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第11章 クラス対抗魔法球技戦編
閉会式②
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「……ということになってしまったわ」
閉会式の前に、生徒会長のフリージア・ウィステリアは、総ギルドマスターのセシディア・ストリチカと風紀ギルド長のマーシャ・アッシュクロフトと会っていた。
「……昨日のマスター会議は一体何だったのかしら」
セシディアはため息をついた。
「ごめんなさいね。完全に、この結果を予想していなかった私のミスだわ」
「仕方ないさ。まさかここまでの反響があったとはねぇ」
フリージアを慰めるようにマーシャが言った。
「まぁ、私も考えてなかったから同罪だわ。で、どうするつもりなの?」
そうセシディアが尋ねると、フリージアは話し始めた。
「第5位は、1年5クラス。ミスズ・シグレさんです!」
会場からは大きな拍手が沸き起こった。
「……え?わ、わたし?」
自分の名前が呼ばれるなどとは思ってもいなかったミスズは、きょとんとしてそう言った。
「そうだよ、スズちゃんだよ!すごーい!」
「えー、でも私はほとんど魔法使ってないけど…い、いいのかしら…?」
「むしろそこが評価されたんじゃないかな」
戸惑うミスズに、ソウジがそう言って微笑みかけた。
「ミスズさん、ステージ上におあがり下さい」
そう言われてミスズは少し恥ずかしそうにしながら、ステージに小走りで向かう。
「コメントとしては、『バトルボールの新たな戦法を見せてくれた。これこそが自分が思い描いていたバトルボールだと思えるような試合を見せてもらった。魔法力が相手より高くなくても、身体能力で相手に勝ることができるのだと知って、勇気をもらった。相手の攻撃を縫うようにして背後から攻撃していく様がかっこよかった。小さくて走り回る様子が可愛かった』などなど多数寄せられています」
「最後のは余計よ!」
ミスズが突っ込むと会場から笑いが起こった。
「では、ミスズさんから今のお気持ちをどうぞ」
「えーっと…んー、まぁ、ありがとうございます。でも、今回の勝利は私だけのものじゃないわ。試合で一緒に戦った仲間もそうだし、何と言っても一番感謝したいのは、そうね、魔法具を準備してくれた友達ね。私は体を動かすのは得意だけど、エイムも魔法詠唱も得意じゃないの。でも、そんな私のために特注で魔法具を作ってくれたわ。なんか、詳しくは知らないけど、普通なら魔法具ってもっと重くてかさばるんでしょ?でも作ってくれた魔法具は軽くて、装備して走り回ってもひとつも疲れなかったわ。全て私のイメージ通りの戦い方ができたわ。だから、この受賞はクラスのみんなで分かち合うことにするわ」
ミスズのその言葉に会場から大きな拍手が沸き起こった。
しかし、昨日の会議に出席したギルドマスター達は、ミスズの発言を聞いて色々と考えを巡らせていた。
ミスズは『魔法具を準備してくれた友達』と言った。
恐らくその友達と言うのが、昨日の会議で言うところの『参謀』なのだろう。
いや、しかし、魔法具を準備した者と、新魔法を考えた者、作戦を考えた者が別であるという可能性は捨てきれない。
本人が新魔法、というかここディナカレアでは知られていない古代魔法のようなものを知っており、それをその友達が魔法具として再現したという可能性もある。
それでも、一般的に旋律が判明していない魔法の演奏装置を作れるのだから、すごいことに変わりはないのだが。
どちらにしろ、参謀は1人と考えるより、複数人の技術集団だと考えるセシディアの意見が的を得ているように思える。
そんなことを考えているうちに、会場内は次の優秀選手の発表へと移っていた。
「続いては第4位です。第4位も1年5クラスから、ルビア・スカーレットさんです。ルビアさん、ステージにお越しください」
