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そんな聞き方、ずるい。
こんな事する彼が悪いのに。でも嫌じゃなくて。受け入れてるのは私で。
まだ、身体がさっきの刺激がおさまらなくて疼いてる。苦しいけど、また、されたい。このまま終わるのはとても寂しいような気持ちになってしまっている。
でも、このまま続けたいなんていうには、彼の意地悪な表情が、私の素直な気持ちを邪魔する。
「肯かないって事は、そうじゃないって事だよなぁ……?」
私が黙っているととたんにニヤッと人の悪そうな笑みを浮かべて、私の目をのぞき込んでくる。
……この人、やっぱり意地悪だ!!
「……っ 無理矢理じゃないとも言ってないですっ」
悔しくて叫んでみる。
そしたら彼が楽しげに笑った。
「そうか」
ゆがめるように笑った口元とは対照的に、私を見ている目は、なんだか嬉しそうに見える。
なんで? 私、反発してるのに。
「やっと文句を言えたな?」
いかつい顔に似つかわしくない優しい目をして向けられた言葉は、すごく優しく聞こええた。
「……ちょっとは、俺に慣れてきたか……?」
「……!!」
やっぱりずるいよ。
まだ、彼は私に逃げ道を与えようとしてくれている。
分かってる。無理矢理なんかじゃない。これは、私自身が望んだこと。私が、彼を望んでいる。
この人は優しい。意地悪なのに、すごく優しい。
きっと、ちゃんと彼は分かっている。まだ、どこかに躊躇いのある私の事も、でも、受け入れている私の事も。
「慣れてきたんなら、ほら答えろよ。俺のやっていることはお前にとって無理矢理なのか? 今、少し肯くだけで答えられるんだから、簡単なもんだろ? そしたらやめるけど?」
「~~~~っっ」
やっぱり優しくなんかない! 意地悪だ!
私の腕は、彼の首に回されたままで、彼を拒絶してないことぐらい、きっと分かっている。
くやしい。
言い返せずに、口をつぐんで睨むぐらいしかできなくて。なのに。
「ほんっとに、お前は……」
そう言って彼は片方の口端をゆがめるようにして笑いながらキスをする。
ちゅっちゅっと、ついばむような軽いキスはなんだか彼らしくなくて、でもなだめるような優しさがあって、素直に気持ちよくて。
唇って、男の人でも、嘘みたいに柔らかいんだなぁ、とか、ふわふわと気持ちよさの中におぼれそうになる。
それに安心してしまった私は、彼にぎゅっとしがみついた。
お願い、やめるだなんて、言わないで。
「……だから、お前、……それは……」
呆れたような、あきらめたような、でも苦しそうにも聞こえる、そんな力の抜けた声がして。
私は彼に閉じ込められるようにぎゅっと抱きしめられた。
倉庫の片隅の、通常ではあり得ないようなこの状況下。高い屋根も、資材の向こうに連なる広々とした空間も、私をちっぽけな物に感じさせ、不安を煽る。
けれど、そんな心許ない気持ちを包むように、すがりつける腕が私に回されていて。
彼の身体は大きくて、抱きしめられると私はすっぽりと彼の腕の中に収まってしまう。それが気持ちいいとか、安心するとかそんな気持ちで胸の中は満たされて。
彼の首に回した腕に小さな抵抗を感じ、そして彼が首筋に埋めていた頭をあげる。目の前に無表情にも見える彼の顔があって。「どうしたの?」と聞く前に、また唇がふさがれた。
驚いている私の唇からねじ込まれた舌は、歯列をなぞり私の舌を絡め取り、そして吸い上げてくる。
くちゅっと漏れる水音は、高い天井に響くように音を立て、そして消えてゆく。
それに夢中になっている間に、彼の手が再び私の胸に触れてきて、指先がいろんな所をなぞっていく。
胸の曲線をなぞり、先端をすりあげ、つまみ上げ、少し嬲ってはまた離れ、なぞりながら降りてゆく。
「んっ、んっ……」
ふさがれた唇からは、声すら漏らすことができなくて。けれどびくんと反応する身体と、鼻から抜ける息、そして喉元の呻く音が、十分すぎるほど私の快感を示している。
指先はそのまま脇腹まで降りて、くすぐるように身体をなで上げる。おへその辺りをくるくるっと撫でられると、くすぐったさのような、けれどどこかそれとは違う感覚がゾクゾクと背中を這い上がる。
