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二十四話 雑賀孫一(その二)

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「重治さま、この薬を お飲みください。すぐに楽になりますから‥‥」


「……あ、ありがとう」


「それと、昨夜のうちに重秀さまに、話しを通しておきました。重治様の話しを聞いてくださるそうです」


重治は、才蔵の言葉を聞いてすぐにでも二日酔いを治さなくてはと差し出された薬を鼻を摘んで一気に飲み込んだ。

今、飲んだ薬は、忍びの秘薬。どこからどうみても怪しく、たぶん、材料はミミズやイモリの黒焼き、蝙蝠のふん。その他、まず現代では、お目にかかる必要のない代物の調合なんだろうと想像しつつも、その薬を回復の頼みの綱として、すがる思いで飲み込んだ重治であった。


どれくらいの時間が経ったのだろう。妖しげな秘薬が利いたのどうかは、わからないが重治の状態は、やや回復傾向にあった。

周り者は、気を利かせたのであろうか。
回復してあたりを見回す余裕ができてきた時には、部屋には誰もいないことに重治は気づいた。


重治は、頭を押さえつつも、少し良くなった事で外の空気を吸いたくなっていた。

部屋から出て、庭先までくると、そこには、岐阜の我が家で、よく見られた風景、伊蔵と末松との組み手の様子が見られた。


「あっ、重治さま!!」


重治が現れた事に気を取られた一瞬の事であった。
末松の体は、重力をまるで無視したようにふわりと浮き上がり、それと同時に一回転したあと強く地面に叩きつけられた。


「油断は禁物だぞ!」


「そんなぁ‥‥」


「何を甘いことを言ってるんだ。戦場で油断は、死を意味する。末。お前は、どうも、甘いところがありすぎる」


何時もの恒例行事のような、伊蔵の説教が始まる。
これもまた、いつも岐阜の屋敷で見ていた、風景の一つである。

いちど始まると簡単に終わることのない説教の嵐。
重治は、末松に同情しつつ、中庭を抜け、屋敷の外に散歩に出かける事にした。


重治が単独で外に出かけるのを伊蔵が止めないと言うことは、この鈴木氏が治めるこの集落付近には危険がないことを表していた。



屋敷からは、そう遠くないところに川があり、その影響からか、今の重治にとっては、心地良い風が、そっと頬をなでて通り過ぎていく。


そんな重治の視界に、いかにも胡散臭い様子の男が目に入っている。
なにやら密かに物陰に隠れ、向こうの様子をそっと伺がってるようである。

重治は、その怪しげな男が戦場で最も頼りにしてきた新平である事に愕然としていた。
豪放磊落、こんな言葉の似合う男のはずの山崎新平である。見てはいけないものを見てしまったというおもいの重治であった。

