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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
ストライクボール4年決勝
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「シヴァ先輩、優勝おめでとうございます」
席に戻ってきたシヴァをサラがそう言って迎えた。
「あぁ、おおきに、ありがとう。いやぁ、えらい疲れたわ~」
シヴァが自分の肩を揉みながら首を回す仕草をする。
「そうは見えませんけど」
「いや、ほんまやて。大接戦やったやろ?」
「圧勝でしたけどね」
シヴァが適当なことを言うのはいつものことなので、生徒会メンバーは軽く受け流す。
試合コートは倒された的の回収と新しい的の設置が終わり、4年生のストライクボール決勝戦が行われようとしていた。
「1年から3年まで、すごい試合ばかりだから緊張しちゃうわね」
生徒会長のフリージア・ウィステリアはチームのメンバーに困ったように笑いかけた。メンバーはそれに苦笑いで返す。
「まぁ派手なことはできないけど、私たちには私たちの戦い方があるわ。気負わず行きましょう」
メンバーは緊張が解けたように穏やかに笑いあう。
「いよいよ会長の試合が始まりますね」
「氷の女王のお出ましか」
試合開始と同時に出場選手は詠唱を始める。
出場選手の1人、フリージアも当然ながら詠唱を行う。
“oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = dEEp blUE.
(食材は紺色の魔力)
re:ciPE = sheR-beT.
(調理法は氷菓)
IGI-JOTUN, begUP, punIT.
(氷の巨神ヨトゥンよ、求むるは氷を統べる力、力を宿せしは我が身)
“ICE DRESS”
(特殊魔装『氷の礼装』)
フリージアが詠唱を終えると、フリージアは足元から徐々に霜のようなもので覆われていく。そして、全身が霜で覆われて、姿が完全に見えなくなったかと思うと、体を覆っていた白いものは砕け散り、空気へと溶けていった。
そこから現れたものはまさしく『氷の女王』と形容するのに相応しい姿をしたフリージア・ウィステリアだった。
髪の色は白く染まり、服も透き通るような白いドレスへと変貌していた。
2年生以上の学年の生徒は今までに見たことがあるのだろう。その人間離れした美しさを前にうっとりと見つめて思わずため息をもらす生徒や、歓声を上げる熱狂的なファンの姿もあった。
魔法を発動したフリージアは体の周囲にいくつものつららを槍のように横向きに生成して的に向けて放つ。
魔法の発動までにかかる時間は他の魔法使いに比べて少し長かったが、発動した後からは攻撃精度やスピード、同時に発射できるつららの数などでフリージアが優位に立ち、試合はフリージア達のクラスの勝利に終わったのだった。
フリージアが客席に向けて笑顔で手を振ると、会場からは歓声と拍手が響き渡った。
「あれは…魔装?」
ルーシッドと一緒に試合を見ていたシアンはそう尋ねた。
「うーん、理論的にはそうだけど、厳密には違うね。現代魔法において魔装として詠唱文が確立しているのは地装、水装、火装、風装、雷装の5つだけだからね。重装っていう方法もあるけど、それでも氷装はできないね」
「えっと…じゃああれは?」
「詠唱文が公表されてない固有魔法じゃないかな。ルビィの影装束と同じ感じだね?」
「そうね。私もあの魔法は初めて見たけど、魔法発動で服が変化するのも似ているわ。多分同系統の魔法ね」
ルーシッドに話をふられて、興味深そうに試合を見ていたルビアは、向き直ってそう答えた。
「あれって魔法発動してる間、もとの服はどうなってるの?」
キリエがルーシッドの方を見て尋ねる。
「基本的には『草木の魔法』によって作られた繊維で作った特殊な服を使う『装備変換』っていう方法だね。まぁ『操作魔法』の一種だよ。自分のイメージによって服を作り変えたりとか、繊維レベルにまで分解したりする方法だよ。武器とか工具の形を変える魔法のことも装備変換って言うね」
「へぇ~!そうなんだぁ~!」
「ほんと、何でも知ってるのね…。まぁ私は草木の魔法は使えないから、影装束の時は装備変換は使ってないけど」
あきれたようにため息をつきながら補足するルビア。
「え?じゃあどうやってるの?」
「ふふ、企業秘密よ」
ルビアはおどけたように微笑みながらそう返した。
「多分、操影魔法と潜影魔法を応用して、地面の中に服を隠してあるんじゃないかな?」
「あらぁ、ほんとに何でも知ってるのねぇ?」
身も蓋もない分析に少しすねたように、ルビアはルーシッドの頬を人差し指でぐりぐりしながら言った。
周りのクラスメートたちはその様子を見て、くすくすと笑った。
席に戻ってきたシヴァをサラがそう言って迎えた。
「あぁ、おおきに、ありがとう。いやぁ、えらい疲れたわ~」
シヴァが自分の肩を揉みながら首を回す仕草をする。
「そうは見えませんけど」
「いや、ほんまやて。大接戦やったやろ?」
「圧勝でしたけどね」
シヴァが適当なことを言うのはいつものことなので、生徒会メンバーは軽く受け流す。
試合コートは倒された的の回収と新しい的の設置が終わり、4年生のストライクボール決勝戦が行われようとしていた。
「1年から3年まで、すごい試合ばかりだから緊張しちゃうわね」
生徒会長のフリージア・ウィステリアはチームのメンバーに困ったように笑いかけた。メンバーはそれに苦笑いで返す。
「まぁ派手なことはできないけど、私たちには私たちの戦い方があるわ。気負わず行きましょう」
メンバーは緊張が解けたように穏やかに笑いあう。
「いよいよ会長の試合が始まりますね」
「氷の女王のお出ましか」
試合開始と同時に出場選手は詠唱を始める。
出場選手の1人、フリージアも当然ながら詠唱を行う。
“oPen the fiAry GATE.
