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32 ヴォクス家の応接客間にて
しおりを挟む「それで、私に見せたいものというのは何ですか?」
ヴォクス家の応接客間にて、ホースとリズの前のソファに座るヴォクス夫人が二人に尋ねていた。学園の正門前でリズを馬車に乗せたあと、ホースはヴォクス家まで戻って、ヴォクス夫人の元を訪れていたのだ。
ホースがなぜそのようなことをするのか……聞くまでもなくリズには分かっていた。そして彼女の予想通り、ホースはヴォクス夫人に言ったのだった。
「エリザベス様に見ていただきたいものがございます」
「……よく分かりませんが、それは必ず私が見なければいけないものなのですか?」
「はい。ぜひお願いします。文句は見てから、なんとでも仰ってください」
「…………」
ヴォクス夫人は一度リズのほうに目を向ける。リズもまた緊張した面持ちではあったが、ホースの意図を察して、真面目な瞳でヴォクス夫人を見つめていた。
もう一度ホースへと目を戻して、二人の決意めいた雰囲気に負けたらしく、ヴォクス夫人が小さな息をついて答えた。
「分かりました、その『何か』とやらを見ましょう。お出しになってください」
「ありがとうございます。それは一枚の写真であり、またその写真が記録している事実でございます」
「……?」
「実際にご覧になったほうが早いでしょう。リーゼロッテ様、あの写真をお願いします」
リズがうなずき、ポケットに入れていた写真を取り出す。ホースはそれを受け取ると、まずその写真自体をヴォクス夫人に見せた。
「これは……貴方とリーゼロッテさんの写真ね?」
「はい。リーゼロッテ様のクラスメイトが小型携帯式カメラを用いて、秘密裏に撮影したものです」
普段であれば、ホースがリズのクラスメイトを呼ぶときは『ご学友』もしくは名前に敬称をつけて呼ぶのであるが……ホースは『クラスメイト』という、事実として呼称した。リズは気づかなかったが、それはすなわち、ホースがそのクラスメイト……二人の不良学生を快く思っていなかったためであった。
それはともかくとして、ヴォクス夫人はホースの口にした『小型携帯式カメラ』という言葉に疑問符を浮かべた。夫人が彼に問いの目を向ける。
「小型携帯式カメラ? そんなものがあるのですか? 初めて聞きましたが?」
「ご存知なさらないのも無理はありません。その物は、現在まだ世に出回っていない物であり、とある人物が自身の家柄の伝手で入手したものだからです」
「……そうですか……」
ヴォクス夫人はまた写真を見た。これがどうかしたの?と目で問うているようだった。ホースが言葉を続ける。
「いまから私が記録魔法を使用して、この写真が記録している事実をお見せいたします。その後の判断をエリザベス様に決めていただきたいのです」
「…………」
「では、ご覧ください」
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