「んくっ、んっ」
わずかに跳ねる身体と、キスにふさがれつつも漏れる声。しんとした空間に、小さな音がなまめかしさを持って大きく響いてる気がした。
それが怖いような恥ずかしさを煽り、逃げるように彼へと縋り付くことで気付かない振りをする。
キスにおぼれて、彼の指先に翻弄されていたい。
もう、自分がどんな状態になっているのか分からなかった。どこを触られても、身体が跳ねるように震え、その触れられた場所の余韻に、理性をそぎ落とされてゆく。
くすぐったいような気がするのに、嫌じゃない。ゾクゾクするのに、鳥肌が立つわけでもない。その触れた場所の余韻が「もっと」と次に触られる場所を待ちわびる。
彼はしばらくおへそを中心とした腹部を撫で回わし、それからまた指先を下へと滑らせてゆく。
ドクドクと鼓動が早まる。彼の指先がどこへ向かおうとしているのか、わずかに残る思考が勝手に予想を立ててしまう。
けれど指は尾てい骨の辺りまで肌をなぞりながら滑ってゆき、今度は背中に滑らされる。予想とは違う場所だった事に少しホッとしつつ、なぞられた身体はふるりと震え、じんわりと絡め取るように理性を奪う。
きもちいい。
私はつめていた息を、ほぅっとはいた。
手の平が背中を覆うように添えられて、彼の手の大きさを知らされる。私の背中の半分を覆ってしまうんじゃないかと思うぐらいおおきくて。
さするような動きから得るのは安心するような気持ちよさが占める。力の抜けた身体でそれに身をまかせながら、キスの方に意識のほとんどがむきかけていたときだった。
つーっとなぞられたのは、背中の真ん中。
ゾクゾクゾクと、お腹の真ん中から込み上げてくるような感覚が襲ってくる。
子供の時友達にやられてくすぐったいとか気持ち悪いとか怒って笑って騒いだその感覚は、今この場面でやられると、とんでもない破壊力のある刺激だった。
「……んっ、んんっ」
ビクビクとおかしいぐらい身体が跳ねて、背中が反る。
くすぐったいけど、もっとして欲しい。くすぐったい中に、どうしようもない気持ちよさがあった。
「背中、弱いな」
離れた唇から、そんなささやきが聞こえて。
そんな事、知らないっ、
長いキスでぼうっとした頭では、自分の状態がどんな常態かさえ分からないぐらいで、首を横に振って訳の分からない恥ずかしさに耐える。
「ひぅんっ」
突然また背中に指をつぅっと這わされて、背中が弓なりに反る。
「ほら」
意地悪な顔をして笑う彼を、やっとの思いで睨む。
意地悪な事しないで。
「なあ、そんな顔で、そんな目ぇして睨んでも、可愛いだけとか、分かってるか?」
くっくっと笑って、彼が頬を私のほっぺにくっつけてきた。
ゾリッとした感触が、彼の無精髭を伝えてくる。
でも、頬は柔らかくて、顔の近さが恥ずかしさよりも親密さを感じさせてきて、気持ちいい。
綺麗に剃られているだろうと思っていた彼の髭は、たった一日でこんなにも伸びているのだろうか。それとも、最初からこんな物なのだろうか。
初めて触る感触に、思わずそっちに気を引かれて首に回した手をほどき指を頬へと伸ばす。
「……っ、何?」
なぜかぴくんと震えた彼に、「髭が……」と、指先にツンツンと当たるその質感を確かめながら答える。
彼が眉をひそめたいかつい顔で私の様子を探ってくる。
「痛いか?」
「痛くないけど、初めて触りました。ほんとにじょりじょりする……」
指を滑らせてその感触を少し楽しんでいると、すぐにそれは彼の手で押さえられた。
こんな事する彼が悪いのに。でも嫌じゃなくて。受け入れてるのは私で。
まだ、身体がさっきの刺激がおさまらなくて疼いてる。苦しいけど、また、されたい。このまま終わるのはとても寂しいような気持ちになってしまっている。
でも、このまま続けたいなんていうには、彼の意地悪な表情が、私の素直な気持ちを邪魔する。
「肯かないって事は、そうじゃないって事だよなぁ……?」
私が黙っているととたんにニヤッと人の悪そうな笑みを浮かべて、私の目をのぞき込んでくる。
……この人、やっぱり意地悪だ!!
