118 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編
3日目終了
しおりを挟む
「さっきの氷の魔法に使われてた妖精ってジャックフロストでしたか?」
「ほう、そこに目をつけたか。さすがはルーシィじゃな」
ルーシッドにそう尋ねられて、感心したようにマリーは答えた。
「あれはジャックフロストではないわね。威力的に低位のジャックフロストではなかったわ。あれは合成魔法(対応する高位の妖精を1人使役することで、属性を2つ以上組み合わせた効果をもたらす魔法)による氷の魔法ね」
それを聞いていたヒルダがそう答える。
「合成魔法による氷の魔法は、今のところ確立された詠唱文は公開されていないですね。というか、そもそも高位の氷の妖精自体が知られてません。やはりあれは会長の固有魔法ですかね」
「詠唱文はともかく、氷の魔法を使える高位の妖精になら心当たりがあるわ。巨神族の1人、氷の巨神ヨトゥンだと思うわ」
「え、巨神ってことは、私のベルグリシのお仲間さんですか?」
ラコッテが『巨神』という言葉に反応して、振り向いて尋ねた。
「そうね、ベルグリシは山の巨神。同じ巨神族ね」
「巨神ってのは通称的なものかと思ってたんですが、神族の1つなんですね」
「まぁ、巨神と言われている妖精のうちほとんどは神位ではないけどね。氷の巨神も、氷しか使えないから一応高位の妖精に属しているわ。山の巨神も、山って言ってるけど、地属性の一属性だから高位ね。それと、さっきの2年の試合に出ていたレイチェルって子。あの子は炎の巨神ムスペルと契約していたわね。炎とは言ってるけど、要は火属性だから高位ね。まぁ、巨神と契約できるなんて大したものだけど」
「お前んとこの神族とは、何かと因縁があるからな?」
マリーがヒルダに笑いかける。
「あっちが昔から何かにつけて、つっかかってくるから相手してあげてるだけよ。こっちは別に眼中にないわ」
その後の5年、6年の決勝も滞りなく終わり、3日目の全行程が終了した。
日が沈んで暗くなった学院。生徒会室から出たところにある裏庭には一人の生徒がたたずんでいた。
「会長?」
「……あら。ヴァン君、お疲れ様」
「会長こそ。まだお休みになられてなかったんですか?今日は試合もありましたし、早めに休まないと、お体に障りますよ」
「あら、レディーの体に触るだなんて…」
フリージアは首を傾げて、頬に手を当てながら少し困ったように笑いながら言った。
「へっ、変に曲げて解釈しないでください!」
「うふふっ、ありがとう。ヴァン君こそ、明日は試合なんだから、早く休まないと」
そう言って2人は生徒会室に戻った。
「会長はいつまで会長でいてくださるんですか?」
そう尋ねられて、フリージアはしばしヴァンの目を黙って見てから、微笑みながら答えた。
「……そうねー。私の後任はヴァン君になるはずだものね?」
「意地の悪い方だ。知ってておっしゃってますね?私はいつまでいるんですかではなく、いつまでいてくださるんですかとお聞きしたじゃないですか。私は会長になるつもりはありませんよ。私がその器ではないことは自分でわかっています」
「そうかしら?ヴァン君ならぴったりだと思うけどな」
フリージアが自分より背が高いヴァンを下から覗き込むようにして見つめる。
「わっ、私の事はいいじゃないですか。それよりも会長の事です。会長は来年5年生。この学院は会長職をいつ辞するかの決まりはありませんが、5年生で引退する人も多いです。前任の会長もそうでした。会長はどうされるおつもりなんですか?」
「……そうね。来年は卒業後のこともそろそろ考えないといけないしね」
5年生からは学外実習として、自分の興味がある職業ギルドで実習を行ったりする授業が加わってくる。いわゆる就職活動だ。生徒によってはその職業ギルドが有名な他国や、自分の生まれ故郷へ実習に行く生徒もいるため、5、6年生全員が学院に揃っているということはあまりない。そういった事情もあって、5年生になると同時にギルド長を引退して、次の候補にその職を譲るという生徒も多くいるのだ。
