魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
127 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編

バトルボール1年決勝③

しおりを挟む
「……今のは何の現象やと思う?」
「最後のは相手が作った土をそのまま利用していたわね。その分魔力はかなり抑えれてるはず…完全な対抗カウンター攻撃って感じね。まぁそれを可能にしてるのは……」
「そうや。問題はその対抗カウンター攻撃を可能にしている最初のやつや。あれは…対抗魔法カウンターマジック
いや、せやけど……」


対抗魔法カウンターマジック』とは、相手の魔法を防御魔法ディフェンスマジックとは違い、相手の魔法効果を魔法の総称のことである。
現在、対抗魔法カウンターマジックの手段として考えられる方法は3つある。

1つ目は『強制終了ターミネイション』と呼ばれる方法で、相手が使用した魔法とを生む魔法で、かつ相手よりも威力が高い魔法をぶつけて、相手の詠唱の終了条件を強制的に充足してしまう方法だ。
2つ目は『上書きオーバーライト』と呼ばれる方法で、相手が操作中の物体に操作魔法を上書きして操作を乗っ取っる方法がこれに当たる。同属の魔法を使用する点では強制終了ターミネイションと同じであるが、力業の強制終了ターミネイションに対して、より高度で繊細な魔力操作が要求される。
3つ目は『相殺ニゲイション』と呼ばれる方法で、上の2つとは逆に相手が使用した魔法とを生む魔法をぶつけて相手の魔法の威力を削ぐという方法だ。例えば火の魔法に水の魔法をぶつけて火を消すといった方法が考えられる。マリン相手にルビアが苦労していたのはこのせいである。

しかし、対抗魔法カウンターマジックは相手が何の魔法を使用したのかを理解してその対抗策を考えなければならないので、実戦で使えるかと言われると難しい部分がある。そもそも、その対抗魔法カウンターマジックを使用できなければならず、相手よりも強い魔法を使えなければならないため、誰にでも使える手段というわけでもない。
サラが対抗魔法カウンターマジック全魔法反射トータルリフレクションを得意としているのは、ルーシッドによって鍛えられた読唇術によって相手の魔法を先読みする力と、全ての魔法を使えるというその全色の魔力によるものである。逆に言えば、サラぐらいのレベルでなければ完全な対抗魔法師というのは難しいということでもある。

「確かにバトルボールは相手が使ってくる魔法はわかっているから、対抗魔法カウンターマジックを考えるのは難しくはないわ。恐らくさっきのも魔法の『上書きオーバーライト』だとは思うけど…」
フリージアは言葉を濁す。

ルーシッドが行った対抗魔法カウンターマジックはフリージアが知っているものとは少し違っていた。『上書きオーバーライト』であれば、相手の操作しているサンドボール、つまり土に操作魔法を重ね掛けして、相手よりも強い魔法力で操作を乗っ取るという方法となる。
しかし、そうだとすれば、ルーシッドが行ったような現象は起こらないはずなのである。ルーシッドは操作魔法の効果を打ち消してに戻し、その後で、マジックボールの魔法をかけ直していたように見えた。
そう、ルーシッドは土の操作魔法は別の魔法具で行っていたのだ。ということは、左の魔法具は、相手のサンドボール、つまり土を球体に形成して操作するというということなになる。


だが、そんな魔法は存在しない。


「……サリーさん、あれはあなたの予想していた通りなのかしら?」
「はい、実際に完成品として魔法具が機能しているところは私も初めて見ましたが、原理は以前にルーシィに見せてもらったものと同じだと思います。

式崩壊グラムコラプション

ルーシィはそう名付けてました」

「『式崩壊グラムコラプション』…式を壊す?」
「はい。操作魔法で動かしている物体にことで、魔法造形の式を破壊する魔法だそうです。単にぶつけるという訳じゃなく、それぞれの物体を構築している式の核になる部分といいますか、弱点になる部分みたいなのがあるらしくて、そこをピンポイントで突いて破壊するみたいな感じらしいですけど。誰でも使えるって訳じゃないみたいです。魔法回路マジックサーキットを改造した特殊な回路を使うって言ってましたから。今のところはルーシィにしか使えない技術と言ったところかと。
まぁ、魔法と言っても妖精は使役していなくて、魔力そのものを操作してぶつけているので、魔法と呼べるのかどうかは怪しい代物ですけどね」
「ルーシィさんの技術と卓越した魔力操作のセンスによって可能になっている、ルーシィさんの専用技って感じかしらね…」
「確かに無色の魔力は使ってへんけどなぁ…まぁ、あんくらいは許容範囲内か…」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について

青の雀
恋愛
ある冬の寒い日、公爵邸の門前に一人の女の子が捨てられていました。その女の子はなぜか黄金のおくるみに包まれていたのです。 公爵夫妻に娘がいなかったこともあり、本当の娘として大切に育てられてきました。年頃になり聖女認定されたので、王太子殿下の婚約者として内定されました。 ライバル公爵令嬢から、孤児だと暴かれたおかげで婚約破棄されてしまいます。 怒った女神は、養母のいる領地以外をすべて氷の国に変えてしまいます。 慌てた王国は、女神の怒りを収めようとあれやこれや手を尽くしますが、すべて裏目に出て滅びの道まっしぐらとなります。 というお話にする予定です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

処理中です...