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第五話 おもしれーやつ
しおりを挟む彼女は心持ち、むっ、としつつ。
「さっきのは油断しただけです。一体目を倒した直後の不意をつかれて……」
「一流の冒険者なら、一体倒したくらいで油断はしないけどな」
「…………それは、そうですけど……」
悔しいが、彼の言っていることはもっともだった。ピンチに陥ったのは自分の油断のせいだし、彼がいなければ本当に死んでいたのかもしれないのだから。
的を射たその言葉に、少女は気落ちしてしまう。油断したのは事実であり、それは自分自身がよく分かっている。そのためか、ついいま、むっとして言い返したことが恥ずかしく思われてきた。
ロウのそんな気持ちの移り変わりなど知るよしもなく、ルタはもう一度聞いた。
「で、どうする、一緒に戻るのか?」
「……はい……お願いします……」
「ん、どうした? なんか落ち込んだみたいな声出して。ついさっきの威勢はどうした?」
「お、落ち込んでなんかいませんっ。ムキになったことが恥ずかしくなったなんて思ってませんからっ」
「お、戻った。なんかおもしれーやつだな、あんた」
「いいからさっさと戻りましょうっ、町にっ」
「あいよ。んじゃ、レイブンの翼を取り出しまして、っと」
腰のポーチから大きな黒い翼……正確には一枚の羽根を取り出して、ルタはそれを頭上へと放り投げる。その途端、二人の身体が淡い光に包まれて、一瞬のうちに上空へと飛び上がっていった。
「よし、無事に町に到着したな」
「途中で鳥型の魔物と遭わなくて良かったですね」
「ま、遭ったとしてもうまく避けてくれるけどな」
「そうですけど、やっぱりなんかハラハラするというか……って、ええっ⁉」
二人が到着したのは町の入口だったのだが、ルタのそばにさっき切り分けて残った肉の塊があった。それに気付いたロウはびっくりした様子で。
「なんでこの肉も一緒なんですかっ⁉」
「気付くの遅くね? まあ後ろからついてくるように運んだんだけど」
「鳥型の魔物がいないかどうか前しか見てませんでしたからっ。じゃなくてっ。なんでこのお肉も運んだんですかっ⁉」
「なんでって、保存するためだろ。そこの店で新しいフードキーパー買って。あんたが貸してくれないから」
「あたしのせいですかっ⁉」
自分を指差しながらロウが声を上げる。ルタは若干うるさそうに。
「そうは言ってないだろ」
「言ってるようなもんですよね⁉」
「うるせえなあ。とにかく、そこでフードキーパー買ってくから、肉盗まれないように見張っててくれ」
「なんであたしが⁉」
「んじゃ、すぐに戻ってくっから」
「あ、ちょっ」
ロウの返事も聞かず、ルタは駆け足で近くのアイテムショップへと向かっていく。
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