり、生徒会に入るラインとしてはギリギリのラインである。しかし、シヴァに対する生徒会メンバーの信頼、とりわけ生徒会長のフリージアの信頼は非常に厚かった。それは魔法の才能というよりは、シヴァの特殊な才能によるものだった。
試合が始まるとシヴァは詠唱を行いながら、上着のポケットからボールのようなものを3つ取り出した。そして、詠唱を終えてそのボールを3つ同時に空中に放り投げると、ボールは横から何かに弾かれたように勢いよく飛んでいき、的に命中した。
「シヴァさんの計算能力は相変わらずですね」
シヴァが今使っている魔法は非常にシンプルな『風の付与魔法』である。『付与魔法』は最も原始的な魔法の1つで、物体に魔法特性を付与する魔法である。日常生活のあらゆる場面で使われている。例えば料理をする際などに使用する魔法具は、鉄板に『熱の魔法』を付与したものである。魔法が発動すると、鉄が熱の魔法によって熱くなり、その上で食材を焼くことができるのだ。付与魔法は魔法を付与する物体をあらかじめ用意しておくので魔法具にしやすく、また魔力消費も少ないので、魔力ランクが低い一般的な魔法使いでも使いやすく、魔法石でも十分補える。
しかし、シンプルな魔法であるゆえに、妖精によるサポートはほとんど受けられない。例えば、先ほどの調理用魔法具の場合、鉄板をどのくらい熱くするかは、魔法使いの魔力操作にかかっている。ただただ強い魔力を送り込めば、食材は一瞬で黒焦げになってしまうだろう。魔法具の上に食材を乗っければ、誰でも同じように上手に焼けるというわけではないのである。焼き加減の調整は魔法使いが行わなければならない。
今、シヴァが行っていること自体は非常に簡単である。それは、鉄球に風の魔法を付与することで『風の発生源』を作り出して、そこから風を放出し、その力で鉄球を飛ばすというものだ。しかし、これをできることと、使いこなせることは全く異なる。
現に一般的に使用されている『風の飛行魔法』はこの原理ではない。一般的な風の飛行魔法は、これと真逆の理論で、魔法で追い風を発生させてそれに乗って飛行するというものだ。仮にこの付与魔法の原理によって飛べるとすれば、もっと多くの使い手がいるはずであるが、そうでないのは単純にこの原理によって飛ぶことが極めて難しいからである。
どの位置から、どのくらいの威力で、どのくらいの長さ風を発生させるか、その結果物体がどういう運動をするか、その時自然現象として発生している風がどう影響するかなど、様々な計算をして魔法を使わなければ、ただ大砲のように宙に放り出されて制御不能で地面に落ちてしまうだろう。
もちろん自分の体を制御する場合であれば、抜群のバランス感覚があれば、多少適当に魔法を使用しても立て直せる人もいるだろう。マーシャ・アッシュクロフトなどが良い例だ。マーシャはこの風の付与魔法の1つ、『風装』によって疑似的に空を飛ぶことができるが、あれはどちらかというと、連続で風で吹き飛んでいると言った方が表現的には正しい。マーシャができるからと言って、一般的な『風装』の使い手ができるかと言うとできない、というかやろうと思わないだろう。普通はジャンプの飛距離を伸ばしたり、速く走ったり、攻撃の威力を上げたりするのに使うものである。
一方で、他の物体に風の魔法を付与して、それを空中で風で思い通りに操るという芸当はものすごく難しい。風の魔法を付与して、動かすこと自体は難しいことではなく、それはすでに実用化されている。超大型魔法具の『風の船』などがそうである。しかし、この原理で空を飛ぶ魔法具は開発されていない。それは技術的に難しいからに他ならない。
シヴァの特殊な才能とはこの『異常な計算能力』である。実際、シヴァは生徒会の会計の仕事を行う時に、紙に書いて計算を行ったことは一度もない。その全てを頭の中で行うことができるのである。そして、その能力を疑わないゆえに、生徒会のメンバーはシヴァが頭の中で計算してその答えだけを紙に書き出したものに関して何も言うことはない。他の人が計算を間違ってシヴァがそれを訂正するということはあっても、その逆は絶対にないということを知っているからだ。
