魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第11章 クラス対抗魔法球技戦編

閉会式④

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会場のいたるところから、ざわざわと話声が聞こえてくる。
ルーシッド・リムピッドという魔法学院にとって『異質』な存在については、ほとんど全ての生徒が知っていた。
今までは基本的にその『無色の魔力』という自分たちが知らない力を使うゆえに、、ということで認められていた感があった。
しかし、今のシアンのコメントで、ついにルーシッドの真の姿が明るみに出たのだ。

仮に、自分たちがルーシッドと同じ土俵に立って勝負したとしても、ルーシッドには全く歯が立たないということだ。
ルーシッドは無色の魔力という謎の力を使わずとも、その知力だけで、自分たちを圧倒するだけの力を持っているということだ。

特に、『参謀探し』に躍起になっていたギルドマスター達は、慌てたように他のギルドマスターを探していた。

「おほん、では続いて第2位です」
優秀選手の発表をしていた生徒会長カウンサルマスターのフリージアは、会場が少し落ち着くのを待って、咳払いをしてから次の選手の発表に戻った。

「第2位も1年5クラス。フェリカ・シャルトリューさんです」


「えっ…うそ…わ、わたし?私が2位?」
フェリカは自分が選ばれるとは全く思ってもみなかったので、きょとんとした。
「え~、1位だと思ったのにー。まぁでもやったじゃない、リカ~」
「うむ」
右肩に掴まっていたヒルダ(が依り代化している人形)が、ポンポンと肩を叩き、腕に抱かれているマリー(が依り代化している人形)はパチパチと拍手をした。
「いやいや、でも、あれ全部マリーのお陰だから。私、なんにもしてないよ…」
「何を言っておるんじゃ。契約している妖精の手柄は契約者本人の手柄じゃ。それは、純色の奴らとて同じじゃろうて。お前は神位の妖精の契約者じゃぞ。自信を持て、胸を張るのじゃ。ほれ、呼ばれとるぞ、とっとと行かんか」

「フェリカさんにも非常にたくさんのコメントが寄せられていました。その一部をお伝えしますと、『今大会に出場している選手の中では群を抜いている強さだったと感じた。正直、純色の契約者よりも強いんじゃないかと思った。見たこともない魔法だったが、とにかく強かった。なぜ今まで注目されていなかったのかが不思議なくらいに強かった。一族で継承している固有魔法の類いなのかも知れないが、決勝戦で具現化してみせた妖精のようなものが何なのかがものすごく気になる』などのコメントがありました。フェリカさん、答えられないところなどは答えなくてもいいですが、今のお気持ちをどうぞ」

「えっと、あの、はい……あの、きっと皆さんの中にはDランクなのになんで?って思っている人も多いと思います。私はその、魔法に関しては、その、ほんと、皆さんの想像通り全然で…。しかもルーシィみたいに知識や技術があるわけでもないし。しかも、単に魔力が低いだけじゃなくて、
で、詠唱によって分解することもできないし、私の混色に対応する妖精もいないしで、この学院に入るまではろくな魔法は一つも使えませんでした。
でも、そんな私を受け入れてくれた友達がいました。そして、その友達のお陰で私はと契約することができたんです。だから今回の結果は、その友達と、そして私と契約してくれてるのお陰なんです」

そう言うと、フェリカは音の魔法の魔法具に声が入らないように小声で言った。
「ごめん、マリー、ヒルダ、みんなに姿見せてくれる?」


「えー、黙って自分の手柄にしておけばいーのにー」
「まぁまぁ、そこが我らの主の良いところじゃて」

「おい…今、契約しているって言わなかったか?」
赤の純色の魔法使い、レイチェルが隣にいたクレアにそう尋ねた。
「そうね、確かに言ったわね。あの戦いの感じだと、私たちと同じ契約者だろうとは思っていたけど、まさか二体同時とは…まぁ、それ自体はあり得ない話ではないけど…でも、あの感じからすると恐らく契約している妖精は……いや、でもさすがにそれはあり得ない……」

