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第四話 前は
しおりを挟むフードキーパーのなかは特殊な空間となっており、多量の食糧を保存できるだけでなく、食糧同士がぶつかったり汚れたりすることもない。だからロウが保存している食糧自体には害がおよぶことはないのだが……。
彼女にとっては、魔物の肉を入れたものと同じものに入っていた食糧、として悪いイメージがついてしまうのがイヤだったのだ。
「ちぇー、ケチだなー」
「ケチとかそういうのじゃなくてですね……」
「しゃーねー、とりあえず入れられるだけ肉を入れて、っと」
ルタは彼女の近くのエビルボアまで近付くと、先ほどと同じように肉を切り分けて、新たに取り出した別の小袋のなかに入れていく。
その様子を見ながら、ロウはずっと気になっていたことを尋ねた。
「さっきのあなたのスキルですけど……デバフですか?」
「ああ」
「お仲間さんとは手分けして森のなかを探索してるんですか?」
「うんにゃ。仲間はいねえよ。ソロだ」
「え……」
ロウは最初冗談だと思った。彼の武器は短剣だけだし、スキルも攻撃的なものではなかったから。もし複数と戦闘したり、デバフが通じない相手だったら、一人旅では厳しいのではないのだろうかと思ったのだ。
「またまた。冗談ですよね?」
「よく言われる」
「……本当にソロなんですか?」
「だからそう言ってんだろ」
口調は落ち着いていたが、彼は心なしか、うんざりしているような感じになっていた。このスキルと装備で一人旅なんて無謀だと、いままで何度も言われてきたのかもしれない。
「誰かと組まないんですか?」
「前は組んでたんだけどな」
「…………」
なんらかの理由で別れてしまった。その後はずっと一人旅なんだと、言外に言っているようだった。
別れた理由やソロを続けている理由を話さないのは、話したくないからかもしれない。彼自身、それがイヤになってしまって。
ロウはそのことを察し、しかし。
「……あの、もし……」
彼に話しかけようとしたとき、おもむろに彼が立ち上がった。気持ちを切り替えたように、ついさっきまでとは違って明るい調子で。
「よっし、とりあえず保存できるだけ保存したし、とりあえず町まで戻るか」
彼女に向いて。
「おれはこの近くの町に戻るけど、あんたはどうする? よければ一緒に戻るか?」
「いいんですか?」
「ああ。つーか、帰還用のアイテムないんだろ。一人で帰らせて、また魔物に襲われたら助けた意味がなくなるしな」
「そのときはなんとか一人で倒しますよ」
「心配だねえ。たった二体に死にそうになってたから」
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