試合はシヴァ達のクラスの勝利で幕を閉じた。
「あんな人、去年も出てたっけ?」
ゲイリーがクレアに尋ねた。
「えぇ、いたわよ。去年も優勝だったわ」
「魔力ランクも低いし、魔法の威力はそれほど高くないんだろうが、この競技に限定して言うのであれば、私たち契約者をも倒せるかも知れないね」
「どうかしら…」
クレアは険しい顔をして会場を後にするシヴァをじっと見た。
「今の試合は全力ではなかったと思うわ。あの人の本当の力はもっとすごいものな気がするわ。この競技に限定せずとも十分恐ろしい気がしてならないわ…」
自分がそう言われていることなど知る由もないシヴァは、いつものように細い目をして笑いながら会場を後にしたのだった。
試合が終わって観客席に戻ったレイチェル・フランメルをゲイリー・シュトロームが迎える。レイチェルにはクレア・グランドも付き添っていた。
ゲイリーの隣にはいつものようにオリガ・シュタインが座っていた。厳密にはオリガの魔法人形オルガが座っており、その陰に隠れるようにしてオリガが座っていた。オリガは小さく手を振ってレイチェルを迎えた。
「いい試合だったわ」
「また負けてしまったけどね。最近は負けてばっかりな気がするよ」
ゲイリーにねぎらわれたレイチェルは肩をすくめてそう言った。
「私はあなたに負けていいとこなしの球技戦だったけどね」
ゲイリーはそう言って、ため息交じりに笑う。
ゲイリーはストライクボールに出場し、第一試合でレイチェルのクラスと戦った。同じ純色の契約者同士の対戦となったが、レイチェルの方が勝利したのだった。
「ゲイリーはもう少し狙撃の練習をした方がいいよ。風の魔法は速度的には火にも負けないんだから、私に勝つことは十分にあり得ると思うけどね?」
「そう簡単に言わないでよ。火と違って、風は見えないから狙うのが難しいのよ…」
「でも、サラはできてたけど?」
「うぐぅ…」
クレアにそう言われて、何も言えなくなるゲイリーだった。
その頃、同じく試合を終えたサラ・ウィンドギャザーも生徒会メンバーが座っている一角に来ていた。
「サラさん、お疲れ様。素晴らしい試合でしたね」
会長のフリージアは次の試合に出場するために、すでに席を外していたので、副会長のヴァン・ブレンダークが出迎えた。
「ヴァン副会長、ありがとうございます」
「試合で使用した魔法についても気になりますが、まずは次の試合ですね」
「シヴァ先輩でしたね」
試合のコートは次の試合の準備が整い、3年生の選手たちが整列していた。
出場する選手のうちの1人、生徒会会計のシヴァ・フィースクルはいつものように細い目で相手を伺うように見ながら笑っていた。
シヴァはディナカレア王国出身の魔法使いである。フィースクル家からは魔法使いとして優れた人物が登場したことはない。現に、フィースクル家からこのディナカレア魔法学院に入学した人物はシヴァが初めてである。シヴァ自身も魔力ランクはBであり、生徒会に入るラインとしてはギリギリのラインである。しかし、シヴァに対する生徒会メンバーの信頼、とりわけ生徒会長のフリージアの信頼は非常に厚かった。それは魔法の才能というよりは、シヴァの特殊な才能によるものだった。
試合が始まるとシヴァは詠唱を行いながら、上着のポケットからボールのようなものを3つ取り出した。そして、詠唱を終えてそのボールを3つ同時に空中に放り投げると、ボールは横から何かに弾かれたように勢いよく飛んでいき、的に命中した。
「シヴァさんの計算能力は相変わらずですね」
シヴァが今使っている魔法は非常にシンプルな『風の付与魔法』である。『付与魔法』は最も原始的な魔法の1つで、物体に魔法特性を付与する魔法である。日常生活のあらゆる場面で使われている。例えば料理をする際などに使用する魔法具は、鉄板に『熱の魔法』を付与したものである。魔法が発動すると、鉄が熱の魔法によって熱くなり、その上で食材を焼くことができるのだ。付与魔法は魔法を付与する物体をあらかじめ用意しておくので魔法具にしやすく、また魔力消費も少ないので、魔力ランクが低い一般的な魔法使いでも使いやすく、魔法石でも十分補える。
