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第四十一話 『料理』スキル
しおりを挟むロウの説明を聞いて、彼女は口元に手をあててびっくりした顔をする。ロウは付け足すように。
「だから、ニーサさんも気を付けてくださいね」
そう注意したのだが……しかしそれに反して、ニーサの反応はというと。
「……あ、あの、ルタさんなら、わたしは……」
かすかに頬を染めながら、モジモジとした様子を見せていた。照れがあるのか、言葉としては明確に言ったわけではないのだが……。
「「「…………」」」
ルタとロウとおやっさんは思わず彼女のことを見つめてしまった。
三人の反応に気付いた彼女が照れ隠しのように早歩きで入口へ向かい、
「そ、それじゃあ早く帰りましょうかっ」
ドアを開けて外へと出ていく。
「「「…………」」」
ルタとロウとおやっさんの三人は顔を見合わせて……外からニーサの声が聞こえてきた。
「ル、ルタさん、ロウさん、置いていっちゃいますよっ」
「いいなあ、二人は冒険者として旅ができて」
陽が落ちて暗くなった道を並んで歩きながら、ニーサが言う。その声音にはうらやましさや憧れのような響きが混じっていた。
「あんたはしないのか?」
「いえいえ、わたしのスキルは『料理』ですから。魔物と戦うときの役には立たないんですよ」
「…………、ふーん」
ニーサの返答にルタは思惑ありげな顔つきをしたが、特になにか言ったりはしなかった。ニーサ自身が冒険者としての生き方を選んでいない以上、自分が余計なことを言うべきではないと思ったのかもしれない。
ニーサの言葉を聞いて、ロウが彼女に言う。
「もしかして、『料理』スキルを持ってるから、あの料理屋さんで働いてるんですか?」
「はい。わたしのスキルなら役に立つかもって思いまして」
「へえー」
一般的に、自分が所持するスキルに適した仕事や役職に就いたほうが良いと、この国の人々の間では言われている。スキルとは言い換えれば才能であるとされており、その才能を十全に活かせることをしたほうが良い、と。
「あれ、でもニーサさんってホールの仕事をしてましたよね? 料理は店長がしてて……」
疑問に思ったロウが口にすると、ニーサがガクリッと肩を落とした。その肩や背中にドンヨリとした暗い線が引かれているような気さえする。
「『おまえみたいなヒヨッコにはまだ早い!』って店長に言われちゃって……まずはホールの仕事に慣れてからだって」
「おやっさんが言いそうなことだな。ついでに『俺の店のメシを任せるには十年早え』とかも言ってそうだ」
「はあ、まあ、同じようなことを言われちゃいました、てへへ……」
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