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第四十話 ナンパ
しおりを挟む慌てて反論するルタに、おやっさんは、
「ふん」
と鼻を鳴らす。
「とにかく、うちの店員に手ぇ出しやがったら、タダじゃあおかねえからな。覚悟しとけよ」
「出さねえよっ!」
「はっ! どうだか」
「出さねえからなっ!」
意地でも否定したあと、ルタは肩を落として。
「……なんでこんなこと言われるんだよ……」
気が滅入ったような声を漏らす。それから顔を上げると、近くにいるロウに耳打ちするように。
「おやっさんは昔、冒険者だったらしい。スキルレベルもけっこう高くて、少しは名の知れた冒険者だったって話だ」
「へえー。そんな人に殴られたら大変ですね。すっごい痛そー」
「……なんか他人事だと思ってね? 確定事項みたいに言ってるし」
「他人事ですし。それにあなたなら彼女に手出しそうですし」
「あんたまで⁉ 出さねえって!」
「どうだか」
「おやっさんみたいなこと言うな!」
声を上げるルタを無視して、おやっさんがロウに言う。
「ロウさんだっけ。あんた、ルタがなにかしようとしたら、ぶん殴っていいからな」
「はい。任せてください」
快くロウは引き受ける。二人の会話に、ルタは。
「……なんで誰も、おれはそんなことしないって信じないんだよ……」
再び肩をガックリと落としたのだった。
と、そんな彼らに声がかけられる。
「そんなことってなんですか?」
「うおっ⁉」
びっくりしたのはルタで、彼が振り向くとそこには着替えを済ませて帰り支度を整えたニーサがいた。彼女はニコッと笑うと。
「お待たせしました。それじゃあ帰りましょ」
それからおやっさんのほうに向いて。
「店長も、おつかれさまです」
「おう。また明日な。気ぃつけて帰れよ」
「大丈夫ですよ。ルタさんとロウさんがいますから」
「……ふん……」
ニーサは改めて二人に向きながら。
「それはそうと、なんの話をしていたんですか?」
「さーて、じゃーなおやっさん」
彼女の質問を聞き流して、ルタは入口へと向かおうとする。へたに彼女に話して、もっと面倒なことになるのを防ぐためだったが……。
彼のその思いを知ってか知らずか、ロウは。
「ルタさんがニーサさんに手を出さないように、釘を刺してたんですよ」
ニーサへと教えてしまう。
そのロウの顔には、若干のアホらしさやバカバカしいと思っているような感情が表れていた。
対して、ニーサはというと、小首を傾げながら。
「手を出す?」
どうやらよく分かっていないらしい。
「ナンパするって意味です。無理矢理いやらしいことしたりとか」
「え」
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