「でも私はヴァン君みたく家柄が良いわけでもないし、魔法の才能もそこまで高いわけでもない。唯一の取り柄だった勉強もルーシィさんのせいで最近は霞んでしまったわ。私のもらい手なんてあるのかしら」
フリージアは目に手を当てて、泣く真似をした。
「何を言っているんですか…ディナカレア魔法学院の生徒会長ともなれば引く手あまたでしょう。声をかけてくるギルドや専門機関が多すぎてどこにしようか迷う事はあっても、就職先が決まらないなんてことはあり得ませんよ。まぁ仮にどうしても行く場所がないと言うならその時は……」
そこまで言って、はっとして黙るヴァン。それを見てフリージアは意地悪く笑う。
「……その時は、なぁにぃ?」
「そっ、それはその…すっ、すいません。今はまだそれを言うだけの自信が私には…先走りました……」
「ヴァン君って、いくじなし?」
「なっ……」
「ふふっ、まぁいいわ。待っててあげる」
フリージアは楽しそうに笑い、話を続けた。
「会長の件だけど、皆の信任が得られれば来年も会長を続けるつもりよ。まだ今後の学院のことで気になることもあるしね」
「ルーシッドさんのことですか?」
フリージアはそう尋ねられて、ただ黙って笑い返した。
「ほう、そこに目をつけたか。さすがはルーシィじゃな」
ルーシッドにそう尋ねられて、感心したようにマリーは答えた。
「あれはジャックフロストではないわね。威力的に低位のジャックフロストではなかったわ。あれは合成魔法(対応する高位の妖精を1人使役することで、属性を2つ以上組み合わせた効果をもたらす魔法)による氷の魔法ね」
それを聞いていたヒルダがそう答える。
「合成魔法による氷の魔法は、今のところ確立された詠唱文は公開されていないですね。というか、そもそも高位の氷の妖精自体が知られてません。やはりあれは会長の固有魔法ですかね」
「詠唱文はともかく、氷の魔法を使える高位の妖精になら心当たりがあるわ。巨神族の1人、氷の巨神ヨトゥンだと思うわ」
「え、巨神ってことは、私のベルグリシのお仲間さんですか?」
ラコッテが『巨神』という言葉に反応して、振り向いて尋ねた。
「そうね、ベルグリシは山の巨神。同じ巨神族ね」
「巨神ってのは通称的なものかと思ってたんですが、神族の1つなんですね」
「まぁ、巨神と言われている妖精のうちほとんどは神位ではないけどね。氷の巨神も、氷しか使えないから一応高位の妖精に属しているわ。山の巨神も、山って言ってるけど、地属性の一属性だから高位ね。それと、さっきの2年の試合に出ていたレイチェルって子。あの子は炎の巨神ムスペルと契約していたわね。炎とは言ってるけど、要は火属性だから高位ね。まぁ、巨神と契約できるなんて大したものだけど」
「お前んとこの神族とは、何かと因縁があるからな?」
マリーがヒルダに笑いかける。
「あっちが昔から何かにつけて、つっかかってくるから相手してあげてるだけよ。こっちは別に眼中にないわ」
その後の5年、6年の決勝も滞りなく終わり、3日目の全行程が終了した。
日が沈んで暗くなった学院。生徒会室から出たところにある裏庭には一人の生徒がたたずんでいた。
「会長?」
「……あら。ヴァン君、お疲れ様」
「会長こそ。まだお休みになられてなかったんですか?今日は試合もありましたし、早めに休まないと、お体に障りますよ」
「あら、レディーの体に触るだなんて…」
フリージアは首を傾げて、頬に手を当てながら少し困ったように笑いながら言った。
「へっ、変に曲げて解釈しないでください!」
「うふふっ、ありがとう。ヴァン君こそ、明日は試合なんだから、早く休まないと」
そう言って2人は生徒会室に戻った。
「会長はいつまで会長でいてくださるんですか?」
そう尋ねられて、フリージアはしばしヴァンの目を黙って見てから、微笑みながら答えた。
「……そうねー。私の後任はヴァン君になるはずだものね?」
