S系攻め様は不憫属性

水瀬かずか

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【番外編1】:仕事とデートと夜のドライブ

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「……っ、やめろ!」

 俺を振り解こうと課長は身をよじるが、片腕を拘束され、腰を抱えられた状態で、たいした抵抗などできるはずがない。ましてや課長の弱いところは押さえている。中に埋めた指を蠢かし、尖らせた舌を差し入れれば嬌声を上げて身体は陥落した。

「や……、ダメだ、篠塚、やめろ、やめてくれ………嫌だ、頼む……!」
 うわごとのように声を漏らす課長は抵抗するかのように身をよじるが、愛撫を深めるほどに、むしろそれは誘い込む動きに取って代わる。
「ぅ……ダメだ、篠塚、ダメだ……無理だ……」
 言葉と動きが反転している。傾いたシートの背に身をあずけ、腰を突き上げ俺に舐められて喜ぶように腰を振っている。唾液を流し込まれ、指二本で中をほぐされ快感のうめき声を漏らす。
 いつもほど丁寧にほぐせていないが、それでも指二本を中で緩く広げ、舌を差し込めるほどに、柔らかくとろけていた。
 課長が言葉にならない声を漏らしながら、腰をよじって快感をむさぼっている。
 ようやく拒絶の言葉さえ失った課長に満足して、自分の物にもゴムを被せる。そしてローションを軽く自身に塗りつけてから、ほぐれた入り口へと押し当てた。

「…………ぁ」
 ゆっくりと課長が振り返り、ゆらゆらとさまよう目元が、俺を捉えた。
「しの、づか」
 苦しげに眉間に皺を寄せ、あきらめたように息を吐く。そしてぴくりと震えた腰が、ねだるようにゆっくりと前後に揺れた。
「しのづか」
 少し舌足らずに俺を呼ぶ声。誘うように揺れる課長の腰つき。ふれあった部分が、ぬちゅぬちゅと、緩やかにこすれ、早く入れてしまいたい衝動に駆られる。
「入れて、いいですか?」
「……っ」
 ピクリと課長が震えるも、もう入れられる事を拒絶するそぶりはなかった。

 慣らすように、ゆっくりと押し進めてゆく。
「……、……、……はっ、……っ」
 息をのむ様子と小さな吐息。耐える課長の様子が俺を煽る。いつもよりローションの少ないその中の感触は、滑りが悪いわけではないけれど、いつもより擦れている感覚がよく分かる。たっぷりのローションでぐちょぐちょにとろけた状態とはまた違う気持ちよさだ。
 そういえばこの感覚は、課長を会社で犯していた頃のものと、似ているかもしれない。
 喉の奥が詰まるような感覚とともに込み上げた罪悪感。けれどそれは奇妙な興奮を伴ってゾクリと俺を震わせた。

 課長がはっはと短い呼吸を繰り返し、必死に耐えているさまは、憐れで愛おしい。
「課長、大丈夫ですか? 痛くはないですか?」
「……だい、じょうぶ、だ……っ」
 応えてから、キュンと後ろが締まり、それが気持ちよかったのか、課長はくふんと鼻を鳴らして、背筋をそらす。苦しげに耐える息づかい、腰を上げて受け入れやすい姿勢を取る厳つい背中に興奮する。
「……っ」
 いつもよりきつい締め付けもまた、あの罪の日々を思い出させる。胸のきしむその罪悪感と、あの日の興奮とが同時に襲ってきた。
 その言い表しがたい衝動に、そのまま腰を打ち付ける。

「……ぐっ」
 課長の頭がのけぞった。俺を奥まで受け入れて、身体を強ばらせてその衝撃に耐えている。
「課長、好きです」
 罪悪感をごまかすようにつぶやく。
 ぴったりと腰をくっつけたまま、慣らすようにゆっくりと腰を動かして中を刺激する。
「ぅあっ、」
「好きです。かわいい。課長。好きです」
 消せない罪を言葉でごまかす。好きだと言うことが免罪符であるという錯覚に縋りつく。
 好きだから許して、好きだから受け入れて、かわいい、愛してる、だから、だから……。
 言い訳にもならない免罪符を押しつけて、こんな場所で強引に事に及んで、今日も課長の懐の深さに甘える自分を見ないふりする。

「あ、しの、づか……、篠塚……」
 俺の名前を呼びながら、縋りつくようにヘッドレストを課長の左手が抱きかかえる。そして振動を与えるだけの俺の動きを促すように、快感を求める意図を持って腰が動き出した。

