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第十六話 通り魔
しおりを挟む翌朝。時刻は九時を少し過ぎたころ。明るい朝陽が燦々と照らしている道を、ロウはギルドへと向かって歩いていた。
今日も今日とてクエストを受けて稼ぎを得るためだが、その道中、もしかしたら昨日の少年とまた出会えるかもと少し期待していた。
(もしかしたらルタがギルドにいるかもしれない)
なんの気なしに、とりとめもなくそう思ったのだが、思った瞬間、彼女はハッとして首をブンブンと横に振る。
(べ、べつにあいつのことが気になってるわけじゃないしっ。こ、これはそう! 昨日はあたしが助けられたから、今度はあたしがあいつを助けて、ご飯をおごらせてやるんだからっ)
心の声は誰にも聞こえていないのに、ロウはなぜか言い訳を述べ立てる。自分でもなぜそんなことをするのか、理由は分からなかった。
そして再びギルドへの道を進んでいこうとしたとき、視界の先に人だかりができているのを発見する。
(なんだろう?)
気になって、ロウがその場所へと向かうと、人だかりの先には路地があり、その入口に『KeepOut』の黄色いテープが張られていた。テープの向こうには数人の官憲がいて、赤黒い染みのついた地面をいろいろと調べているようだった。
(まさか……)
状況から、なにが起きたのかはおおよそ予想はついた。それでも一応、ロウは近くにいた人に聞いてみる。
「事件があったんですか?」
「ん、どうもそうらしいな。通り魔らしい」
会話を聞いたらしい別の人も言ってくる。
「やられたのは三人組の冒険者パーティーだってさ。ほら、昨日騒ぎを起こした奴ら。幸いなことに命は助かったみたいだけど、意識は戻ってないらしい」
「でも本当に通り魔なのかねえ。あの三人組、結構血の気が多かったから、もしかしたら吹っ掛けたのはあいつらで、返り討ちに遭っただけじゃねえの?」
「さあね。そんなことまで知らないよ。夜中にやられたみたいだし」
「目撃者もほとんどいないみたいだしな」
その場にいた人達がガヤガヤと話し始める。それを耳に入れながら、ロウは神妙な顔をしていた。
(あの三人組がやられた……)
昨日の昼間にルタが懲らしめた三人組が、今度は夜中に事件に巻き込まれた。あるいはルタのときと同様に、原因は三人組のほうにあるかもしれないが……。
これは偶然なのだろうか。
ロウが考え込んだとき、彼女に声がかけられる。
「お、昨日の奴じゃん」
聞き覚えのある声に振り向くと、昨日の少年がヒラヒラと手を振っていた。
「こんなとこでなにしてんだ? ってなんだ、この人だかり?」
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