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第三十九話 同伴
しおりを挟む「……分かりました、そういうことなら……」
二人のやり取りを見ていたニーサが会計カウンターの向こうで。
「あのー……」
と少し困ったように言っていて、改めてルタが彼女へと向いて。
「悪い悪い。いくらだ?」
「ええと、合計で……」
ニーサが告げる額をルタが払っていく。それを見ながら、ロウはなんとはなしに思っていた。
(もしかして、最初からおごるつもりで……?)
いま思い返してみれば、昨日この店に来たときは彼は彼女と同じくらいの量しか食べなかった。しかし今日はその二、三倍くらいの量をたいらげている。
もしかしたら彼女がどうしてもお礼をしたい、食事をおごるということになって、料金が高くならないように食べる量を遠慮していたのかもしれない。
そのことにロウは気付いてしまって。
(だから、今日はたくさん食べて……)
そして今日は最初からおごるつもりだったから、たくさん注文してたくさん食べた。どうせ支払うのは自分だからと。
(……なんか、ひょうひょうとしてるくせに、意外と気にかけてる人、なのかなあ……)
彼の心のなかを覗けるわけではないので、実際のところは分からない。もしかしたら昨日はただ単にお腹があまりすいていなかっただけかもしれない。
とりあえず、そうかもしれない、というだけのことだ。
と、ロウがそんなことを思っていると、会計を終えたルタにニーサが言っていた。
「あ、あの、わたしもうすぐ仕事上がるんで、そこまで一緒に帰りませんかっ?」
「へ……?」
「ああいや、用事があるとかでダメならいいんですっ」
「いや、用事はとくにねえけど……」
ルタがロウのほうを見る。
どうする? と目顔で尋ねられてる気がして、ロウは答えた。
「あたしなら構いませんよ。べつに断る理由もありませんし」
……帰りながら彼の強さについて聞くつもりだったけど……まあニーサさんがいても問題ないか……。
そう思って、ロウは彼女の同伴を承諾する。ロウがそう言ってから、ルタもニーサに顔を向けて。
「おれもいいぜ」
二人の返事を聞いて、ニーサは顔をパアッと輝かせた。
「それじゃあすぐに着替えてきますので、待っててくださいねっ」
「おう」「はい」
お金を会計カウンターのなかにしまった彼女が、店の奥へと足早に消えていく。
やり取りを調理カウンターの向こうで聞いていたおやっさんが、ルタとロウのほうを見ながら気難しそうに。
「やれやれ、うちの店員をナンパたあ、えらくなったもんだな」
「ちょっと待ておやっさん、いまのは向こうから言ってきてただろ⁉」
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