ルビアは自分の名前が出たことに少し驚いたように、その場から動こうとしなかった。隣にいたルーシッドに何かを言われて促されたあと、渋々と言った感じでステージへと向かっていった。
「ルビアさんにも多くのコメントが寄せられています。『ストライクボール、バトルボールとマルチにこなすのはさすがだと思った。見たことがない攻撃魔法を使っていて驚いた。両手から火の弾のようなものを放つ魔法がかっこよかった』などなど寄せられています。ルビアさんから一言いただけますか」
ルビアは渋々と言った感じで口を開いた。
「……今回、私たちのクラスは一丸となって、チームとしてこの球技戦に臨み、そして勝利しました。私もチームの中での自分の役割を果たしたに過ぎません。一人が目立って活躍するのではなく、みんなが活躍できるチーム作りをしてくれた友人たちのお陰です。ですから、今回私はそこまで活躍したとは思っていません。なので、この賞は、少し不本意というか、今回の球技戦のみの評価ではないように思います。
……ですが、まぁ、今回の球技戦において、一番目立ってないけど、一番活躍してくれた友人の意向もあるので、その友人の分として代わりに受け取ることにします。どうもありがとうございました」
素直に喜びを表現しない、ルビアらしい斜に構えたようなコメントに、会場内からは少し苦笑いが起きる。しかし、それもまた『孤高の天才ルビア』と言った感じで、ルビアらしいというのが多くの人が抱いた印象だろう。
ルビアが入学試験の模擬試験で優勝したのに総代を辞退したことは、学院全員の知るところだ。しかし、その理由を知らない者たちは、入学式でスピーチをするのが嫌だったからではないかとか、家の事情か何かで姿を晒すことができないのではないか、などの憶測が広がっていた。
そのような『謎多き天才魔法使い』という立ち位置も、ルビアの人気に拍車をかける要因となっていた。
しかし、ステージを後にするルビアには惜しみない拍手が送られた。
一番目立っていないけど、一番活躍してくれた友人であるルーシッドは、ステージから降りてきたルビアを笑顔で迎え、ルビアは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「それでは続いて第3位です。1年5クラス、シアン・ノウブルさんです。ステージにお越しください」
会場から大きな拍手が沸き起こった。
「えっ、わっ、わたし?わたしなの?」
シアンが動揺して慌てふためく。隣を見ると、幼馴染のライムとシャルロッテがシアンの方を向いて、満面の笑みで割れんばかりの拍手をしていた。
シアンがステージに上がると、投票用紙に記入されたコメントをフリージアが読み上げる。
「よせられたコメントとしては、『そんな戦い方があったのかと思うような斬新な試合で面白すぎた、今回の魔法球技戦で一番面白かった試合。なんと言ってもあの水の飛行魔法。飛行魔法なのにその場で静止していた、あれはどういう魔法なのか。天から戦場を見下ろして一方的に攻撃する様はまさに水の女神。水のしぶきで虹ができていた、虹を背負って降臨する様子はまさに水の女神』といった内容でした」
シアンがライムたちの方を向いて、『あなたたちの仕業ね』という風に恥ずかしそうに睨みつける。シャルロッテはぶんぶんと首を振ったが、ライムは目線を逸らした。
「では、シアンさん。今のお気持ちをお願いします」
「えっと……このような賞をもらえて、大変光栄に存じます。私はあまり対戦するとかそういうのが得意ではないので、今まで魔法球技は基本的に見る専門でしたので。なので、今回の球技戦で仲間と共に戦ったことは今までにない楽しい経験でした」
そこでシアンは少し口をつむぐ。
そしてまた話し始める。
「でも、そんな素晴らしい経験をすることができたのは、私のことを、そしてクラスのみんなのことを陰ながら支えてくれた大切な友達のおかげです。本人から言わなくていいと言われましたが、やっぱり言わずにはいられません。
……ごめんね、ルーシィ。でも、私はやっぱりみんなに知ってほしい。