しかし、シンプルな魔法であるゆえに、妖精によるサポートはほとんど受けられない。例えば、先ほどの調理用魔法具の場合、鉄板をどのくらい熱くするかは、魔法使いの魔力操作にかかっている。ただただ強い魔力を送り込めば、食材は一瞬で黒焦げになってしまうだろう。魔法具の上に食材を乗っければ、誰でも同じように上手に焼けるというわけではないのである。焼き加減の調整は魔法使いが行わなければならない。
今、シヴァが行っていること自体は非常に簡単である。それは、鉄球に風の魔法を付与することで『風の発生源』を作り出して、そこから風を放出し、その力で鉄球を飛ばすというものだ。しかし、これをできることと、使いこなせることは全く異なる。
現に一般的に使用されている『風の飛行魔法』はこの原理ではない。一般的な風の飛行魔法は、これと真逆の理論で、魔法で追い風を発生させてそれに乗って飛行するというものだ。仮にこの付与魔法の原理によって飛べるとすれば、もっと多くの使い手がいるはずであるが、そうでないのは単純にこの原理によって飛ぶことが極めて難しいからである。
どの位置から、どのくらいの威力で、どのくらいの長さ風を発生させるか、その結果物体がどういう運動をするか、その時自然現象として発生している風がどう影響するかなど、様々な計算をして魔法を使わなければ、ただ大砲のように宙に放り出されて制御不能で地面に落ちてしまうだろう。
もちろん自分の体を制御する場合であれば、抜群のバランス感覚があれば、多少適当に魔法を使用しても立て直せる人もいるだろう。マーシャ・アッシュクロフトなどが良い例だ。マーシャはこの風の付与魔法の1つ、『風装』によって疑似的に空を飛ぶことができるが、あれはどちらかというと、連続で風で吹き飛んでいると言った方が表現的には正しい。マーシャができるからと言って、一般的な『風装』の使い手ができるかと言うとできない、というかやろうと思わないだろう。普通はジャンプの飛距離を伸ばしたり、速く走ったり、攻撃の威力を上げたりするのに使うものである。
一方で、他の物体に風の魔法を付与して、それを空中で風で思い通りに操るという芸当はものすごく難しい。風の魔法を付与して、動かすこと自体は難しいことではなく、それはすでに実用化されている。超大型魔法具の『風の船』などがそうである。しかし、この原理で空を飛ぶ魔法具は開発されていない。それは技術的に難しいからに他ならない。
シヴァの特殊な才能とはこの『異常な計算能力』である。実際、シヴァは生徒会の会計の仕事を行う時に、紙に書いて計算を行ったことは一度もない。その全てを頭の中で行うことができるのである。そして、その能力を疑わないゆえに、生徒会のメンバーはシヴァが頭の中で計算してその答えだけを紙に書き出したものに関して何も言うことはない。他の人が計算を間違ってシヴァがそれを訂正するということはあっても、その逆は絶対にないということを知っているからだ。
試合はシヴァ達のクラスの勝利で幕を閉じた。
「あんな人、去年も出てたっけ?」
ゲイリーがクレアに尋ねた。
「えぇ、いたわよ。去年も優勝だったわ」
「魔力ランクも低いし、魔法の威力はそれほど高くないんだろうが、この競技に限定して言うのであれば、私たち契約者をも倒せるかも知れないね」
「どうかしら…」
クレアは険しい顔をして会場を後にするシヴァをじっと見た。
「今の試合は全力ではなかったと思うわ。あの人の本当の力はもっとすごいものな気がするわ。この競技に限定せずとも十分恐ろしい気がしてならないわ…」
自分がそう言われていることなど知る由もないシヴァは、いつものように細い目をして笑いながら会場を後にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる