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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
エリアボール1年決勝①
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「いよいよ最終日ね」
生徒会長のフリージアは集まっていた生徒会メンバーに笑いかける。
4日間に渡って行われた学年別魔法球技戦も今日がいよいよ最終日である。最終日は午前がエリアボール決勝、午後がバトルボール決勝が行われる。
次の日は休日ではあるが特別に閉会式が行われ、各学年各競技ごとの最優秀選手などの発表が行われる。最終日終了時点で1人1票を投票することができ、それを生徒会が集計して発表するのだ。しかし、生徒たちによる投票では基本的に人気投票になってしまうのが毎回の通例なので、生徒たちの投票による最優秀選手とは別に、学院の職員たちが選んだ最優秀選手と、生徒会と他のギルドのギルド長が選んだ最優秀選手も合わせて発表されることになっている。
「生徒会で試合に出る人は頑張ってねー。今日は、1年がエリアボールのアザリーさんね」
アザレア・ディライトはすでに試合の準備のために選手控室におり、そこにはいなかった。
「エリアボールは昨日に続いてサリーさんもね。あとは、3年生はバトルボールのヴァン君とミクさんね」
「頑張ります」
「決勝でも遊んでくるのだ~」
生徒会副会長のヴァン・ブレンダークとミクリナ・フェンサーは同じクラスだ。同じクラスから生徒会メンバーが2名出ることはかなり珍しいことだ。
それは、生徒会に入るための条件が、他のギルドと少し異なっているからだ。毎年生徒会に入ることができる人数は基本的に2~3名程度である。そして1名はその年度の主席がほぼ内定しているので、実質的に生徒会の人選によって選出されるのは1名ないしは2名だけなのだ。
そして、クラスは魔力ランクの偏りが無いように、魔力ランクが高い生徒と低い生徒はなるべく均等に割り振られている。もちろん、生徒会メンバーに選出される基準は必ずしも魔力ランクだけではないが、魔力ランクが重要な要素であることは間違いない。
それゆえに1クラスに生徒会に選ばれるほどの魔法使いが2人いることは珍しいのだ。
サラのクラスにはSSランクのサラとAAAランクのフランチェスカが在籍しているが、それはサラ達2年生の世代は黄金世代とも呼ばれていて、そもそも優秀な生徒が多いためである。
ちなみにフランチェスカは本来であれば生徒会に入るのに十分な実力を持っているのだが、風紀ギルドのギルド長マーシャから気に入られ説得に応じ、生徒会と風紀ギルドの話し合いの末、風紀ギルドに在籍することになったといういきさつがある。
「さぁまずは1年生のエリアボール決勝ね」
フリージアはそれ以外何も言わなかったが、シヴァは口を開いた。
「相手チームは例によってルーシッドやからな?
アザレアには申し訳ないが勝つんはまぁ無理やろうな」
「そんなぁ~……身も蓋もない~……」
フィオーレはいつも通りおっとりした口調でそれに答えた。
「あれ、そう言えばフィオ先輩ってどの競技にも出てないんですか?」
自分が出場する試合が終わったので、生徒会メンバーと共に座っていた1年生のマリンが尋ねた。
「ん~……私は生徒会のぉ~…?
仕事もあって~…忙しいだろうからって~…クラスメイトから~…出なくて、いいよぉ~…って言われましたぁ~
ほんとに優しいクラスメイトですぅ~」
「いや、多分それ、どんくさくて使えんから、頭数に入れられてないだけとちゃいますか?」
シヴァがボソッと言うと、全員が吹き出した。
「すごい歓声ね」
「決勝に人気の人が集まったからねー」
クラスの指揮を執るシアンとルーシッドは、選手控室から競技フィールドの様子を見ながらそう言った。
「ファンのために敢えて決勝戦に合わせてあげたのかしら?」
「まさか~、選手のバランスと実力を見てだよー?」
「まぁそういうことにしてあげましょうか」
ルーシッド達のクラスのエリアボール決勝の出場メンバーはキリエ・ウィーリング、リリアナ・ソルフェリノ、クリスティーン・チェスナット、ランダル・カーマイン、レガリー・コチニールの5人だった。
競技フィールドへと出てきた選手に対して会場からはエールが送られていたが、特にリリアナとクリスティーン、ランダル、レガリーの4人は名前が飛び交っていた。
この4人は、その容姿ゆえに以前から1年生の中ではひそかに人気があったようだが、今回の球技戦のバトルボールでの活躍を見て、さらにファンが増えたようだ。
「あはは、4人ともすごい人気だね~」
客席からの声を聞いて、キリエは苦笑いした。
「まぁでも、今回の決勝でキリィの知名度も一気に上がると思うよ?」
「そうね、おそらく『エリアボール最強のアタッカー』として名を刻むことになるわね」
リリアナとクリスティーンはキリエに笑いかけた。
「うーん…まさかシアンさんとオリヴィアさんを外してくるとわね…」
「そうですね…この決勝の舞台においてさえ、まだ隠し玉を取っておいたということでしょうか…」
出場選手を見てフリージアとヴァンは首を傾げた。
予選でシアンが見せた水の飛行魔法を使った戦術は衝撃をもって迎えられた。また、目立ってはいなかったが、オリヴィアの石の操作魔法による援護も1年生のみならず、全学年を通してもかなりの技術だった。それ以外のディフェンスの選手たちも含め、エリアボールに関しては選手の交代をする必要がない、絶対的な布陣のように思えた。
しかし、ふたを開けてみると、シアンとオリヴィアはおろか、予選に出場した選手は決勝戦に誰一人として出場していなかったのだ。
「キリエさんはストライクボールで雷嵐を決めた選手でしたね。他のメンバーは確かバトルボールに出場していましたね」
「あぁ、あの試合か。あれは笑わせてもろたな。まぁルーシッドからすれば、戦略なんかなぼでもあるんやろ?
私らが衝撃的に感じた戦略さえ、あいつからすれば数ある戦略のうちの1つにすぎひんっちゅうこっちゃろ。まぁ、この決勝でどんなけったいな試合するんか、楽しみにしとこやないか」
シヴァがそう言ってにやにやと笑った。
1年生エリアボール決勝戦開始の合図が会場に鳴り響いた。
生徒会長のフリージアは集まっていた生徒会メンバーに笑いかける。
4日間に渡って行われた学年別魔法球技戦も今日がいよいよ最終日である。最終日は午前がエリアボール決勝、午後がバトルボール決勝が行われる。
次の日は休日ではあるが特別に閉会式が行われ、各学年各競技ごとの最優秀選手などの発表が行われる。最終日終了時点で1人1票を投票することができ、それを生徒会が集計して発表するのだ。しかし、生徒たちによる投票では基本的に人気投票になってしまうのが毎回の通例なので、生徒たちの投票による最優秀選手とは別に、学院の職員たちが選んだ最優秀選手と、生徒会と他のギルドのギルド長が選んだ最優秀選手も合わせて発表されることになっている。
「生徒会で試合に出る人は頑張ってねー。今日は、1年がエリアボールのアザリーさんね」
アザレア・ディライトはすでに試合の準備のために選手控室におり、そこにはいなかった。
「エリアボールは昨日に続いてサリーさんもね。あとは、3年生はバトルボールのヴァン君とミクさんね」
「頑張ります」
「決勝でも遊んでくるのだ~」
生徒会副会長のヴァン・ブレンダークとミクリナ・フェンサーは同じクラスだ。同じクラスから生徒会メンバーが2名出ることはかなり珍しいことだ。
それは、生徒会に入るための条件が、他のギルドと少し異なっているからだ。毎年生徒会に入ることができる人数は基本的に2~3名程度である。そして1名はその年度の主席がほぼ内定しているので、実質的に生徒会の人選によって選出されるのは1名ないしは2名だけなのだ。
そして、クラスは魔力ランクの偏りが無いように、魔力ランクが高い生徒と低い生徒はなるべく均等に割り振られている。もちろん、生徒会メンバーに選出される基準は必ずしも魔力ランクだけではないが、魔力ランクが重要な要素であることは間違いない。
それゆえに1クラスに生徒会に選ばれるほどの魔法使いが2人いることは珍しいのだ。
サラのクラスにはSSランクのサラとAAAランクのフランチェスカが在籍しているが、それはサラ達2年生の世代は黄金世代とも呼ばれていて、そもそも優秀な生徒が多いためである。
ちなみにフランチェスカは本来であれば生徒会に入るのに十分な実力を持っているのだが、風紀ギルドのギルド長マーシャから気に入られ説得に応じ、生徒会と風紀ギルドの話し合いの末、風紀ギルドに在籍することになったといういきさつがある。
「さぁまずは1年生のエリアボール決勝ね」
フリージアはそれ以外何も言わなかったが、シヴァは口を開いた。
「相手チームは例によってルーシッドやからな?