「……っ 無理矢理じゃないとも言ってないですっ」
悔しくて叫んでみる。
そしたら彼が楽しげに笑った。
「そうか」
ゆがめるように笑った口元とは対照的に、私を見ている目は、なんだか嬉しそうに見える。
なんで? 私、反発してるのに。
「やっと文句を言えたな?」
いかつい顔に似つかわしくない優しい目をして向けられた言葉は、すごく優しく聞こええた。
「……ちょっとは、俺に慣れてきたか……?」
「……!!」
やっぱりずるいよ。
まだ、彼は私に逃げ道を与えようとしてくれている。
分かってる。無理矢理なんかじゃない。これは、私自身が望んだこと。私が、彼を望んでいる。
この人は優しい。意地悪なのに、すごく優しい。
きっと、ちゃんと彼は分かっている。まだ、どこかに躊躇いのある私の事も、でも、受け入れている私の事も。
「慣れてきたんなら、ほら答えろよ。俺のやっていることはお前にとって無理矢理なのか? 今、少し肯くだけで答えられるんだから、簡単なもんだろ? そしたらやめるけど?」
「~~~~っっ」
やっぱり優しくなんかない! 意地悪だ!
私の腕は、彼の首に回されたままで、彼を拒絶してないことぐらい、きっと分かっている。
くやしい。
言い返せずに、口をつぐんで睨むぐらいしかできなくて。なのに。
「ほんっとに、お前は……」
そう言って彼は片方の口端をゆがめるようにして笑いながらキスをする。
ちゅっちゅっと、ついばむような軽いキスはなんだか彼らしくなくて、でもなだめるような優しさがあって、素直に気持ちよくて。
唇って、男の人でも、嘘みたいに柔らかいんだなぁ、とか、ふわふわと気持ちよさの中におぼれそうになる。
それに安心してしまった私は、彼にぎゅっとしがみついた。
お願い、やめるだなんて、言わないで。
「……だから、お前、……それは……」
呆れたような、あきらめたような、でも苦しそうにも聞こえる、そんな力の抜けた声がして。
私は彼に閉じ込められるようにぎゅっと抱きしめられた。
倉庫の片隅の、通常ではあり得ないようなこの状況下。高い屋根も、資材の向こうに連なる広々とした空間も、私をちっぽけな物に感じさせ、不安を煽る。
けれど、そんな心許ない気持ちを包むように、すがりつける腕が私に回されていて。
彼の身体は大きくて、抱きしめられると私はすっぽりと彼の腕の中に収まってしまう。それが気持ちいいとか、安心するとかそんな気持ちで胸の中は満たされて。
彼の首に回した腕に小さな抵抗を感じ、そして彼が首筋に埋めていた頭をあげる。目の前に無表情にも見える彼の顔があって。「どうしたの?」と聞く前に、また唇がふさがれた。
驚いている私の唇からねじ込まれた舌は、歯列をなぞり私の舌を絡め取り、そして吸い上げてくる。
くちゅっと漏れる水音は、高い天井に響くように音を立て、そして消えてゆく。
それに夢中になっている間に、彼の手が再び私の胸に触れてきて、指先がいろんな所をなぞっていく。
胸の曲線をなぞり、先端をすりあげ、つまみ上げ、少し嬲ってはまた離れ、なぞりながら降りてゆく。
「んっ、んっ……」
ふさがれた唇からは、声すら漏らすことができなくて。けれどびくんと反応する身体と、鼻から抜ける息、そして喉元の呻く音が、十分すぎるほど私の快感を示している。
指先はそのまま脇腹まで降りて、くすぐるように身体をなで上げる。おへその辺りをくるくるっと撫でられると、くすぐったさのような、けれどどこかそれとは違う感覚がゾクゾクと背中を這い上がる。
「んくっ、んっ」