そしてそんな怪しげな行動をとる新平に、重治はそっと近づいた。


「何をしているんだ?」


新平は驚いて、腰を抜かさんばかりの表情をし、尻餅をついた。

しかし、そんな状況にも関わらず新平は、しっかりと口を抑え、どんな小さな声も漏らすまいとしていた。


重治は、よほどの重要な隠密行為と判断し、動揺している新平の代わりに物陰の向こうの様子をそっと覗き見た。


覗いた物陰の向こうには、川岸に、たたずむ男女の姿がそこにはあった。


「十年ぶりね‥‥。私、変わったでしょ?」


「……あぁ」


その二人の男女に、重治は見覚えがあった。


「ねぇ、ちゃんと約束、覚えてる?」


「……あ、あぁ……」


見覚えある、その男の名前は才蔵。そして、もう一人、その女性は、昨日出会った、魅緑と呼ばれていた人物である。


つまり、山崎新平という男の隠密行動は偵察していた訳でもなんでもなく、たんなる覗き、デバガメをしていたのである。

ほんとうのところの新平の不届きなる行為を知った重治ではあったが、それはそれで、重治もまた男の子、興味がないわけではない。

動揺から立ち直った新平と二人、親亀子亀が重なるようにして、特別?偵察行動の続行となったのである。


「……なにか、変化はありましたか?」


そんな覗き、もとい、特別偵察実行中の二人の耳もとで、突然に声がした。

さすがに、突然のこの声に二人は驚いた。


「わっー!!」


全く、予測だにしていなかったその声に、一度は動揺から立ち直った新平も、今度ばかりは声を上げてしまった。

驚いて、折り重なりながら、しりもちをついてしまった二人が見たその声の主は、現在、偵察対象のうちの一人、女性の兄である重秀だった。


「すこしは、なにか進展ありましたか?」


「……こ、これは……し、しげ………!!」


突然の頭の上からのこえに驚いた重治ではあったが、これまでの短いながらの隠密偵察?の成果を重秀に伝えていった。


「えー、手も握っていないって!!」


「しっ、しぃー」


重治と新平は、慌てて口に指をたてた。

そんな主従関係の仕草を見た重秀は、微笑ましげに笑いながら頭をかいた。


大の男が三人。まあ、成人していない重治は、中の男ぐらいかもしれないが、そんな三人の男が、頭を寄せ合い、ひそひそ話しを繰り返しあっていた。

もちろん話題の種は、今、覗き見している二人の男女のなりゆき。


「******、ま、まさか、***************、そ、そうなんですか!?」

「************************!?、えっ、じゃあ、なんで!?」


ひそひそ話の中、声が大きくなっては、顔の前で指を立てる。そして、また話しを始め出す。

偵察に夢中だった三人はやがて頭を突き合わせ、そんな話しに夢中になっていく。あること無いことが、繰り返され、どんどんと盛り上がるなか、突然、重秀が言った。


「と、ということは‥‥、才蔵には、男としての欠陥があると!?」


「なるほど。それならば‥合点が行く‥‥」


そんな具合に、重秀に新平が相槌を打ったのを合図に声が響いた。


「私に、欠陥なんかありません!!」


語気を強めて言っ放ったのは、それまで川岸にいた筈の才蔵である。


頭を突き合わせて、話しに夢中になっていた三人は、才蔵・魅緑の接近に、まったく気づかなかったのである。


「えー!?お兄ちゃんまで、何やってんのよ‥‥」


「そ、それはだな‥‥、あ、兄として、お前のことがだな‥‥」


「知らない!!」


魅緑は、その場に四人を残し、屋敷の方に走って行ってしまった。

残った才蔵といえば、深いため息と共に、首を左右になんども振った。


「はぁあ‥‥、さて、‥‥それでは、私も混ぜてもらって、お話し、しましょうか!?‥‥いったい誰に、欠陥があるんですか!?」


才蔵は、じろりと三人に睨みを利かした。

三人は、打ち合わせなどは無しに、素早く正座で才蔵の前に並んで座った。


「すみませんでした」


殊勝な態度で頭を下げる三人を目の当たりにして、才蔵は、ため息をつくより他は、なかったのであった。


そんな、どたばたのあった日の夜、重治は、才蔵を仲介役に、正式に雑賀孫一との会談をとり行うこととなった。


その部屋には、雑賀衆を代表する土橋家の面々と、この集落、鈴木家に連なる面々が勢揃いしていた。


今、ここにいる者達を説得して、味方につけることが出来たなら、それは即ち、この戦国時代一、強い味方を得たということに等しい。


重治は、極度に緊張感が増していくなか、ついにその会談は始まったのである。


「この御方が、雑賀衆頭領の雑賀孫一さまです」


この会談の仲介役の才蔵が紹介したのは、この屋敷の主で重秀の父、鈴木佐大夫であった。

紹介された佐大夫は、軽く才蔵と重治に向かい手を上げてにこやかに微笑んだ。


「すまんの。才蔵、‥‥じつは、孫一の名は、重秀に譲った」


雑賀孫一と言う名は、雑賀衆をまとめる頭領が引き継いでいく名前で、現在は佐大夫の息子である重秀が引き継いでいたのである。


「才蔵、すまん。別に隠していたわけではないのじゃ‥‥」


重秀、当代の孫一の話しによると、つい最近になって一族、雑賀衆で継承の儀が執り行われたばかりであって、孫一として戦場に立っていない重秀は、まだ、正式に孫一として認められた訳ではないと言うのである。


