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プレゼント2
しおりを挟むどさくさにまぎれて、万年筆は私の物となったようで、私室に戻った後もらった万年筆を取り出し、箱も大切に片付けた。
いいや。いただいてしまおう。
夕食に向かうときは、完全に浮かれきっていた。
箱すらも美しい。本体のペンは言わずもがなだ。見ればみるほど美術品のような美しさだ。
本当にこんな分不相応な物、私がもっていて良いのかな。
そう思いつつ、食事の時に改めて団長に礼を言った。
仮の婚約者にしては、もらう物が高価すぎるけど。慰謝料……と思って使うのは楽しくないから、プレゼントって思っていいかな。ちょっと気が引けるけど、いいのかな。まだ躊躇いはあったけれど、いいかな。
「いいにきまっている」
だから、読まないで下さい。
じろりと視線を向けると、団長は口端を軽く上げて流された。
食事の後、団長が部屋に送ってくれるのにまかせて並んで歩きながらふとこぼす。
「もっと、私よりああいう逸品に相応しい、そして団長の隣に立つのに相応しい方が、いらっしゃると思うんですけど」
これは本心だ。私は自分を卑下するつもりはないが、それでも立場的には魔術騎士団長に相応しいとは言いがたく、そして政治的側面でももっと切れ者の女性はいる。きっと私より的確に団長の心をえぐってくれるような、素晴らしい尊敬できる独身の女史が。
いろんな意味で、私の手に余る。万年筆はうれしいけど、分不相応に感じる。
「俺は、君がいい」
だからどうしてと聞きたいのに。
「君は私が重要そうな書類を見ていたり、機密事項や内密の情報を扱っているのに気付いたら、どうする」
「どうするも……とりあえずその場を離れます」
「そうだ。君はそうする。だが、それらの情報は誰かにとって有利に働くかもしれない。それからわざわざ遠ざかってくれる人物は意外に貴重でね」
身に覚えがある。重要書類が目に入ったときに、見ないように目をそらしたり、余計なことを知らずに済むように気をつけていたのを団長は気付いていたのだ。
仕事に対して誠実でありたいと思っていた。時々試すようなことをされていた気がするのは、気のせいではなかったのだろう。それを評価してくれたのだ。
私が団長を見れば、彼はにこりと笑う。
……それって、頻繁に人の心を読みすぎでは?
「聞こえるんだ」
その手厳しさが好きだと言わんばかりのうれしそうな顔で、団長がわざとらしく肩をすくめて見せた。
その様子に溜め息が漏れる。
正直なところ、不用意に機密に近づかないようにしているのは、誠実でありたいだけが理由というわけではなかった。
私は、自分の着火が早いのを自覚している。そして無駄に正義感が強いことも。正義感なんて、自分で解決できないほどのことを前にしたとき、ただ周りを傷つける暴力になるのだ。しかも自分の正義感なんて、他人にとっては正義でない事なんてザラだ。そしてこの王城内では、私がどうにかできることなんて、ほぼほぼない。余計なことに首を突っ込んで暴れたら自分も周りも傷ついて疲れるだけだ。なら、最初から知らないのが平穏のためなのだ。
「そういう冷静さも、好ましいと思っている」
また読まれるようなことを考えてしまって、思わず顔をしかめる。
読んだことをわざわざ自己申告しないで欲しい。
「それは約束できないな。……罵ってもらえないじゃないか」
真面目な顔でキリッとして答える団長は、今日も最低すぎた。
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