わずかに跳ねる身体と、キスにふさがれつつも漏れる声。しんとした空間に、小さな音がなまめかしさを持って大きく響いてる気がした。
それが怖いような恥ずかしさを煽り、逃げるように彼へと縋り付くことで気付かない振りをする。
キスにおぼれて、彼の指先に翻弄されていたい。
もう、自分がどんな状態になっているのか分からなかった。どこを触られても、身体が跳ねるように震え、その触れられた場所の余韻に、理性をそぎ落とされてゆく。
くすぐったいような気がするのに、嫌じゃない。ゾクゾクするのに、鳥肌が立つわけでもない。その触れた場所の余韻が「もっと」と次に触られる場所を待ちわびる。
彼はしばらくおへそを中心とした腹部を撫で回わし、それからまた指先を下へと滑らせてゆく。
ドクドクと鼓動が早まる。彼の指先がどこへ向かおうとしているのか、わずかに残る思考が勝手に予想を立ててしまう。
けれど指は尾てい骨の辺りまで肌をなぞりながら滑ってゆき、今度は背中に滑らされる。予想とは違う場所だった事に少しホッとしつつ、なぞられた身体はふるりと震え、じんわりと絡め取るように理性を奪う。
きもちいい。
私はつめていた息を、ほぅっとはいた。
手の平が背中を覆うように添えられて、彼の手の大きさを知らされる。私の背中の半分を覆ってしまうんじゃないかと思うぐらいおおきくて。
さするような動きから得るのは安心するような気持ちよさが占める。力の抜けた身体でそれに身をまかせながら、キスの方に意識のほとんどがむきかけていたときだった。
つーっとなぞられたのは、背中の真ん中。
ゾクゾクゾクと、お腹の真ん中から込み上げてくるような感覚が襲ってくる。
子供の時友達にやられてくすぐったいとか気持ち悪いとか怒って笑って騒いだその感覚は、今この場面でやられると、とんでもない破壊力のある刺激だった。
「……んっ、んんっ」
ビクビクとおかしいぐらい身体が跳ねて、背中が反る。
くすぐったいけど、もっとして欲しい。くすぐったい中に、どうしようもない気持ちよさがあった。
「背中、弱いな」
離れた唇から、そんなささやきが聞こえて。
そんな事、知らないっ、
長いキスでぼうっとした頭では、自分の状態がどんな常態かさえ分からないぐらいで、首を横に振って訳の分からない恥ずかしさに耐える。
「ひぅんっ」
突然また背中に指をつぅっと這わされて、背中が弓なりに反る。
「ほら」
意地悪な顔をして笑う彼を、やっとの思いで睨む。
意地悪な事しないで。
「なあ、そんな顔で、そんな目ぇして睨んでも、可愛いだけとか、分かってるか?」
くっくっと笑って、彼が頬を私のほっぺにくっつけてきた。
ゾリッとした感触が、彼の無精髭を伝えてくる。
でも、頬は柔らかくて、顔の近さが恥ずかしさよりも親密さを感じさせてきて、気持ちいい。
綺麗に剃られているだろうと思っていた彼の髭は、たった一日でこんなにも伸びているのだろうか。それとも、最初からこんな物なのだろうか。
初めて触る感触に、思わずそっちに気を引かれて首に回した手をほどき指を頬へと伸ばす。
「……っ、何?」
なぜかぴくんと震えた彼に、「髭が……」と、指先にツンツンと当たるその質感を確かめながら答える。
彼が眉をひそめたいかつい顔で私の様子を探ってくる。
「痛いか?」
「痛くないけど、初めて触りました。ほんとにじょりじょりする……」
指を滑らせてその感触を少し楽しんでいると、すぐにそれは彼の手で押さえられた。
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