「意地の悪い方だ。知ってておっしゃってますね?私はいつまでいるんですかではなく、いつまでいてくださるんですかとお聞きしたじゃないですか。私は会長になるつもりはありませんよ。私がその器ではないことは自分でわかっています」
「そうかしら?ヴァン君ならぴったりだと思うけどな」
フリージアが自分より背が高いヴァンを下から覗き込むようにして見つめる。
「わっ、私の事はいいじゃないですか。それよりも会長の事です。会長は来年5年生。この学院は会長職をいつ辞するかの決まりはありませんが、5年生で引退する人も多いです。前任の会長もそうでした。会長はどうされるおつもりなんですか?」
「……そうね。来年は卒業後のこともそろそろ考えないといけないしね」
5年生からは学外実習として、自分の興味がある職業ギルドで実習を行ったりする授業が加わってくる。いわゆる就職活動だ。生徒によってはその職業ギルドが有名な他国や、自分の生まれ故郷へ実習に行く生徒もいるため、5、6年生全員が学院に揃っているということはあまりない。そういった事情もあって、5年生になると同時にギルド長を引退して、次の候補にその職を譲るという生徒も多くいるのだ。
「でも私はヴァン君みたく家柄が良いわけでもないし、魔法の才能もそこまで高いわけでもない。唯一の取り柄だった勉強もルーシィさんのせいで最近は霞んでしまったわ。私のもらい手なんてあるのかしら」
フリージアは目に手を当てて、泣く真似をした。
「何を言っているんですか…ディナカレア魔法学院の生徒会長ともなれば引く手あまたでしょう。声をかけてくるギルドや専門機関が多すぎてどこにしようか迷う事はあっても、就職先が決まらないなんてことはあり得ませんよ。まぁ仮にどうしても行く場所がないと言うならその時は……」
そこまで言って、はっとして黙るヴァン。それを見てフリージアは意地悪く笑う。
「……その時は、なぁにぃ?」
「そっ、それはその…すっ、すいません。今はまだそれを言うだけの自信が私には…先走りました……」
「ヴァン君って、いくじなし?」
「なっ……」
「ふふっ、まぁいいわ。待っててあげる」
フリージアは楽しそうに笑い、話を続けた。
「会長の件だけど、皆の信任が得られれば来年も会長を続けるつもりよ。まだ今後の学院のことで気になることもあるしね」
「ルーシッドさんのことですか?」
フリージアはそう尋ねられて、ただ黙って笑い返した。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
雨の少女
朝山みどり
ファンタジー
アンナ・レイナードは、雨を操るレイナード家の一人娘。母キャサリンは代々その力を継ぐ「特命伯爵」であり、豊穣を司る王家と並び国を支える家柄だ。外交官の父ブライトは家を留守にしがちだが、手紙や贈り物を欠かさず、アンナは両親と穏やかな日々を送っていた。ある日、母は「明日から雨を降らせる」と言い、アンナと一緒に街へ買い物に出かける。温かな手を引かれて歩くひととき、本と飴を選ぶ楽しさ、それはアンナにとってかけがえのない記憶だった。
やがて雨が降り始め、国は潤ったが、異常気象の兆しが見え始める。キャサリンは雨を止めようと努力するが、うまくいかず、王家やサニダ家に助けを求めても返事はない。やがて体を壊し、キャサリンはアンナに虹色のペンダントを託して息を引き取った。アンナは悲しみを胸に、自らの力で雨を止め、空に虹をかけた。
葬儀の後、父はすぐ王宮へ戻り、アンナの生活は一変する。ある日、継母ミラベルとその娘マリアンが屋敷に現れ、「この家を任された」と告げる。手紙には父の字でそう記されていた。以来、アンナの大切な物や部屋までも奪われ、小屋で一人暮らすことになる。父からの手紙はミラベルとマリアンにのみ届き、アンナ宛てには一通も来ない。ペンダントを握って耐える日々が続いた。
「なろう」にも投稿しております。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる