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51 ……わたしの好きな人……
しおりを挟む正直な話、いままで玉の輿に乗れたら良いなと思ったこと自体は、確かにあった。だが、それはあくまで好きな人が実はお金持ちだったというシチュエーションであり、好きでもない人と無理矢理結婚したいとまでは思っていなかった。
(……わたしの好きな人……)
リズは目をつむる。
もしも好きな人が相手であれば、若くして婚約することも結婚することも、それはとてもうれしいこととして受け止められた。受け入れられた。むしろ積極的に望んだだろう。
しかし好きな相手ではないのなら……すべての思いも感情も逆転してしまう。若年での婚約も結婚も、受け入れがたいものとなる。
少なくとも、時間やお金が解決してくれる問題だとは、いまのリズには思えなかった。
(……わたしの好きな人って……?)
そのような、もしもの場合を考えたとき、リズの脳裏にぱっと好きな人は浮かんではこなかった。前世で付き合ったことのある人物とは結局うまくいかず、大学に在学中に別れてしまい、その後は誰かと付き合うこともなく就職して日々仕事に追われて……そして明確な原因は思い出せないが死んでしまった。
また現世においては、そもそも好きな人自体がまだいなかった。思い浮かばなかった。……そのはずだった。
(…………?)
だが、リズ自身不思議に思ったことに、好きな人などいまはいないはずなのに、ぼんやりと、まるで陽炎のように、靄のように、もやもやとした人影が脳裏に浮かんできていた。
(え……だれ……?)
そのろうそくの火のように揺れ動く人影には、顔が見えなかった。自分より身長が高いことも、細身の体型をしていることもなんとなく分かったが……どうしても顔だけは判別できなかった。
(だれなの……?)
はたしてそれが誰の幻影なのか、正体をはっきりと確かめるべく、リズが心のなかでその人影に手を伸ばしたとき……。
凄まじい衝撃と音が馬車を襲った。
「……っ⁉」
大地震が直撃したかと思った。もしくは雷が馬車に落ちたかと思った。しかし雨は降っていないはずなので、ならば爆弾でも投げ込まれたのかと思った。
それらの思考は、まるで走馬灯のように一瞬でリズの頭を駆け巡っていった。答えは……答えが来る前に、リズの眼前は閃光に満たされていった。
眩しさに目をぎゅっとつぶって……身体が宙に浮くような感覚を覚えた。また空を飛ぶような、風が肌を吹き荒んでいく感覚があった。
そして気がついたとき……。
「ご無事ですか、リーゼロッテ様?」
「……へ……?」
目を開けたリズの眼前に、ホースの顔があった。リズはホースに両腕で抱きかかえられていた……いわゆるお姫様抱っこと呼ばれている抱えかたで。
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