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第四十二話 食べているから
しおりを挟むルタの言葉にニーサが微笑みを返す。そこには落ち込んだ雰囲気がかすかに混ざっていて……せっかくの自分のスキルを活かせなくて、残念に思っているのかもしれない。
と、そんなことを話していると分かれ道に差し掛かり、ニーサが二人に言った。
「あ、わたし、こっちなので……ルタさん、ロウさん、さよならです」
「おう、気を付けてな」「さようなら、ニーサさん」
「明日もまたお店に来てくださいね」
「まあ、気が向いたら、だな」
「ええーっ」
「まあとにかく、さよならさん」
「はい、それでは……」
ニーサが手を振り、二人も手を振り返す。そしてニーサは背を向けると、外灯が照らし出す夜の道を、人波に紛れるようにして歩いていった。
「良いかたですよね、ニーサさんって」
「そうだな」
遠ざかる彼女の背を眺めながら二人がつぶやく。
「可愛いですし」
「まーなー」
「やっぱりあなたもああいうかたが好きなんでしょ」
「嫌いな奴いないだろ。あんただって好きだろ?」
「…………」
どうやら彼は何か勘違いしているらしい。ロウは恋愛感情的な意味で言ったのだが、友人や人間関係的な意味で受け取ったらしい。
ダンジョン探索や魔物の討伐など、冒険者としては勘が鋭いくせに、
(こういうところは鈍いんだなー)
とロウは思ってしまう。
「ま、いいですけど。あたしには関係ないし」
「なにが?」
「なんでもないです。それより、あたし達も帰りましょう」
そう言って、ロウはさっさと先に行ってしまう。そんな彼女のあとを。
「?」
と首を傾げてから、ルタは慌てて追いかけるのだった。
そして二人並んで歩き始めてから、ロウはルタに尋ねる。
「ところで、ですけど」
「なんだ? 改まって」
「あなたのスキルが『未熟』だってことは分かりました。それを使ってデバフをかけていることも」
「それが?」
「それが? じゃなくてっ。どうしてあなたはそんなに強いのか、についてはまだ教えてもらってませんよね? デバフに関しても、レベル1の技なのに」
レベル1の技なのにもかかわらず、何倍もの上のレベルの技に正面から勝っている。普通に考えればあり得ないはずのことだった。
「そのことなら答えたと思うが? 理由はおれにも分かんね、できるもんはできるんだからしょーがねーだろ」
「…………っ」
相変わらずひょうひょうと答えるルタに、ロウは気が収まらない。ぜひとも彼の強さの源について知りたかった。
「そういえば、あなたは魔物の肉も食べてるんですよね。エビルボアとか」
「おう。イノシシやブタの肉に似ててうめーぞ。やっぱエビル (悪魔)とは言われててもボア (イノシシ)だからかねー」
「…………、もしかしなくても、それだからじゃあ……」
「ん?」
「だから……魔物の肉を食べているから、そんなに強いんじゃあ、って」
「ああー……」
ロウの指摘に、彼自身、合点したような納得したような声を出す。言われて、いまごろ思い当たったのかもしれない。
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