魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

閉会式③

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「もし、優秀選手に選ばれてコメントを求められても、私の名前は出さないようにしてね」

閉会式が始まる時間となり、1年5クラスの生徒たちも全員が会場に集まっていた。自分たちのクラスから誰が優秀選手に選出されそうかという話題で盛り上がっていた時、ルーシッドが不意にそう言ってきたのだ。

「え、ルーシィ、それどういうこと?」
そう言われてシアンはその意図がわからずそう聞き返してしまったのだった。

「私の名前出したら誰かがケチを付けてくるかも知れないよ。もちろん今回のは全部れっきとした魔法だけど、でも、色々と方法を使ったから、怪しまれちゃうかもしれない。そうなったら面倒くさいでしょ?せっかく優勝できたのに」

「でも、それじゃあルーシィの功績が!あんなに陰で頑張ってくれたのに!」
そう言うと、クラスの全員が、そうだそうだと口々に言って同意した。
「うん、みんなありがとう。その気持ちだけで十分だよ。それが私にとっては何よりの賞なんだ。使だと親からも周りからも言われて育ってきた私が、みんなの役に立てた。こんなに嬉しいことはないよ。だから、このまま変な横やりを入れられたくないんだ」



「水の飛行魔法を開発したのは、ルーシッド・リムピッドさんです」

会場がどよめく。しかし、一番動揺を隠せなかったのはルーシッドだったであろう。

「それだけではありません。この魔法球技で使用した魔法や魔法具は全てルーシィの手によるものです。今回、一緒に球技戦の準備をしていて改めて思いました。ルーシィの魔法に関する知識と技術は、1年生のレベルを遥かに超えている。いや、今後私たちがこの学院でどんなことを学んでいくのか詳しいことはわかりませんが、多分ルーシィの魔法理論は多分そういった次元ではないと思いました。私はそこまで魔法や魔法具に詳しくないですけど、でも、何となく今回私たちが使用した魔法や魔法具が、一般的に使用されているものと比べて明らかに高性能で異質なものだということは私にも分かりました。
中にはそんなすごい人がクラスにいるなら勝てて当然とか、ずるいとか思う人もいるかも知れませんが、でもみなさん知っての通りルーシィはFランクです。皆さんが落ちこぼれだとか、無能だと言って排除しようとした者です。皆さんが私と同じ立場だったとしたら、ルーシィと共に戦えましたか。

いえ…私も大きな口は叩けません。かつて自分自身もそのように感じていたからです。そのことを今は深く恥じています。そして、今はルーシィと共に仕事をし、この勝利をつかめたことを心から誇りに思います。人の能力は魔力のランクでは正確には測れません。それぞれが持つ個性を認め合い、補い合い、助け合うことで、人はさらに強くなれます。私の今回の活躍もその結果にすぎません。

ルーシィ、そして1年5クラスのみんな。

だからこれは、みんなの賞よ!」

何かの演説かのように語り切ったシアンは右手を頭上に高く掲げた。そして、ステージをあとにした。会場のほとんどは呆気にとられていたが、会場のあちらこちらで拍手が起こる。ルーシィのことを知る者たちだろう。それにつられて徐々に拍手が広がっていった。

自分たちのクラスが集まっている場所に戻ったシアンは、ルーシッドのところに走り寄って申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめん…やっぱり私には黙って自分の手柄にすることなんて出来なかった」

「……仕方ないなぁ…アンはやっぱり優しいね」

そう言って2人は笑いあった。
その様子を周りで見ていた他のクラスメイトが走り寄ってきた。そしてフェリカはルーシッドに、ライムとシャルロッテはシアンにそれぞれ抱き着いた。二人は少し困ったような顔をしたが、満更でもない感じで笑った。

だが、ルーシッドの少し困った表情と、シアンの困った表情は意味が少し違っているように思えた。
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