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第八十八話 分かれ道

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 こういうことは、本人が直接相手と話し合ったほうがいい……ロウはそう思って、そこでその話題を打ち切った。代わりに、首を傾げているルタへと聞く。通り魔事件のことだ。

「それより、事件の調査はどうします? 手掛かりはあまりないですよ」

 今日得られた情報は、ごくわずかなものであった。とてもじゃないが、これだけで通り魔へとたどり着くことはできないだろう。

「そのことか。一応、策ならあるにはあるけどよ……」
「まさかとは思いますが、ルタさんが囮になるとかはなしですよ。夜の町を歩き回ったりして」
「ぎくっ」
「やっぱり……」

 身体をギクリとさせる彼に、ロウは小さな息をつく。やれやれと言いたげに。

「いくらなんでも危険すぎます。それに、ルタさんが本当に狙われているのかも分からないのに」
「…………」

 ルタの命が狙われているかどうか、この事件に対しての前提。数時間前にロウが言いそびれたことだった。

「もしルタさんが狙われているっていう前提が間違っていれば、いままでの推測自体が崩れてしまうんですから」
「まあ、な……」
「…………、実はルタさんもそうじゃないかって思ってたんですか?」
「あくまで可能性の一つとしてな。おれが狙われているという確証がないってことは、狙われていない可能性、つまり通り魔の標的はランダムだったっていう可能性もあるわけだからな」
「むしろ、そっちのほうが高いでしょうけどね」
「だろーなー」

 あっけらかんとして彼は応じた。

「むしろあの推測が当たってたほうがびっくりするしな」
「なんですかそれ。自分で言っといて、本気にしてなかったんですか?」

 彼の言葉にロウは呆れた声を返した。だったらいままでの調査はなんだったのかと、文句を言いたい気分になる。
 しかし彼はというと。

「だから、あくまでただの推測で、可能性の一つだって言ってただろ。本気にしてなかったわけじゃない、が、それにすべてを懸けていたわけでもない。当たってたら儲けもんで、外れてたら外れてたで、別の可能性や方法を探るだけだ」
「…………」

 つまりは当たりと外れ、両方の可能性を考えていたということ。その言い様からして、調査の手掛かりもすでに掴んでいるのかもしれない。
 ロウは彼に聞く。

「もしかして、これからどうするか、もう考えがあるんですか?」

 だとすれば、犯人逮捕への希望はまだある……かもしれない。
 しかしルタはすぐには答えずに、視界に現れた分かれ道の前で立ち止まった。

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