コメントにもあった『水の飛行魔法』、魔法名『アクアウィング』ですが、これは私が作った魔法ではありません。これは、同じクラスのルーシッド・リムピッドさんが開発したものです」
閉会式の前に、生徒会長のフリージア・ウィステリアは、総ギルドマスターのセシディア・ストリチカと風紀ギルド長のマーシャ・アッシュクロフトと会っていた。
「……昨日のマスター会議は一体何だったのかしら」
セシディアはため息をついた。
「ごめんなさいね。完全に、この結果を予想していなかった私のミスだわ」
「仕方ないさ。まさかここまでの反響があったとはねぇ」
フリージアを慰めるようにマーシャが言った。
「まぁ、私も考えてなかったから同罪だわ。で、どうするつもりなの?」
そうセシディアが尋ねると、フリージアは話し始めた。
「第5位は、1年5クラス。ミスズ・シグレさんです!」
会場からは大きな拍手が沸き起こった。
「……え?わ、わたし?」
自分の名前が呼ばれるなどとは思ってもいなかったミスズは、きょとんとしてそう言った。
「そうだよ、スズちゃんだよ!すごーい!」
「えー、でも私はほとんど魔法使ってないけど…い、いいのかしら…?」
「むしろそこが評価されたんじゃないかな」
戸惑うミスズに、ソウジがそう言って微笑みかけた。
「ミスズさん、ステージ上におあがり下さい」
そう言われてミスズは少し恥ずかしそうにしながら、ステージに小走りで向かう。
「コメントとしては、『バトルボールの新たな戦法を見せてくれた。これこそが自分が思い描いていたバトルボールだと思えるような試合を見せてもらった。魔法力が相手より高くなくても、身体能力で相手に勝ることができるのだと知って、勇気をもらった。相手の攻撃を縫うようにして背後から攻撃していく様がかっこよかった。小さくて走り回る様子が可愛かった』などなど多数寄せられています」
「最後のは余計よ!」
ミスズが突っ込むと会場から笑いが起こった。
「では、ミスズさんから今のお気持ちをどうぞ」
「えーっと…んー、まぁ、ありがとうございます。でも、今回の勝利は私だけのものじゃないわ。試合で一緒に戦った仲間もそうだし、何と言っても一番感謝したいのは、そうね、魔法具を準備してくれた友達ね。私は体を動かすのは得意だけど、エイムも魔法詠唱も得意じゃないの。でも、そんな私のために特注で魔法具を作ってくれたわ。なんか、詳しくは知らないけど、普通なら魔法具ってもっと重くてかさばるんでしょ?でも作ってくれた魔法具は軽くて、装備して走り回ってもひとつも疲れなかったわ。全て私のイメージ通りの戦い方ができたわ。だから、この受賞はクラスのみんなで分かち合うことにするわ」
ミスズのその言葉に会場から大きな拍手が沸き起こった。
しかし、昨日の会議に出席したギルドマスター達は、ミスズの発言を聞いて色々と考えを巡らせていた。
ミスズは『魔法具を準備してくれた友達』と言った。
恐らくその友達と言うのが、昨日の会議で言うところの『参謀』なのだろう。
いや、しかし、魔法具を準備した者と、新魔法を考えた者、作戦を考えた者が別であるという可能性は捨てきれない。
本人が新魔法、というかここディナカレアでは知られていない古代魔法のようなものを知っており、それをその友達が魔法具として再現したという可能性もある。
それでも、一般的に旋律が判明していない魔法の演奏装置を作れるのだから、すごいことに変わりはないのだが。
どちらにしろ、参謀は1人と考えるより、複数人の技術集団だと考えるセシディアの意見が的を得ているように思える。
そんなことを考えているうちに、会場内は次の優秀選手の発表へと移っていた。
「続いては第4位です。第4位も1年5クラスから、ルビア・スカーレットさんです。ルビアさん、ステージにお越しください」
ルビアは自分の名前が出たことに少し驚いたように、その場から動こうとしなかった。隣にいたルーシッドに何かを言われて促されたあと、渋々と言った感じでステージへと向かっていった。