「まあ、おやじ殿と、わしと、二人合わせて孫一ということじゃ。はっはははは」


当代孫一、重秀は、豪快に笑い飛ばした。

重秀の豪快な、その笑いによって、それまでの緊張した会場の空気が、弱冠であるが緩まったように重治には感じられた。


会談の場が和やかになり、ざわめきが落ち着いたのを見計らい、重治が声を出した。


「あのぉ、よろしいでしょうか?」


重治の言葉に重秀は、言葉を被せるように遮り、右手を軽く上げながら語り始めた。


「頼み事の答えなら、否だ。雑賀衆は、織田家に味方は出来ない」


重治は、何もいう前から、重秀に否定されてしまう。


それまで、すべてが順調に事が運べていた重治は、重秀の否定の言葉に軽い衝撃を受けた。
しかし、その否定の言葉は、それが終わりではなく、重秀の話しは続いていく。


「今、我々は、本願寺に組している。傭兵である以上、われらは、雇い主を裏切る訳にはいかないのじゃ」


「……では、相手が本願寺でなければ…どうでしょうか!?」


孫一は、少し悩んだ風の表情を見せたあと、にやりと笑い、こう答えた。


「その場合は、少し話しが違ってくるな…」


この重秀の一言で、会場は、ざわめきだした。

当然の事だろうと重治は、思った。
現在、交戦中の相手の織田家である。人である以上、当然、嫌悪感を生じていて当たり前と言える。

それを戦う相手が違うと言うだけで、ともに戦うというのである。
反対を唱える者が出る事が普通であって、その事を 反対を説得できるだけの根拠を 重治は携えていなかった。



何を持って、雑賀衆を味方につけるか。重治は、必死に考えた。


その間にも、会場のざわめきは、徐々に徐々に、大きくなっていく。


重治は、何も語らない。いや、何も語ることが出来ない。
容易な言葉を発すれば、せっかく重秀が与えてくれた好機を逃しかねない。

重治の、そんな悩む無言の姿を見て、重秀の方から救いの手が差し出される。


「静かにしろ!!」


普段は、にこやかな重秀の語気を強めた一言で、会場は水を打ったように静まりかえった。

その様子を見て、重秀は満足そうな笑みをみせた。


何のことはない。
最初に語られた、仮の孫一などと言うのは、まったくのでたらめで、形式的には例え仮だとしても、重秀の孫一としての権力は、一族すべてに行き渡り、絶対的権力を有していたのである。