「……はっ」
 短い息を吐きながら、動きづらそうに腰が揺れる。
 薄暗い月明かりが、揺れる白いシャツだけを車内で浮かび上がらせている。後はぼんやりと闇の中で淡い輪郭だけが蠢いていた。

 狭く足場の悪い車中、いつものように思い通りに突き上げることが出来ない。
 ぎこちない動きになりながら課長を揺さぶりつつ、後部座席を二列ともフラットにしておけばよかったなどと、くだらないことを考えてみたりする。完全フラットにしておけば、下手なシングルベッドより広かったのに。もっとも、そんなことをしていれば、課長に見透かされて、また厳しい目を向けられそうではあるが。

「篠塚っ」
 もどかしそうに課長の腰が揺れて、俺を奥まで飲み込むように押しつけられる。
「……んっ」
 鼻から抜ける吐息をこぼして、気持ちよさそうに緩んだ横顔を晒して、ヘッドレストにしがみつく課長は、彼の右手を後ろ手に拘束するシートベルトを掴んだままぐりぐりと腰を俺に押しつけてくる。
 気持ちよさそうなのは良いが、ヘッドレストに縋りついて頬を押しつけているのが妙に気にくわない。
 シートの形が肩と頭を模して見えるせいだろうか。
 抱きつくなら俺にして欲しいと、無茶なことを考える。更に言えば課長を捕らえるシートベルトにもむかついてくる。
 さっきは捕らえられた様子がエロいと思っていたのに、掴んで放さない様子が気に入らない。
 ばからしいが気にくわない物は、気にくわない。

 もう抵抗されないだろうか、今更やめろとは言わないよな。
 再び拒絶されるのは怖いし、名残惜しいが仕方ない。わずかに緊張しながらひとまず抜けば、課長はひゅっと息を吸って身体を震わせた。
「……やめる、のか?」
 上半身をぐったりとシートに押しつけ、課長が肩越しに俺を見る。正座状態で俯せになっているせいで、腰は俺に見せつけるようにとろけた穴をひくひくと震わせている。
「……やめませんよ」
「……そうか」
 思った通り、もう抵抗する気力はないようだ。
 力が抜けてしまうと、さっきまで拘束されていたのが嘘のように、シートベルトから手がするりと抜けて、ベルトはするすると収納されていく。
「課長、こっち向いて下さい」
 うつぶせになった身体をゆっくりと転がすように手を貸せば、抵抗もなく課長はそれにならった。

「……やっとキスできます」
 課長が抵抗なくこちらを向いた事に気よくして、軽いキスを何度も繰り返す。
「最後までして良いですか?」
「……好きにしろ」
 一瞬眉間に皺が深く刻まれて、それから諦めたように課長は苦笑をこぼす。
 両足を抱え上げ、先端をおしあてると、一度受け入れていた穴は簡単に先端を飲み込み、そのまま押し込めばずぷりと埋まってゆく。


 とはいえ、とにかく足場が悪い。助手席のシートと後部座席の間にある段差も、助手席両脇にある隙間も。
「課長、上に乗ってくれますか?」
 抱えていた両足を下ろし、かわりに課長の手を掴む。
 課長を引っ張り起こした反動で、俺が座り込めば、課長がバランスを取るように俺に抱きついてきた。
「……うん゛ん゛っ」
 対面座位の姿勢になったその時、ずんと重い身体が落ちてくる。課長が上に乗り上げたため、自重で根元まで俺をくわえ込んでいた。さっきまでの中途半端な深さの挿入とは違う気持ちよさに、思わず吐息がこぼれる。のけぞった課長の喉元がエロい。
「課長」
 俺のチンポを奥まで飲み込んでぎゅうぎゅうと抱きついてくる様子に満足する。それが心地よくて腰と背中に手を回して、俺もまたその堅い体をぎゅっと抱き寄せた。

「……篠塚、……ぃ」
 俺にしがみつきながら漏らした言葉は「こわい」と聞こえた。脅えているのを紛らわすように俺にしがみつく。
 時折通り過ぎる車のライト。それがこの状況の異常さを突きつけてくる。人がのぞき込めば見える位置でセックスをするのは、普通でないことは確かだ。
 なのに常識的なこの人が、それを犠牲にして俺の欲求を受け入れてくれる。それを喜んでいる自身のクズぶりに反吐が出る。
 反面、興奮した。
 それに身を任せれば、後でこの人に見捨てられるかもしれない恐怖に苛まれると、分かっているのに。
 ああ、本当に俺は成長しない。でもやめるつもりがないのだから、救いがない。
 嫌わないで、見捨てないでと願いながら、俺の望みばかりをこの人に押しつける。


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