魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
136 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編

ギルドマスター会議①

しおりを挟む
「みなさん。今回の球技戦もお疲れさまでした。では今回の球技戦における『スクールギルド選出最優秀選手』を決める会議を開きたいと思います」

円形に並んだ机に30名近くの生徒たちが座る会議室で、1人の生徒が号令をかけて会議が始まった。ここに集まっているのはディナカレア魔法学院に数多くあるスクールギルドの代表、すなわちギルドマスターたちだ。そこには風紀ギルドサーヴェイラのギルドマスターであるマーシャや、魔法剣術ギルドブレイド・アーツのフェヒター・アウトリーテ、魔法調薬ギルドファルマシーのピセア・スプルースの姿もあった。

ディナカレア魔法学院のスクールギルドは大きく4つに分けられる。
1つは『研究系ギルド』。魔法の研究や改良、新魔法の開発、新たな活用法など、魔法そのものを研究することを主な目的としたギルドである。スクールギルドの中では最も歴史が長いが、最近は魔法に関する研究はやや行き詰まりを見せていることもあり、以前ほどの人気はない。しかし、依然として一定の人気があり、ほとんどが中規模ギルドである。
2つ目は『競技系ギルド』。今回の魔法球技のような魔法を用いて行う競技を練習することを主な目的とするギルドで、今のスクールギルドの中で最も人気があるギルドである。魔法競技や魔法球技は一般の魔法使いの間でも親しまれていて、卒業後にそのままプロとして活躍する魔法使いも少なくない。対外試合も行われており大いに盛り上がるので人気が高く、中規模ギルドから大規模ギルドが大部分である。
3つ目は『生産系ギルド』。幅広く実生活で役立つ魔法の活用法を研究するギルドであり、ルーシッド達が在籍する魔法調薬ギルドファルマシーも、この生産系ギルドに当たる。実生活では最も恩恵を得ている分野ではあるが、ギルドとしての人気はあまり高くなく、ほとんどが小規模ギルドである。魔法具開発ギルドディベロッパーズは、生産系ギルドの中では最も人気が高く、中規模ギルドである。それに次いで魔法建築ギルドビルダーズも人気があり、これも中規模ギルドである。
そして4つ目が特殊ギルド。生徒会ギルドカウンサル風紀ギルドサーヴェイラがこれに当たる。また、迷宮探索ギルドエクスプローラーズなどもここに分類される。これらは学院限定のギルドであり、他のギルドのように、職業ギルドをもとにしていない特殊な形態をとるギルドである。

それらスクールギルドのギルドマスター達が集まって、必要なことを決定する場が『ギルドマスター会議』である。
会議を取り仕切るのは、自身も新魔法研究ギルドノヴァマギアのギルドマスターであり、今年度の総ギルドマスター(ギルドマスターの中から投票によって選ばれる)を務める、4年生のセシディア・ストリチカだ。
セシディアは綺麗な長い黒髪にメガネをかけた、非常に厳格そうな生徒だった。しかし、感情やその時の雰囲気に流されることなく、常に理性的なその司会進行ぶりは、総ギルドマスターとしては相応しいと言えた。

ちなみにギルドマスター会議に生徒会ギルドカウンサルは出席しないことになっている。ギルドマスター会議は、自主的に作られたスクールギルドの代表であり、生徒会ギルドカウンサルとは独立した組織体として創設されたものだ。生徒会ギルドカウンサルと歩調を合わせることもあれば、時として生徒のギルドの代表として生徒会ギルドカウンサルに意見を述べる場合もある。基本的に生徒会ギルドカウンサルと対等な立場でギルドを代表して交渉する存在である。
風紀ギルドサーヴェイラもこの会議に出席する必要はないのだが、今のギルドマスターであるマーシャは自主的に出席できる時は出席していた。しかし、あくまで一ギルドとして出席しているのであって、風紀ギルドサーヴェイラだからと言って、優遇されたり、発言権や影響力が強いという訳ではない。
ギルドマスター会議の決定はあくまで全ギルドの総意である。

「いつも通り意見がある方は挙手をどうぞ。では、はい。青魔法研究ギルドアジュールのヴィズさん」

「私としては1年5クラスのシアン・ノウブルを推薦します。今年の入学試験にも出題された、実現するための糸口すらわからなかった新魔法の1つ、『水の飛行魔法』を実現して見せたシアンさんは、最優秀選手にふさわしい秀才かと思います。それだけでなくあの子は、あのクラスの総リーダーであり、他にも複数の斬新な形状の魔法具を使用していました。青魔法研究ギルドアジュールのギルドマスターとしては、うちのギルドに在籍していてくれればというのが本音ではありますが。新魔法研究ギルドノヴァマギア魔法具開発ギルドディベロッパーズ、エリアボールギルドとしても同意なさるのでは?」

青魔法研究ギルドアジュールのギルドマスター、ヴィズ・ヴァッサーがそう述べた。ヴィズは綺麗な水色のボブヘアをした男子生徒で4年生。左目に付けた片眼鏡モノクルと、そこから垂れ下がりキラキラと輝く美しい天然魔石が印象的だった。肌の色が白く、体格もほっそりとしたやせ型で、声は物静かで、誰かを諭すような話し方をする生徒だった。

青魔法研究ギルドアジュールは研究系ギルドのうち、ディナカレア魔法学院に複数ある『魔法研究ギルド』の1つで、主に青の魔力によって行使することができる水属性魔法や氷属性魔法などを研究するギルドであり、ディナカレア魔法学院にスクールギルド制が導入された当初から存在している、最古参ギルドの1つである。

「そうですね…。仮にその全てがシアンさん一人の業績だとすればの話ですが…。シアンさんはどこのギルドでしたっけか?」
セシディアがそう尋ねると、一人の生徒がおずおずと手を挙げた。
「えっと…私たち魔法料理ギルドマギリキテクニです」

