【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第七十話 即死しなかった

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 男が話を続ける。

「あとで医者や官憲から聞いたことだが、あの通り魔がオレ達を刺しまくっていたときに、つまりオレが気絶したあとに、偶然、夜間巡回をしていた官憲どもが見つけて、それで奴は逃げ出したそうだ。もし見つかっていなけりゃ、オレ達は死体になってたってわけだな」
「「…………」」
「オレから、オレ達から話せるのはこれだけだ。奴は明らかにヤベエ。ギリギリまでオレ達が死なねえように切り刻んで、痛めつけて苦しませて、それから最後のトドメを刺すつもりだったんだからな……!」
「「…………」」

 男がルタをギロリと見る。

「さあ、帰ってくれ。オレ達の前からいなくなってくれ。オレ達も退院したら、こんな狂った奴がいる町からオサラバするつもりだ。こんなところにはいられねえ……っ」
「「…………」」

 ルタが黙ったまま立ち上がる。彼に続いてロウも立ち上がり、三人に軽く頭を下げる。そしてルタを先にして部屋の入口へと向かっていき……廊下に出る前に、入口の前でルタは立ち止まると、三人組に背を向けたまま。

「じゃあな。俺が通り魔を捕まえたっつー新聞記事をおまえらに見せられねーのは残念だ」

 ヒラヒラと後ろ手を振りながら最後にそう言い残して、病室から出ていった。ロウもまたもう一度彼らに軽く頭を下げてから、廊下に出ていく。
 廊下を歩いていく二人の足音を聞きながら。

「「「…………」」」

 三人組は閉じられたドアをジッと見つめていた。
 …………それから。
 ルタとロウは三人組の治療にあたったという医者に会うと、当時の怪我の状況を聞いた。それによると、やはりかなり酷い状態だったらしい。
 腕、足、顔、身体……全身の至るところがナイフでメッタ刺しにされていて、もし発見および病院への搬送がもう少し遅れていれば、出血多量で死んでいただろうということだった。
 ロウが口元に手を当ててショックを受けた顔をするなか。

「そんなに刺されていたのに、よく即死しなかったな」

 わずかに感心にも似た語調を含ませて、ルタが言う。医者の男もまた当時のことを思い出すようにうなずくと。

「いずれの傷も、ギリギリのところで即死に至る部分は避けていました。私達や官憲の見解では、犯人は人体の構造に詳しい知識を持ち、なおかつ気質的には被害者をいたぶる狂的な性格の持ち主だと推測しています」

 あの通り魔は明らかにヤバイ……さっき話を聞いた男もまたそのように言っていた。
 ルタは続けて尋ねる。

「なんか他に分かったこととかってあるのか? 通り魔を特定できるような」

 しかし医者は残念そうに首を横に振った。

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