ちなみに昨年の魔法球技戦の優秀選手は2位がレイチェルで3位がクレアだった。昨年はその圧倒的な力を見せつけて2種目で優勝を果たしたこともあり、多くの票を集めた2人だったが、今回は雪辱を誓うフランチェスカやサラが率いるクラスに負けてしまったことや、ルーシッドたちのクラスの活躍があまりにも鮮烈すぎたので、自分たちが上位に入ることはまずないだろうと考え、閉会式を外野的に傍観していた。

クレアがレイチェルにそう答えているうちに、フェリカが持っていた依り代の人形はただの人形に戻り、フェリカの両隣にマリーとヒルダが姿を現した。

「なっ、なんだと……あれは……!」
「はっきりと目に見える形をとって顕現したわ…やっぱりあの子が契約を交わしたのは神位の妖精…」


「おほんっ、えー、我は神位の妖精ヴァンパイアである。今は、この者、フェリカ・シャルトリューの使い魔ファミリアじゃ。先の球技戦とやらでは、我が主の体を依り代として戦わせてもらった」
「こんにちは~。私は神位の妖精オーディンよ~。いつか、私と対峙することになった時はよろしくね~」
ヒルダは小さく手を振った。
会場がざわつく中、マリーは言葉を続けた。

「ちなみにだがな…

今回の件によって、我が主のことをDランクなのに神位の妖精と契約できてズルい、などと考えるような者がおるようなら、一つ言っておこう。
妖精にとって魔力のランクなど、はっきり言ってどうでも良いことだ。そんなモノを気にしておるのは、他ならぬその縛りを作った人間たちだけだ。
確かに、我と主が出会ったのは偶然もあったであろう。仲間の助けもあったであろう。その点では幸運を掴んだのかも知れん。
しかしじゃ、誤解せぬよう言っておくが、仮に出会えたとて、契約を交わしてやるかどうかはわからんぞ。そして、我々はお前たちの言うAランクだのSランクだのだからと言って、ほいほいと契約するわけではない。ランクが高かろうが何だろうが、そいつが気に入らなければ契約は交わさん。逆にDでもEでも、そいつのことが気に入れば契約するじゃろう。我も、そして、オーディンも、我が主、そして大切な友であるリカのことを気に入ったから契約したまでだ。

ゆえに、我が主のことを悪く言うやつがいれば、我ら神位の妖精を敵に回すものと思え。良いな?」

会場がその威圧感で静まり返ったその時だった。
「ゆっ、ゆゆっ、優秀選手選出のスピーチで、みんなを脅してどうするのおぉぉっ!?」
顔を真っ赤にして、隣にいるマリーに突っ込みを入れるフェリカ。

「……あっ、すまん、つい」
「みんな怖がってるじゃん!これからの私の学院生活のことも考えてよね!?」
その横で終始笑いをこらえていたヒルダがついに笑い出して言った。
「あっはははっ!ウケる、超ウケる~。いいじゃんいいじゃん、もう女王様キャラで行こうよ、来たやつ全員ブチのめしてやるわよ~」
「おい、それは女王じゃなくて魔王じゃないか?」
「どっちも最悪だよ!もうっ、2人とも人形に戻って!そしてお口を閉じる!あぁ、もう失敗した!出さなきゃ良かったよ!
しっ、失礼しましたー!」

そう言って、そそくさとステージを後にするフェリカ。その最後の掛け合いが面白くて、会場からは笑いが起こった。もはや、マリーの凄みはフェリカの突っ込みを誘発するための前振りだったのではないかと思えるくらいだった。


「なかなかに衝撃的なスピーチだったわね…」
「うん…今の世界に神位の妖精の契約者って他にいるんだっけ?」
レイチェルとクレアのそばにいたゲイリーとオリガが2人に話しかける。
「聞いたことがないわ…契約可能な妖精は最高でも高位の妖精どまりだというのが定説だと思うわ」
「私も伝承でしか聞いたことがないね。でもあの感じだと、神位の妖精はなかなかに個性的なようだから、ヴァンパイアが言っていたように、特殊な条件が揃って気に入られれば契約できるというケースが逆にあるのかも知れないね。どちらにしろ相当なレアケースだろうけど…。もしかしたらこの世界のどこかに別の神位の妖精の契約者もいるのかも知れないね。まったく、世界は本当に広いね」
そう言うと、レイチェルは楽しそうに笑いながら肩をすくめた。

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