孫一である重秀は、才蔵の主である重治に最初から友好的で、こうなることを予測していたのかもしれない。


「我らは、傭兵である。‥‥まずは、それなりの見返りは用意してもらおう」


「はい。もちろんの事でございます」


重治は、雑賀衆に会うに当たって、信長から全権を委ねられてきている。
見返りとしての金品の交渉も当然、最初から想定のうちに入っていた。

しかし重治にとっては、その交渉まで、どうやって結びつけるかが最大の難所と考えていた。
それが、思わぬ形、方向で、それが現実化した。

重治は、安心からか、ほっとため息をはいた。

そんな重治の緩まった表情を見て、孫一の表情は突然、険しいものに変わり、重々しい口調で、重治に語り始めた。


「実はな、もう一つ、どうしても譲れない条件がある」


孫一の険しく変化した表情に、重治の緊張が走った。

戦国時代、最強の力を手にする為に、譲れない条件。


「‥‥そ、それは、何でございましょうか!?」


重治の言葉に、孫一の表情が、さらに厳しいものへと変わる。


「‥‥重治殿。それは、そなたにしか出来ないことなのじゃ……」


「‥‥は、はぁ」


重治は、雑賀衆の力を得るためには、どんな難題でもこなしてみせよう。そう、強く心に誓い、孫一に、再度、問いかけてみた。


「孫一さま。その条件とは‥‥、その条件とは、何でございますか。‥‥何なりと、申しつけください」


重治は、きっぱりと孫一に言い切った。

重治の言い切った、その言葉を聞いた、孫一の表情が突如として崩れた。

それまでとは違い、急に、にこやかに微笑み、今までの厳しい表情も嘘のように変わり、優しい言葉使いで、その条件を語りじ始めた。


緊張感高まる、その時、そこにいた者たちの中で、その条件を聞いて、最も驚いたのは才蔵であった。


「俺の妹の魅緑を才蔵の嫁にしてやってくれ。頼む」


「……?????」


孫一が、重治に向かい、深々と頭を下げた。

数千人の鉄砲集団を統べる孫一が、重治と才蔵に向かい頭を下げたのである。


重治は、慌てて隣にいる才蔵の顔をみた。
才蔵は、してやられたという表情で孫一を睨んでいる。しかし、重治と目が合った時には、にっこりと微笑み軽く頷いてみせた。


重治は、大きく一つ深呼吸をして心を落ち着け、ゆっくりと、孫一にこたえた。


「謹んで、お引き受けいたします」


「おぉ、まことか!?それは、めでたい、めでたいぞ!!」


孫一は、とても喜んだ。
大きく二つ柏手をたたき合図を送る。

すると、この場には居なかった、女性達が膳をもって現れて、宴会の準備が着々と進められていった。


重治は、この仕組まれた茶番劇に苦笑いするしかなかった。

どうやら、孫一の目的は最初から才蔵にあって、妹に対して、煮え切らない態度に、大掛かりな、しかも、絶対に逃れられないような罠を仕掛けたのである。


ほぼ、会場の準備が整う頃、白無垢姿の女性が、清楚に入場してきた。もちろん、この婚礼の主役、孫一の妹、魅録である。

孫一の拍手を皮きりに、会場は割れんばかりの拍手と歓声で包まれていった。


重治は、才蔵への後ろめたさから、極力、顔を合わさないようにしていたが、それでも、良心の呵責から、やはり気になる才蔵の表情を垣間見た。

才蔵が零す満面の笑みは、決して、才蔵に無理強いした結果ではないことを重治に伝えていた。


「うん。めでたい。うん、ほんとうに、めでたい」


重治は、才蔵に向かいあうと、心からの祝を述べた。



花嫁が席につけば、当然その横には、花婿が必要となる。
隣にいる才蔵の周りをこの会談に在席していた男衆達が取り囲む。

抵抗を試みる才蔵を担ぎ上げ、男衆達は花嫁の隣に才蔵を運んでいく。

最初、抵抗を見せた才蔵ではあったが、顔からは笑いが溢れ、手荒い祝福をまんざらでもなく、楽しんでいる感のある才蔵であった。


そうして才蔵が、花婿の席についた時には、用意された親族席に、伊蔵をはじめ、末松、新平、そして最後に重治本人がその席に着いて準備は播但となる。



雑賀衆が総出で祝う結婚式が、この時より始まったのである。

祝いは、三日三晩続けられ、未成年の重治ではあったが、次から次ぎに押し寄せる酌の嵐に、酒の途切れる時はなかった。

