魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
119 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編

最終日 朝

しおりを挟む
「いよいよ最終日だね」
魔法球技戦最終日の朝、ルーシッドは食堂でシアンにそう話しかけた。

「そうね。最初は正直冗談半分というか…みんなに発破をかけるために言ったけど、ルーシィと作戦を考えているうちにが現実味を帯びてきたわ。
本当にありがとうルーシィ。今回の球技戦で私たちがここまで戦えてるのは全部あなたのお陰よ」
「ううん。私はこの魔法球技って言うもの自体、今回初めて知ったからね。ルールの確認とか生徒会とのやり取りとか色々やってくれて助かったよ」

そう言われて、シアンは少し考えてから口を開いた。
「私、あなたに謝らないといけないことがあるの」
そう言われて、ルーシッドはきょとんとして、小さく「えっ?」っと言った。

「私、自分は人を外見で判断したりしない公平な人間だって、自分では勝手に思ってた。幼馴染のライムとシャルロッテもそこまで魔法が得意なわけじゃなかったし…。
だから私が頑張って2人をこのディナカレア魔法学院に合格させて、魔力ランクが魔法使いを計る全てじゃないって、頑張れば誰でも優秀な魔法使いになれるって証明してみせるって思ってた。でも、あなたに出会って、きっとそれって心のどこかで自分の方が優れてるって考えて、他の人を見下していたんだって思って、はっとしたわ。私、あなたがその才能を発揮するたびに、Fって思った。外面的な評価に気を取られて、本当のあなたを見てなかった。それで嫉妬してた。
私は人一倍努力してきたつもりよ。でもあなたはそんな私の何十倍、いや、何百倍も努力してきたに違いないわ。血のにじむような努力を。今回の魔法球技戦で一緒に仕事をして、そのことがはっきりわかったわ。だから、ごめんなさい」
そう言ってシアンは深く頭を下げた。

その様子をしばし黙って見ていたルーシッドは口を開いた。
「……アンは優しいね」
「違う、そんなことないわ」
シアンは顔を上げた。
「アンと私は似てる気がするよ」
「あなたに似てるって言われると、なんだか嬉しいわ」
「これからもよろしくね、アン」
「こちらこそ、ルーシィ」
2人は笑い合い、ぎゅっと抱き合った。


「まぁ、でもまずは今日の試合だね。
アン、知ってた?
私、実は意外に負けず嫌いなんだよねー。だからこの球技戦、一回でも負けたくないんだ。全種目優勝しよう」
「あら、奇遇ね。実は私も昔から負けず嫌いなの。やっぱり私たち似たもの同士なのかしら」

そう言って2人は顔を見合わせてまた笑った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...