「ルビアさんにも多くのコメントが寄せられています。『ストライクボール、バトルボールとマルチにこなすのはさすがだと思った。見たことがない攻撃魔法を使っていて驚いた。両手から火の弾のようなものを放つ魔法がかっこよかった』などなど寄せられています。ルビアさんから一言いただけますか」
ルビアは渋々と言った感じで口を開いた。
「……今回、私たちのクラスは一丸となって、チームとしてこの球技戦に臨み、そして勝利しました。私もチームの中での自分の役割を果たしたに過ぎません。一人が目立って活躍するのではなく、みんなが活躍できるチーム作りをしてくれた友人たちのお陰です。ですから、今回私はそこまで活躍したとは思っていません。なので、この賞は、少し不本意というか、今回の球技戦のみの評価ではないように思います。
……ですが、まぁ、今回の球技戦において、一番目立ってないけど、一番活躍してくれた友人の意向もあるので、その友人の分として代わりに受け取ることにします。どうもありがとうございました」
素直に喜びを表現しない、ルビアらしい斜に構えたようなコメントに、会場内からは少し苦笑いが起きる。しかし、それもまた『孤高の天才ルビア』と言った感じで、ルビアらしいというのが多くの人が抱いた印象だろう。
ルビアが入学試験の模擬試験で優勝したのに総代を辞退したことは、学院全員の知るところだ。しかし、その理由を知らない者たちは、入学式でスピーチをするのが嫌だったからではないかとか、家の事情か何かで姿を晒すことができないのではないか、などの憶測が広がっていた。
そのような『謎多き天才魔法使い』という立ち位置も、ルビアの人気に拍車をかける要因となっていた。
しかし、ステージを後にするルビアには惜しみない拍手が送られた。
一番目立っていないけど、一番活躍してくれた友人であるルーシッドは、ステージから降りてきたルビアを笑顔で迎え、ルビアは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「それでは続いて第3位です。1年5クラス、シアン・ノウブルさんです。ステージにお越しください」
会場から大きな拍手が沸き起こった。
「えっ、わっ、わたし?わたしなの?」
シアンが動揺して慌てふためく。隣を見ると、幼馴染のライムとシャルロッテがシアンの方を向いて、満面の笑みで割れんばかりの拍手をしていた。
シアンがステージに上がると、投票用紙に記入されたコメントをフリージアが読み上げる。
「よせられたコメントとしては、『そんな戦い方があったのかと思うような斬新な試合で面白すぎた、今回の魔法球技戦で一番面白かった試合。なんと言ってもあの水の飛行魔法。飛行魔法なのにその場で静止していた、あれはどういう魔法なのか。天から戦場を見下ろして一方的に攻撃する様はまさに水の女神。水のしぶきで虹ができていた、虹を背負って降臨する様子はまさに水の女神』といった内容でした」
シアンがライムたちの方を向いて、『あなたたちの仕業ね』という風に恥ずかしそうに睨みつける。シャルロッテはぶんぶんと首を振ったが、ライムは目線を逸らした。
「では、シアンさん。今のお気持ちをお願いします」
「えっと……このような賞をもらえて、大変光栄に存じます。私はあまり対戦するとかそういうのが得意ではないので、今まで魔法球技は基本的に見る専門でしたので。なので、今回の球技戦で仲間と共に戦ったことは今までにない楽しい経験でした」
そこでシアンは少し口をつむぐ。
そしてまた話し始める。
「でも、そんな素晴らしい経験をすることができたのは、私のことを、そしてクラスのみんなのことを陰ながら支えてくれた大切な友達のおかげです。本人から言わなくていいと言われましたが、やっぱり言わずにはいられません。
……ごめんね、ルーシィ。でも、私はやっぱりみんなに知ってほしい。
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