楽しい宴の終焉は、村から全ての酒のなくなった、その時であった。


「‥‥三日しか、保たなかったか……」


「はい。才蔵様を慕っていた者も多く、ここ最近の宴の中では、最多の客人でした」


「うむ、ご苦労であった」


裏方の者から頭領である孫一に、報告があった。


「うぉーい、みんな聞いてくれ。酒宴は、お開きじゃ!!」


「えー、もう終わりかい!?早かったなぁ‥‥」


「ははっはは、すまんのぉ‥‥」


酒宴を楽しんだ者たちは、まだまだ、物足りないのか、口々に文句を並べながら着座していった。

そう、主役と頭領の締めの挨拶を聞くためにである。雑賀の衆は、傭兵集団を名乗るだけあって、一つ一つの、けじめに対して妙な所まで、キッチリとしていた。


孫一から何やら耳打ちされてから、酔って朱くなった顔が、急に青ざめる才蔵。

才蔵にとって、こんなにも大勢の前で、挨拶をするなど寝耳に水で、その事を先に聞いていれば、才蔵は、どんな事をしてでも最初に逃げ出していたに違いない。
それほどに、この男、才蔵は、無口で照れ屋なのである。


会場は、そんな才蔵の言葉を待って、静まり返っていた。


「……ほ、ほんじツハ、あ、あ……りがと……ごザイマス」


途切れ途切れに僅かに聞こえた御礼の言葉。その後に続く言葉は、いくら待てども、才蔵の口から出てくる気配はなかった。


参列しているもの達は、互いに顔を見つめあっては、主役の才蔵を見つめなおす。

やがて、押し黙った才蔵に、業を煮やした隣で控えていた孫一が、突然、手を叩き出した。


「うむ。見事な、挨拶じゃった!!」


それを機会に場内は、割れんばかりの拍手と歓声に溢れかえった。


照れてうつむいたままの才蔵とは対照的に、幸せいっぱいの表情の妹を見つめ、満足げに頷く、孫一であった。


この時の挨拶の事を 後に才蔵が昔語りに語るに、『一千人の刺客に、囲まれた方がはるかに気が楽だ』と、言ったとか……


会場が落ち着きを取り戻したとき、孫一が、最後の締めの言葉を語り始めた。


「今日からは、我が義弟の才蔵じゃ。皆の者、よろしく頼む。これからは雑賀の一員。仲良くしてやってくれ」


会場に、やんやの歓声が上がる。
才蔵が快く、仲間として、一族として、受け入れられた証であった。


「雑賀の者は、金で動く。しかし、仲間を売ることは決してない。皆は、一人のために力を貸し、一人は、皆のために働くのじゃ」


「うぅおぅー」


孫一の言葉に、大歓声が湧き上がる。

孫一は、軽く右手を上げて歓声を制した。
そして、静かになった会場に、孫一の声が再び響き渡る。


「もうひとつ、聞いてくれ」


会場は更に静まり、続く、孫一の言葉を待った。


「これは、わし個人、重秀としての事だが、この義弟、才蔵にも、関わりある事なので、皆に知っていてもらいたい」


「かしらぁー、そんなに勿体ぶるなぁ」


軽く野次が飛ぶと、会場は和やかな雰囲気に変わった。

孫一は、頭をかいたあと苦笑いを浮かべながら、ひとつ、わざとらしい咳ばらいをして、話しを再開した。


「うぉほん。わしは、義弟の主でもある、そこにおられる竹中重治殿と義兄弟の契りの杯を交わしあった」


「うぅおぅー」


再び、会場に凄い歓声が響き渡る。


「やるなぁ、頭!!」


「羨ましい!!」


などなど、歓声に混じって、好意的な野次が飛び交う。


しかし、当の本人、重治には、孫一と酌み交わしたという杯が、いつの時のものかが記憶にない。


四日前の酒による二日酔いが、治るか治らないかの状態からの三日間の酒浸りである。

酒になれない重治の記憶が定まらないのも、無理もない話しである。


とにもかくにも、重治の覚えのないところで、話しは予期せぬ方向で予期せぬ以上の結果を得る事となる。


重治は、どこかで聞いたことのある格言を 二日酔いで割れんばかりの痛みの頭をかかえて叫んでいた。


『酒は飲むもの、呑まれるな!!』


これ以降の重治は、酒を飲むことを自重することを覚え、大人の階段をひとつのぼることとなる。
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