アザレアには申し訳ないが勝つんはまぁ無理やろうな」
「そんなぁ~……身も蓋もない~……」
フィオーレはいつも通りおっとりした口調でそれに答えた。
「あれ、そう言えばフィオ先輩ってどの競技にも出てないんですか?」
自分が出場する試合が終わったので、生徒会メンバーと共に座っていた1年生のマリンが尋ねた。
「ん~……私は生徒会のぉ~…?
仕事もあって~…忙しいだろうからって~…クラスメイトから~…出なくて、いいよぉ~…って言われましたぁ~
ほんとに優しいクラスメイトですぅ~」
「いや、多分それ、どんくさくて使えんから、頭数に入れられてないだけとちゃいますか?」
シヴァがボソッと言うと、全員が吹き出した。
「すごい歓声ね」
「決勝に人気の人が集まったからねー」
クラスの指揮を執るシアンとルーシッドは、選手控室から競技フィールドの様子を見ながらそう言った。
「ファンのために敢えて決勝戦に合わせてあげたのかしら?」
「まさか~、選手のバランスと実力を見てだよー?」
「まぁそういうことにしてあげましょうか」
ルーシッド達のクラスのエリアボール決勝の出場メンバーはキリエ・ウィーリング、リリアナ・ソルフェリノ、クリスティーン・チェスナット、ランダル・カーマイン、レガリー・コチニールの5人だった。
競技フィールドへと出てきた選手に対して会場からはエールが送られていたが、特にリリアナとクリスティーン、ランダル、レガリーの4人は名前が飛び交っていた。
この4人は、その容姿ゆえに以前から1年生の中ではひそかに人気があったようだが、今回の球技戦のバトルボールでの活躍を見て、さらにファンが増えたようだ。
「あはは、4人ともすごい人気だね~」
客席からの声を聞いて、キリエは苦笑いした。
「まぁでも、今回の決勝でキリィの知名度も一気に上がると思うよ?」
「そうね、おそらく『エリアボール最強のアタッカー』として名を刻むことになるわね」
リリアナとクリスティーンはキリエに笑いかけた。
「うーん…まさかシアンさんとオリヴィアさんを外してくるとわね…」
「そうですね…この決勝の舞台においてさえ、まだ隠し玉を取っておいたということでしょうか…」
出場選手を見てフリージアとヴァンは首を傾げた。
予選でシアンが見せた水の飛行魔法を使った戦術は衝撃をもって迎えられた。また、目立ってはいなかったが、オリヴィアの石の操作魔法による援護も1年生のみならず、全学年を通してもかなりの技術だった。それ以外のディフェンスの選手たちも含め、エリアボールに関しては選手の交代をする必要がない、絶対的な布陣のように思えた。
しかし、ふたを開けてみると、シアンとオリヴィアはおろか、予選に出場した選手は決勝戦に誰一人として出場していなかったのだ。
「キリエさんはストライクボールで雷嵐を決めた選手でしたね。他のメンバーは確かバトルボールに出場していましたね」
「あぁ、あの試合か。あれは笑わせてもろたな。まぁルーシッドからすれば、戦略なんかなぼでもあるんやろ?
私らが衝撃的に感じた戦略さえ、あいつからすれば数ある戦略のうちの1つにすぎひんっちゅうこっちゃろ。まぁ、この決勝でどんなけったいな試合するんか、楽しみにしとこやないか」
シヴァがそう言ってにやにやと笑った。
1年生エリアボール決勝戦開始の合図が会場に鳴り響いた。
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