会議室に集まっているギルドマスターの中からは、少し戸惑ったようなひそひそ声が聞こえてきた。
魔法料理ギルドマギリキテクニは小規模ギルドだ。決してメジャーなギルドと言うわけではないので、そんな優れた魔法使いが在籍しているギルドとは思えなかったのだ。
当のシアン本人は、もともと戦闘が得意ではなく、いずれも水の魔法が工程に関係している料理や裁縫は趣味でもあり得意でもあるため、魔法料理ギルドマギリキテクニで楽しく活動していた。ちなみに、幼馴染のライム・グリエッタとシャルロッテ・キャルロットも同じ魔法料理ギルドマギリキテクニに在籍していた。

「……そうでしたか。ハルカさんは、ギルドマスターとしてシアンさんの活躍についてどう感じていますか?」
「は、はい。正直、今回の魔法球技での活躍に驚いてます。いや、シアンさんが優秀な生徒であることは間違いないです。テストの成績もいいですし、魔法の腕も確かです。面倒見もいいですし、統率力もあって、手先も器用ですし、料理のセンスもありますし、段取りも完璧です。ほんと、うちのギルドにはもったいないくらいの素晴らしい子です」
魔法料理ギルドマギリキテクニのギルドマスター、ハルカ・クッチーナは家庭的な雰囲気を醸し出している女生徒で、密かに男子生徒の間では人気があった。

「ただその…何といいますか…シアンさんのそれはあくまで一般的な範疇でのそれであって、今回の球技戦のような特別な才能というわけではないかと……
あ、あと、ギルドの活動の時に今回の球技戦の話になったのですが、その時彼女は『クラスに優秀な参謀がいるから心強い』と言っていました。それに球技戦に向けて魔法や魔法具の『練習をしている』って言っていました。なので多分、今回の魔法や魔法具は彼女が一人で開発したものではなくて、その『参謀』って言われてた子が関わっているんじゃないかと思います…」

「なるほど。真にすごいのはその『参謀』である可能性が高いということですか」
セシディアは特に感情を込めずにそう言った。

マーシャやピセアは、その『参謀』と呼ばれている生徒が、ほぼ間違いなくルーシッドであろうと思っていた。しかし、このギルドマスター会議において、ルーシッドという存在を広く知られることが果たして良いのか決めかねていた。それで、静観して会議の成り行きを見守ることに決めていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

美化係の聖女様

しずもり
ファンタジー
毒親の仕打ち、親友と恋人の裏切り、人生最悪のどん底でやけ酒を煽り何を思ったのか深夜に突然掃除を始めたら床がドンドンって大きく鳴った。 ゴメン、五月蝿かった? 掃除は止めにしよう、そう思った瞬間、床に現れた円のようなものが光りだした。 気づいたらゴミと掃除道具と一緒に何故か森の中。 地面には気を失う前に見た円が直径3メートルぐらいの大きさで光ってる。 何コレ、どうすればいい? 一方、魔王復活の兆しに聖女を召喚した王城では召喚された筈の聖女の姿が見当たらない。 召喚した手応えはあったものの目の前の床に描かれた魔法陣には誰も居ない。 もしかして召喚先を間違えた? 魔力の残滓で聖女が召喚された場所に辿り着いてみれば聖女はおらず。 それでも魔王復活は待ってはくれない。 それならば聖女を探しながら魔王討伐の旅へ見切り発車で旅する第二王子一行。 「もしかしたら聖女様はいきなり召喚された事にお怒りなのかも知れない、、、、。」 「いや、もしかしたら健気な聖女様は我らの足手まといにならぬ様に一人で浄化の旅をしているのかも知れません。」 「己の使命を理解し果敢に試練に立ち向かう聖女様を早く見つけださねばなりません。」 「もしかして聖女様、自分が聖女って気づいて無いんじゃない?」 「「「・・・・・・・・。」」」 何だかよく分からない状況下で主人公が聖女の自覚が無いまま『異世界に来てしまった理由』を探してフラリと旅をする。 ここ、結構汚れていません?ちょっと掃除しますから待ってて下さいね。掃除好きの聖女は無自覚浄化の旅になっている事にいつ気付くのか? そして聖女を追って旅する第二王子一行と果たして出会う事はあるのか!? 魔王はどこに? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 不定期更新になります。 主人公は自分が聖女だとは気づいていません。 恋愛要素薄めです。 なんちゃって異世界の独自設定になります。 誤字脱字は見つけ次第修正する予定です。 R指定は無しの予定です。

精霊士養成学園の四義姉妹

霧島まるは
ファンタジー
精霊士養成学園への入園条件は三つ。  1.学業が優秀な平民であること  2.精霊教神官の推薦を得られること  3.中級以上の精霊の友人であること ※なお、特待生に関してはこの限りではない 全寮制のこの学園には、部屋姉妹(スミウ)という強制的な一蓮托生制度があった。 四人部屋の中の一人でも、素行不良や成績不振で進級が認められない場合、部屋の全員が退園になるというものである。 十歳の少女キロヒはそんな情報を知るはずもなく、右往左往しながらも、どうにか学園にたどり着き、のこのこと「屋根裏部屋」の扉を開けてしまった。 そこには、既に三人の少女がいて── この物語は、波風の立たない穏やかな人生を送りたいと思っていた少女キロヒと、個性的な部屋姉妹(スミウ)たちの成長の物語である。 ※読んでくださる方へ  基本、寮と学園生活。たまに戦闘があるかも、な物語です。  人を理不尽に罵倒する言葉が出ます。  あなたの苦手な生き物の姿に似た精霊が出る場合があります。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...