(開け、妖精界の門)
in-g,rE,DIeNT = dEEp blUE.
(食材は紺色の魔力)
re:ciPE = sheR-beT.
(調理法は氷菓)
IGI-JOTUN, begUP, punIT.
(氷の巨神ヨトゥンよ、求むるは氷を統べる力、力を宿せしは我が身)
“ICE DRESS”
(特殊魔装『氷の礼装』)
フリージアが詠唱を終えると、フリージアは足元から徐々に霜のようなもので覆われていく。そして、全身が霜で覆われて、姿が完全に見えなくなったかと思うと、体を覆っていた白いものは砕け散り、空気へと溶けていった。
そこから現れたものはまさしく『氷の女王』と形容するのに相応しい姿をしたフリージア・ウィステリアだった。
髪の色は白く染まり、服も透き通るような白いドレスへと変貌していた。
2年生以上の学年の生徒は今までに見たことがあるのだろう。その人間離れした美しさを前にうっとりと見つめて思わずため息をもらす生徒や、歓声を上げる熱狂的なファンの姿もあった。
魔法を発動したフリージアは体の周囲にいくつものつららを槍のように横向きに生成して的に向けて放つ。
魔法の発動までにかかる時間は他の魔法使いに比べて少し長かったが、発動した後からは攻撃精度やスピード、同時に発射できるつららの数などでフリージアが優位に立ち、試合はフリージア達のクラスの勝利に終わったのだった。
フリージアが客席に向けて笑顔で手を振ると、会場からは歓声と拍手が響き渡った。
「あれは…魔装?」
ルーシッドと一緒に試合を見ていたシアンはそう尋ねた。
「うーん、理論的にはそうだけど、厳密には違うね。現代魔法において魔装として詠唱文が確立しているのは地装、水装、火装、風装、雷装の5つだけだからね。重装っていう方法もあるけど、それでも氷装はできないね」
「えっと…じゃああれは?」
「詠唱文が公表されてない固有魔法じゃないかな。ルビィの影装束と同じ感じだね?」
「そうね。私もあの魔法は初めて見たけど、魔法発動で服が変化するのも似ているわ。多分同系統の魔法ね」
ルーシッドに話をふられて、興味深そうに試合を見ていたルビアは、向き直ってそう答えた。
「あれって魔法発動してる間、もとの服はどうなってるの?」
キリエがルーシッドの方を見て尋ねる。
「基本的には『草木の魔法』によって作られた繊維で作った特殊な服を使う『装備変換』っていう方法だね。まぁ『操作魔法』の一種だよ。自分のイメージによって服を作り変えたりとか、繊維レベルにまで分解したりする方法だよ。武器とか工具の形を変える魔法のことも装備変換って言うね」
「へぇ~!そうなんだぁ~!」
「ほんと、何でも知ってるのね…。まぁ私は草木の魔法は使えないから、影装束の時は装備変換は使ってないけど」
あきれたようにため息をつきながら補足するルビア。
「え?じゃあどうやってるの?」
「ふふ、企業秘密よ」
ルビアはおどけたように微笑みながらそう返した。
「多分、操影魔法と潜影魔法を応用して、地面の中に服を隠してあるんじゃないかな?」
「あらぁ、ほんとに何でも知ってるのねぇ?」
身も蓋もない分析に少しすねたように、ルビアはルーシッドの頬を人差し指でぐりぐりしながら言った。
周りのクラスメートたちはその様子を見て、くすくすと笑った。
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