145 / 153
第11章 クラス対抗魔法球技戦編
閉会式③
しおりを挟む
「もし、優秀選手に選ばれてコメントを求められても、私の名前は出さないようにしてね」
閉会式が始まる時間となり、1年5クラスの生徒たちも全員が会場に集まっていた。自分たちのクラスから誰が優秀選手に選出されそうかという話題で盛り上がっていた時、ルーシッドが不意にそう言ってきたのだ。
「え、ルーシィ、それどういうこと?」
そう言われてシアンはその意図がわからずそう聞き返してしまったのだった。
「私の名前出したら誰かがケチを付けてくるかも知れないよ。もちろん今回のは全部れっきとした魔法だけど、でも、色々と一般的じゃない方法を使ったから、怪しまれちゃうかもしれない。そうなったら面倒くさいでしょ?せっかく優勝できたのに」
「でも、それじゃあルーシィの功績が!あんなに陰で頑張ってくれたのに!」
そう言うと、クラスの全員が、そうだそうだと口々に言って同意した。
「うん、みんなありがとう。その気持ちだけで十分だよ。それが私にとっては何よりの賞なんだ。魔法が使えない役立たずだと親からも周りからも言われて育ってきた私が、みんなの役に立てた。こんなに嬉しいことはないよ。だから、このまま変な横やりを入れられたくないんだ」
「水の飛行魔法を開発したのは、ルーシッド・リムピッドさんです」
会場がどよめく。しかし、一番動揺を隠せなかったのはルーシッドだったであろう。
「それだけではありません。この魔法球技で使用した魔法や魔法具は全てルーシィの手によるものです。今回、一緒に球技戦の準備をしていて改めて思いました。ルーシィの魔法に関する知識と技術は、1年生のレベルを遥かに超えている。いや、今後私たちがこの学院でどんなことを学んでいくのか詳しいことはわかりませんが、多分ルーシィの魔法理論は多分そういった次元ではないと思いました。私はそこまで魔法や魔法具に詳しくないですけど、でも、何となく今回私たちが使用した魔法や魔法具が、一般的に使用されているものと比べて明らかに高性能で異質なものだということは私にも分かりました。
中にはそんなすごい人がクラスにいるなら勝てて当然とか、ずるいとか思う人もいるかも知れませんが、でもみなさん知っての通りルーシィはFランクです。皆さんが落ちこぼれだとか、無能だと言って排除しようとした者です。皆さんが私と同じ立場だったとしたら、ルーシィと共に戦えましたか。
いえ…私も大きな口は叩けません。かつて自分自身もそのように感じていたからです。そのことを今は深く恥じています。そして、今はルーシィと共に仕事をし、この勝利をつかめたことを心から誇りに思います。人の能力は魔力のランクでは正確には測れません。それぞれが持つ個性を認め合い、補い合い、助け合うことで、人はさらに強くなれます。私の今回の活躍もその結果にすぎません。
ルーシィ、そして1年5クラスのみんな。
だからこれは、みんなの賞よ!」
何かの演説かのように語り切ったシアンは右手を頭上に高く掲げた。そして、ステージをあとにした。会場のほとんどは呆気にとられていたが、会場のあちらこちらで拍手が起こる。ルーシィのことを知る者たちだろう。それにつられて徐々に拍手が広がっていった。
自分たちのクラスが集まっている場所に戻ったシアンは、ルーシッドのところに走り寄って申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめん…やっぱり私には黙って自分の手柄にすることなんて出来なかった」
「……仕方ないなぁ…アンはやっぱり優しいね」
そう言って2人は笑いあった。
その様子を周りで見ていた他のクラスメイトが走り寄ってきた。そしてフェリカはルーシッドに、ライムとシャルロッテはシアンにそれぞれ抱き着いた。二人は少し困ったような顔をしたが、満更でもない感じで笑った。
だが、ルーシッドの少し困った表情と、シアンの困った表情は意味が少し違っているように思えた。
閉会式が始まる時間となり、1年5クラスの生徒たちも全員が会場に集まっていた。自分たちのクラスから誰が優秀選手に選出されそうかという話題で盛り上がっていた時、ルーシッドが不意にそう言ってきたのだ。
「え、ルーシィ、それどういうこと?」
そう言われてシアンはその意図がわからずそう聞き返してしまったのだった。
「私の名前出したら誰かがケチを付けてくるかも知れないよ。もちろん今回のは全部れっきとした魔法だけど、でも、色々と一般的じゃない方法を使ったから、怪しまれちゃうかもしれない。そうなったら面倒くさいでしょ?せっかく優勝できたのに」
「でも、それじゃあルーシィの功績が!あんなに陰で頑張ってくれたのに!」
そう言うと、クラスの全員が、そうだそうだと口々に言って同意した。
「うん、みんなありがとう。その気持ちだけで十分だよ。それが私にとっては何よりの賞なんだ。魔法が使えない役立たずだと親からも周りからも言われて育ってきた私が、みんなの役に立てた。こんなに嬉しいことはないよ。だから、このまま変な横やりを入れられたくないんだ」
「水の飛行魔法を開発したのは、ルーシッド・リムピッドさんです」
会場がどよめく。しかし、一番動揺を隠せなかったのはルーシッドだったであろう。
「それだけではありません。この魔法球技で使用した魔法や魔法具は全てルーシィの手によるものです。今回、一緒に球技戦の準備をしていて改めて思いました。ルーシィの魔法に関する知識と技術は、1年生のレベルを遥かに超えている。いや、今後私たちがこの学院でどんなことを学んでいくのか詳しいことはわかりませんが、多分ルーシィの魔法理論は多分そういった次元ではないと思いました。私はそこまで魔法や魔法具に詳しくないですけど、でも、何となく今回私たちが使用した魔法や魔法具が、一般的に使用されているものと比べて明らかに高性能で異質なものだということは私にも分かりました。
中にはそんなすごい人がクラスにいるなら勝てて当然とか、ずるいとか思う人もいるかも知れませんが、でもみなさん知っての通りルーシィはFランクです。皆さんが落ちこぼれだとか、無能だと言って排除しようとした者です。皆さんが私と同じ立場だったとしたら、ルーシィと共に戦えましたか。
いえ…私も大きな口は叩けません。かつて自分自身もそのように感じていたからです。そのことを今は深く恥じています。そして、今はルーシィと共に仕事をし、この勝利をつかめたことを心から誇りに思います。人の能力は魔力のランクでは正確には測れません。それぞれが持つ個性を認め合い、補い合い、助け合うことで、人はさらに強くなれます。私の今回の活躍もその結果にすぎません。
ルーシィ、そして1年5クラスのみんな。
だからこれは、みんなの賞よ!」
何かの演説かのように語り切ったシアンは右手を頭上に高く掲げた。そして、ステージをあとにした。会場のほとんどは呆気にとられていたが、会場のあちらこちらで拍手が起こる。ルーシィのことを知る者たちだろう。それにつられて徐々に拍手が広がっていった。
自分たちのクラスが集まっている場所に戻ったシアンは、ルーシッドのところに走り寄って申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめん…やっぱり私には黙って自分の手柄にすることなんて出来なかった」
「……仕方ないなぁ…アンはやっぱり優しいね」
そう言って2人は笑いあった。
その様子を周りで見ていた他のクラスメイトが走り寄ってきた。そしてフェリカはルーシッドに、ライムとシャルロッテはシアンにそれぞれ抱き着いた。二人は少し困ったような顔をしたが、満更でもない感じで笑った。
だが、ルーシッドの少し困った表情と、シアンの困った表情は意味が少し違っているように思えた。
0
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる