魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

バトルボール2年決勝②

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「く、クレア?」
他のチームのメンバーも動揺を隠せない。しかし、クレアはしばらくの沈黙のあと言葉を紡ぐ。

「地中だわ。フラニーが土の操作魔法でトンネルを掘って、柱の後ろから味方を私たちの背後に送り込んだに違いないわ。みんな、私を囲むように隊列を組み直して。敵を発見したら向きを教えて。防御は私がするからみんなは恐れず攻撃して!」

隊列を組み直すクレア達を頭上から見下ろしながらフランチェスカは、ふっと笑った。


さすがはクレア、一瞬で私の作戦を見抜いたか。
だがもはや鉄壁の陣形は崩れた。
乱打戦に持ち込めば勝敗は五分五分。
そうなれば先制点を取ったこちらが有利。


「なるほど、今までとガラリと作戦を変えてきたか。姿を隠すための柱と地中に張り巡らした地下道による奇襲作戦。今までのフラニーなら考えられないような作戦やな」
「そうね。この決勝でクレアさんに当たることを見越しての作戦でしょう。さすがのクレアさんでも、どこからいつ攻撃が来るかわからない状況で、全てをカバーするのは難しいでしょうね」

そう分析していたフリージアとシヴァであったが、さすがは『絶対防御イージス』のクレアと言ったところか。クレアは、四方からの攻撃を全てとまではいかずとも的確に破壊し、できるだけ最少失点に食い止めていた。
しかし、攻撃してすぐに柱の陰に隠れたり地下に潜ったりを繰り返すヒットアンドアウェーの戦術を取る相手に対して完全に劣勢に立たされているのは、誰の目にも明らかだった。この試合をコントロールしているのは、柱の上から選手の様子を見降ろしながら、自在に地下道を作って敵の死角へと味方を送り込むフランチェスカだった。


対抗魔法カウンターマジックを、ここまでメインで使ってきた上書きオーバーライトから強制終了ターミネイションに変えたな?」
上書きオーバーライトは相手の魔法を視認しながら発動しないといけないわ。その分、魔法力さえあればほぼ完璧に相手の魔法を無力化させられるけど。でも、強制終了ターミネイションなら事前に魔法を発動しておけるから、方向を言われてすぐ照準を合わせれば間に合う……でも、強制終了ターミネイションの場合、向かってくる対象物に的確に魔法を当てないといけない。この決勝の緊張感の中、それを確実にやっているのはさすがだわ」


試合時間は残り数分となった。クレア達はわずか2点差で負けていた。だが、差はわずかに2点。ここでクレアは一発逆転をかけて一か八かの勝負に出ることにする。そして、相手チームに聞こえないように静かに味方に作戦を話した。

「みんな聞いて。時間的に次が最後の攻撃になると思うわ。狙いはフラニー。あの柱の上では上手く動けないから、しっかり狙えば当てられるはずよ。大丈夫、差は2点。4人中3人、悪くても2人当てれれば同点にまでは持ち込めるわ。勝負は一瞬。ギリギリまで自分が狙われていると気づかれないようにね」
皆はそれを聞いて静かに頷いた。

そして、クレア達がサンドボールを造形したその時だった。

ぐにゃり。

コートに立っていた、たくさんの泥の柱が形を失い崩れ出す。そしてその泥がコート全面を覆いつくすように広がっていく。

「まずい!足が!あっ!」

一瞬、泥に足を取られてよろけ足元を見てしまったあと、クレアが顔を上げるとそこにはフランチェスカが立っていた。

「勝たせてもらったわ」
フランチェスカがそう言ったとき
「クレア!後ろ!」
と、クレアチームのメンバーが叫ぶ。
フランチェスカ以外のメンバーはすでに地下の通路を通って、クレアの背後に移動していたのだ。

「……負けたわ」


こうして、フランチェスカ達の勝利でバトルボール2年決勝は幕を閉じた。
2年連続で同じ顔合わせとなった、ギリギリまで勝敗がわからない強者同士の決勝戦に対して、会場は勝者と敗者、どちらに送るでもない拍手と歓声で満たされたのだった。
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